2024年10月 6日 (日)

Promises, Prayers, And Raindrops: Allyson Briggs Sings Burt Bacharach/Fleur Seule (2024年)

米国のレトロジャズバンド、Fleur Seule によるバカラック・カヴァー集です。(現時点でCD無し/デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
3. Trop'ns Fin Regen Oif Mein Kop (RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD) (feat. Julie Benko)
4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
5. ONE LESS BELL TO ANSWER
6. ANYONE WHO HAD A HEART
7. UNINVITED DREAM
8. MY ROCK AND FOUNDATION
9. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
10. Wenn Ich Mir Was Wünschen Dürfte
11. CASINO ROYALE(インスト)
12. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
13. PROMISES, PROMISES
14. WALK ON BY
15. ALFIE
16. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
17. I SAY A LITTLE PRAYER
18. THE LOOK OF LOVE
19. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
20. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR

収録時間約67分



米国のレトロジャズバンド、Fleur Seule によるバカラック・カヴァー集です。

Fleur Seule(読み方よくわかりませんが、Google先生に倣って "フルール・スール" と呼びます)はマンハッタンのレトロジャズバンド。リード・ヴォーカルの Allyson Briggs(ア
リソン・ブリッグス)がバンド・リーダー。クラシックなシャンソン、ジャズスタンダード、スイング、ボサノバ、サルサなどをレパートリーとし、複数のパブレストラン等でハウスバンドを務めているそうです。会場や雰囲気に合わせて2〜15人でバンドを編成。2015年以降アルバムを6作リリースしており、本アルバムは7作目になります。(Fleur Seule 公式サイト→こちら

アリソン・ブリッグスは、歌手以外にナレーションやゲームのキャラクターの声の仕事もしていて、英語・仏語・独語・西語に堪能なんだそう。それらも含めて7ヶ国語で歌うことができるんだとか。才女ですねー。

本作は2024年7月にリリースされたんですが、フルール・スールは2023年2月8日バカラックの訃報のすぐ後、2月10日に「 小さな願い 」のライヴ映像をYouTubeにアップしていました。

調べてみると、フルール・スールは以前から "A Burt Bacharach Night" というライヴをやっていて、この動画はそのアーカイヴみたいなんです。その後2月13日にライヴのダイジェスト、3月5日に「 世界は愛を求めている 」、8月26日に「 恋するハート 」をアップ。衣装が同じなので同じライヴの動画と思われます。

そして今年に入り本アルバムをレコーディング。2024年4月6日にはレコーディング4日めの動画をアップしています。


本作には全20曲を収録。ピアノトリオ+トランペットをバックにアリソン・ブリッグスが歌っています。公式サイトのブログで彼女は本作への思いを熱く語っているのですが、セルフライナーノーツ的な内容でとても参考になりました(特に見慣れない曲について😅)。是非ご覧ください。

カヴァー定番曲がほとんどですが、見慣れない曲がいくつか…。
T-3.「 Trop'ns Fin Regen Oif Mein Kop 」は「 雨にぬれても 」のYiddish(イディッシュ語)版。イディッシュ語は、中世ドイツ語方言を基礎とし、もとは中欧・東欧系のユダヤ人が用い、現在はイスラエルをはじめ世界各地のユダヤ人によって使用されている言語だそう。フィーチャリング・シンガーのブロードウェイ女優 Julie Benko がユダヤ人だから…のチョイスでしょうね。最初はソロで、途中から2人になりユニゾン→ハモリ→掛け合いになるオシャレなカヴァーです。
T-7.「 UNINVITED DREAM(アンインヴァイテッド・ドリーム)」はペギー・リーがオリジナル。1957年のシングルA面曲で、作詞は Sammy Gallop(サミー・ギャロップ)。バカラックの"バ"の字もないジャズの標準的なスタイルの曲です。ペギー・リーも彼女が尊敬する歌手で、ペギー・リーとバカラックの繋がりを調べる中でこの曲を発見したそう。王道のジャズ・バラードをきっちりパフォーマンスしています。
T-8.「 MY ROCK AND FOUNDATION 」もペギー・リーがオリジナルで、1971年のアルバム『 Where Did They Go 』収録曲(過去にコンピ集で紹介)。超レア曲で、彼女もブログにこの曲初めてのカヴァーだと書いてました。私もこの曲のカヴァーは初めて聴きました〜。オリジナルよりシンプルですね。
T-10.「 Wenn Ich Mir Was Wünschen Dürfte 」はバカラック作品ではありません。彼女のブログに詳しいですが、バカラックがマレーネ・ディートリッヒの音楽監督をしていた頃にアレンジした Friedrich Holländer の曲とのこと。ディートリッヒとバカラックに敬意を表し、この曲をチョイスしたそう。ドイツ語で歌っています。

─ オリジナルの曲の完全性を維持したかった ─ とアリソン・ブリッグスがブログで書いてるように、ピアノトリオ+トランペットという編成で原曲(オリジナル or 有名なバージョン)のテイストを表現する…そんなコンセプト。派手なアドリヴも少なくしっかりシンガーを立てていますね。彼女の歌唱は原曲を模倣することはせず、かといって尖った自己主張をするわけでもなく、咀嚼した上で心を込めて伸びやかに歌っているように感じます。 ─ アレンジの複雑さ、ハル・デイヴィッドの歌詞の深さを強調し、スタジオオーケストラであろうと小さなコンボであろうと、これらの曲をどのように楽しむことができるかを示したかったのです。  ─ 彼女の思いが十分感じられる、そんな落ち着いた大人のバカラック集かと。

後半熱くなるT-4.「 世界は愛を求めている 」、レアなカヴァーT-8.「 MY ROCK AND FOUNDATION 」、エモーショナルな歌唱のT-14.「 ウォーク・オン・バイ 」、かなりジャズしているT-15.「 アルフィー 」、後半盛り上がるT-17.「 小さな願い 」、アドリヴが素敵なT-18.「 恋の面影 」あたりがレコメンドかな。

アルバム全曲、YouTubeで聴くことができます。→ こちら
また、アルバムリリース直前7月9日のリリース記念ライヴからも現時点で3曲聴くことができます。「 愛の思い出(愛のウェイトリフティング)」「 MY ROCK AND FOUNDATION 」「 恋よ、さようなら 」
※ 2024/10/11追記:For Your Consideration in Best Traditional Pop Vocal Album this Grammy®︎ voting season … と称して約4分半の宣伝動画をUPしています。内容は、レコーディング風景を中心にバンドメンバーのコメントも。→ こちら


ここからはオマケです。
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フルール・スールは2020年にも「 CLOSE TO YOU(遙かなる影)」(4:15) をカヴァーしてシングル・リリースしています。本作とキーは同じでバックの編成(ピアノトリオ+トランペット)やテイストも同じですが、テンポは本作(♩≒96)よりゆったりしています(♩≒84)。彼女の歌唱もより自然に感じられて、私は2020年版の方が好みですねー。


【データ】
『 Promises, Prayers, And Raindrops: Allyson Briggs Sings Burt Bacharach 』
Fleur Seule

MP3:2024年7月12日リリース
レーベル:Algos Music (US)
番号:?

Allyson Briggs, serving as bandleader and star vocalist
music director Andy Warren on trumpet
James Navan and Jason Yeager on piano
Michael O'Brien on bass
Shareef Taher and Peter Traunmueller on drums
Broadway luminary Julie Benko (Funny Girl, Harmony) as guest vocalist (T-3.)

Amazonリンク

2024年9月29日 (日)

SOUL/Lena Horne (1966年)

米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW (2:26)


米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。尚、彼女のファーストネームは "レナ"・"リナ" 二通りの表記がありますが、Lena は英語では "リーナ" のように発音されるそうで
拙ブログでは "リナ" と表記いたします。

彼女は1917年ブルックリン生まれ(2010年没、享年92歳)。1933年にコットンクラブの舞台に立ち、1938年のミュージカル映画でジャズ歌手としてデビュー。彼女の父親が白人とのハーフだったために黒人(アフリカン・アメリカン)にしては色が薄かったため、白人からだけでなく黒人からも差別を受けたそうです。しかし、その美しさゆえハリウッドからも声がかかり、1940年代以降、映画やミュージカルなどで大活躍しました。公民権運動にも積極的に参加したことからブラック・リストに載り、アメリカ国内での活動が制限され活動の本拠をヨーロッパに移した時期も…。'50年代からコンスタントにアルバムを発表する傍らテレビなどに出演するようになり、その後映画にも復帰。2000年頃まで活躍しました。

本作は、1965年に United Artists レーベルに移籍した後にリリースした3作目にあたります。裏ジャケのライナーノーツにはこう書かれています。長いですがせっかくなので全文引用します。Google先生の訳で、どーぞ。

─ 「 ソウル 」という言葉は、最近、ポピュラー音楽の世界で最も頻繁に使われる名詞や形容詞の 1 つになっています。この言葉は、最近、さまざまなタイプの歌手に当てはめられ、時には誤って当てはめられ、その意味は混乱しています。しかし、長年にわたり、魂を込めて歌い続けてきた偉大な女性がいることを否定する人はほとんどいません。もちろん、彼女は比類のないリナ・ホーンです。
 これは、素晴らしいリナがユナイテッド アーティスツ レコードのために作った 3 枚目のアルバムです。最初は『 Feelin' Good 』、次は『 Lena In Hollywood 』でしたが、この 2 つの優れたコレクションに対する反響は衝撃的で、批評家もファンも、このボーカリストの女王がここまで最高の歌声を披露したことは一度もないと同意しました。ホーンの興奮、ホーンの活力、ホーンのスタイルは、まさに今、最高潮に達しています。
 そして、シンプルかつ適切に『 SOUL 』と名付けられたこのコレクションは、まさに最高峰です。これは、これまで聞いたことのないリナでもあります。
 曲は、おなじみの愛すべき「 THE OLD MILL STREAM 」を除いて、比較的最近のもので、この不朽の名曲は、ラ・リナの素晴らしい演奏によって、二度と同じ音には聞こえなくなるでしょう。『 SOUL 』には、トップ 10 入りした曲、リズム&ブルースの曲、カントリーの名曲、ゴスペル風の演奏、そして、おまけに素晴らしい新曲がいくつか収録されています。これらは、リナ・ホーンの演奏でもめったに見られない自由さと活気をもって演奏されており、特に注目すべきは、今日の音楽的背景であり、実際には明日の音楽的背景でもあるということです。
 ここに、唯一無二のリナ・ホーンがいます。ここに『 SOUL 』があります。エンターテインメント界の真の偉人の一人の芸術性を、まったく新しい設定、目もくらむほど新しく、スリリングなほど現代的に表現しています。『 SOUL 』は、リナがなぜ時代の伝説なのかを鮮明に示しています。実際、リナは時代の先を進んでおり、これからもそうあり続けることを示しています。リナはスターです。リナはスターです。リナは『 SOUL 』です。  ─

ビッグバンド+ストリングスというゴージャスな編成とリッチなアレンジの演奏をバックに、ソウルフルで自在な表現力を発揮した歌唱は素晴らしいの一言。彼女の全盛期がいつなのか私は知らないのですが、リリース時49歳のこのアルバムがそうだと言われても納得しちゃいます。粘っこいT-5.「 アンチェインド・メロディー 」、スローで艶やかなT-8.「 蜜の味 」…よく知ってるこの2曲もステレオタイプじゃないアレンジと相まっていずれもグイグイ聴かせます。

前置きが長くなっちゃいました😜。さて、バカラック・カヴァーはT-4.「 世界は愛を求めている 」。オリジナルの1965年ジャッキー・デシャノン版(♩≒108)よりゆったり目(♩≒98)且つ半音低いキー。ジャッキー版同様3拍子ですが、8小節あるイントロではトロンボーンやブラスがオリジナルには無いオブリガートを吹き、只者じゃない雰囲気が漂います。僅かに細かいビブラートが効いたリナの歌唱も、重厚というか貫禄があるというか…。ジャッキー版が「 世界には愛が必要なの、ね 」なら、リナ版は「 世界にゃ愛がいるんじゃ、わかっとんのかい 」てな感じ。いや、そりゃ言い過ぎか…😅。

ここからはオマケ。MP3で所有しているリナ・ホーンのバカラック・カヴァーをご紹介。
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リナ・ホーンは『 SOUL 』の次にリリースした『 Lena In Hollywood 』(1966年)で「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」(2:10) をカヴァー。映画関係の曲をカヴァーしたアルバムのようで、ビッグバンド+ストリングスの優雅且つゴージャスな演奏をバックに、肩の力を抜いて軽やかに歌っています。
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1970年には Lena Horne & Gabor Szabo 名義のアルバム『 Lena & Gabor 』で「 MESSAGE TO MICHAEL(マイケルへのメッセージ)」(3:14) をカヴァー。ガボール・ザボはジャズ系のギタリスト。ドラムス、Eベース、オルガン、ギターという編成で、オルガンのリチャード・ティー、ギターのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイルはのちにフュージョンバンド Stuff を結成する面々。♩≒82〜85のゆったりしたテンポ、ゴスペルファンク的なリズム、ソウルジャズのクールなサウンドをバックにリナは情感込めて歌っています。1998年に Varèse Vintage から出たコンピ集『 the burt bacharach songbook 』で聴いた時は余り印象に残らず。でも今聴いたらイイんですよねー。

他にバカラックがリナ・ホーンに書き下ろした曲もあるのですが、未紹介のバカラック物コンピ集に入っておりまして…。いずれ紹介いたします。


【データ】
『 SOUL 』
Lena Horne

LP:1966年リリース (所有リイシューCDは、1996年リリース)
レーベル:United Artists (US) (所有リイシューCDは、EMI(UK))
番号:UAL 3496/UAS 6496 (所有リイシューCDは、7243 8 37393 2 5)

All tracks arranged, conducted and produced by Ray Ellis

Amazonリンク(1996年リイシューCD)(2007年リイシューCD ボーナストラック入り全18曲

2024年9月22日 (日)

Burt Bacharach Re (Imagined)/The Anya Audette (2024年)

The Anya Audette(アニヤ・オーデット)が2024年9月にリリースしたバカラック・カヴァー集です。(デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
2. CHECK OUT TIME
3. ODDS AND ENDS
4. DON'T MAKE ME OVER
5. THE LOOK OF LOVE
6. ALFIE
7. A LIFETIME OF LONELINESS
8. WALK ON BY
9. ON MY OWN  (feat. Jarreau Williams)
10. ANYONE WHO HAD A HEART
11. ANYONE WHO HAD A HEART  (Dance Version)
12. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
13. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
14. I SAY A LITTLE PRAYER

収録時間約46分


The Anya Audette(アニヤ・オーデット)が2024年9月にリリースしたバカラック・カヴァー集です。ただし、ネット上では theanyasudette という表記でアップされています。"the"がついているのでプロジェクトの名称みたいですが本記事では"彼女"と呼ぶことにします。

彼女は米国メリーランド州ボルチモア生まれ(生年不詳)。Anya Randall Nebel の名で40年以上にわたり演劇界で活躍(パフォーマー、監督、プロデューサー)してきた方だそう。一方で、2017年にバークレー音楽学校を卒業して Music Production and Engineering の学位を取得。2023年12月に6曲入りのEP『 Random 』をリリースします。ジャンルとしてはテクノ系のダンスミュージックでその内1曲が「 ANYONE WHO HAD A HEART 」でした。

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画像は彼女の公式サイト(1番目、2番目)とインスタ(3番目)から拾いました。インスタはごく最近の投稿から。

先行して数曲をシングル・リリースしたのち、本アルバム『 Burt Bacharach Re (Imagined) 』を2024年9月12日にリリース! リリースの2日前、彼女は自身の Linkedin で本アルバムについて次のように語っています。熱意を感じますね〜。

─ 1年前、私はコンセプトと夢を持ってBlue Room Productionsで旅に乗り出しました-自分のアルバムを制作してレコーディングします。その仕事は愛の労働であり、私は世界に与えたいと願う影響を信じられないほど誇りに思っています。私の目標はスターになることではなく、本当に素晴らしいものを共有することを目指しています。音楽は私の人生のサウンドトラックであり、ストーリーテリングの芸術をその核心にすることで存在をナビゲートすることができます。ステージでの40年以上の経験により、このプロジェクトは、常に私の中に宿っている新しいレベルの創造性と情熱のロックを解除しました。今年9月12日にすべてのプラットフォームでリリースされる予定のアルバムは、特に女性にとって再発明の力の証です。これは、私たち全員が独自の物語を進化させ、作成する権利があることを思い出させるものです。  ─ (彼女の Linkedin 2024/9/10投稿全文、Googleの機械訳で)

本アルバムの14曲全てバカラック作品のカヴァー。取り上げたのは、T-9.「 オン・マイ・オウン 」(作詞:キャロル・ベイヤー・セイガー)を除いてハル・デイヴィッドと共作した1960年代〜1970年の曲。以下、簡単に各曲に触れていきます。尚、リンク先は拙ブログ記事です。

T-1.「 サン・ホセへの道 」はディオンヌ・ワーウィックが歌って全米10位になったお馴染みの曲(1968年のアルバム『 DIONNE WARWICK in Valley of the Dolls 』収録)。ディオンヌ版をベースにポップでふんわりしたアレンジにしたは良いのですが、彼女の歌声はちょいと高い音域で苦しげ。オリジナルと同じキーにはせず、キーを下げても良かったかも。
T-2.「 チェック・アウト・タイム 」のオリジナルもディオンヌ(1970年のアルバム『 VERY DIONNE 』収録曲)。この曲のカヴァーに初めて出会えて、ムチャクチャ嬉しいっす。キーは原曲と同じでテンポもほぼ同じ。アレンジはオリジナルをリスペクトしたもので雰囲気は出ていますし、言葉を噛み締めるように丁寧に歌う彼女の真摯な姿勢もいいですね。トランペットの特徴的なオブリガートを
シンセで演奏しているのですが、このトランペット音色がかなりチープなのが惜しいところ。でも、こんな超レア曲をチョイスした彼女のバカラック愛に敬意を表します。
T-3.「 オッズ・アンド・エンズ 」もディオンヌがオリジナル(1969年のシングル曲で全米43位。拙ブログではこちらで紹介)。キー、テンポ共に原曲と同じ。アレンジはオリジナルをリスペクトしたもので、コピーと言ってもいいくらい。歌声も味わいがあります。
T-4.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」はディオンヌのデビュー曲(1963年のアルバム『 PRESENTING DIONNE WARWICK 』収録)。この曲を彼女はダンス・チューンとしてカヴァー。メロディを適度にフェイクして歌っていてカッコイイです。
T-5.「 恋のおもかげ 」はダスティ・スプリングフィールドがオリジナル(1967年のサントラ『 CASINO ROYALE 』収録)。サントラ版ではなくダスティ自身のアルバム収録版(短縮バージョン)をベースとしたアレンジ。彼女の歌声は若干ハスキーでダスティと似ていることもあって違和感なく馴染んで聴こえます。
T-6.「 アルフィー 」はシラ・ブラックがオリジナル(1966年の英映画『 アルフィー 』宣伝用イメージソングで全英9位。拙ブログではこちらで紹介)。シラ版と同じキー、同じテンポで、アレンジもシラ版をリスペクトしたものです。
T-7.「 ア・ライフタイム・オブ・ロンリネス 」はスティーヴ・アライモがオリジナル(1963年)ですが、有名なのはジャッキー・デシャノンのカヴァー(拙ブログではこちらでちょろっと紹介)。ジャッキー版をリスペクトしたアレンジで、キーもテンポも同じ。歌声もジャッキーに寄せて歌っています。

T-8.「 ウォーク・オン・バイ 」はディオンヌがオリジナル(全米6位。1964年のアルバム『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』収録)。彼女はコンテンポラリーでクールなダンスチューンにアレンジ。そういうアレンジなら声にもう少し勢いがあるといいなぁと思います。
T-9.「 オン・マイ・オウン 」はパティ・ラベル&マイケル・マクドナルドの全米1位曲(1986年のアルバム『 WINNER IN YOU 』収録)。キー&テンポ含めてオリジナルに忠実なアレンジで、R&B系の男性シンガー Jarreau Williams とデュエット。でもなんかコピー感が強いです。
T-10.「 恋するハート 」はディオンヌがオリジナル(全米8位。1964年のアルバム『 ANYONE WHO HAD A HEART 』収録)。ディオンヌ版の世界観をキーやテンポは同じままコンテンポラリーなアレンジで表現。後半ではラップも加わります。彼女の声ではなさそうですが。
T-11.「 恋するハート 」は同じ曲のダンス・ヴァージョンで、前述したEP『 Random 』に収録されていたもの。思いっきりユーロビート系?のダンスチューンに仕上げていてメロディもぶっとんでます。原曲の面影は薄いですがこれはこれでカッコイイですねー。
T-12.「 恋のとまどい 」はトミー・ハントがオリジナル(1962年)ですが、有名なのはダスティ・スプリングフィールドのカヴァー(1964年に全英3位。こちらで少し触れてます)。しかし、彼女のカヴァーはディオンヌ版(1966年のアルバム『 HERE WHERE THERE IS LOVE 』収録)を忠実に再現したもの。当時の若いディオンヌと比べて高音域の歌声のハリがイマイチかなぁ。
T-13.「 愛の思い出 」はトミー・ハントがオリジナル(1964年)ですが、なんと言っても同年全英1位になったサンディ
・ショウのカヴァーが有名で、ディオンヌもカヴァー(1967年のアルバム『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』収録)。彼女はダンスミュージックにアレンジしていますね〜。この曲がこんなにカッコ良くなるとは!
T-14.「 小さな願い 」はディオンヌがオリジナル(全米4位。これも1967年のアルバム『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』収録)。世間的にはアレサ・フランクリンのカヴァーの方が人気ありますが(こちら参照)。彼女はアレサ版をベースとしてダンス・チューンにカヴァーしています。

半数の7曲(T-2,3,5,6,7,9,12)がオリジナル或いは有名なカヴァーをリスペクトしたもの、5曲(T-4,8,10,13,14)がダンス・チューン、1曲(T-1)がポップ・チューン、1曲(T-11)がぶっとんだカヴァー。
バックトラックのクオリティは正直イマイチではあるものの、彼女のバカラック愛が十分伝わってくるカヴァー集だと思います。個人的なレコメンドは、T-2,3,4,11,13 あたりです!

参考までに、本アルバムに関するネット記事をいくつか貼っておきます。インタビュー記事1本①とアルバム紹介記事3本②③④です。アルバム紹介記事はけっこう似通ってますけれど…。
Burt Bacharach-Dionne Warwick Tribute Album – The Anya Audette
Legendary Artist TheAnyaAudette Revives Burt Bacharach’s Genius in “Burt Bacharach Re (Imagined)”
Visionary and Bold: TheAnyaAudette’s Tribute in “Burt Bacharach Re (Imagined)” is Mesmerizing
A Masterpiece Reborn: TheAnyaAudette’s “Burt Bacharach Re (Imagined)” Will Leave You Speechless


【データ】
『 Burt Bacharach Re (Imagined) 』
The Anya Audette(ネットでの表記は theanyaaudette)

MP3:2024年9月12日リリース
レーベル:HARDYGIRL1966 (US)
番号:?

詳細なクレジットは不明

Amazonリンク(MP3

2024年9月15日 (日)

I Who Have Nothing/Tom Jones (1970年)

トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。今年ちょっと話題になったバカラック・カヴァー1曲を収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全11トラック中、バカラック作品は1トラック

B2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (2:39)


トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。

トム・ジョーンズは1940年英国南ウェールズ生まれの男性ポップシンガー。バカラック曲「 WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか子猫チャン)」、「 PROMISE HER ANYTHING(プロミス・ハー・エニシング)」、「 US(アス)」のオリジナル・アーティストでもあります(これらの曲はバカラック物コンピ集にもよく取り上げられています)。2006年には大英帝国ナイト位を授与されました。所謂 “サー” の称号付きで呼ばれるわけですね、すげー。

本作は『 Tom 』(1970年4月リリース、UK#4)に続けて同年11月にリリースされました。1967年以降のアルバムが全てUKチャートで1桁順位だったのに対して、本作はUKチャート10位。彼独特のダイナミックな歌唱は健在だしノリの良い曲(A4,B6)もありますが、バラードタイプの曲(A2,A3,A5,B1,B5)も多くて全体的に大人しめな印象です。ジャケット裏面には、赤いドラゴン(ウェールズ国旗の中央に描かれている竜ですよね)、
“WALES” LAND OF SONG... This is my homeland; where I was born and raised のコピー、ウェールズと思しき丘陵地を背に佇むトムの写真…。出身地のウェールズに想いを馳せて感傷的になってそういう曲が多くなったのかしらん。(知らんけど)
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んで、バカラック・カヴァーはB2.「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(当時の日本盤の邦題:愛を求めて)」。歌い出しはイントロなしでアウフタクト2拍をゆったりと。オリジナルと同じ3拍子でテンポは♩≒118。バックはビッグバンド+ストリングスのゴージャスなサウンド。トム・ジョーンズは最初は抑えめに歌っていますが、ラストサビでは彼らしいシャウトを聴かせます。いいですねぇ〜、
レコメンドでございます。公式動画がありましたので貼っておきます。


当時トム・ジョーンズはテレビ番組『 This is Tom Jones TV Show 』(1969〜1971年)のホストを務めていました。その番組で、1969年にサミー・デイヴィスJr.とこの曲をデュエットしています。エンディングが少し違っていてテンポも僅かに遅いですが、本アルバムのバージョンと基本的にバックの演奏は同じ。シャウトの掛け合いが素晴らしいです。これも公式動画を貼っておきます。


そして、今年ちょっと話題になったのが…。来月(2024年10月)公開となる映画『 Joker: Folie à Deux(ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ)』。今年4月10日リリースの特報トレーラーにトム・ジョーンズの歌う「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 」が使われていたんです(ワーナー公式サイトのNEWS参照。特報トレーラーも視聴できます)。じっくり聴いてみると、デュエット版からサミー・デイヴィスJr.の冒頭の歌声が、本アルバムのトム・ジョーンズ版からラストサビの2フレーズ目の歌声が使われているようです。バックの演奏はとても重厚ですし、ゆったりしたインスト部分の美しさも際立っていますね〜。映画本編でも使われるのか、フォローしたいと思います。


ここからはオマケ。MP3で所有しているトム・ジョーンズのバカラック・カヴァーをご紹介。
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トム・ジョーンズは1967年のアルバム『 Green, Green Grass Of Home 』〜 ただし、Decca盤(UK)には収録されておらず、Parrot盤(US)のみ収録 〜 で「 ANY DAY NOW 」(2:54)をカヴァー。こういう曲にトム・ジョーンズの歌い方は相性いいですね。後半でのシャウトもハマっています。補足:1966年フランスでリリースした4曲入りEP『 What A Party 』のA面2曲目が初出の模様。
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同じく1967年リリースのアルバム『 13 Smash Hits 』で「 I WAKE UP CRYING 」(2:19)をカヴァー。それほど特徴はなくオーソドックスな仕上がり。もちろんトム・ジョーンズの歌唱はパワフルですけれど。
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ついでにライヴ盤も。1967年の『 Tom Jones Live! At The Talk Of The Town 』で「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」(2:14)を歌唱。イントロで何やらおどけてるみたいですがよくわかりません。ライヴはやっぱり映像が欲しいですな。楽しく歌ってるのは伝わってきますけど。


【データ】
『 I Who Have Nothing 』(邦題:アイ)
Tom Jones

LP:1970年11月リリース
レーベル:Decca (UK)
番号:SKL 5072

詳細クレジット不明

Amazonリンク(MP3)(1998年リイシューCD 2 in 1

2024年8月25日 (日)

The Sound Of Bacharach/Messias (1969年)

ブラジルのギタリスト、メシアスが1969年にリリースしたバカラック・カヴァー集です!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
A2. A HOUSE IS NOT A HOME
A3. I SAY A LITTLE PRAYER
A4. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
A5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
A6. THE BEGINNING OF LONELINESS
B1. THE LOOK OF LOVE
B2. ALFIE
B3. THE WINDOWS OF THE WORLD
B4. WHO IS GONNA LOVE ME
B5. PROMISES, PROMISES
B6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE

収録時間約36分


ブラジルのギタリスト、メシアスが1969年にリリースしたバカラック・カヴァー集です!

─ ブラジルのギタリスト。1941年にジャカレジーニョで生まれました。6歳の時、メシアスは父親(ギター教師、パーカッショニスト)から音楽理論とドラムを学びました。約3年間、彼はギタリストと歌手として、Cry Babiesというダンスミュージックグループに参加しました。その後、サンパウロに移り、地元のナイトクラブで演奏して徐々に非常に人気になります。
彼は1964年にContinentalと契約し、最初の7"EP『 Sem Bossa 』をリリース。その後、RCAブラジルから最初のLP『 Messias E A Musica De Chico Buarque De Hollanda 』をリリースしました。彼のフルネームはMessias Santos Jr.で、フルネーム名義では主に作曲家/アレンジャーとして活躍しました。彼は1985年に自動車事故で亡くなりました。 ─ (Discogsより)

メシアスに関する情報は殆ど無く、Discogsに載ってるMessias (4)のプロフィールをそのまま引用しました。悪しからず。

ブラジルのギタリストということでジャズボッサあるいはラテンジャズ的なテイストを期待したのですが、ちょっと期待はずれでした。まぁ、ジャケットの表面が当時のバカラックの写真をパクったものという時点で胡散臭いし(ジャケット裏面はギターを爪弾いてるメシアスですが)、ミュージシャンのクレジットも無く、曲目リストにしたってトラック順ではなく曲名の長い順に並べてるだけですから。全くフザケてます😡。

因みに表ジャケのバカラックはこちらの写真の左側をトリミングしたものですねー。無断使用した疑いが濃厚です…。
Embed from Getty Images

んで、聴いてみたらイージーリスニングでした…。編成はギター、ベース、ドラムス、オルガン、ピアノ、フルート/サックス、トランペット。アレンジはディオンヌ・ワーウィックやバカラックのセルフカヴァーなどのバージョンをベースとしたものが多く、あまり気を衒った感じは無く無難な印象。特徴は、ギターが主メロを多く奏でていることと、オルガンと管楽器が活躍していて若干ソウルジャズ的な雰囲気があるところでしょうか(薄いですけどね)。

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とりわけこれはレコメンド!という曲はありませんが、B1.「 アルフィー 」はバカラックバージョンをベースとしたアレンジで、ギターとフルートとトランペットのバランスが良く(特にフルートとトランペットがユニゾンや掛け合いでメロディを吹く場面)準レコメンドといったところ。それから、A6.「 ザ・ビギニング・オブ・ロンリネス(孤独を知って)」はオリジナルのディオンヌ・ワーウィック(1967年3月にシングルA面でリリース、全米79位)以外にカヴァーを聴いた事がない超レア曲で、これは嬉しいですねー。それと、カヴァーが少ない上にあの山下達郎氏が全バカラック作品の中でとりわけ好きな曲だというB4.「 フー・イズ・ゴナ・ラヴ・ミー(誰が私を)」(これもディオンヌがオリジナルで1968年8月にシングルA面リリース、全米33位)を取り上げてる点も評価できるかな。

以上、あまりの暑さに脳みそが溶けてしまい、やっとこさブログを更新したあるでおでした。


【データ】
『 The Sound Of Bacharach 』
Messias

LP:1969年リリース
レーベル:RCA Victor (Brazil)
番号:BBL-1490

Artistic production:ramalho nato & wilson miranda
Arrangements and conductor:francisco morais

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年8月 4日 (日)

Sings & Loves Burt Bacharach/Stephy Haik (2024年)

フランス系アメリカ人のボーカリスト、ステフィー・ハイクが2024年にリリースしたバカラック・カヴァー集です!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全14トラック中、バカラック作品は13トラック

1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
2. WALK ON BY
3. TRAINS AND BOATS AND PLANES
4. I SAY A LITTLE PRAYER
5. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
6. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
7. MY LITTLE RED BOOK
8. THE WINDOWS OF THE WORLD
9. GOD GIVE ME STRENGTH
10. WIVES AND LOVERS
11. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
12. DON'T MAKE ME OVER
13. 無音トラック (0:04)
14. A HOUSE IS NOT A HOME

収録時間約58分


フランス系アメリカ人のボーカリスト、ステフィー・ハイクが2024年7月下旬にリリースしたばかりのバカラック・カヴァー集です!

最初に言っておきます。本アルバムはガチでレコメンドです。ジャズに抵抗がない方であれば断然オススメいたします。

ステフィー・ハイクはニューヨークで育ち、幼い頃から音楽とともに育ちました。彼女は有名な舞台芸術高校「フェイム」で学び、その後マンハッタン音楽学校で学びました。彼女の官能的なトーン、大胆なスウィング、そして素晴らしい歌いやすさは、最も権威あるミュージシャンを魅了してきました…。彼女の公式サイトではそう紹介されています。ニューヨークとパリを中心に活動している様です。そして、彼女の最新プロジェクトがBurt Bacharach Project。当初は2020年11月にリリースする予定だったそう。コロナ禍で狂っちゃったのかな? ともあれ、完成したアルバムが本作というワケです。

─ 彼女は、ポップミュージックの中でも最も素晴らしいバカラックのナンバーのメロディーの豊かさを強調することに成功しています。アルバムプロデューサー、ジャン・クロード・グレナシアは、バッキングに本物のオールスター・ジャズミュージシャンを起用しています。アレンジとオーケストレーションはオリヴィエ・ユットマンが担当し、ステフィー・ハイクのヴォーカルの優美さを見事に引き出しています。  ─ (VENTO AZUL RECORDSさんのアルバム紹介より引用)

彼女がライナーノーツに記しているコメントをご紹介します。彼女の並々ならぬ思いが伝わってきます。Googleによる機械訳です、悪しからず。

─ バート・バカラックの曲は、たとえそのいくつかが彼のレパートリーであるとは知らなかったとしても、文字通り私の人生のサウンドトラックを形作りました。どれも私や人々の心に響きます。常にポップな気楽さを感じさせる一方で、リズミカルでハーモニーのあるひねりが美しく、誰もが受け入れることができます。バカラックの歌を歌うのは至福のひとときです。それは私の魂の奥深くに到達し、あらゆる音楽的感覚と感性を探求する素晴らしい機会を与えてくれます。レパートリーの選択は間違いなく最もデリケートで難しいことでした。どの曲もこれほどの魔法を伝えているのに、どうやって数曲だけを選ぶことができるのでしょうか? この偉大な作曲家に対する私の愛と尊敬が、私が彼の音楽に敬意を払うきっかけとなりました。彼の曲の1つ「 ALFIE 」を私のアルバム『 The Longest Mile 』に収録するのはごく自然な流れでした。私は今、オリヴィエ・ユットマンがアレンジしたこれらの曲でバート・バカラックの道を歩んでいます。私たちは二人ともこの素晴らしい作曲家を愛しており、彼の音楽に敬意を表したいと思っていました。皆さんとそれを共有できることを楽しみにしています...。  ─

彼女の歌声は芯があって明るく若干ファニーなキャラクターですが、曲によってさまざまな印象を与えます。バックは、ピアノトリオを軸として、曲によりギターやトランペットが加わります。アレンジも自在で意欲的且つ聴きごたえのある本格的なジャズのサウンドが展開されます。一曲ずつ簡単にご紹介します。

T-1.「 恋よさようなら 」:スウィングのリズムでとても軽快なカヴァーです。
T-2.「 ウォーク・オン・バイ 」:リズムがちょっと変わっていてピアノやベースのアドリヴも熱い。レコメンド。
T-3.「 汽車と船と飛行機と 」:バックはピアノトリオ+ギター。跳ねる様なリズムが心地よいです。レコメンド。
T-4.「 小さな願い 」:8分の6拍子の細かいリズムが印象的。ステフィーの歌唱はエモーショナルですがどこか翳があります。
T-5.「 愛の思い出 」:バックはピアノトリオ+トランペット。なんと7拍子(4拍子+3拍子)にアレンジ。ステフィーの歌声もパンチがありますねー。そのチャレンジングなアレンジにレコメンド。
T-6.「 遥かなる影 」:ゆったり3拍子にアレンジ(4拍子1小節→3拍子2小節に)。揺れる想いを表現してるかのよう。レコメンド。
T-7.「 マイ・リトル・レッド・ブック 」:ウォーキングベースやピアノのアドリヴがカッコイイ。ステフィーのシャウトもカッコイイ。レコメンド。
T-8.「 世界の窓と窓 」:落ち着いた演奏&歌唱が美しい。
T-9.「 ゴッド・ギヴ・ミー・ストレングス 」:バックはピアノのみで、ミニマルな音しか弾いてません。ステフィーの魂の歌声に聴き入ってしまいます。レコメンド。
T-10.「 素晴らしき恋人たち 」:バックはピアノトリオ+トランペットで、男性ヴォーカル(ブルース・ジョンストン)とのデュエット。なんとなんと5拍子にアレンジ。アグレッシブでタイトな演奏です。レコメンド。
T-11.「 世界は愛を求めてる 」:本アルバムの中では一服の清涼剤的な割とオーソドックスなアレンジ。
T-12.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」:バックはベースのみ。ステフィーの歌唱に心揺さぶられます。レコメンド。
T-13. 4秒だけの無音トラック。13という数字を嫌ったのかもしれません。だって全く意味ないですもん…。
T-14.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」:ピアノトリオ+ギター+トランペットという編成。しかも3拍子にアレンジしています。

ここからはオマケ。MP3で所有しているステフィー・ハイクによるバカラック・カヴァーをご紹介。
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彼女は2009年にリリースした自身初のアルバム『 The Longest Mile 』で「 ALFIE 」(3:45)をカヴァーしています。ライナーノーツで言及していたヤツですね。バックはアコースティック・ギターのみで、彼女はエモーショナル&繊細に歌っています。素敵なカヴァーだと思います。


【データ】
『 Sings & Loves Burt Bacharach 』
Stephy Haik

CD:2024年7月下旬リリース
レーベル:Frémeaux & Associés (FR)
番号:FA8614

Co-produced by Jean-Claude Ghrenassia and Stephy Haik
Stephy Haik - Vocals
Olivier Hutman - Piano and Arrangements
Sylvain Romano, Jean-Claude Ghrenassia - Bass
Steve Williams - Drums
Hugo Lippi - Guitar
Hermon Mehari - Trumpet
FEATURING ...
Bruce Johnston - Vocals
Andre Ceccarelli - Drums

Recorded by Dominique Blanc-Francard at Labomatic Studio in Paris
except T-4,6. - Recorded by David Drussant at STUDIO DE PETIT PONT in Maurepas
Mixed Dominique Blanc-Francard - May 2023

All songs written by Burt Bacharach and Hal David
except T-9. by Burt Bacharach and Elvis Costello

(P) 2023-2024 Cirta Editions - Frémeaux & Associés
©️2024 Groupe Frémeaux Colombini

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し(私はタワーレコードで購入)

2024年7月28日 (日)

Marrakesh Express/Stan Getz (1970年)

米国男性ジャズ・テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツが1970年にリリースしたアルバムです。バカラックナンバー4曲を収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover

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所有日本盤LPジャケットの表/裏

全10トラック中、バカラック作品は4トラック

A3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:54)
B2. Medley: BECAUSE - DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (8:12)
B3. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON Y HEAD (3:41)
B4. THE APRIL FOOLS (3:10)


米国男性ジャズ・テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツが1970年にリリースしたアルバムです。

スタン・ゲッツは1927年2月ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ(没年1991年、享年64)。1942年に15歳でプロ・デビュー。各楽団を転々としたのち、1947年にウッディ・ハーマン・オーケストラに加わりクール・スタイルのテナー・マンとして一躍名声を得ました。1949年に独立。'50年代は欧州中心に活動。'62年、当時人気を得てきたボサノヴァを取り入れて演奏したアルバム『 Jazz Samba 』が大ヒット。1963年にはアストラッド・ジルベルトをフィーチャーしたボサノヴァの名盤『 Getz / Gilberto 』をリリース。一家に一枚と言われるほど(事実、私もCD持ってます)の世界的なヒットになります。この頃からスタン・ゲッツは多分にイージー・リスニング・ジャズ的な演奏をすることが多くなってきたんだそう。1968年にはバカラック・カヴァー集『 What The World Needs Now - Stan Getz Plays Bacharach and David 』もリリースしています。そして1970年にリリースしたのが本アルバム。

─ このレコードはイージー・リスニング・ジャズ的な性格ももっており、最近のヒット曲を中心に演奏している。とくに4曲もあるバカラック・ナンバーが注目されよう。オーケストラの編曲と指揮はリチャード・ヒューソンが担当、ストリングスも加えたオーケストラはしゃれたムードを作っている。なお、プロデュースには、ジョージ・マーティンが当っている。ゲッツの最新盤らしいフレッシュなアルバムだ。  ─(所有日本盤LPの解説より、岩浪洋三氏)

実は昨年(2023年)コイツのアナログ重量盤がリイシューされました。でもね、6,000円近くもするんですょぉ…わたしゃ買えません😭。中古盤もなかなか高くて(海外送料が高い)どうしようか悩んでましたら中古の日本盤(タイトルがロミオとジュリエットに変更されてます)でプロモ品の安いヤツを見つけてゲットした次第。アナログ盤がリイシューされたからでしょう、いつの間にかYouTubeで全曲聴けるようになってるし…😅。

折角当時の日本盤が手元にあるので、バカラック・ナンバー4曲の解説を引用して紹介いたします。表記はママで。※印
はあるでお注。各曲名のリンク先はYouTubeです。

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A3.「 恋よさようなら 」
─ このところブームを呼んでいるバート・バカラック作曲の佳曲で、ブロードウェイ・ミュージカル『 プロミシーズ・プロミシーズ 』(※1)の主題歌である。ディオンヌ・ワーウィックの歌でヒットしたが、ここではスタン・ゲッツが原曲のメロディーの美しさを充分に生かして演奏している。軽快で抒情的なテナー・ソロをきかせ、バックのストリングスを生かしたオーケストラも見事である。  ─
木管楽器をうまく使った可愛らしいオケのアレンジが印象的です。ゲッツのサックスは全体的に寝ぼけてますけど。
※1 現代での一般的な邦題は
『 Promises, Promises(プロミセス・プロミセス)』。「 恋よさようなら 」はあくまでも挿入歌であって主題歌ではありません。

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B2.「 ビコーズ / サン・ホセへの道 」
〜 ビコーズについては割愛 〜
─ 「 サン・ホセへの道 」は原曲の軽快な味を生かして、リズミックなプレイが行われるが、弦を加えたオーケストラはカラフルで美しく、ゲッツはリラックスした気分で、快適なアドリブをくりひろげている。にぎやかで楽しい演奏である。このアルバムの中でもとくに聞きものの一曲といえよう。  ─
確かにバカラック・ナンバー4曲のうちで最もゲッツがアドリヴを聴かせるのはこの曲かも。バカラック版のアレンジがベース。オケのアレンジは軽快で派手で小技も効いててユニークです。

B3.「 雨にぬれても 」
─ このアルバム三つ目のバカラック・ナンバー。ちょっととぼけた味と哀感があって、数あるバカラックの作品のなかでもとくに印象ぶかい曲である。上当りした愉快な映画『 明日に向って撃て! 』の主題歌のひとつで、B.J.トーマスが映画のバックでも歌ってヒットさせた。ミディアム・スロー・テンポによるスタン・ゲッツの演奏は、原曲のユーモアのセンスも込めて楽しい仕上りとなっている。  ─
この曲でも木管楽器の響きがスパイスとなったオケのアレンジが楽しいです。ゲッツのサックスは相変わらず眠たそう。

B4.「 幸せはパリで 」
─ 1970年の秋に日本でも封切られる映画『 幸せはパリで 』(原題エイプリル・フールス)(※2) の主題歌で、この映画のためにバート・バカラックが作曲したものである。映画にはカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・レモンが主演、社長夫人に恋をした社員が職を捨ててパリにかけ落ちするという恋をテーマにした映画である。現代の愛を歌い上げた映画にぴったりの甘美で哀感にあふれた曲で、スタン・ゲッツもロマンティックなバラードとして歌い上げている。ストリングスを加えたオーケストラを背影にしてのゲッツのソロはあざやかだ。ゲッツにはバカラック集があるようにバカラックは得意にしている作曲家である。  ─
全然派手じゃないし、オケのアレンジも楽器や音数が少なめでシンプルなのですが、私はバカラック・ナンバー4曲中この曲が最も印象に残りました。ゲッツのサックスがオケに寄り添ってる風だったからかなぁ。
※2 映画『 The April Fools 』の邦題が『 幸せはパリで 』なのに対し、同名タイトルのこの曲「 THE APRIL FOOLS 」の邦題は「 エイプリル・フール 」というのが一般的です。まだ日本で公開されてなかったんだ!?と思って調べたところ、米国で1969年5月28日に公開されたこの映画、日本公開日は1970年10月24日でした。

スタン・ゲッツのテナー・サックス+オケという編成。岩浪洋三氏はイージー・リスニング・ジャズと表現されてましたが、イージー・リスニングでいいんじゃね?というのが率直な感想です。スタン・ゲッツよりもオケのアレンジの方が主役ですもん。ジャケットは主役よろしくカッコいいんですけどねー。



【データ】
『 Marrakesh Express 』 (日本盤LPタイトル『 Romeo And Juliet(ロミオとジュリエット)』
Stan Getz

LP:1970年9月リリース (所有日本盤LPは、1971年リリース、解説:岩浪洋三氏)
レーベル:MGM Records (US) (所有日本盤LPは、MGM/日本グラモフォン)
番号:SE 4696 (所有日本盤LPは、MM 2021)

Produced by George Martin
Arranged and Conducted by Richard Hewson
Stan Getz - tenor sax

Amazon リンク(2023年リイシューLP


2024年7月14日 (日)

Close To You - Songs Of Burt Bacharach/V.A. (2013年)

2013年に米国でリリースされた米国編集のバカラック物コンピ集です!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全21トラック中、バカラック作品はT-12を除く20トラック

1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  〜 Ace Cannon 〜  
2. THE LOOK OF LOVE  〜 Arthur Lyman 〜
3. ALFIE  〜 Arthur Lyman 〜
4. DON'T MAKE ME OVER  〜 Barbara Jean English 〜  F
5. THIRD WINDOW FROM THE RIGHT  〜 Dean Barlow 〜  M
6. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME  〜 Don Williams 〜  FM
7. YOU DON'T HAVE TO BE A TOWER OF STRENGTH  〜 Gloria Lynne 〜  F
8. THE LOOK OF LOVE  〜 Hampton Hawes Trio 〜
9. WALK ON BY  〜 Jimmy Caravan 〜
10. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  〜 
Lionel Hampton 〜  F
11. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  〜 Maurice Williams & The Zodiacs 〜  M
12. HERE I AM  〜 Page Cavanaugh 〜  M
13. THE LOOK OF LOVE  〜 Sam Fletcher 〜  M
14. MAKE IT EASY ON YOURSELF  〜 Sonny Til 〜  M
15. A LIFETIME OF LONELINESS  〜 Steve Alaimo 〜  M
16. I WON'T BREAK  〜 Steve Lawrence 〜  M
17. I SAY A LITTLE PRAYER  〜 The Afro Blues Quintet (feat. Rene Bloch)〜
18. WALK ON BY  〜 The Afro Blues Quintet Plus One 〜
19. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  〜 The Moments 〜  ML
20. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  〜 Burl Ives 〜  M
21. THE LOOK OF LOVE  〜 Vic Damone 〜  ML

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記
 L はライヴ録音

収録時間約74分


2013年に米国でリリースされた米国編集のバカラック物コンピ集です!

本コンピ集、最初はMP3でリリースされました。レアなカヴァーが多そうなのでどうしようか思案していたところ、およそ半年後にCDリリースされまして。それなら…とCDを購入した次第です。

でも届いたらこれがちょっと酷い代物で…。曲名とアーティスト以外の情報は皆無だし、ジャケットのバカラックさんのお顔は真っ白だし(わかってたけど)、1曲コンパイルミスがあってT-12.「 HERE I AM 」がバカラックさんの楽曲じゃない同名異曲だったり…。特にコンパイルミスはイカンでしょ、CDリリースまでの半年間に気づかんかったんかいっ!😡 リリース元のEssential Media Groupはフロリダで2007年に設立された昔の音源を多く保有するレーベル。MP3ファイルでのリリースが主体で、CDでもオンデマンドCD(CD-R使用)が多いようです。このコンピ集はCDでしたが…。RhioやAce、そして日本のコンピ集にみられる “コンパイルに対するこだわり” が全く感じられません。大手レーベルのカタログから漏れた音源を所有し、既存のバカラック物コンピ集に取り上げられていないものをコンパイルしたんでしょう。
このCDがトラウマになって、バカラック物コンピ集をCDで買わなくなったんですよね〜自分。必要な曲だけダウンロードすりゃいいや…と。

話を戻して…。いつものように表にまとめました。
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収録されているバカラック作品20トラックのうち、16トラックは他のコンピ集に入ってないレアなカヴァー。殆どはカヴァー定番曲ですが、T-16.「 I WON'T BREAK(愛のアレンジメント)」はキャロル・ベイヤー・セイガーが1981年にリリースしたアルバム『 SOMETIMES LATE AT NIGHT(真夜中のくちづけ)』の2曲めで、
他に誰もカヴァーしてないレア曲です。…表を眺めて感じるのは、あまり聞いたことないマイナーレーベルが多く、同様によく知らないアーティストが多いこと。そんなに詳しくなくても良いので簡単な解説や基本的なクレジットを載せて欲しいところですね、いやホント。

個々のバージョンについての特記事項はリストの脚注をご覧ください。以降、個人的なレコメンド曲を紹介します。

🔸ドン・ウィリアムスのT-6.「 愛のウェイト・リフティング(愛の思い出)」:実はPozo Seco(当時ドン・ウィリアムスがメンバーだった男女フォーク・デュオ)によるカヴァー。フォーキーな味わいがなんとも心地よいです。
🔸ハンプトン・ホーズ・トリオによるT-8.「 恋の面影 」:1970年のスタジオ録音で、とってもファンキーな演奏が堪りません。ハンプトン・ホーズ、1976年リリースのアルバム『At Montreux』のオマケで紹介しています。
🔸スティーヴ・ローレンスのT-16.「 I WON'T BREAK(愛のアレンジメント)」:この曲のカヴァーがあったなんて! しかもクルーナー・タイプの男性ベテランシンガーによるロマンチックな歌唱で! 録音がもう少しクリアだったらもっと良かったのに。
🔸アフロ・ブルース・クインテット・プラス・ワンのT-18.「 ウォーク・オン・バイ 」:ソウルジャズというかラテンジャズというか、ヴィブラフォンとフルートのアドリヴがご機嫌なノリの良いカヴァーです。尺も長くて5:17あります。

尚、ザ・モーメンツのT-19.「 遥かなる影 」はアルバム『 Live At The Miss Black America Pageant 』の記事で紹介しております。

ここからはオマケ。所有MP3の中から、本コンピ集のアーティストによる他のバカラック作品をご紹介!
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モーリス・ウィリアムズ&ザ・ゾディアックスは、2000年にリリースしたアルバム『 Back To Basics 』で「 ANY DAY NOW(エニィ・デイ・ナウ)」(3:40)をカヴァー。実にオーソドックスなカヴァーです。
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スティーヴ・アライモは、1963年のアルバム『 Every Day I Have To Cry 』で「 I WAKE UP CRYING(アイ・ウェイク・アップ・クライング)」(1:58)をカヴァー。オリジナルのチャック・ジャクソン版と比べて若干テンポが速く、金管楽器のオカズが良いアクセントになってます。
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アフロ・ブルース・クインテットは1960年代後半にカリフォルニアを拠点に活動したラテン/ソウル/ジャズ・インスト・グループ。本コンピ集の「 I SAY A LITTLE PRAYER 」が入っている1968年リリースのアルバム『 The Afro Blues' Next Album 』では、他にも「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(2:18)もカヴァーしています。クールなフルートを吹いているのはフューチャリングされているReno Blochと思われます。
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大物男性歌手のヴィック・ダモンは、1958年リリースのシングル「 Forever New 」(非バカラック曲)のB面曲として、「 OOOOH, MY LOVE 」(1:45)をレコーディング。書き下ろし曲でヴィック・ダモンがオリジナル。朴訥とした4拍子の曲です。また、1963年にシングルA面で「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」(2:25)をカヴァー。オリジナルのジャック・ジョーンズ版(♩≒130)より遅め(♩≒120)の落ち着いたアレンジで大人の歌唱を聴かせます。オリジナル版はオケの指揮が別の人なのに対し、ヴィック・ダモン版はバカラック自身がオケを指揮している点がポイントかと。
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スティーヴ・ローレンスは、1959年にシングルB面用に「 LOVING IS A WAY OF GIVING 」を提供するなどバカラックにとって旧知の仲。奥様のイーディ・ゴーメとのデュエット(Steve & Eydie名義)でも活躍。Steve & Eydieとして1990年にリリースしたアルバム『 Alone Together 』で「 THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR(愛のハーモニー)」(3:59)をカヴァー。仲睦まじいデュエットを聴くことができます。尚、他にもソロあるいはデュエットで多数バカラック・カヴァーを録音していますがMP3化されていないため割愛いたします。


【データ】
『 Close To You - Songs Of Burt Bacharach 』
V.A.

MP3,CD:MP3 2013/3/12リリース、CD 2013/9/4リリース
レーベル:MMXI Essential Media Group (US)
番号:-

(p)&©️ MMXI Essential Media Group LLC.
This copyright in these remasters & the resotored album art is owned by Essential Media Group LLC.
その他詳しいクレジットは無し。

Amazonリンク

2024年6月30日 (日)

This Is Time 5/タイムファイブ (1970年)

男性5人組コーラス・グループ、タイムファイブのデビュー・アルバムです。バカラック・カヴァーを3曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は3トラック

3. THE LOOK OF LOVE (3:17)
5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU (4:04)
9. THE WINDOWS OF THE WORLD (4:00)


男性5人組コーラス・グループ、タイムファイブが1970年にリリースしたデビュー・アルバムです。

タイムファイブは、─ 同志社大学軽音楽部出身の男性5人(田井康夫、野口鎮雄、勅使河原貞昭、吉村晴哉、杉江浩平)で1968年に結成されたグループ。当時、ハワイでヒットしていたコーラスグループ「INVITATIONS」の曲「ナニワイメア」を歌って大学対抗バンド合戦で優勝。結成50年を超えてメンバーは一度も変わったことがない。大学対抗バンド合戦に優勝後上京、プロとして活動を開始以来、楽器を演奏しながらコーラスするというスタイルと、テンションを駆使した高度なハーモニーをグループのカラーとして、コンサート・ライブ、テレビ、ラジオに出演。1000本以上に及ぶコマーシャル音楽の制作に携わる。  ─ (Wikipediaより)

詳細な経歴は公式サイトの「 タイムファイブとは 」を参照されたし。(こちら

これまで私はタイムファイブを単なるコーラス・グループだと思ってました。最近たまたまYouTubeで「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」の動画を見つけて、“ えっ⁉️  楽器演奏しながら歌うの❓ カッケ〜😳 ” となった次第。今頃気が付くなんて…何ともお恥ずかしい😅。尚、この動画は概要欄に “ Walk On By -TIME FIVE ('75) ” と書かれており画面右上にtbsロゴがあることから当時彼らがレギュラー出演していたTBS『 サウンド・イン“S” 』のものと思われます。

本アルバムについてはCD帯の紹介文をご覧ください(私から付け加えることは何もございません😓)。─ 同志社大学のコーラス・グループとして学生時代から評判を呼んでいた5人組のデビュー作。<日本のフォー・フレッシュメン>の鳴り物入りで発表されたこの作品は、噂にたがわず素晴らしいハーモニーと、自分たちで全ての楽器も手がける、まさに日本のフォー・フレッシュメン(こちらは5人組だが)ぶりが大きな話題を呼んだ。スマートなコーラスと洒落たセンスの演奏。日本ではこれ以前にほとんどなかったこのスタイル。以後も成功した例がないことから、彼らの存在は貴重といえる。スタンダードとポップスから選ばれた曲も趣味がいい。  ─ (小川隆夫氏、リイシューCDの帯より)
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本作では3曲のバカラック・カヴァーを取り上げています。
T-3.「 THE LOOK OF LOVE(恋のおもかげ)」は♩≒116のライトなボサノヴァ・アレンジ。トランペットのオブリガートや2コーラス目のサビのコーラス・ワークにはアニタ・カー・シンガーズ版(1969年)との近似性を感じます。
あのオブリガートは元々ディオンヌ・ワーウィック版(1969年)でストリングスが奏でていたものですけれど。一方、ラストのコーラス&トランペットは彼ら独自のものかと。演奏している楽器はドラムス、トランペット、ベース、オルガン、ヴィブラフォン。シンプルで気持ちいいカヴァーですね。
T-5.「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU(ディス・ガイ)」は♩≒84のシャッフルでオリジナルと同等。Aメロは楽器演奏のみでメロディはトランペット。Bメロ前半4小節はフルートのメロディ+コーラスでハミング。Bメロ後半4小節〜サビはコーラスが主旋律をハモって歌います。2コーラス目はフルートがAメロを吹き、Bメロ〜サビはコーラスが主旋律をハモリます。楽器はドラムス、トランペット、ベース、ピアノ、フルート/ヴィブラフォン。「 恋のおもかげ 」よりも更にシンプルなアレンジかな…と思います。
T-9.「 THE WINDOWS OF THE WORLD(世界の窓と窓)」はディオンヌの原曲(♩≒92)よりゆったり目な♩≒88のシンプルな8ビート。リードヴォーカルもコーラスのハーモニーも実に美しく、途中の転調(B♭→C)も印象的。楽器はドラムス、トランペット、ベース、ピアノ、フルート。全編にわたってピアノがキラキラしたオカズを弾き、トランペットとフルートがハモってオブリガートを吹くのがエモいです。3曲の中ではこれが最も魅力的かなぁ。

アルバム全体では、T-7.「 CALL ME(コール・ミー)」がライトなサンバ・アレンジにコーラス&楽器演奏とも軽快且つお洒落でレコメンド。

YouTubeには「 ウォーク・オン・バイ 」の他に「 THE LOOK OF LOVE(恋のおもかげ)」の動画も上がっています。メンバーの風貌から近年の演奏と思われますが、ジャズロック風な8ビートでより洗練されたサウンド&コーラスを聴くことが出来ます。ドラムスとベースはサポート・ミュージシャンのようですが、出来としてはこの動画の方が今回紹介したアルバム(1970年版)よりも素敵ですね。
YouTubeにはもう1曲、女性コーラス・グループEVEとの共演で「 SOUTH AMERICAN GETAWAY(サウス・アメリカン・ゲッタウェイ)」の動画もありました。あのダバダバの曲です。メドレーの最初の1分20秒程と最後の1分少々ですが、一度こーゆーの生で聴いてみたいものです。

さて、ここからはオマケ。タイムファイブのメンバーが大好きな米国の男性ヴォーカル・グループThe Four Freshmen(フォー・フレッシュメン)のバカラック・カヴァーをご紹介!
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フォー・フレッシュメンは1968年のアルバム『 Today Is Tomorrow! 』で「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」(2:12) をカヴァー。ファンキーなアレンジで、コーラス・ワークも要所でポルタメントを入れてファンキーっぽく。間奏のトランペットのアドリヴもカッコイイし、エンディングのコーラスもエモすぎる〜。フュージョンタッチのタイムファイブ1975版とは全くスタイルが違いますが、甲乙つけ難し…です。
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1972年には The Four Freshmen With Stan Kenton And His Orchestra 名義のライヴ録音アルバム『 Live At Butler University 』で再び「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」(2:07) をカヴァー。1968年のスタジオ録音と同じアレンジですが、演奏が荒っぽいけど勢いがあります。でもまぁスタジオ録音の方がいいかな。


【データ】
『 THIS IS TIME 5 』(LP帯:ディス・イズ・タイム・ファイブ)
タイムファイブ (英:TIME FIVE)




LP:1970年リリース (所有CDは、2018年12月5日リリースのリイシュー盤)
レーベル:King Records (JP) (所有CDは、同じくKing Records)
番号:SKK 3002 (所有CDは、KICJ 2625)

プロデュース:不明
編曲:吉村晴哉

タイムファイブ
  田井康夫:ドラムス、ウクレレ/リード・ヴォーカル
  勅使河原貞昭:トロンボーン、トランペット、フリューゲルホーン/2ndテナー
  野口鎮雄:ベース/2ndテナー
  吉村晴哉:ピアノ、オルガン/バリトン
  杉江浩平:ヴィブラフォン、フルート/バス
Recorded by Fontaine Tokyo, Japan

Amazonリンク(1970年LP)(2007年リイシューCD)(2012年リイシューCD) (2018年リイシューCD

2024年6月16日 (日)

ライヴの感想 Something nice June 15, 2024

谷岡久美さんと龍尺千秋さんのお二人が主催するライヴ『 Something nice 』を聴いてきました。友情出演の伊田恵美さんがバカラック・カヴァー1曲を歌唱!

2024年6月15日(土)
  12:15  受付開始
  12:30  開場
  13:00過ぎ  開演 → 約10分の休憩を挟み、15:30過ぎに終演
@高円寺  Studio K  2F-スタジオ2
Something nice 10  〜 なにかいいこと!〜  10回目ありがとう公演!


JR総武線高円寺駅南口から東に徒歩7分。環七通りに突き当たって右に見える茶色いビルの2階にありました、Studio K。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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私が参戦したのは6月14〜16日計5公演のうち2公演目。受付して1ドリンク+お菓子2袋をチョイスしたあと、しばし待機。12:30に開場し、会場真ん中あたりの端っこに座りました。座席は100席弱。最終的にほぼ満席となりました。前説の方が「 公演始まると行きづらいので今のうちにトイレへ 」と再三申し訳なさそうに頼んでいたのが可笑しかったです。

13:00ちょっと過ぎに開演。出演者及びセトリは当日配られたパンフレット ↓ を参照ください。
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最初のMCで、谷岡久美さん(ピアノ&作曲)が “ サムシング ”、龍尺千秋さん(ボーカル&作詞&脚本&演出)が “ ナイス ”、二人合わせて “ サムシングナイス ” …という説明がありました。そーゆーことかと納得。お二人を軸にゲストの方やコントの方が入れ替わり立ち替わり、歌、踊り、歌語り、シュールコントを次々に披露していく、そんな楽しい公演でした。

最初に龍尺さんが3曲歌い、コントの乱入(セトリにはありません)があった後、「 久々の復活、北のディーヴァ 伊田恵美!
」というMCに導かれてお目当ての伊田恵美さんが登場!

伊田恵美(いだめぐみ)さんは北海道在住(BARKSサイトのプロフィールにリンク)。ゲームに疎い私は知らなかったのですが、ファイナルファンタジーⅣ 愛のテーマ「 月の明り 」を歌ったスゴいお方。その伊田さんはバカラックさんが亡くなったことを昨年暮れに知り、X(旧Twitter)で回ってきた「 アルフィー 」を弾き語りするバカラックさんの動画に感動してバカラックさんの歌を歌い継いでいこうと思われたんだそうです。さっそく今年3月には「 雨にぬれても 」をピアノで弾き語りしてYouTubeにアップしとられます。


拙ブログも覗いてくださり、SNSでやりとりさせていただくなかで本公演を知った次第。

今回歌ってくださったバカラック・カヴァーは
「 CLOSE TO YOU(遥かなる影)」。登場時に両手に抱えていたバカラックさんのLPや自作の推しうちわをピアノの前に捧げてから歌いはじめました。バックの演奏は、ピアノ(谷岡さん)、バイオリン(多ヶ谷樹さん)、ドラムス(鈴木淳一さん)のトリオ。伊田さんのこだわりで、アレンジのベースはシャッフルのカーペンターズ版ではなく4つ刻みのバカラック版。ピアノのイントロから始まったので、イントロのない1971年リリースのアルバム『 BURT BACHARACH 』『 LIVE IN JAPAN 』ではなく、イントロのある最近のライヴを参考にしたんでしょう(音源としては2008年リリースのアルバム『 LIVE AT THE SYDNEY OPERA HOUSE 』あたりかと)。
伊田さんの歌声は若干ハスキー。派手さはありませんが、実に情感のこもった、たおやかな歌唱でした。アウトロのハミングも素敵でしたねー。バカラック愛をひしひしと感じました。柔らかいタッチの谷岡さんのピアノはバカラックさんのピアノをより膨らませたものでしたし、バイオリンのオブリガートも素敵でした。この曲もぜひYouTubeにアップして欲しいナ…と思いました。

…と思っていましたら、伊田さんより「 動画を YouTubeに公開しました 」との連絡が届きました! 私が参戦した2日目昼公演ではなく、3日目夜の最終公演のパフォーマンスです。伊田さん、最後の最後に初めて “おおきに” と言えたそうです(何のことかわからない方は『 LIVE IN JAPAN 』の「 雨にぬれても 」を聴くとよろし)。サムネイルも凝ってますね〜。バカラックさんのネタがいくつも散りばめられています。推しが尊い! …ということで、動画を埋め込みました。伊田さん、ありがとうございました! ※2


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公演後、初めて伊田さんとご対面。わざわざ北海道から持参されたLPレコード3枚を見せていただきました。バカラックさんの『 BURT BACHARACH 』『 LIVE IN JAPAN 』とカーペンターズの『 Close to You(遥かなる影)』※1 で、3枚とも帯付きのむちゃ綺麗な日本盤。今回は持参されなかったけど『 LIVE IN JAPAN 』はマトリックス4ch版のLPもゲットされたとか。スゴいっす。お土産として1998年ライノ3枚組コンピデザインの絵葉書まで頂いて…どうもありがとうございました!
しばしバカラック談義に花を咲かせましたが、「 バカラックさん生誕100周年の時には素敵なイベントができるといいですね 」とおっしゃってたのが印象的でした。4
年後かぁ、それまで元気でいなければ!
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※1 2024/6/19 伊田さんからの情報で訂正。
※2 2024/6/26 ライヴ動画を埋め込み!

2024年6月 9日 (日)

Mystical Soul/John Blair (1971年)

米国のジャズ・バイオリニスト、John Blair(ジョン・ブレア)が1971年にリリースしたヴォーカル・アルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全6トラック中、バカラック作品は1トラック

A3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (6:22)


米国のジャズ・バイオリニスト、John Blair(ジョン・ブレア)が1971年にリリースしたヴォーカル・アルバムです。

ジョン・ブレアはアメリカのジャズ・バイオリニスト。1943年11月オハイオ州トレド生まれ(2006年6月NYC没、享年62歳)。彼はバイオリンとギターのアコースティックコンビネーションであるVitar(Wikipedia)の演奏家としてもよく知られているんだそう。自身の3枚のアルバム以外にも、多くのジャズファンク系レコーディングに参加していたようです。本作ジャケ裏のライナーによれば、この時点でアイザック・ヘイズ、ハリー・ベラフォンテ、サミー・デイヴィスJr、ジェームズ・ブラウン、リッチー・ヘヴンズ等のレコーディングに参加したとありますし、兵役に就いた際は空軍Strolling String SymphonyのメンバーとしてJ.F.ケネディ大統領とジョンソン大統領の前で演奏したんだそう。

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本作はジョン・ブレアの1stアルバム。収録されている6トラック/7曲のうちA2, B2, B3.の3曲は自作曲で、その他4曲はカヴァー。A1.はビートルズ「 ゴールデン・スランバー 」とファイヴ・ステアステップス「 ウー・チャイルド 」のメドレー…ってゆーかマッシュアップ。ディオンヌ・ワーウィックやボビー・ジェントリーのヒットA3.「 恋よ、さようなら 」。そしてブラザーフッド・オブ・マンのヒットシングル「 UNITED WE STAND(二人だけの世界)」のB面曲であるB1.「 SAY A PRAYER 」。取り上げたカヴァーはいずれも1969〜1970年頃の曲ですね。

各曲の曲調はバラード
〜ジャズ・ファンクまでと幅広いのですが、アルバム全体の印象はクールなソウル。若干しゃがれ声の男性ヴォーカルは彼自身によるもので、決して下手ではないけれどヴォーカリストとしてはあまり印象に残りません。それよりもバックトラックの手の込んだアレンジの方が印象的です。…とジャケットを確認したところ、アレンジはボブ・ジェームスとクレジットされていました。そっかそっかと納得。CTIレーベルに所属して様々なレコーディングにプレーヤーとして参加してた頃、こんなアレンジの仕事もしていたんですね。

さて、バカラック・カヴァーはもちろんA3.「 恋よ、さようなら 」。ディオンヌ版(1969/12:US#6,♩≒138)やボビー・ジェントリー版(1969/8:UK#1,♩≒114)とは全く異なり、グッと落ち着いた♩≒80のスローテンポ。8小節あるイントロは
「 恋よ、さようなら 」がこれから始まるとは全く予想できない爽やかなメロディ&コード進行。んで、ジョン・ブレアがAメロを歌い始めるとソウルバラード調に。ギターとベースがオクターヴで爪弾くオブリガートがなんとも素敵です。サビではホルンやオルガンも加わり16ビートのファンクになるんですがこれがまた渋い! 4分ほどして一旦休止し、Aメロを1回リプレイした後(歌はココでおしまい)イントロのフレーズを繰り返すんですが、ジョン・ブレアによる緊張感あるバイオリン・ソロが加わり不思議な盛り上がり?を見せてフェードアウトして終わります。
他に類を見ない「 恋よ、さようなら 」の歌ものカヴァーだと思います。掛け値なしにレコメンドっす!

さて、ココからはオマケ。
私がこのジョン・ブレアのカヴァーを知ったのは、Radio France の『 Repassez-moi l'standard 』という約1時間の番組。その2024年4月14日の放送回が「 "I'll Never Fall in Love Again" composer Burt Bacharach & lyricist Hal David (1968) 」でして、「 恋よ、さようなら 」のオリジナルとカヴァーを次々紹介するというプログラムでした。オンエアされたのは計13曲。1. ジル・オハラ&ジェリー・オーバック、2. ディオンヌ・ワーウィック、3. シャーリー・バッシー、4. ボビー・ジェントリー、5. カーペンターズ、6. Wilson Simonal(ウィルソン・シモナール)、7. John Blair(ジョン・ブレア)、8. グラント・グリーン、9. アイザック・ヘイズ、10. ザ・デルズ、11. リーグモル・グスタフソン、12. Tok Tok Tok、13. Noël Akchoté …このうち私が聴いた事なかったのが 6.と7. でした。MP3が見当たらなかったため本LPをDiscogsでゲットしたワケです。

その放送回は こちら で聴く事ができます。また、リンク先ページを下の方にスクロールすると各曲のYouTubeも貼ってあります(12.と13.を除く)。よろしければ是非!。


【データ】
『 Mystical Soul 』
John Blair

LP:1971年リリース
レーベル:A&R (US)
番号:ARL 7100/002

Produced by Pete Spargo
Arranged and Conducted by Bob James
Engineer:Dave Greene
Violin Solos:John Blair
Recorded at A&R Studios, New York

A&R Records New York
Manufactured and Distributed by Mercury Records Productions, Inc.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年6月 2日 (日)

WHAT THE WORLD NEEDS NOW/José Calvário (1978年)

ポルトガルのピアニスト/ソングライター/指揮者、ホセ・カルヴァリオが1978年にリリースした12"シングルです。両面に亘ってバカラック・カヴァー8曲をディスコでメドレー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original 12"single front cover/back cover
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 ↓ 12"シングル盤のレーベル面の表記
A.
WHAT THE WORLD NEEDS NOW
RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
DO YOU KNOW THE WAY TO ST. JOSE (← ST. は SAN JOSE の間違いですね…)
I SAY A LITTLE PRAYER
THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
B.
THE LOOK OF LOVE
CLOSE TO YOU
I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN

収録時間  A. 7:09, B. 4:29


ポルトガルのピアニスト/ソングライター/指揮者、ホセ・カルヴァリオが1978年にリリースした12"シングルです。

ホセ・カルヴァリオは1951年1月、ポルトガルのポルト生まれ(2009年6月没、享年58歳)。幼少の頃からピアノを習い、わずか10歳でポルト交響楽団と共演したそう。ポップソングの作曲、アニメのサントラのレコーディング、ポルトガルの多くのフェスティバルの指揮、1972年から1988年の間に5回ユーロビジョン・ソング・コンテストのポルトガル代表に作曲家・編曲家・指揮者として参加、1990年代にはオーケストラの指揮・レコーディング…など、ポルトガルで活躍した指揮者・編曲家でございます。↓ の写真はDiscogsからパクったものです、悪しからず。それにしてもジャケ写の女性は一体誰なんだ? サングラスは米国国旗を模したものでしょうし、左袖のワッペンは 1969-70 AMERICAN BOWLING CONGRESS LEAGUE CHA…(米ボウリング会議リーグチャ…)と書かれています…。謎だ🙄

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そんなホセ・カルヴァリオは1977年〜1979年にかけてディスコにハマっていたようで、1977年に『 The Best Disco In Sound 』というディスコのアルバムを、1979年にはヴィヴァルディの四季をディスコにアレンジしたアルバム『 A Love In Four Seasons 』をリリース。その流れの中で1978年…27歳の時にリリースしたのがこの12"シングル「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW 」でございます。

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ジャケットには「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW 」としか書かれていませんが、レーベル面には、A面で5曲、B面には3曲、バカラックカヴァー定番曲が書いてあります。トラック数はA面/B面ともに1トラックずつで、どちらの面もレコード盤内周までレコード溝が刻まれています( ↑ の画像をクリックして拡大すればわかると思います)。特にB面は4分半しか収録されてないのに…。12インチで45回転の場合11分程度は録音可能と言われているので、溝が広く余裕を持ってカッティングされてることが窺えます。だからと言ってカッティングレベルは決して大きくないんですけどね😅。

A面にレコード針を落とすと、いきなり聴こえるのはバスドラのアップテンポ(♩≒138)な4ビート。時折
アナログシンセのピコピコ効果音や女性コーラスのオカズが入り、34秒経ったところで女性が “ Do you know what the world needs now ” と囁きます。ココまでがイントロでして、37秒から A(1).「 世界は愛を求めている 」がスタートします。テンポは若干落ち着いて♩≒135となりますが、バスドラの4ビートはこのテンポのままB面ラストまで続いてます。メドレーの流れを表形式にまとめましたのでクリックしてご覧ください。
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Eギター、アナログシンセ、エレピ、ベース、ドラムス、ストリングスやブラス等によるバックトラックはまさしくディスコ調。女性ソロ、男性ソロ、2人のシンガー共歌いっぷりはファンキーで、それは男女コーラスも同様。A面最後の A(7).「 恋の面影 」はフェードアウト後、B(1).「 恋の面影 」にフェードインして続いてます。ですから、A〜B面が連続してトータル11分間半のメドレーになってるワケですね。ホセ・カルヴァリオはアレンジを担当したのかな? クレジットは何も書かれてないのでわかりません。それにしてもポルトガルで1978年にこんなバージョンがあったなんてっ⁉️

このシングルのタイトルになっている「 世界は愛を求めている 」は何度も出てきます。それから、A(1)〜(5).と同じ曲順で B(4)〜(8).でも短くメドレー。
アレンジ上では、テンポは同じままメロディを倍の長さでゆったり歌う手法を多用しているのが特徴的。B(3).「 恋よ、さようなら 」では4倍の長さで歌ったりもしています。メロディのフェイクも多彩ですし、聴いてて踊りたくなっちゃいますネ💃🕺。

この “ バカラック定番曲8曲のディスコメドレー ”、YouTubeにはどうやら上がってなさそうです。皆さんに聴いていただきたかったのに…、残念です。


【データ】
「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW 」
José Calvário

12"single:1978年リリース
レーベル:orfeu (Portugal)
番号:SS AT 1

クレジット全く不明

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年5月26日 (日)

Digits/David Benoit (1983年)

米ジャズ・フュージョンピアニスト、デヴィッド・ベノワが1983年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全8トラック中、バカラック作品は1トラック

4. ARTHUR'S THEME (4:07)


米ジャズ・フュージョンピアニスト、デヴィッド・ベノワが1983年にリリースしたアルバムです。

デヴィッド・ベノワは1953年8月18日米国カリフォルニア州ベイカーズフィールド生まれ。18歳からミュージシャンとして始動。契約したAVIレコードから1977年にアルバム『 Heavier Than Yesterday 』でデビューし、以降アルバムを定期的にリリース。1987年にGRPに移籍、アルバム『 Freedom at Midnight 』を発表するとタイトル曲が大ヒット。それ以来、L.A.(西海岸)スタイル・フュージョンを代表するピアニストとして活躍しているお方だそう。私はお名前しか知らなかったのですが😅。

本作はAVIでの4枚目のアルバム。全8曲はT-6.を除いてインスト・ナンバー。曲によってテイストが違っていて、アルバム全体の印象は "AORチックなフュージョン"。'80年代前半の空気感も漂ってますねー。ドライブ中のBGMにいいんじゃないでしょうか。ただ、バカラック・カヴァー(T-4.)も含めて曲目リストには楽曲の作者情報が全く載ってなくて…。誰の曲なのかさっぱりわからん💦。
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そのくせ、ミュージシャンや楽器は各曲ちゃんとクレジットされています。演奏メンバーや編成は様々で、ピアノソロ(T-8)、4人(T-2,4,7)、5人(T-3)、6人+ホーン(T-1)、4人+オケ(T-5)、6人+オケ+男性ヴォーカル(T-6)という具合。デヴィッド・ベノワは、Fender Rhodes/Synthesizer/Pianoを弾き分けています。

んで、バカラック・カヴァーはT-4.「 ARTHUR'S THEME(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」。キーはクリストファー・クロスが歌うオリジナルと同じくAメロがAmで、サビがA。イントロ〜1コーラス目のサビ手前まではピアノソロでとてもリリカル。サビからベース&ドラムスが、2コーラス目からはシンセとラテン系パーカッションも加わります。主メロは基本ピアノで、オリジナルではサックスが吹く中間部8小節のアドリヴもピアノ。軽く崩して弾くメロディは都会的な香りがしますね。このあとサビをリピートしてフェードアウトするのかと思ったら、Emに転調してAメロを4小節 → 更にキーが半音下がってAメロを4小節 → その後に
イントロを4小節再現して終止形で終わる… とゆー他のカヴァーではみられないアレンジに胸がキュンとなりました。この展開はレコメンドです。曲全体としては聴き心地がよいフュージョン(今でいうスムーズジャズ)ってところでしょうか。

ここからはオマケ。私がMP3で所有している楽曲のうち、デヴィッド・ベノワと同時期にジャズ系ミュージシャンがカヴァーしたインスト物の「 ARTHUR'S THEME 」をご紹介!(イージーリスニング系のインスト物は1982年を中心に結構
リリースされていますが、ここでは対象外といたします。また、Super Guitar Duo(1983年)などジャズ系インストカヴァーは他にもありますがMP3データ無く対象外です。)
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デヴィッド・ベノワより前に、スウェーデンのジャズ・ギタリスト、Rune Gustafsson(ルネ・グスタフソン)が1982年のアルバム『 La Musique 』で「 ARTHUR'S THEME 」(3:15)をカヴァーしています。ナイロン弦のギター、ベース、ヴィブラフォンというユニークなトリオ編成。ギター、ヴィブラフォンがそれぞれ軽快なアドリヴを披露し、ベースもよく動きます。フュージョンではなくジャズの範疇だと思いますが、聴き心地良く好印象です。
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実は、それ以前にも米国のプロデューサー/編曲家/指揮者/ピアニストのAl De Lory(アル・デロリー)が1980年のアルバム『 Somebody's Knockin' 』で「 ARTHUR'S THEME 」(3:59)をカヴァー。ピアノをメインとしたバンド形式。おとなしいフュージョンというか、イージーリスニングとの境界スレスレで紹介するの躊躇しましたが、ジャケットで情けないポーズをしてるアル・デロリーに免じて紹介した次第😅。DiscogsやWikiには1980年リリースとなっていて、あれっ? オリジナルのクリストファー・クロスが1981年夏にリリースした曲を1980年にカヴァーできる訳ないやん🤔…とツッコミを入れつつ。


【データ】
『 Digits 』
David Benoit

LP:1983年リリース (所有CDは、1990年リイシューのUS盤)
レーベル:AVI Records (US) (所有CDは、Bluemoon (US))
番号:AVI-6183 (所有CDは、R2 79159)

Produced by Laurin Rinder and W. Michael Lewis
Synthesizer Programming - W. Michael Lewis
T-4.「 ARTHUR'S THEME 」
  David Benoit: Piano, Synthesizer
  Bobbye Hall: Percussion
  Wade Short: Bass
  Gary Ferguson: Drums

(R)1983 AVI Record Productions ©️1990 Mesa/Bluemoon Rcordings, Ltd.
Marketed by Mesa/Bluemoon Rcordings, Ltd.
Licensed and Distributed by Rhino Records, Inc.

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2024年5月19日 (日)

I'll Never Fall In Love Again/Bob Dorough (1970年)

ボブ・ドローがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンものインスト・レコードです。バカラック作品を4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10トラック中、バカラック作品は4トラック

A1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (3:20)
A2. THE LOOK OF LOVE (2:50)
B1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (3:30)
B4. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU (2:50)


ボブ・ドローがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンもののインスト・レコードです。

先月Discogsで入手したのですが、私はボブ・ドローを全く知らなくて…。CDジャーナルさんのサイトから以下引用させていただきます🙇。

─ 1923年12月12日アーカンソー州チェリーヒル生まれ。ヴォーカリスト、ピアニスト。ノーステキサス州のカレッジで作曲とピアノを学び、1954年から1年ほどシュガー・レイ・ロビンソンの伴奏・編曲者となりカナダやフランスに楽旅した。ニューヨークでは自己のトリオを結成し注目され多くのコンボと共演も。マイルス・デイヴィス『ソーサラー』への参加でも知られる。1956年、『デヴィル・メイ・ケア』でアルバム・デビュー。1973~85年には米の国民的子供番組『スクールハウス・ロック』で音楽を担当、「スリー・イズ・ア・マジック・ナンバー」で一世を風靡した。2013年6月、89歳にして初来日公演が決定。  ─ (CDジャーナルさんの公式サイトより、2013年5月)

その後2015年にも来日して元気な姿を見せるも、2018年4月帰らぬ人に…
。享年94歳はバカラックさんと同じですね、合掌。

本アルバムのレーベル:Music Minus One(略してMMO)は、教育目的のためにソリストパートなしで録音したレコード等(ピアノなしのピアノ協奏曲など)が付属する楽譜を制作する会社。1950年に設立されNYに本拠を置いてました。リリースしたアルバムはDiscogsに載ってるだけでも600タイトル以上。多くの録音で、有名&腕っこきのミュージシャンを起用したそうです。


ボブ・ドローは、MMOから少なくとも8タイトルをリリース(Discogsによる:あるでお調べ)。レコード番号順に『 The Medieval Jazz Quartet Plus Three 』[CE 1050]、『 The Music of Nacio Brown 』[MMO 1017]、『 The Harry Warren Songbook 』[MMO 1019]、『 Swing Or Sing Along 』[MMO 1021]、『 The Gershwin-Porter Songbook 』[MMO 1023]、『 本アルバム 』[MMO 1069]、『 A Taste Of Honey 』[MMO 1070]、『 Watch What Happens! 』[MMO 1075]、とまぁこんな具合。

んで、本アルバム。Hi-Fiレコード・ストアさんの公式サイトに載っていた紹介コメントを引用させて頂きます(Hi-Fiさんの紹介コメントが購入する引き金になったものですから…)。

─ ボブ・ドロウが手ほどきする歌のないバカラック。 ボブ・ドロウがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンものインスト・レコード(歌の教則用レコード)。レパートリーはバカラック・ナンバーを始め、60年代ソフトロックの名曲ばかり。エレピ中心で、コンガやソフトなブラスを効かせたアレンジがさすが。スチュワート・シャーフ、ビル・グッドウィンらが参加。歌メロディがないことで、逆にコード展開などがつかみやすく感じられます。もちろん、あわせて歌ったってよいでしょう! ジャケもいい! 譜面ブックレットなし。   ─ (Hi-Fiレコード・ストアさんの公式サイトより。原文ママで。ただし、今現在は在庫が無いようで表示されません…。)

ジャケもいい! …私も同感ですが、ボブ・ドローは裏ジャケ写真の人物で表ジャケの方は別人ですよね。一体誰なん?

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 ↑ は裏ジャケの曲目リストを拡大したもの。普通のレコードには記載が無い Key と Tempo が新鮮です 。

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演奏しているのは弦楽器入り小規模ビッグバンドといった感じ。ピッチ合わせのためか、A面/B面とも最外周にA=440Hz(ラの音)のテストトーンが入っているのが面白いです。メロディは殆どありません(うっすら流れる箇所もありますが)。でも、所謂カラオケとはちょっと違います。カラオケの演奏は通常原曲を完コピしているのに対し、本作では独自のアレンジを施しているんですねー。

全10曲中4曲あるバカラック作品について簡単に触れます。A1.「 恋よさようなら 」は、全編でコンガをフィーチャーしたラテン調の軽いアレンジ。A2.「 恋の面影 」は、他では聴いたことが無いEベースの16分音符のリフが斬新で、サビでのストリングスのオブリガートも印象的。B1.「 雨にぬれても 」は、可愛らしいアレンジでフルートのオブリガートが心地良い。B4.「 遥かなる影 」が4曲の中では最も意表をつくアレンジ。ブラスによるムード歌謡っぽい9小節のイントロ、全編に流れるアコギとエレピによる8ビートの刻み(そう、シャッフルのリズムじゃないんです!)。一方でカーペンターズ版にあるサビ後の5連符はありません。テンポこそカーペンターズ版とほぼ同じですが、全米1位になったばかりの大ヒット曲をけっこういじってるなぁ…と。

ボブ・ドローによる裏ジャケの各曲解説は、アレンジの説明&歌う方へのアドバイス。一例としてB4.「 遥かなる影 」の解説を載せますね。 

─ 4.「 遥かなる影 」…イントロは長いですが、非常に明快です。 2つのスタッカートの和音は、"Why do"というワード(あるでお注:歌い出しの歌詞)を導くためのクリーンな間です。ワンコーラスの後、繰り返してフェードアウトします。冒険好きな人は、ただ1つのセリフを何度も歌うのではなく、繰り返し中に新しいセリフやワードを創作してもよいでしょう。  ─ (ボブ・ドローによる解説文。拙意訳で)

アレンジに光るところは多々見られるものの、やはり主メロが聴こえないのは(カラオケ🎤するなら別ですが)ツマンナイ。わざわざ買うほどじゃないか…というのが率直な感想。Hi-Fiレコード・ストアさんには申し訳ないですが…。

さて、ここからは参考情報です。
私は所有していないのですがMMOシリーズにはバカラック集が5タイトルもあります。
『 Bacharach Revisited - 10 Backgrounds For Male Singers 』[MMO 1056]、『 Bacharach For The Ladies 』[MMO 1057]、『 Bacharach Revisited: Bacharach For Instrumentalists 』[MMO 1058]、『 Bacharach For Pianists (Music Minus One Piano) 』[MMO 1059]、『 Bacharach Organized (Music Minus One ORGAN) 』[MMO 1060]

これら5タイトルは全て1969年のリリース。収録曲(全10曲、曲目&曲順も)に加えて、Orchestra Arranged & Conducted by Jack Six、Personnelなど裏ジャケットの記載が全く同じなので音源も同一と思われます。以前から存在は知っていたのですが、どうせカラオケ音源だろうと高を括って無視してきました。本アルバムが単なるカラオケ音源じゃないとわかった今、どうしたものかと思案中…。


【データ】
『 I'll Never Fall In Love Again 』
Orchestra arranged and conducted by Bob Dorough
Music Minus One Singer or Instrumentalist

LP:1970年リリース
レーベル:Music Minus One (US)
番号:1069

Producer: Bob Dorough
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Recorded at Lincoln Sound Center
Complete Music and Lyrics for C, Bb, Eb and Bass Clef Instruments Included. … 入手した中古レコードに楽譜は入ってませんでした。まぁ仕方ないですねー、そもそも楽譜がメインでレコードはオマケですから。

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年5月12日 (日)

バカラック・ベスト~バート・バカラック・ソングブック/V.A. (2012年)

バカラック5度目の来日公演を記念して2012年にユニバーサルからリリースされた、日本編集のCD2枚組バカラック・コンピ集です!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Disc 1
1. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE  〜 Jack Jones 〜  M
2. DON'T MAKE ME OVER  〜 Patti LaBelle 〜  F
3. WALK ON BY  〜 Smokey Robinson & The Miracles 〜  M
4. THIS G'S IN LOVE WITH YOU  〜 Frankie Valli 〜  M
5. I SAY A LITTLE PRAYER  〜 Martha Reeves & The Vandellas 〜  F
6. WISHIN' AND HOPIN'  〜 The Merseybeats 〜  M
7. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME  〜 Julius Wechter & The Baja Marimba Band 〜  M
8. ONE LESS BELL TO ANSWER  〜 McCoy Tyner 〜
9. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Jimmie Rodgers 〜
10. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE  〜 Bossa Rio 〜  FM
11. ANYONE WHO HAD A HEART  〜 Dusty Springfield 〜  F
12. MAGIC MOMENTS  〜 Ronnie Aldrich 〜
13. THE STORY OF MY LIFE  〜 Connie Francis 〜  F
14. TOWER OF STRENGTH  〜 Frankie Vaughan 〜  M
15. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  〜 Richard Chamberlain 〜  M
16. FOR THE CHILDREN  〜 Burt Bacharach 〜  M
17. FALLING OUT OF LOVE  〜 Burt Bacharach 〜  F
18. WHO'LL SPEAK FOR LOVE  〜 Burt Bacharach 〜  F
19. THE LOOK OF LOVE  〜 Chris Montez 〜  F
20. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)  〜 Michael Ball 〜  M
21. Hallo, Pussycat (WHAT'S NEW PUSSYCAT?)  〜 Gus Backus 〜  M

Disc 2
1. THE APRIL FOOLS  〜 Vanessa Williams 〜  F
2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  〜 The Dells 〜  M
3. WIVES AND LOVERS  〜 Rita Reys 〜  F
4. ALFIE  〜 Dee Dee Warwick 〜  F
5. A HOUSE IS NOT A HOME  〜 Julie Rogers 〜  F
6. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR  〜 Paul Mauriat 〜
7. ANY DAY NOW  〜 Bill Medley 〜  M
8. US  〜 Tom Jones 〜  M
9. HE WHO LOVES  〜 Lenny Welch 〜  M
10. WAITING FOR CHARLIE (TO COME HOME)  〜 Marlena Shaw 〜  F
11. PROMISE HER ANYTHING  〜 Tom Jones 〜  M
12. WHO'S GOT THE ACTION?  〜 Phil Colbert 〜  M
13. SAY GOODBYE  〜 Pat Boone 〜  M
14. ROME WILL NEVER LEAVE YOU  〜 Richard Chamberlain 〜  M
15. BLUE GUITAR  〜 Richard Chamberlain 〜  M
16. THAT'S THE WAY I'LL COME TO YOU  〜 Jack Jones 〜  M
17. DREAMIN' ALL THE TIME  〜 Jack Jones 〜  M
18. FORGIVE ME  〜 Babs Tino 〜  F
19. PICK UP THE PIECES  〜 Jack Jones 〜  M
20. TEN THOUSAND YEARS AGO  〜 Rusty Draper 〜  M
21. WITH OPEN ARMS  〜 Jane Morgan 〜  F
22. PARADISE ISLAND  〜 The Four Aces 〜  M
23. LOVING IS A WAY OF LIVING  〜 Steve Lawrence 〜  M
24. HOT SPELL  〜 Margaret Whiting 〜  F
25. THESE DESPERATE HOURS  〜 Mel Tormé 〜  M
26. KEEP ME IN MIND  〜 Patti Page 〜  F

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記

収録時間(Disc1/2)約75分/約75分


❗️バカラックさん生誕96年🎊 今日(5月12日)はバカラックさんの誕生日ということで、お祝いムードが何処となく感じられるアルバムを取り上げます。5度目の来日公演を記念して2012年にユニバーサルからリリースされた、日本編集のCD2枚組バカラック・コンピ集です!

─ ユニバーサル ミュージックの著名なアーティスト陣によるバカラック・カヴァーで2008来日公演を再現! スペシャル・トラックとしてバカラック本人演奏の最新曲「 FOR THE CHILDREN 」収録!! さらに、知られざるレアなユニバーサル オリジナル音源を集大成!!! ─ (CDの帯より)

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裏ジャケやCDの帯を見て何かデジャヴ(既視感)を感じませんか?
本コンピ集の英題は The Universal Sound Of Burt Bacharach Vol.2 。そうです、本作は2008年リリースのバカラック・コンピ集『 バカラック・ベスト〜生誕80年記念スペシャル(英題:The Universal Sound Of Burt Bacharach)』の第2弾でございます。デザインそっくりですもんね🤗。

…てことは、選曲&監修は日本におけるバカラック研究の第一人者である坂口修さん。なかなか他のコンピ集では見られないバージョンを丁寧に選んでコンパイルしとられます。坂口さん自身による解説はもとより、歌詞と対訳が載ってるのも嬉しいですね(Disc2-9 と Disc2-13 の2曲を除く)。


─ 彼のソロとオリジナル・アーティストによるヒット曲を1971年初来日公演の曲順で並べ、小倉智昭氏がCX「とくダネ!」で紹介して下さり好評だった前作(あるでお注:前述した2008年リリースのバカラック・コンピ集)に引き続き、今回は著名なユニバーサル アーティスト陣の華麗なるカヴァー・ヴァージョンで前回2008年のステージをダイジェスト的に再現してみた。 さらにボーナスとして、知らざれるBacharachのレアなユニバーサル オリジナル音源を集大成。 豊富な音源を誇るユニバーサル ミュージックだからこそ実現したBurt Bacharach究極の作品集Part 2である。  ─ (解説より、坂口修氏)

収録全47曲の構成は以下の通りです。
Disc 1  1〜21. A Tribute to Burt Bacharach Japan Tour 2008 [Part 1]

Disc 2  1〜7.   A Tribute to Burt Bacharach Japan Tour 2008 [Part 2]
           8〜26. Rare Tracks

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─ 本CDの目玉は、なんと言ってもBurt Bacharachの最新曲「 FOR THE CHILDREN 」を収録できたこと。日本公演直前の2008年1月31日にシドニー・オペラハウスで行われたオーストラリア公演で録音された物だが、「 FALLING OUT OF LOVE 」と「 WHO'LL SPEAK FOR LOVE 」の3曲はアルバム『 Live At The ydney Opera House 』(UCCV-1119)には収録されていない。オーストラリア&ニュージーランドのみでリリースされた2枚組デラックス・エディションでやっと日の目を見たが、そこに収録された「 FOR THE CHILDREN 」は3分21秒に編集されたショート・ヴァージョンだった。10分56秒にも及ぶフル・サイズを堪能できるのはこれしかない!  ─ と坂口さんも興奮気味に解説しとられます。

その2枚組デラックス・エディションですが、拙ブログの紹介記事でも書いたように ─  「 FOR THE CHILDREN 」は、<CD2> のT-11.「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム  」の後半 ~ T-12.に跨って収録されています。CD編集時にチャプターマークをつけ間違えたようです。惜しいです。まぁ、続けて聴く分には支障ないですけれど。  ─ でして、編集したショート・ヴァージョンではありません。そのことだけ申し添えておきます。

あと、フランキー・ヴァリのDisc 1-4.「 ディス・ガイ 」マッコイ・タイナーのDisc 1-8.「 悲しみは鐘の音とともに 」マイケル・ボールのDisc 1-20.「 ニューヨーク・シティ・セレナーデ 」は、それぞれ収録アルバムの拙ブログ紹介記事にリンクしておきます。


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Disc 2 の8トラック目からのRare Tracksは、Disc 2-10.を除いて全てオリジナル・アーティスト。曲順が進むごとに時代が遡るっていうところにも坂口さんの拘りを感じます。

ヴァネッサ・ウィリアムスのDisc 2-1.「 エイプリル・フール 」ザ・デルズのDisc 2-2.「 雨にぬれても 」リタ・ライスのDisc 2-3.「 素晴らしき恋人たち 」は、それぞれ収録シングル/アルバムの拙ブログ紹介記事にリンクしておきます。

当初本コンピ集は2012年9月の来日公演に合わせてリリースする予定が、諸事情により発売が大幅に遅れてしまたそうです。そこで追記として『 Billboard Live news 』2012年11月号に掲載したLive Reportを2ページ強にわたって再録くださっています。引用は差し控えますが、バカラックファンに寄り添う坂口さんには本当に感謝の念しかありません。こんなに手の込んだ本コンピ集が税抜き価格¥3,048だなんて、安すぎる! 坂口さんありがとうございますです。


【データ】
『 バカラック・ベスト~バート・バカラック・ソングブック 』(英題:The Universal Sound Of Burt Bacharach Vol.2)
V.A.

CD:2012年12月26日リリース
レーベル:USM JAPAN (JP)/Universal Music (JP)
番号:UICZ-1454~5

This Compilation (P)&©️ 2012 USM JAPAN, a division of UNIVERSAL MUSIC LLC
Marketed & Distributed UNIVERSAL MUSIC LLC
Supervised & Compiled by Osamu Sakaguchi 坂口 修 (O.S.T. INC.)
ライナーノーツ:坂口 修
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2024年5月 5日 (日)

Papier Mâché/Pilar Tomas (1970年)

フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1970年にリリースしたシングルです。A面でバカラックの「 ペイパー・マシェ 」をカヴァー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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しっかりした紙製ジャケットの表/裏

A. Papier Mâché (PAPER MACHE) (2:52)
B. La Golondrina (3:07)


フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1970年にリリースしたシングルです。
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ピラール・トーマスについては前回記事『 Pilar Tomas 』(1969年)をご覧ください。…と言っても、詳しい情報ではありませんが…😅。

彼女がカヴァーしたバカラック曲はA面の「 Papier Mâché 」。オリジナルはディオンヌ・ワーウィックの「 PAPER MACHE(ペイパー・マシェ)」で、1970年の4月リリースのアルバム『 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 』に収録、同年7月にシングルカット(全米43位)されました。ピラール・トーマスはこの曲をフランス語詞で歌っています。

paper mache を英和辞典で引いてみたのですが、見出し語にズバリそのものは載っておらず…

papier-mâché n. [U] 混凝紙[張り子細工用]; 張り子   ─adj. 1 混凝紙で作った 2 模造の; 欺まん的な [<F  chewed paper  <paiper paper +mâché chewed] (出典:旺文社英和中辞典©️1975、発音記号は省略)

語感から薄々感じてはいましたが、元々フランス語なんですねー。混凝紙とはパルプ、紙片、布片などと糊を混ぜたもの。“こんくりがみ”と読み、混凝はコンクリートを意味するんだそう。知らんかったー。Hal David が作詞した原曲の歌詞を読んでみましたが、張り子で作られた世界を歌っていて消費文明をチクリと皮肉ってる感じも受けます。

さて本題。ピラール・トーマスのカヴァーは、キー(歌い出しの音:F)とテンポ(♩≒130)いずれもディオンヌ版と同じ。曲全体の構成も同じだし、イントロのマリンバのリフ、アコギのリフ、サビ部分の歌唱ハモリ、トランペットのオブリガートなど主要なアレンジも同じ。所謂完コピってヤツですね(原曲にあるオカリナのオブリガートなど一部のオカズは省略されてますが)。ピラール・トーマスの歌唱はその特徴である細かいビブラートが曲にマッチしているようで、軽く歌っているディオンヌとどっこいどっこいと言ったところ。ただ、こうなると本家に勝るものはないんですよねー。

B面はドリーミーな曲ですが、彼女の細かいビブラートの歌声は曲にあまりマッチしてない気がします。

ここからはオマケ。MP3で所有している「 ペイパー・マシェ」のうち1970年にリリースされたカヴァーをご紹介!
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ピラール・トーマスと同じ1970年、Sylvia Vrethammar(シルヴィア・ヴレタマー)というスウェーデンの女性ポップ/ジャズ・シンガーが「 PAPER MACHE 」をスウェーデン語詞でカヴァーしています。2ndアルバム『 Sylvia 』に収録されていて、曲名は「 På En Öde Ö 」(2:54) 。どういう風に読むんでしょうか🤔。キーは同じでテンポは♩≒132とほんの少し速いだけ。オカリナのオブリガートもきっちり入ってて、アレンジはピラール・トーマス版以上に完コピです。シルヴィアの歌唱はディオンヌよりも骨太な印象を受けます。
他に1970年にリリースされた「 ペイパー・マシェ 」のカヴァーは、Peter Nieuwerf 版Sir Christopher Scott 版The Carmen Cavallaro Camp 版Floyd Cramer 版がありますが、いずれもインスト物でそれぞれ紹介ずみでございます。
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えぇい、ついでだ! シルヴィア・ヴレタマーの他のバカラック・カヴァーも紹介しちゃえ!
彼女は1969年にリリースした1stアルバム『 Tycker Om Dej 』で「 世界は愛を求めている 」と「 アルフィー 」の2曲をカヴァー。やはりスウェーデン語詞で歌っていて、曲名は「 Vad Världen Behöver Är Kärleken 」(3:36) と「 Alfie 」(2:53) 。どちらの曲も、豊穣なストリングスを軸にしたゆったりアレンジ。彼女の歌声はメリハリがあって上手いなぁと思います。
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もぅ一丁ついで!
シルヴィア・ヴレタマーは2019年にリリースしたジャズのアルバム『 Vortex 』で「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(3:28) をカヴァー。アルバムジャケットのお姿はとても50年経ったようには見えません。テンポの速いウォーキングベース&キレのあるピアノをバックに英語詞のまま歌っています。メリハリのある歌唱も変わっておらず素敵です。


【データ】
「 Papier Mâché 」/「 La Golondrina 」
Pilar Tomas

7"single:1970年リリース
レーベル:CBS (FR)
番号:5257

Orchestre, direction:Jean Claudric
A.「 Papier Mâché 」(French version of PAPER MACHE)

      B.Bacharach - E. Marnay - Hal David
B.「 La Golondrina 」
      Arranged By Jean Claudric - E. Marnay

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年4月28日 (日)

Pilar Tomas/Pilar Tomas (1969年)

フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1969年にリリースした彼女唯一のアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全12トラック中、バカラック作品は1トラック

B3. Folie D'avril (THE APRIL FOOLS) (2:51)


フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1969年にリリースした彼女唯一のアルバムです。

ピラール・トーマスについてはよくわからなかったのですが、
ひょんなことから情報を得ました。オマケとして後述します。

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本アルバムの12曲は全てフランス語詞の曲で、バカラック・カヴァーの1曲を除いて私の知らない曲ばかり。フォーキーな曲からラテン調の曲、陽気な曲から哀愁漂う曲まで色々なタイプが揃っています。ピラール・トーマスの歌唱は細かいビブラートが特徴的。落ち着いた大人の歌手といった印象です。

んで、バカラック・カヴァーはB3.「 Folie D'avril 」。1969年公開の映画『 The April Fools(幸せはパリで)』の主題歌「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」をフランス語詞で歌っています。曲名の Folie D'avril を直訳すると Madness of April = 4月の狂気。THE APRIL FOOLS の意味する "4月馬鹿たち" とは微妙に違うような気がするのですが…
。誰かフランス語が堪能な方に教わりたいっす。フランスの有名なソングライター、Eddy Marnay(エディ・マーネイ)による歌詞の中身も気になりますね。それにこの方、この曲を“歌って”カヴァーした最初の人っぽいです(あるでお調べ→こちら)。

オリジナルのディオンヌ・ワーウィック版と較べてキーは半音高くテンポも若干速め(ディオンヌ版の♩≒77に対して♩≒82)ですが、アレンジの基本はディオンヌ版そのもの。トランペットが吹くイントロメロやオブリガート、全編に漂うアコギの刻みなどはディオンヌ版を踏襲しています。一方で、和音を奏でるストリングスをオルガンに置き換えたり、グロッケンやマリンバ、チェロ、ハープによる独自のオブリガートを加えるなど、哀愁が増す方向に味付けして曲の魅力を高めています。この編曲家はいい仕事してますね。ピラール・トーマスは持ち味の細かいビブラートを効かせて丁寧に歌っていますが、表現力豊かなディオンヌの前ではちょっと分が悪いかな…。

ここからはオマケ。なんと、彼女は「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」の日本語詞バージョンを歌い、日本でシングルをリリースしていたんです。こちら ↓ がその証拠。Discogsに載ってた画像を拝借しました、悪しからず。
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CBS・ソニーから1970年にリリース(SONG 80181、定価¥400)されたもので、タイトルは「 幸せはパリで = THE APRIL FOOLS 」(訳詞:岩谷時子)。カップリングは「 Zの愛のテーマ = THEME FROM “Z” 」(訳詞:山川啓介)で、本アルバムのA1.「 Un Homme Dans Une Île 」ですね。非公式ですがYouTubeにアップされています。私も聴きましたが、バックトラックは本アルバムと全く同じでした。

シングルにピラール・トーマスのプロフィールが書いてありましたので、引用して紹介します。
─ ピラール・トーマスは、B面にも収録されている「 Zの愛のテーマ 」をヒットさせ、デビューを飾ったフランス・ポップス界の新人で、そのメランコリックな歌い方は、むしろ日本人向きとも言えるフィーリングを感じさせます。すでに本国フランスでは「 星を追いかけて 」(Tout En Suivant L'étoile)、「 愛のまえでふるえないで 」(Ne Tremble Pas Devant L'Amour)のヒットがあり、今後の活躍が大いに期待されています。  ─

結局ピラール・トーマスは1971年のシングル1枚を最後に表舞台から消えてしまいました。何があったんでしょうねぇ。


【データ】
『 Pilar Tomas 』
Pilar Tomas




LP:1969年リリース (所有LPは、同年リリースのカナダ盤)
レーベル:CBS (France) (所有LPは、Columbia (Canada))
番号:S 63938 (所有LPは、FS-719)

Direction Artistique(Producer):Ph. Boutet
Orchestre, direction:Jean Claudric (except A1,B4), Bernard Gerard (A1,B4)
B3.「 Folie D'avril 」(French version of THE APRIL FOOLS)
      E. Marnay - B.Bacharach

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年4月21日 (日)

Burt Bacharach Long Ago Last Summer 1959-61/V.A. (2012年)

作曲家バート・バカラック、1959年〜1961年の作品ばかりを集めた英国編集のコンピ集です。2012年リリース、マニア向け。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. DREAM BIG  〜 Sonny James 〜  M
2. LOVING IS A WAY OF LIVING  〜 Steve Lawrence 〜  M
3. MAKE ROOM FOR THE JOY  〜 Jack Jones 〜  M
4. PARADISE ISLAND  〜 The Four Aces 〜  M
5. MOON MAN  〜 Gloria Lambert 〜  F
6. THE HANGMAN (Inspired By the Film "The Hangman")  〜 John Ashley 〜  M
7. THE NET  〜 John Ashley 〜  M
8. WITH OPEN ARMS  〜 Jane Morgan 〜  F
9. FAKER, FAKER  〜 The Eligibles 〜  M
10. IN TIMES LIKE THESE  〜 Gene McDaniels 〜  M
11. A GIRL LIKE YOU  〜 Larry Hall 〜  M
12. YOUR LIPS ARE WARMER THAN YOUR HEART  〜 Rosemary June 〜  F
13. TWO HOUR HONEYMOON  〜 Paul Hampton 〜  M
14. CREAMS  〜 Paul Hampton 〜
15. YOU'RE ONLY YOUNG ONCE (Yeh Yeh Yeh)  〜 The Avons 〜  M
16. CLOSE  〜 Keely Smith 〜  F
17. LONG AGO LAST SUMMER  〜 Diana Trask 〜  F
18. BOYS WERE MADE FOR GIRLS  〜 Everit Herter 〜  M
19. I COULD MAKE YOU MINE  〜 The Wanderers 〜  M
20. JOANIE'S FOREVER  〜 Buddy Clinton 〜  M
21. THREE WHEELS ON MY WAGON  〜 Dick Van Dyke 〜  M
22. AND THIS IS MINE  〜 Connie Stevens 〜  F
23. MOON GUITAR  〜 The Rangoons 〜
24. LOVE IN A GOLDFISH BOWL  〜 Tommy Sands 〜  M
25. I WAKE UP CRYING  〜 Chuck Jackson 〜  M
26. THE ANSWER TO EVERYTHING  〜 Del Shannon 〜  M
27. DEEPLY  〜 The Shepherd Sisters 〜  F
28. YOU DON'T HAVE TO BE A TOWER OF STRENGTH  〜 Gloria Lynne 〜  F
29. YOU'RE FOLLOWING ME  〜 Perry Como with The Ray Charles Singers  〜  M
30. THE BREAKING POINT  〜 Chuck Jackson 〜  M
31. THE MIRACLE OF ST. MARIE  〜 The Four Coins 〜  M
32. SOMEBODY ELSE'S SWEETHEART  〜 The Wanderers 〜  M
33. BABY IT'S YOU  〜 The Shirelles 〜  F

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記

収録時間約79分


作曲家バート・バカラック、1959年〜1961年の作品ばかりを集めた英国編集のコンピ集です。

…バカラック物コンピレーションアルバムを取り上げるのは『 WIR LIEBEN BACHARACH 』(2012年) 以来、およそ3年ぶり。紹介していないアルバムがまだ5タイトル残ってるのに、リスト作成が面倒臭くてず〜っとサボっておりました。古い音源はサブスク等でいつでも聴ける時代になりコンピ集紹介する意味あんのかなぁ、などと思ったりもして…。拙ブログもほぼネタが底をつき、ヨッコラショとようやく重い腰を上げたワケです💦。

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─ バカラック初期作品集第2弾。50年代後半から60年代前半に作られた貴重なトラック全33曲。バカラック・マジックに彩られたドリーム・ポップ・ワールド ─

私が所有するCDは輸入盤に日本語の帯が付いた所謂 <国内仕様輸入盤> で、上記はその帯に書かれていたPR文。シリーズ第1弾の『 Burt Bacharach The First Book of Songs 1954-58 』(2009年)は輸入盤を買ったのですが、日本語解説のある国内仕様にしとけば良かった…と後悔したことを思い出して第2弾ではこの国内仕様輸入盤を購入いたしました。

収録曲をいつものようにリスト化してみます。大きくしてご覧くださいませ。
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収録されてる全33曲は1959年〜1961年にリリースされた曲ばかり。この3年間にリリースされたバカラック楽曲はおよそ60曲ありますので、約半数に当たります。
この3年間でヒットしたバカラック作品というと、「 PLEASE STAY(プリーズ・ステイ)」〜 The Drifters:US#14、「 TOWER OF STRENGTH(タワー・オブ・ストレングス)」〜 Gene McDaniels:US#5/Frankie Vaughan:UK#1、「 BABY IT'S YOU(ベイビー・イッツ・ユー)」〜 シレルズ:US#8 等がありますが、収録されたのはT-33.「 ベイビー・イッツ・ユー 」のみ。ヒットした曲よりレア曲を優先している感じです。他のバカラック物コンピ集(私が所有しているものに限りますが)では見かけない曲も5曲あります。作詞家はやはりハル・デイヴィッドが19曲と多いですね。ボブ・ヒリアードが6曲、ポール・ハミルトンが3曲と続きます。

そして33曲全てがオリジナル・アーティストのバージョン。つまりオリジナル率100%。これまでご紹介してきたバカラック物コンピ集では初の快挙! …まぁ、この頃のレア曲はそもそもカヴァーされることが少ないしなぁ。実際、33曲のうちカヴァーが存在するのは11曲(T-8,10,11,16,19,21,25,26,29,30,33.)だけと、3分の1しかありません。

まだバカラックの曲と明確にわかる曲は少ないですが、可笑しな曲はそれなりにあります。T-6.「 ザ・ハングマン 」とT-7.「 ザ・ネット 」は同じシングルのA,B面で、どちらも映画に引っ張られた奇妙な雰囲気の曲。自動車事故とカエルの鳴き声で始まりサックスのハーレム調メロディが印象的なT-13.「 トゥ・アワ・ハネムーン 」とミュート・トランペットが剽軽な
T-14.「 クリームス 」は、どちらもドラマのダイアログ風。

本コンピ集のタイトルにもなっているT-17.「 ロング・アゴー・ラスト・サマー 」について少々。この曲は、米国の作家テネシー・ウィリアムズが書いた同名戯曲を映画化した1959年公開の米/英映画『 SUDDENLY, LAST SUMMER(去年の夏 突然に)』の宣伝ソング。ストリングス/男声コーラス/ホルンが奏でる弾むようなリフが古風な印象を与えます。麗しい歌声のダイアナ・トラスクは1940年オーストラリア生まれの女性シンガー。1959年に渡米して1962年までColumbiaレーベルでポップシンガーとして活動。この曲はColumbiaで2枚目のシングル曲でした。テレビ番組にも多数出演。のちに1968年〜1981年にかけて18枚のシングルを米国のカントリーチャートに送り込んでます。

…はぁ、リスト作るのに草臥れたので曲に関するコメントはこの辺でやめときます😅。興味ありましたらサブスク等でお聴きになってみてください。

英文ライナーノーツは個別の楽曲紹介は無く、概説風で所々曲のコメントもあるというもの。
折角ですからその日本語訳の一部を引用しましょう。
─ このコレクションでは、既に一連の奇妙な例外的なサウンドや、その後のBacharachサウンドの萌芽というべきものが見られるのだ。60年代中期には英国全体があの Bacharach サウンドに感染していた。(略)Bacharach 特有の手法の中でも、ニューヨークの香り豊かなストリングスの豊かな響き、そして分厚いヴォーカルが際立っており、さらに大西洋(Atlantic)のようにブルーで、分厚いコードが聴かれるのだ。Bacharachの音楽は、親しみやすいスナップ・ショットという趣の「 MAGIC MOMENTS 」から Connie Stevens による手触りのT-22.「 AND TIME IS MINE 」に至るまで常に野心的であり、その究極が Dionne Warwick の数々のアルバムに於ける豪華なサウンドなのだ。Gene McDaniels のT-10.「 IN TIME LIKE THESE 」は一聴の価値がある。それはスタンダードなカクテル・ラウンジのバッキングと天使の様な女性コーラスをあしらい、'50年代後期の雰囲気満点だが、和音の展開が意表をつくもので、気持ちをグッと掴まれるのだ。  
 (Bob Stanley, Highgate, May 2012/翻訳:栗船主税)

なんかよくわかりませんね…。まぁいいや😅。(投げやり)


【データ】
『 Burt Bacharach Long Ago Last Summer 1959-61 』(邦題:バート・バカラック ロング・アゴー・ラスト・サマー 1959-61)
V.A.

CD:2012/6/19リリース (所有CDは、国内仕様輸入盤で2012/8/18リリース)
レーベル:Él in association with Cherry Red Records(UK) (所有CDは、Solid Records / ULTRA-VYBE (JP))
番号:ACMEM233CD (所有CDは、CDSOL-7763)

Recording dates:T-1-10. 1959、T-11-20. 1960、T-21-33. 1961
Liner Notes - Bob Stanley
(C)2012 Cherry Red Records

Amazonリンク(CD)(国内仕様輸入盤CD

2024年4月 7日 (日)

GYPSY BELLS Columbia Recordings 1967/Lou Christie (2024年)

米国男性歌手、ルー・クリスティのColumbiaレーベル在籍時のコンプリート集です。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全24トラック中、バカラック作品は1トラック

14. HOW MANY DAYS OF SADNESS (3:10)


米国男性歌手、ルー・クリスティのColumbiaレーベル在籍時のコンプリート集です。

ルー・クリスティ( Lou Christie、1943年2月19日 - )は、アメリカ合衆国の男性歌手、シンガーソングライター。1960年代前半〜中盤にかけて、ファルセットが特徴的な楽曲を複数ヒットさせています。私は彼を本アルバムで初めて知ったど素人。…ということでディスクユニオンさんのサイトに載ってた本アルバムの “商品詳細情報” をそっくり引用させていただきます。

─ 一聴して彼とわかる4オクターブの歌声で多くのヒットをとばしたルー・クリスティ。全米1位を獲得した66年「Lightnin' Strikes」を初めヒットを連発し人気絶頂の中、マネージャーのスタン・ポリーはMGMからコロンビアへの移籍を画策し、レコーディングを行いました。67年当時すでに大物プロデューサー兼アレンジャーのチャーリー・カレロはそれまでヒットを凌駕することを狙い数枚のシングルを制作するも全国的なヒットにはつながらず、アルバム制作に至らないまま残された音源はその後日の目を見ることがありませんでした。今回コロンビアの倉庫に秘められたそれらの音源がついにリリースとなります。不気味な「Don't Stop Me」、進歩と平等を訴える軽快な「Self Expression」、クラシック・クリスティといえる「Yellow Lights Say」と「Gypsy Bells」、予想外に生々しい「Paper And Paste」、そして特にフック満載な「Holding On For Dear Love」、ツィラ・ハーバートと共作した「Blue Champagne」は「Escape」をも凌駕し、ジョビンの「Meditation」、バカラック&デヴィッドの「How Many Days Of Sadness」、カール・フィッシャー/ビル・キャリー「You've Changed」では、これまでに聴いたことのない彼の声を聴けます。ここに収録された楽曲の幅広さは、彼がいかに様々音楽から影響を受け、それらの要素を巧みに取り入れて、豊かでかつ極めてユニークなものを作り上げていたことを記しています。  ─ディスクユニオンさんのサイトより)

彼は、コロムビアではシングルを3枚リリースしただけでブッダ・レコードに移籍してしまいます。英ACEから先々月リリースされたばかりの本アルバムはそれらシングル3枚に未発表音源を全て収めたコロムビア・イヤーの作品集という訳です。

さて、上述の通りバカラック・カヴァーはT-14.「 HOW MANY DAYS OF SADNESS(悲しみの日々)」。オリジナルはディオンヌ・ワーウィックで、1964年10月にリリースしたシングル「 REACH OUT FOR ME(リーチ・アウト)」のカップリング曲でした。その後、1965年2月リリースの4thアルバム『 THE SENSITIVE SOUND OF DIONNE WARWICK 』に収められます。そうそう、フランス語バージョンもリリースしています(2018年のアルバム『 ODDS & ENDS SCEPTER RECORDS RARITIES 』参照方)。ディオン版と比べてキーは長三度高くテンポはディオンヌ版(♩≒82)より若干遅め(♩≒77)ですが、基本的にディオンヌのバージョンとほぼ同じアレンジ。高音域の馬力はディオンヌに負けるものの、高低差があってクセのあるメロディをルー・クリスティはしっかり歌っています。好カヴァーと思います。

それにしてもこの曲、ルー・クリスティ以外にカヴァーを聴いたことがありません。そんなレア曲をなぜ彼は歌ったんでしょう?

─ Memories. Lou Christie played the Dionne Warwick original (flip-side of 'Reach Out For Me') over and over on a battery-powered phonogragh with tour bus companion Diana Ross during the Dick Clark Caravan Of Stars, 14 November-6 December 1964.  思い出。 ルー・クリスティは、1964年11月14日から12月6日まで行われたディック・クラーク・キャラバン・オブ・スターズの間、ツアーバスの同行者であるダイアナ・ロスとともに電池式蓄音機でディオンヌ・ワーウィックのオリジナル曲(「リーチ・アウト・フォー・ミー」の裏面)を何度も繰り返し聴いた。  ─ (ライナーノーツより、Google翻訳付き)

なるほど…、ルー・クリスティにとって思い出の曲なんですねぇ。そういえば、X(エックス)にこのライナーノーツの内容がポストされていたのですが、そこにはダイアナ・ロス&ルー・クリスティが車の中?で寝ている写真が添えられていました。当時のツアー中のものなのかなぁ。( → こちら

ここからはオマケです。ルー・クリスティによる他のバカラック・カヴァーをご紹介!
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彼は1966年リリースのアルバム『 Lightnin' Strikes 』で「 (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(愛の思い出)」をカヴァー。拙ブログでは既にバカラック物コンピ集の中で紹介していますので詳細は割愛します。…と言っても特段触れてないんですけど💦。( → コンピ集『 Burt Bacharach MASTERPIECE Vol.3 』,『 LIPPY LIP BACHARACH 』

他にも、Jack JonesやBobby Veeが歌った「 THAT'S THE WAY I'LL COME TO YOU 」をルー・クリスティが1963年にカヴァーした…というネット情報もあるのですが、確認出来ておりません。悪しからず。


【データ】
『 GYPSY BELLS Columbia Recordings 1967 』
Lou Christie

CD:2024年2月23日リリース
レーベル:Ace Records (UK)
番号:CDTOP 1601

Tracks 7-19,21 & 24 previously unreleased
Stereo except 1-8

T-14.「 HOW MANY DAYS OF SADNESS 」
  (Burt Bacharach, Hal David)
  CO 92284
  Produced & Arranged by Charles Calello

  Recorded 17 July at Columbia's studio at 207 East 30th Street
  Choral overdub 22 August
  Vocal overdub 13 September

Compiled by Harry Young with Mick Patrick
Note by Harry Young with Introduction by Bob Stanley
This compilation (P) and ©️ 2024 Ace Records Ltd
Made in the EU

Amazonリンク

2024年3月10日 (日)

エレクトーン・ファンタスティック バート・バカラックの魅力/沖浩一トリオ(1970年)

エレクトーン奏者の沖浩一がギターやドラムスを加えたトリオ編成で録音したバカラック作品集です。1970年10月リリース。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  (2:46)
A2. I SAY A LITTLE PRAYER  (4:48)
A3. LONELINESS REMEMBERS (WHAT HAPPINESS FORGETS)  (2:22)
A4. ODDS AND ENDS  (2:28)
A5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE  (4:12)
A6. THE APRIL FOOLS  (3:51)
B1. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE   (4:13)
B2. DON'T MAKE ME OVER  (2:57)
B3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU  (3:16)
B4. PROMISES, PROMISES  (2:52)
B5. THE SUNDANCE KID  (1:57)
B6. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  (3:51)

収録時間約40分


エレクトーン奏者の沖浩一がギターやドラムスを加えたトリオ編成で録音したバカラック作品集です。

─ 1958年に日本で開発された電子オルガン、エレクトーン(注1)は、今や電子オルガンの代名詞となってしまった感がある。このレコードで編曲・演奏をしている沖浩一(注2)も大阪学芸大学の特設音楽科でピアノを専攻するかたわら、エレクトーンに興味を持ち、オルガニスト斉藤超に師事、独特の奏法を作りあげた。このレコードで彼は、主に、エレクトーンD-2B型(注3)を自ら改造した楽器を用い、彼のトリオで独特なサウンドの演奏をくりひろげ、オリジナルなバカラック像を作り出している。  ─ (ライナーノーツ「 このレコードについて 」より)

本アルバムは、バカラック初来日コンサート(翌1971年4月)の約半年前…1970年10月のリリース。日本人演奏者によるバカラック・カヴァー集としては比較的早い時期にリリースされました。参考※までにバカラック来日以前に発売されたアルバムをリリース順に紹介します(リンクは拙ブログ記事に跳びます)。なお、キム・サン・ヒーのアルバムは、ヴォーカル以外は全て日本人による演奏であるため掲載しています。※リスト作成:土龍団

リリース アルバムタイトル アーティスト
1969/  3/10 SADAO PLAYS BACHARACH & BEATLES 渡辺貞夫とオールスターズ
1969/11/25 スターゲイザース・バカラックを歌う 岡崎広志とスターゲイザース
1970/  2 サン・ホセへの道≪バート・バカラックの世界≫ 稲垣次郎とリズム・マシーン
1970/  9 バック・トゥ・バカラック ロック・アカデミー弦楽四重奏団
1970/10 エレクトーン・ファンタスティック バート・バカラックの魅力 沖浩一トリオ
1971/  2 田畑貞一ドラムの世界VOL.3 バート・バカラックに挑戦 田畑貞一
1971/  3/25 Sings Tom Jones & Burt Bacharach キム・サン・ヒー(Kim Sang Hee)


エレクトーンの沖浩一を中心に、ドラムス(長谷川昭弘)、ギター(水谷公生, 川崎燎)を加えたトリオ編成。
今ではエレクトーンに当たり前に備わっているオートリズム機能(リズムボックスのこと)ですが、1972年に初めてオートリズム付きエレクトーンが世に出るまではオートリズム無しで演奏されていました。エレクトーンは右手鍵盤でメロディを、左手鍵盤と足鍵盤でリズム伴奏をするのが一般的ですが、エレクトーンだけだとリズムが甘くなるんですね…。当時プロのプレイヤーはコンサートではドラマーと一緒によく演奏していたそうです。本アルバムではドラムスに加えてギターも参加して(このギターがほぼリズムを刻むことに徹しとるんですわ)リズムをサポートしています。そのおかげか、左手鍵盤は和音の他にメロディ(音色を変えて右手鍵盤とハモったり)やオブリガートを弾くことも多くアレンジの幅を広げています。

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なお、ダブルジャケットの見開きは ↑ こんな感じ。クリックして拡大すればなんとか読めると思います。ライナーノーツの大半はバカラックの説明で、他には前掲した「このレコードについて」のみ。取り上げた楽曲についての解説は一切なく、演奏者の顔写真もなし。ただし、来日したハル・デイヴィッド夫妻の写真(拡大しました)は貴重かも。1970年7月だから万博でも観に来たのでしょうか?

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全12曲はバカラックの有名曲が殆どですが、A3.「 ロンリネス・ハッピネス(本アルバムの邦題:愛は想い出)」、A4.「 オッズ・アンド・エンズ 」のようなレア曲もあります。後者A4.はディオンヌ・ワーウィックの1969年7月シングルA面曲なのでまだわかりますが、前者A3.はディオンヌ・ワーウィック1970年3月リリースのシングル「 LET ME GO TO HIM 」のB面曲。1970年4月リリースのアルバム『 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 』に収録されているとはいえ決してヒットした曲ではありません。沖浩一さんの琴線に触れたんでしょうねー。B6.「 雨にぬれても 」以外にB5.「 サンダンス・キッド 」も演ってるのは映画『 明日に向って撃て!』の日本公開直後だからかな?

A面の曲は比較的大人しいアレンジが多い印象。そんな中、A2.「 小さな願い 」ではエレクトーンのアドリヴに加えて本アルバム中で唯一となるギターのアドリヴが熱いです。あと、A6.「 エイプリル・フール 」のイントロ/アウトロは独特でちょっとシュールな気もします(笑)。

一方、B面は意欲的なアレンジが目立ちます。B1.「 サン・ホセへの道 」の面白い音色はモーグっぽい。B2.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」はハモンドオルガン的音色でブルース風。B3.「 ディス・ガイ 」ではブロック奏法でメロディを弾き、スウィングのリズムで中間部〜後半のアドリヴも含めてジャズオルガンの香りがプンプンします。B4.「 プロミセス・プロミセス 
」でのグリッサンド奏法などを駆使したノリに乗った演奏は私的レコメンド。B6.「 雨にぬれても 」ではマンドリン効果(マンドリンとそっくりの音色が出るというのではなく、マンドリン奏法に似た、断続的な音を発するエフェクトの一種)をメロディにかけて雨粒の雰囲気を出しています。エレクトーンならではの面白い音です。

エレクトーンによるバカラック・カヴァー集は、以前拙ブログでも斎藤英美の『 プレイ・バカラック 』(1971年リリース)を紹介しています。ハモンドオルガンによるバカラック・カヴァー集も、Ena Bagaの『 The Happy Hammond Plays The Hits Of Burt Bacharach 』(1972年リリース)、Patrick Saussois & Rhoda Scottの『 THE LOOK OF LOVE 』(2010年リリース)を紹介しています。それぞれアレンジの方向性が全く違っていて面白いなぁと思います。

(注1)エレクトーン:ヤマハ株式会社が製造発売する電子オルガンの商品名。エレクトーンの開発が始まったのは1952年(昭和27年)。1958年(昭和33年)日本楽器(現:ヤマハ)、日本電気、NHKのそれぞれの技術陣が協力して、真空管方式による国産初めての電子オルガンを試作、銀座ヤマハホールで公開した。「1958年に日本で開発された…」とあるのはこのことを指すのであろう。1959年(昭和34年)に最初のエレクトーンD-1型が発売された。なお、商品としては日本ビクターから1958年に発表されたEO-4420型が日本初の電子オルガンである。


(注2)沖浩一:1940年生まれ(2022年12月8日没、享年82歳)、大阪府出身のジャズ・オルガン/エレクトーン/シンセサイザー奏者。1966年の第3回エレクトーンコンクール本選会の演奏部門シニアで第1位。なおこの時の審査員は芥川也寸志、朝比奈隆、外山雄三、山本直純、川上源一(当時の日本楽器社長)など錚々たる顔触れであった。1966年に日本テレビ系列で毎週木曜の夕方に全国放送された『 エレクトーン教室 』のエンディングで、当時活躍したプレイヤーの道志郎、斎藤英美などに混じってゲスト出演し演奏を披露。60年代から70年代にかけてレコードも多数リリース。1977年にペレの引退試合が大阪と東京で行われた際には東京会場で演奏した。東京スカパラダイスオーケストラの沖祐市の実父でもある。
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(注3)エレクトーンD-2B型(ヤマハ公式サイト エレクトーンの変遷):発売期間 1967年6月〜1971年4月。価格 ¥395,000。多くの人に愛された機種で、1971年に製造が停止されて以降も数年にわたって中古市場で引っ張りだこ。人気の秘密は音の美しさにあったよう。基本的には音の立ち上がりが速い、と評価されていたが、沖浩一はD-2Bに満足しきっていたわけでもなかった。 ─ D-2Bはよく使いましたが、ベース(足鍵盤)の音はサスティンを切っても甘かった。それで、サスティンは効かなくなるけど、パチッと音が出るベースにするには、ただ一ヶ所ペンチでプツンと切ればいいと。そういうことをやって、楽しかったですね ─ 沖浩一は、コンサート会場のD-2Bを本番前にプツンと改造しては、あとで元に戻して帰ったそう。本アルバムも、恐らくサスティンの回路を切った改造D-2Bのサウンドと思われる。

(注1)〜(注3)の参考文献:エレクトーン雑学班/編著『 知ってるようで知らない エレクトーンおもしろ雑学事典 』(2009年、ヤマハミュージックメディア)

ここからはオマケ。MP3で所有している沖浩一のバカラック・カヴァーをご紹介。

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沖浩一は豪州/ニュージーランドで1970年にリリースしたアルバム『 Incredible Organ... 』で「 雨にぬれても 」(3:29)をカヴァー。アレンジの構成は『 エレクトーン・ファンタスティック バート・バカラックの魅力 』と同じですが、1970年発売のエレクトーンEX-42型(ヤマハ公式サイト エレクトーンの変遷)によるソロ演奏で、音色の設定も異なります。ドラムスやギターがいない分自由に演奏できるからかテンポも若干速く、より表現力が豊かな演奏だと思います。
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沖浩一は1971年にリリースしたアルバム『 エレクトーン・ファンタスティック 沖浩一の“ロンドンの休日” 』で「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(3:06)をカヴァー。英国や豪州では『 Yamaha Superstar! 』というタイトルでリリースされました。エレクトーンEX-42型とドラムス、ギターという編成。沖浩一のエレクトーン演奏はとてもハード。ジャズオルガンですわ、これは。レコメンドですねー。


【データ】
『 エレクトーン・ファンタスティック バート・バカラックの魅力 』 (英題:Electone Fantastic - Burt Bacharach Song Book)
沖浩一トリオ

LP:1970年10月リリース
レーベル:CBSソニー (JP)
番号:SOND-66041
価格:¥1,800


Produced by ?
Arranged by 沖浩一
  Drums - 長谷川昭弘
  Guitar - 川崎燎 (A1〜5, B1,5,6)、水谷公生 (A6, B2〜4)
  Organ - 沖浩一

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年3月 3日 (日)

The Look of Love/Ali Harper (2020年)

ニュージーランドの女性シンガー、アリ・ハーパーが2020年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. THE LOOK OF LOVE
2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
3. I SAY A LITTLE PRAYER
4. ALFIE
5. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
6. WALK ON BY
7. A HOUSE IS NOT A HOME
8. WHO'LL SPEAK FOR LOVE
9. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD / THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
10. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF / ANYONE WHO HAD A HEART
11. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
12. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
13. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR

収録時間約43分


ニュージーランドの女性シンガー、アリ・ハーパーが2020年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。私は全く知らなかったのですが最近ちたりた様に教えていただいた次第。ちたりた様、情報提供ありがとうございました!

アリ・ハーパー(生年不詳)はニュージーランドの演劇学校を卒業後、クライストチャーチを拠点に歌手/俳優/プロデューサー/ライター/MC/歌のコーチ/ヨガ講師として30年にわたるキャリアを積んできたお方。クライストチャーチといえばニュージーランド南島の中心的な都市。私も30年近く前にプライベートで行ったことがあります。季節は2月下旬〜3月上旬で現地は夏の終わり頃。当時の写真を見て記憶が蘇りました。2泊してチャリンコであちこち走ったんですが、暑くなく穏やかで緑豊かな街でした…。
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彼女はこれまでに7枚のアルバムをリリースしていますが、本作は6作目にあたります。彼女の公式サイトからCDをオーダーできるようですが、AmazonやDiscogsでは中古も含めて取り扱っておらず今回MP3データをダウンロードしました。ブログ冒頭のCDケース裏面の画像は公式サイトからパクったものですが、バーコードも印刷されてないしオンデマンドCD的なものでクレジットも記載ないんでしょう
。なのでCD入手してもあまり意味ないかな…と。そうそう、YouTubeにはフルアルバムが自動生成されておりますです。

─ 収録された15曲(13トラック)はバカラックのヒットソングから選曲したもの。このCDは、アメイジングなCSOのストリングスを含めてニュージーランド腕っこきのミュージシャンをフィーチャーしています。  ─ (公式サイトのアルバム紹介より、私の意訳で)


CSOとはクライストチャーチ交響楽団(Christchurch Symphony Orchestra)の略称。聴いてると確かに控えめなストリングスが聴こえます。演奏の基本となるのはピアノ、ドラムス、ベース。曲によって女性コーラス、ギター、金管楽器が加わります。金管楽器がCSOの団員なのかスタジオミュージシャンなのかはよくわかりませんが…。多くの曲が最もポピュラーなバージョンをベースにしたアレンジ。ですが、T-3.「 小さな願い 」だけはオリジナリティのあるアレンジで、最初はピアノだけそしてシンフォニックなオケをバックにソウルフルに、次いでテンポアップしてライトなボサノヴァ調になります。

アリ・ハーパーはとても張りのあるブライトな歌声で、まさしくミュージカルや舞台で活躍する方の歌唱。T-4.「 アルフィー 」とT-7.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」はピアノのみをバックにとても感情豊かに歌っておいでですし、最初はしっとりで後半に向けて盛り上がっていくT-8.「 フール・スピーク・フォー・ラヴ 」も同様です。これら3曲が彼女の真骨頂じゃないかと思います。

彼女は2020年3月に本アルバムをリリースしたのち、翌年にかけてニュージーランド国内で『 The Look of Love 』ツアー(3月:Nelson、12月:
Christchurch、2021年1月:Wellington)を敢行。そのうち首都であるウェリントンのCIRCA Theatreでのショウの時の写真を公式サイトからパクっていくつか載せておきます。また、そのショウの裏側を撮影した公式動画がありましたのでついでに貼り付けておきます。
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ここからはオマケです。他にMP3で所有しているアル・ハーパーのバカラック・カヴァーをご紹介!
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彼女は2004年にリリースした1stアルバム『 Something So Right 』で「 CLOSE TO YOU 」(4:12)をカヴァー。カーペンターズ版をベースにしていますが、ジャズ・バラード風のアレンジでしっとりした肌触り。中盤からはブラスとサックスもは加わり華やさも。アル・ハーパーはアレンジに合わせて最初はしっとり、中盤からはブライトな歌声で歌っています。


【データ】
『 The Look of Love  Celebrates the Music of Burt Bacharach
Ali Harper

CD:2020年3月リリース  (所有はMP3のみ)
レーベル:Ali-CatProductions (NZ)  (所有はMP3のみ)
番号:-   (所有はMP3のみ)

Produced by Ali Harper and Iain Cave (Ali-Cat Productions)
Music arranged, produced and mixed by Tom Rainey
Soundtrack played by members of the Christchurch Symphony Orchestra
Backing vocals performed by Jennine Bailey, Naomi Ferguson and Juliet Reynolds-Midgely
Recorded and engineered by Thom O’Connor

Amazonリンク(MP3

2024年2月25日 (日)

Christmas Kiss/Diana Panton (2012年)

カナダの女性ジャズ・ヴォーカリスト、ダイアナ・パントンの5thアルバムです。レアなバカラック作品1曲をカヴァー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original CD front cover/back cover
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所有日本盤CDのジャケット表/ケース裏

日本盤CD全16トラック中、バカラック作品は1トラック

11. WINTER WARM (4:47)


カナダの女性ジャズ・ヴォーカリスト、ダイアナ・パントンの5thアルバムです。尚、日本盤は『 Winter Kiss 』というタイトルに改題されています。

ダイアナ・パントンは、1974年カナダのオンタリオ州ハミルトン生まれ。(ハミルトンはトロントとナイアガラの滝の中間に位置する都市。遠い昔、海外出張した際にトロントからナイアガラの滝を通って米国ニューヨーク州ロチェスターまでバスで移動したことがあるのですが、その時に通過していたことになります。どーでもいい話ですが😅) 地元のジャズ・バンドにバック・シンガーとして活動していた高校生当時、カナダの重要なジャズ・プレイヤーであるドン・トンプソンに見出されます。その後パリの大学でフランス文学を学んだのち2005年にアルバム・デビューを果たしました。ファニーで若干ハスキーな歌声が特徴的です。

本作は5作目にして彼女初のクリスマス・アルバム。とはいっても、アルバム全体にウキウキしたクリスマス感は薄く、聴いてると冬のぬくぬくした部屋の中でゆったり寛いでる情景が浮かびます。実際、私は本アルバムを聴いてる途中でうたた寝してしまいました。

─ 2曲のオリジナルと、13曲のカヴァー、そして日本盤のみに1曲のボーナス・トラックを収録した、計16曲。バックを務めるのは、前述のドン・トンプソン(ピアノ/ベース/ヴィブラフォン)と、レグ・シュワガー(ギター)、ギド・バッソ(コルネット/フリューゲルホーン/トランペット)という、いずれも彼女の音楽の精神的支柱ともいえるプレイヤーたちだ。ダイアナの歌声を引き立たせるように、抑制を効かせた演奏はリラックスした趣で共感できる。  またこの『 Winter Kiss 』は選曲がとても興味深い。というか心にくい。ジャズのクリスマス・アルバムといえば、トラディショナルで誰もが知ってる曲を最初から最後まで収録させるのが通例だが、この作品には有名曲から隠れた名曲まで違和感なく並んでいる。つまりダイアナにとってこの作品は企画盤というよりは、彼女自身の趣味を反映させた、オリジナル作品としての思いが強く込められている。  ─ (日本盤ライナーノーツより)
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同感ですねー。T-3.「 クリスマス・キッス 」は彼女とドン・トンプソンが共作した佳曲でそれをアルバム・タイトルにしているのですが、日本盤ではジャケットも含めてタイトルをわざわざ『 Winter Kiss  ウインター・キッス〜わたしのホリディ) 』に変えたのは、クリスマス・アルバムではなくオリジナル作品としてアピールしたかったからなんでしょーね。

バカラック・カヴァーは、T-11.「 ウィンター・ウォーム 」。ハル・デイヴィッドとのコンビによるホリデーシーズン向けの曲で、米女優/歌手のゲイル・ストームが1957年11月にシングルB面でリリースしたのがオリジナル。テンポ♩≒66〜70でハープ/グロッケンシュピール/フルート等を用いたドリーミーなアレンジ&歌唱のオリジナルに対して、ダイアナ・パントンのカヴァーは♩≒47〜50という極めてゆったりとしたテンポで羽毛でふんわりと包み込まれるような歌唱&演奏です。伴奏はピアノのみで、中間部のソロ演奏も美しく素敵です。刺激的な歌声&音が全くないんですよ。この曲のカヴァーの中でも最も子守唄に向いたバージョンなんじゃなかろうか…(もちろん私個人の感想です)。

拙ブログでは以前の記事で「 ウィンター・ウォーム 」のカヴァー・リストを作りました。その時点のカヴァーは6バージョンだったので、ダイアナ・パントン版を加えるとカヴァーは7バージョンということになります。私が知る限り…ですが。


【データ】
『 Christmas Kiss 』(邦題:Winter Kiss  ウインター・キッス〜わたしのホリディ
Diana Panton




CD:2012年リリース (所有CDは、2012年10月24日リリースの日本盤。解説は山本勇樹氏)
レーベル:Diana Panton (Canada) (所有CDは、MUZAK, INC.)
番号:DIA-CD-5605 (所有CDは、MZCF-1259)

Produced by Diana Panton
Co-Produced by Don Thompson
Arrangement by Don Thompson
  Diana Panton - vocal
  Don Thompson - piano, bass, vibraphone
  Reg Schwager - guitar
  Guido Basso - trumpet, flugel, cornet
  Harrison Kennedy - vocal on track 2
Recorded at Inception Sound Studios, Toronto, Ontario, Canada in August 2011
日本盤ボーナス・トラック:T-9.「 SNOW 」

Amazonリンク日本盤


2024年2月18日 (日)

Plays The 3B's/The Carmen Cavallaro Camp (1970年)

米国のピアニスト、カーメン・キャバレロが The Carmen Cavallaro Camp 名義で1970年にリリースした3Bカヴァー集。バカラック・カヴァーを4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10トラック中、バカラック作品は4トラック

A1. ELEANOR RIGBY (3:37)

A2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:58)
A3. LET ME GO TO HIM (2:34)
A4. PAPER MACHE (3:25)
A5. YESTERDAY (4:29)
B1. HERE, THERE AND EVERYWHERE (3:17)
B2. GAVOTTE (2:59)
B3. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (2:08)
B4. AIR ON A G STRING (3:22)
B5. LET IT BE (3:11)

収録時間約33分


米国のピアニスト、カーメン・キャバレロが The Carmen Cavallaro Camp 名義で1970年にリリースした3Bカヴァー集です。

The 3B's とはその下に小さく括弧書きされてる通り The Beatles, Bacharach & Bach のこと。ジャケットにも左からビートルズ4人→バカラック→バッハが描かれてます。バカラックの顔は全然似とらんけど😆。

カーメン・キャバレロは、1913年NYC生まれ(1989年没、享年76歳)の🇮🇹系米国人ピアニスト。 ─ クラシックの演奏家を目指したが、ある時点から非常にポピュラー音楽に興味を持ち、転向した経緯があり、演奏基礎はクラシックにあった。クラシックからポピュラー・ミュージックまで幅広くこなした。ピアノ・タッチは豪快で、処狭しと細かい装飾音もまじえたもので、「キャバレロ・タッチ」と称される。和音と装飾音のリズムは目の前が開けるように華麗な演奏で、「煌びやかなホテルのロビーにいるよう」とも評された。  ─ (Wikipediaより)

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この画像はDiscogsからパクりました。いつの写真かわかりませんが若い頃の写真でしょう。そのDiscogsによればキャバレロのレコードデビューは1939年(勿論SP盤の時代)。キャバレロ名義だけでも1940年代に12枚、50年代に19枚、60年代に25枚、70年代に12枚、80年代に3枚のアルバムが載っています。人気あったみたいですねー。


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さて本アルバム。↑ はダブルジャケットを開いて90°回して縦向きにしたところ
。3Bについて何て書いてんだろ?と期待して英文読んだんですが、その中身はキャバレロの宣伝文句のみ。イラストのモノクロ版なんか載せるヒマがあったら何かしら3Bの解説しろやっ! と、思わずツッコミを入れてしまいました😤。

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全10曲の内訳はビートルズ4曲(A1,A5,B1,B5)、バカラック4曲(A2〜A4,B3)、バッハ2曲(B2,B4)。バッハのB2.「 GAVOTTE 」の元曲は「 French Suite No.5 」で、B4.「 AIR ON A G STRING 」はご存じ「 G線上のアリア 」です。

キャバレロの華麗で豪快で煌びやかなピアノが主役。ピアノのタッチはクラシック系統のソレ。ピアノを生かしつつ更に自らも活躍しているオケのアレンジがこれまた秀逸でして。オリジナリティのあるオカズやオブリガートをふんだんに盛り込み、管楽器・弦楽器・パーカッションがメリハリの効いた演奏でそれに応えています。加えて、曲により加わる男女コーラスも美味(A4.と B1.では一部歌詞も歌ってます)。アレンジャーのJim Tylerはブロードウェイ・ミュージカルの編曲家で、ヴィック・ダモンやトニー・ベネットのショーでも活躍した方だそう。Good jobです。


バカラック4曲について感想を。A2.「 恋よ、さようなら 」は可愛らしい小洒落たアレンジ。A3.「 レット・ミー・ゴー・トゥー・ヒム(恋に生きて)」はディオンヌがオリジナルでカヴァーが片手くらいしかない超レア曲。オリジナルのゆったりワルツに対しキャバレロ版はテンポの早い跳ねるジャズワルツ調が新鮮。A4.「 ペイパー・マシェ 」はディオンヌのオリジナルから遠く離れないドリーミーなアレンジ。2コーラス目だけ男女コーラスが歌詞をハモって歌います。B3.「 雨にぬれても 」は♩≒180超のむっちゃ速いテンポにのけぞります。ブラスとピアノの派手な掛け合いが聴きどころで、2分少々と尺は短いですが印象に残ります。そーですねぇ、A3.とB3.をレコメンドにしときましょうか。

因みに、A2.〜A4.の3曲はディオンヌが1970年4月にリリースしたアルバム『 I'll Never Fall In Love Again 』の収録曲で、3連続シングルA面曲でもあります(「 恋よ、さようなら 」1969年12月リリース【US#6】、「 レット・ミー・ゴー・トゥー・ヒム 」1970年3月リリース【US#32】、「 ペイパー・マシェ 」1970年7月リリース【US#43】)。B3.「 雨にぬれても 」は言わずと知れた'70年代最初の全米1位曲。「 恋よ、さようなら 」は1968年のミュージカル『 Promises, Promises 』の挿入歌ですが米国でヒットしたのはディオンヌのカヴァーでしたので、旬の曲ばかりをチョイスした感じでしょうか…。

アルバム中の白眉はA5.「 イエスタデイ 」。ピアノ協奏曲のようなイントロで始まります。1コーラス目はわりと普通にイエスタデイしてるんですが、2コーラス目のサビからからいきなり高速ラテンモードに突入! …と思ったら劇的なクライマックスを迎え、その後はしっとり陰影あるエンディング。まるで一遍のロマンス映画(ひょんなことから知り合い障害を乗り越え結ばれたが引き裂かれてしまう悲恋物語)を観たような壮大なアレンジに唸りました。

このアルバムは掘り出し物ですねー。YouTubeにフルアルバムがUPされてますが、是非CDリイシューして欲しいものです。

ここからはオマケ。キャバレロのバカラック・カヴァーを更にご紹介(MP3すら所有しておらずあくまでYouTubeを聴いての感想です
😅)。
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キャバレロは1965年リリースのアルバム『 The Magic Music Of Hollywood 』で「 WIVES AND LOVERS 」(2:06)をカヴァー。キャバレロのピアノ+ドラムス+ギターという変則ピアノトリオ編成。ドラムスは単調に刻むだけだしギターもバッキングだけなので注目はピアノなんですが、多少アドリヴはあるものの単調な演奏でう〜んという感じ、残念!
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また、1968年リリースのアルバム『 Carmen Cavallaro Plays The Hits 』では「 ALFIE 」(2:53)をピアノトリオ編成でカヴァー。ドラムスとベースはサポートに徹しています。キャバレロは華麗なアドリヴを交えて情感込めてピアノを弾いてますが、まぁ無難な演奏といったところかと。


【データ】

『 Plays The 3B's (The Beatles, Bacharach & Bach)
The Carmen Cavallaro Camp

LP:1970年リリース
レーベル:GWP Records (US)
番号:ST 2011

Produced by Andy Wiswell
Arranged by Jim Tyler
Recorded at Pye Studios, London, England

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

 

2024年2月 8日 (木)

バカラックさん初のTV特番『 The Bacharach Sound 』(1965年)

1965年4月14日に英国で放送されたバカラックさん初のTV特番をご紹介!

バカラックさんがお亡くなりになって今日で1年…


バカラック自伝(110〜111ページ)にも載ってた英グラナダTVの『 The Bacharach Sound 』が3ヶ月ほど前(2023年10月17日)YouTubeにアップされてました。公式とかじゃないのでちょっと後ろめたいですが、バカラックさん初のTV特番を視聴してありし日を偲びましょう。


動画は約38分間。

0:04  Introduction - Clips of Bacharach driving a car in London
4:07  「 24 HOURS FROM TULSA 」(Bacharach) - Bacharach Talks

5:54  「 ANYONE WHO HAD A HEART 」(Dionne Warwick) - Bacharach Talks
9:17  「 MAGIC POTION 」(The Searchers) - Bacharach Talks with Hal David
12:54  「 TRAINS AND BOATS AND PLANES 」(Bacharach) - Bacharach Talks
16:09  「 I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF 」(Dusty Springfield)
19:16  Intermission
20:09  「 WIVES AND LOVERS 」(Dionne Warwick) - Bacharach Talks
23:47  「 ANY DAY NOW 」(Chuck Jackson) - Bacharach Talks
27:22  「 WISHIN' AND HOPIN' 」(The Merseybeats & Dusty Springfield) - Bacharach Talks
30:35  「 (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME 」(Bacharach) - Bacharach Talks
33:52  「 WALK ON BY 」(Dionne Warwick)
36:46  Outroduction

当時バカラックさんは36歳、若々しいですねー。放送の翌月(5月)にはKAPPからバカラックさん初のアルバム『 HIT MAKER! 』をリリース…というタイミング。アルバムからの先行シングルとして英国でリリースされた「 TRAINS AND BOATS AND PLANES(汽車と船と飛行機と)」も披露してますし(この曲は全英チャートで4位まで上昇します)、良いプロモーションになったことでしょう。

…にしても、バカラックさんの運転映像長すぎませんかぁ? アイドルじゃないんだしー。それに、当時はそれが当たり前だったとはいえ全曲映像に音源をかぶせてるのもねぇ…。「 WISHIN' AND HOPIN' 」でキーの違うマージービーツとダスティを編集で無理やり繋げてるトコなんて強引すぎ! な〜んてぶつくさ言ってたら天国のバカラックさんヘソ曲げそうなのでこの辺でやめときまーす💦。


2024年2月 4日 (日)

Rarin'/Something Big (2013年)

米国のバンド、Something Big が2013年にリリースした5曲入りEP。バカラックのレアな曲ばかりをカヴァー! (デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. AFTER THE FOX (2:23)  FM
2. IT DOESN'T MATTER ANYMORE (2:50)  F
3. COME AND GET ME (3:25)  F
4. SOMETHING BIG (3:29)  FM
5. LIVE AGAIN (3:01)  F

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記


収録時間約15分


米国のバンド、Something Big が2013年にリリースした5曲入りEP。バカラックのレアな曲ばかりをカヴァー!

─ Something Big, interpreters of great pop jazz. Constantly curating our collection to reflect our style. Listen, enjoy tunes Chamber Pop style Bacharach, Beatles, Cole Porter, Tears for Fears, Dusty Springfield, Rolling Stones, Carole King.
サムシング・ビッグ、偉大なポップ ジャズの解釈者。 私たちのスタイルを反映するためにコレクションを常に厳選しています。 チェンバー・ポップ・スタイルのバカラック、ビートルズ、コール・ポーター、ティアーズ・フォー・フィアーズ、ダスティ・スプリングフィールド、ローリング・ストーンズ、キャロル・キングなどの曲を聴いて楽しみましょう。  ─ (Facebook の Something Big ページの自己紹介より 原文ママ+Google翻訳)

更に詳しい自己紹介がバンド公式サイトにありました。

─ From San Francisco's avenues by ocean beach Eva Jay Fortune first hatched Something Big. Kevin Bertness often jammed with Eva Jay and in 1997 began meeting regularly to play the music of Burt Bacharach & Hal David. Kevin played piano and soon they brought in bass player Steve Fowler. Until 1999 Nicky Garratt, dispite living only a couple of blocks away, had not met Eva Jay. Nicky, a long time champion of the Music of Bacharach and David, then joined the sessions. Now dubbed "Something Big" after a late uplifting yet rather rare Bacharach/David song, the group played their first show at a party on 23rd of September 1999.The set expanded over the years to include songs they simply liked. Now jazz standards, pop, Beatles and even Kraut rock have been brought into the Something Big sound.
サンフランシスコのオーシャンビーチ沿いの大通りから、エヴァ・ジェイ・フォーチュンは初めてサムシング・ビッグを孵化させました。 ケビン・バートネスはエヴァ・ジェイと頻繁にジャムセッションをしており、1997年にはバート・バカラックとハル・デイヴィッドの音楽を演奏するために定期的に集まり始めました。 ケビンはピアノを演奏し、すぐにベーシストのスティーブ・ファウラーを迎え入れました。 ニッキー・ガラットは、ほんの数ブロック離れたところに住んでいたにもかかわらず、1999年までエヴァ・ジェイに会ったことはありませんでした。 その後、ミュージック・オブ・バカラックとデヴィッドの長年のチャンピオンであるニッキーがセッションに参加しました。 後期の高揚感のある、しかしかなり珍しいバカラック/デヴィッドの曲にちなんで「サムシング・ビッグ」と呼ばれるようになったこのグループは、1999年9月23日にパーティーで初めてショーを行いました。セットは長年にわたって拡張され、単に彼らが気に入った曲も含まれるようになりました。 現在では、ジャズ・スタンダード、ポップス、ビートルズ、さらにはクラウト・ロックさえもサムシング・ビッグ・サウンドに取り入れられています。  ─ (Something Big 公式サイトより 原文ママ+Google翻訳)

バンド名の由来はやっぱりバカラック曲だったんだっ❗️

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左の写真は Something Big の公式サイトからパクったもので2011年8月撮影。左から Steve Fowler (Bass), Eva Jay Fortune (Vo.), Bruce Greenstein (Perc.), Kevin Bertness (Piano), Nicky Garratt (Guitar) の面々で、本作アートワークに書かれている5名の皆さんです。
一方、右の写真は Facebook Something Big ページの2023年2月10日投稿より(ただし写真自体は2021年頃撮影されたもの)。ケビンはギターも弾くんですね。今はこの3名で活動しているようです。

んで、その2023年2月10日投稿をスクショしたのがこちら ↓ 。亡くなったバカラックさんへの思い&感謝がひしひしと伝わってきます。
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前置きが長くなりました💦。本題に入ります。収録曲の5曲はいずれもレア曲ですので、1曲ずつオリジナルにも触れながら紹介していきます。

T-1.「 アフター・ザ・フォックス 」は1966年の🇬🇧🇮🇹映画『 After The Fox(紳士泥棒/大ゴールデン作戦)』の主題歌。英国のロック・バンド、ザ・ホリーズが歌い、ゲスト・ヴォーカルとして映画主演のフォックス自身(ビーター・セラーズ)をフィーチャーしていました。それをほぼ完コピ❗️ テンポ(♩≒120)、キーも同じです。メインヴォーカルはエヴァ・ジェイ・フォーチュンが男性っぽい声色で歌い、ゲスト・ヴォーカル役はスティーヴ・ファウラーが務めています。公式サイトによればスティーヴはこれがヴォーカル・デビューだったとか👏。

T-2.「 気にしないさ 」は1966年の🇺🇸
TVミュージカル『 ON THE FLIP SIDE(オン・ザ・フリップ・サイド)』でリック・ネルソンが歌ったのがオリジナル。本作は、そのオリジナルよりも1967年に The Cyrkle がカヴァーしたロック寄りのテイストに近いです。が、アンプラグドなウッドベースやコンガの響きだったり最初の1コーラス6小節までのスローテンポ(♩≒65)から倍速(♩≒130)になる展開にはハッとさせられます。

T-3.「 カム・アンド・ゲット・ミー 」は1966年4月にジャッキー・デシャノンがリリースしたシングルがオリジナル(こちらでちょろっとご紹介)。この曲をチョイスするなんてシブいなぁ。ジャッキー版とキーは同じですがテンポはジャッキー(♩≒98)より速い♩≒110。高低差が大きく難しいメロディをアンプラグドな演奏をバックにエヴァ・ジェイはエネルギッシュに歌っています。

T-4.「 サムシング・ビッグ 」は1971年の🇺🇸映画『 Something Big(テキサス大強盗団)』の主題歌で、歌ってたのはマーク・リンゼイ(こちらでちょろっとご紹介)。本作のバンド名の由来でもあります。この曲のカヴァーはマーク・リンゼイ版かバカラックのセルフ・カヴァー版、どちらかのイントロをコピーするケースが大半ですが、このカヴァーのイントロ30秒間はフリージャズのようにいろんな楽器が好き勝手に音を鳴らすというもの。いやー、流石はバンド名にしただけのことはあって独自のアイディアをぶつけてきます。本編はマーク・リンゼイ版(♩≒166)やバカラック版(♩≒164)よりやや遅い♩≒154で、アコースティックな響きもあって落ち着いた印象を受けます。私的にはレコメンド。

T-5.「 リヴ・アゲイン 」は🇺🇸ソウル・シンガーのアーマ・トーマスがオリジナル。1965年にレコーディングしたものの当時はリリースされず1992年に初めて世に出ました(こちらでちょろっとご紹介)。オリジナルとほぼ同じテンポ&キーでアーマ・トーマスに負けず劣らずエヴァ・ジェイがパワフルに歌っています。

なお、YouTube に本作が自動生成されていましたのでリンクを貼ってきます(こちら)。また、2006年頃の「 カム・アンド・ゲット・ミー 」ライヴ動画がYoutubeに上がってましたので併せてリンクを貼っておきます(こちら)。本作はEPですが、ミニアルバム相当として “カヴァーアルバム” カテゴリに分類しました。

ここからはオマケ。MP3で所有している「 SOMETHING BIG 」(バンドじゃなくて曲の方)のカヴァーをご紹介!
バカラックのセルフカヴァー(『 LIVING TOGETHER 』収録)、ジム・オルーク(『 Eureka 』収録)、ローナン・キーティング(『 WHEN RONAN MET BURT 』収録)は拙ブログで収録アルバムを紹介してますので省略します。
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🇨🇦の The Johnny Burt Society が1972年にリリースしたアルバム『 Come Summer 』で「 SOMETHING BIG 」(2:03)をカヴァー。このアルバムはカナダ産ソフトロックの最高峰なんだそう。男女コーラスがなんとも爽やかだこと。対照的にブラスのオカズは派手ですけど。
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🇫🇮フィンランドの女性シンガー、Katri Helena が1972年にリリースしたアルバム『 Lauluja Meille Kaikille 』で「 SOMETHING BIG 」(2:30)をカヴァー。フィンランド語詞で歌っていて曲名は「 Jotain Suurta Tapahtuu 」。彼女は1945年生まれでこの時27歳。ヴィブラートが効いて大人っぽいのに可愛らしい、そんな歌唱です。
ここまでの2曲、イントロはいずれもマーク・リンゼイ版。ってゆーか、バカラックがセルフ・カヴァーするのは1973年なのでまだマーク・リンゼイ版しか存在しなかったワケです。
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🇮🇸アイスランドの男性歌手/ソングライター/DJ、Páll Óskar が Páll Óskar & Casino 名義で1998年にリリースしたアルバム『 Stereo 』で「 SOMETHING BIG 」(3:23)をカヴァー。イントロはバカラック版。全体的にもバカラック版のほぼコピーでしょうか。
このアルバムでは他にもバカラック・カヴァーを収録。「 DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE(サン・ホセへの道)」(2:20)、「 KNOWING WHEN TO LEAVE(去りし時を知って)」(2:39)、「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」(3:16) の3曲なんですが、バックの演奏がチープでイマイチかなー。

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🇺🇸ニューヨークのテナー・サックス奏者、Charles Owens が Charles Owens Quartet 名義で2022年にリリースしたアルバム『 Golden Moments 』で「 SOMETHING BIG 」(6:14)をカヴァー。イントロはバカラック版ですが、冒頭のサックスからピアノやベースに拡大して約50秒間にも及ぶ壮大なイントロを展開。コンテンポラリージャズのフィーリング溢れる独創的なイントロです。バカラック版の♩≒160より若干ゆったりした♩≒150のテンポ感がまた絶妙で、サックスやピアノのグルーヴィーなアドリヴも聴いてて気持ちいいっす。レコメンドですね👍。ちなみに、途中でベースとピアノのアドリヴが入る「 SOMETHING BIG (Extended Version) 」(9:19)もイイですよー。
なお、彼は1972年生まれ。米国には1939年生まれの同姓同名ジャズ・サックス奏者がいます。混同しませんように。

ご紹介したオマケは全てYouTubeで聴くことができます
✌️


【データ】
『 Rarin' 』
Something Big


MP3:2013年2月12日リリース
レーベル:CHAMBER POP RECORDS (US)
番号:-

Producer - unknown

Arrangement - unknown
Musicians
  Eva Jay Fortune - Vocals
  Kevin Bertness - Piano
  Bruce Greenstein - Percussion
  Nicky Garratt - Guitar
  Steve Fowler - Bass

Amazonリンク


2024年1月28日 (日)

SPACED OUT/Enoch Light & The Light Brigade (1969年)

パーカッション奏者、また電子音楽のパイオニアとしても知られるイノック・ライトの1969年の余りにも有名なラウンジグルーヴの名作。バカラック・カヴァーを4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は4トラック

1. BOND STREET (2:38)
2. LOVER'S CONCERTO (2:49)
3. KNOWING WHEN TO LEAVE (2:48)
4. MY SILENT SONG (2:52)
5. WALK ON BY (3:02)
6. ELEANOR RIGBY (2:42)
7. A LITTLE FUGUE FOR YOU AND ME (2:48)
8. NORWEGIAN WOOD (2:48)
9. OB-LA-DI, OB-LA-DA (2:54)
10. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (2:40)
11. PETITE PAULETTE (2:44)
12. GET BACK (3:40)


パーカッション奏者、また電子音楽のパイオニアとしても知られるイノック・ライトの1969年の余りにも有名なラウンジグルーヴの名作。

イノック・ライトとは… ─ 1907年8月18日米国オハイオ生まれ。イージー・リスニング分野で活躍したプロデューサー。30年代にバンドを率いてラジオなどに出演。40、50年代には多くのポピュラー・バラードを生む。60年代後半ザ・チャールストン・シティ・オールスターズのヒット・シリーズをプロデュース。再び注目を浴びると50年代に発表の『プロボケーション・パーカッション』などが米国のチャートでトップ10入りをした。78年他界。  ─ (CDジャーナルより)
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本作はいろんな顔を持つイノック・ライトが1969年(62歳頃)にリリースしたアルバムです。

─ “ムーグ”、“イージーリスニング”の巨匠イノック・ライトが'70年に放った、POPでキッチュ、めくるめくソフト・ロック、ムーグ・ワールド‼︎ '60年代を通して最大のヒットメーカーでありサウンド・クリエイターであるイノック・ライトが、ビートルズ、バッハ、そしてあのバカラックの名曲を、彼のレーベル “Project 3” の独特のクリアーなサウンドとムーグ・シンセサイザーで料理したナイス・アルバム。アポロより早く月に到着してしまった男イノック・ライトと宇宙に飛び出せ‼︎ ─ (1994年リイシュー日本盤LPの帯より)

“'70年に放った”となってるのは最初の日本盤リリースが1970年だったからか。
それにしても、同じ年(1969年)に史上初めて人類による月面着陸に成功したアポロ11号をライバル?に見立てて“アポロより早く月に到着したイノック・ライト”って…😅。なんのこっちゃ??

ジャケット表の右にニョロニョロフォントで書かれているのは Exploratory trips through the music of Bach Bacharach The Beatles integrating the Moog the guitar scene electric harpsichords flugelhorns etc...(モーグ、ギターシーン、エレクトリックハープシコード、フリューゲルホルンなどを統合した、バッハ・バカラック・ビートルズの音楽を巡る探検旅行)。むむむ、音楽の探検旅行と月面着陸を同列にしてるってことか? だったら数日前にSLIMがやっと月面着陸した日本はボロ負けやん(無人やし)、やっぱ訳わからん…😅。

本作のバカラック・カヴァー4曲はかなり前からMP3で聴いてたのですが、ごく最近リイシューCDを手に入れたので今回取り上げた次第。でもこのリイシューCD、曲名しか載ってない雑なパッケージの代物でして。よく見るとジャケット表のアートワークも左側&下側が切れてるし…。それに極低レベルですがチリチリノイズも入ってるし(要は盤起こしってヤツですね)、くっそ〜😡。

気を取り直して中身をご紹介しましょう。全12曲の内訳はバッハ(T-2,4,7,11)とビートルズ(T-6,8,9,12)とバカラック(T-1,3,5,10)が仲良く4曲ずつ。因みにバッハの元曲はT-2.「 Minuet in G Major(メヌエット ト長調)」、T-4.「 Air for the G string(G線上のアリア)」T-7.「 Little g minor Fugue(小フーガ ト短調)」、T-11.「 Bourrée No.1 」。T-11以外は聴けばわかる曲ばかりです。

ビッグバンド系のオケとモーグ・シンセの合同演奏で、けっこう男女コーラスも活躍します。でもメインはオケでモーグは時々メロディやオブリガートを奏でる程度。全くモーグが登場しない曲もありますしね。そんなことよりも、各曲の多彩で凝ったノリの良いアレンジに注目して聴くのが本作を楽しむ肝。

まずはバカラック・カヴァーについて。T-1.「 ボンド・ストリート 」は楽しげに歌うホーン入りの踊れるアレンジ。T-3.「 去りし時を知って 」はイントロ冒頭のマリンバから始まる特徴的なリフが印象的で、トランペットやトロンボーンによるアドリヴ気味のソロがゴキゲンな疾走感のある好カヴァー。聴いててウキウキします。本作のバカラック・カヴァー中私が最も気に入った曲で、これはレコメンドですねー。モーグは出てこないけどそんなの全く気になりません。T-5.「 ウォーク・オン・バイ 」はねちっこいアレンジでモーグのビンビンという音に時代を感じます。T-10.「 世界は愛を求めている(愛を求めて)」は意表をつくバロック風の木管アンサンブルでスタートし、モーグ、フルート、ファゴット、トランペット、女性コーラスなどが入れ替わり立ち替わりメロディを奏でます。

ビートルズ曲ではT-6.「 エリナー・リグビー 」がゴージャスなアレンジ且つグルービーでレコメンド。バッハ曲ではT-11.「 プティット・ポレット 」が本作で唯一4種類くらいの音色をモーグで演奏して(多分オーバーダビングしたんでしょう)とても幼稚なアレンジになってしまってるのが可笑しい。一方、T-7.「 2人だけの小フーガ 」はブラス・ロック風というかロック・ミュージカル風に仕立ててすごく新鮮、アレンジャーのセンスの良さを感じます。

やっぱ名作だわ…。

さて、ここからはオマケ。MP3で所有しているイノック・ライトによるバカラック・カヴァーをご紹介。
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The Enoch Light Singers名義で1968年にリリースしたアルバム『 12 Smash Hits 』で「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」(2:52)をカヴァー。男女コーラスがフルで歌っています。オリジナルのコピーという訳ではないのですが、アレンジはあまり特徴ないかなぁ。アウトロでメロディをフェイクしながらフェードアウトしていくのですが、そのフェイクは新鮮に感じます。
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同じくThe Enoch Light Singers名義で1968年にリリースしたアルバム『 Whoever You Are, I Love You 』で「 Whoever You Are, I Love You(あなたはあなた)」(3:22)をカヴァー。これも男女コーラスがフルで歌います。全体的にオリジナルの雰囲気に近いですがフルートによるオブリガートは瑞々しく好印象です。
このアルバムではもう1曲「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU 」(2:46)もカヴァーしていますがMP3化はされてません。でもYouTubeでは聴けます。「 あなたはあなた 」と同様に男女コーラスがオリジナルに近い雰囲気でふんわり歌っています。※
※ 2024/1/29 追記(ちたりた様よりYoTubeの情報提供をいただきました。ありがとうございました。)

イノック・ライトによるバカラック・カヴァーはMP3化されてないものも多いです。
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Enoch Light & The Light Brigade名義で1966年にリリースしたアルバム『 Film On Film • Great Movie Themes 』で「 ALFIE 」(3:19)をカヴァー。MP3化されてませんがYouTubeでは聴けます。基本は大袈裟なオーケストラで、中間部とエンディングはアコギでしっとり…という抑揚が効いたアレンジでございます。
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Enoch Light & The Light Brigade名義で1969年にリリースしたアルバム『 The Best Of The Movie Themes 1970 』で「 RAINDROP KEEP FALLING ON MY HEAD(雨にぬれても)」(2:45)と「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」(3:13)をカヴァー。いずれもMP3化されてませんがYouTubeでは聴くことができます。「 雨にぬれても 」は男性シンガーがフルで歌っててビックリ。「 エイプリル・フール 」はパーシーフェイス版テイストのアレンジでした。
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Enoch Light And The Glittering Guitars名義でリリース(1969年)した唯一のアルバム『 Enoch Light And The Glittering Guitars 』で「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(3:20)をカヴァー。MP3化はされてませんがYouTubeで聴けます。ギターとオケのアルバムで、「 恋の面影 」はアルバムの冒頭曲。主メロのおよそ半分はギター。それよりもところどころバックに流れる“8分音符が昇って降りるギターの動き”が独特でオッとなります。これが全編で流れればレコメンドだったのに。
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Enoch Light & The Light Brigade名義で1972年にリリースしたアルバム『 Movie Hits! 』で「 LONG AGO TOMORROW(ロング・アゴー・トゥモロー)」(4:10)をカヴァー。これもMP3化はされてませんがYouTubeでは聴けます。オリジナルのB.J.トーマス版に近い雰囲気でゆったりゴージャスなアレンジ。メロディはフリューゲルホルン、ストリングス、コーラングレ等が紡いでいます。これはレコメンドですね。


【データ】
Enoch Light Presents SPACED OUT 』
Enoch Light & The Light Brigade

LP:1969年リリース (所有CDは、1999年リイシューの輸入盤)
レーベル:Project 3 Total Sound (US) (所有CDは、SPJ Music (US) )
番号:PR 5054 SD (所有CDは、SPJ 5704)

Producer – Enoch Light
Co-producer – Jeff Hest, Tony Mottola
Arranger - Dick Lieb
Bernie Glow (tp), Urbie Green (tb), Phil Bodner (as), Bob Tricarico (ts), Bucky Pizzarelli (g), Tony Mottola (g), Vinnie Bell (g), Dick Hyman (org, p, el-harpsichord) , Bob Haggart (b), Russell George (b), Phil Kraus (mar), Billy LaVorgna (ds), 
Dick Lieb (moog) , etc…

Amazonリンク(1999年リイシューCD)(2017年リイシュー 2 on 1 CD

2024年1月 7日 (日)

Repainted From Memory/Jason Mendelson (2021年)

米バージニア州在住のミュージシャン、Jason Mendrlson が2021年にリリースした『 Painted From Memory 』のフルカヴァー・アルバムです。(デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. IN THE DARKEST PLACE
2. TOLEDO
3. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL
4. THIS HOUSE IS EMPTY NOW
5. TEARS AT THE BIRTHDAY PARTY
6. SUCH UNLIKELY LOVERS
7. MY THIEF (feat. Ari Voxx)
8. THE LONG DIVISION
9. PAINTED FROM MEMORY (feat. Ari Voxx)
10. THE SWEETEST PUNCH
11. WHAT'S HER NAME TODAY ?
12. GOD GIVE ME STRENGTH

収録時間約58分


米バージニア州在住のミュージシャン、Jason Mendelson(ジェイソン・メンデルソン)が2021年にリリースしたアルバムです。

公式サイトによれば、 ─ メンデルソンはバージニア州Strasburg(ストラスバーグ)の作曲家であり、2010年代のD.C.地域のMetroSongsプロジェクトで最もよく知られているマルチインストゥルメンタリストであり、各ステーションの場所の歴史に独自の音楽的な風味を注入しています。─ …だそうです。要は、マルチに楽器を操るローカルなミュージシャンといったところでしょうか。Apple Musicには本作含みアルバム10作、EP1作、シングル4曲がリリースされています。ストラスバーグの場所 ↓ … ワシントンD.C.から西に約80マイル(約130km)。公式サイトよりメンデルソンのお姿 ↓ … なんでもHe prefers to play electric 12-string guitar and sing. なんだとか。
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んで本作。アルバムタイトルやアートワークを見た第一印象は、“バカラックとコステロが共作したアルバム『 Painted From Memory 』のパロディじゃないの?”。タイトルの頭に“Re”が付いた意味は単なるコピーか再構築か、それともやっぱりパロディなのか?…などなど、聴く前から想像が膨らみます。収録曲全12曲のタイトル及び曲順は『 Painted From Memory 』と全く同じ。そして聴いてみたところ、『 Painted From Memory 』の大まじめなオマージュ作品で、全体的にはオリジナルのアレンジを尊重しつつもそのうち数曲には独自の解釈を注入したとても意欲的なフルカヴァー・アルバムでございました。2021年1月にリリースされていたのに約3年全く気づかず…不覚でしたぁ😓

T-9.「 PAINTED FROM MEMORY(ペインテッド・フロム・メモリー)」のみ、YouTubeに公式MVがアップされています。※ なお、自動生成により本作全12曲の音源がYouTubeにアップされてました。(2024/1/7 9:49 追記)


動画はレコーディング映像なんですが、歌うだけじゃなくすべての楽器(ローズピアノ、オルガン、フルート、クラリネット、トロンボーン、E.ギター、E.ベース)をメンデルソンが演奏して一人多重録音をしていることが分かります。鍵盤・木管・金管楽器にギターまで、マルチインストゥルメンタリストの肩書きは伊達じゃなかった! 他の曲で
聴こえるシンセ系やパーカッション系、それにバックコーラスも(あくまでも推測ですが)メンデルソンだと思われます。ただ、曲名に併記してあるようにこのT-9.「 ペインテッド・フロム・メモリー 」とT-7.「 MY THIEF(マイ・シーフ)」だけはフィーチャリング・ヴォーカルとしてワシントンD.C.を拠点に活動するジャズ・シンガー、Ari Voxx(アリ・ヴォックス)が参加しています。

キーは3曲を除いてオリジナルと同じ。キーが異なる3曲についてメロディ最初の音を比較してみると、T-2.「 TOLEDO(トレド)」がオリジナルEに対しGと短三度 ↑ 、T-9.「 ペインテッド・フロム・メモリー 」がA♭に対しB♭と長二度 ↑ 、T-11.「 WHAT'S HER NAME TODAY(ホワット・ハー・ネーム・トゥデイ?)」がDに対しEと長二度 ↑ という風にいずれもメンデルソン版のキーが高くなってます。メンデルソンは高い音でも地声で歌っている部分が多く、コステロに対抗?してよく頑張ってると思います。

アレンジ面では、T-2.「 トレド 」のリズムやシンセの音がチープ過ぎるのをはじめシンセ系にチープな音色が散見される点はマイナスポイントですが、それ以外はなかなかのクオリティ。オリジナルとテイストが違って新鮮に聴こえる以下数曲はレコメンドです。T-4.「 THIS HOUSE IS EMPTY NOW(ディス・ハウス・イズ・エンプティ・ナウ)」ではオリジナルには無い独自のリフが印象的ですし、リズムもタイトでオルタナティブな雰囲気の攻めたアレンジ。T-8.「 THE LONG DIVISION(ザ・ロング・ディヴィジョン)」ではオリジナルよりも細かい刻みを入れたブラコンテイストのサウンドがカッコイイ。T-11.「 ホワット・ハー・ネーム・トゥデイ? 」もディストーションを効かせたギターとロックなリズムでオリジナルよりアグレッシヴ。また、オリジナルではストリングスの部分 〜 シンセストリングスをチョイスすれば良さそうなところ 〜 を、例えばT-9.「 ペインテッド・フロム・メモリー 」ではフルート&クラリネットで意表をついてきます。メンデルソンなりの拘りがあるんでしょう。

ネットで本作を検索してみましたが全く話題になっていません。もっと評価されてもいいと思うんですけど…。まぁ、そもそもメンデルソンの公式サイトからして2020年以降更新されておらず本作も未紹介ですからねー、然もありなんか😓。


【データ】
『 Repainted From Memory a new cover of the classic album by Bacharach & Costello
Jason Mendelson




MP3:2021年1月10日リリース
レーベル:MetroSongs Records (US)
番号:-

クレジット詳細は不明ですが、以下推測で(may be) …
Produced by Jason Mendelson
Arranged by Jason Mendelson
All Instruments are performed by Jason Mendelson
Vocal:Jason Mendelson
Backing chorus:Jason Mendelson
Featuring Vocal:Ari Voxx (T-7,9)

Amazonリンク(MP3

2024年1月 1日 (月)

米ラジオ番組でのライヴ・セッション Burt Bacharach On Piano Jazz (2005年)

年明けから衝撃のニュースが立て続けに飛び込んできました。能登半島地震の被害に遭われた方には謹んでお見舞い申し上げます。まだまだ気が抜けない状況が続くと思いますが1日も早い復興を祈っています。(2024/1/2 修正)

2024年も『 いつもあなたとバカラック 』をよろしくお願い申し上げます あるでお


米ラジオ局NPRのラジオ番組『 Marian McPartland's Piano Jazz 』用に2005年11月4日レコーディングされたセッションの音源がNPR公式サイトで2014年8月8日から公開されています。

番組のホスト役 Marian McPartland(マリアン・マクパートランド)さんは米国のジャズピアニスト(1918年〜2013年)。バカラックさんより10歳年上でセッション時は87歳。話ぶり・ピアノ演奏とも全然そんな感じは受けず、最初予備知識なく聴いた時とてもバカラックさんより年上には思えませんでした。バカラックさんまた口説くのか?と思いましたから😅。
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↑ 画像はちたりた様よりいただきました。ちたりた様ありがとうございました。

以下のURLのページでまだ聴くことができます。とても楽しげに語り、ピアノを弾き、歌うバカラックさんが印象的です。年始休暇の間、バカラックさんを偲びながら聴いてみてはいかがでしょう?
https://www.npr.org/2014/08/08/338846155/burt-bacharach-on-piano-jazz

【セットリスト】
1. ALFIE アルフィー
2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 恋よさようなら
3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU ディス・ガイ
4. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD  雨にぬれても
5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 世界は愛を求めている
6. Portrait Of Burt Bacharach (McPartland)
7. THE WINDOWS OF THE WORLD 世界の窓と窓
8. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU 遙かなる影

収録時間約57分

尊敬するまったりさんが2015年9月8日にブログ『バカラックマジックでまったりと』でこのラジオ番組の音源を紹介しておられました。→ 「Burt Bacharach On Piano Jazz」 です。…本記事をアップした後に気付いた次第。まったりさんから8年以上も遅れている あるでお でした😅 (2024年1月4日 追記)


以下、オマケです。

🔸ウェブページの “ 本ブログとバカラックについて ” を改訂しました。スマホの方は参照先が画面に表示されないようですのでリンクを貼っておきます。(こちら

🔸ページビュー数(PV)ランキング:昨年(2023年)閲覧数が多かったページをランキング形式で表示します。集計対象期間は 2023/1/1〜2023/12/31。因みに、最低は827位/PV数1 でした。

TITLE DATE(年/月) カテゴリー PV数 入口
回数
1 いつもあなたとバカラック - - 6,404 3,269
2 薔薇色の明日/高橋幸宏 (1983年) 2013/10 IN 1,260 1,077
3 THE APRIL FOOLS/O.S.T. (1969年) 2017/07 IN 871 711
4 国立国会図書館での録音資料閲覧体験 2018/11 ネタ 824 677
5 コンピレーションアルバム - CP 727 136
6 CARPENTERS/Carpenters (1971年) 2013/06 IN 669 593
7 バート・バカラックのアルバム - BB 650 227
8 LIVE IN JAPAN/Burt Bacharach (1971年) 2014/04 BB 558 401
9 ディオンヌ・ワーウィックのアルバム - DW 549 268
10 バカラックの曲がちょっと入ったアルバム - IN 543 272
11 カヴァーアルバム - CV 537 268
12 バカラックさん、安らかにお眠りください 2023/02 ネタ 536 62
13 LOST HORIZON/O.S.T. (1972年) 2016/05 BB 446 308
14 Alfie/Vanessa Williams (1996年) 2015/10 EP 423 373
15 I SAY A LITTLE PRAYER/Diana King (1997年) 2015/10 EP 373 228
16 AUSTIN POWERS /O.S.T. (1997年) 2016/09 IN 367 297
17 BURT BACHARACH A LIFE IN SONG バート・バカラック ライブ・イン・ロンドン 2015/V.A. (2016年) 2016/03 CV 361 275
18 布施明がバカラックに会った時/布施明 (1971年) 2014/04 CV 355 280
19 レディメイド、バカラックを讃える/V.A. (1994年) 2017/06 CP 351 233
20 本ブログとバカラックについて - - 347 189
21 関連CD バカラックがビートルズに逢った時/筒美京平 (1971年) 2013/10 ネタ 345 298
22 狐火/郷ひろみ (2021年) 2021/08 EP 337 286
23 MAKE IT EASY ON YOURSELF/Burt Bacharach (1969年) 2016/04 BB 322 231
24 RARITIES/山下達郎 (2002年) 2013/12 IN 307 248
25 LIVING TOGETHER/Burt Bacharach (1973年) 2016/05 BB 273 149
26 the look of love the Burt Bacharach collection/V.A. (1998年) 2018/01 CP 272 167
27 BURT BACHARACH/Burt Bacharach (1971年) 2016/05 BB 269 158
28 THE BEST OF ME/David Foster (1983年) 2016/06 IN 264 217
29 10月9日 NHK-FM『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』プレイリスト 2023/10 ネタ 253 80
30 BBCのTVドキュメンタリー『 Burt Bacharach... This Is Now 』(1996年) 2020/04 ネタ 248 197













































カテゴリー略号の意味

CV:カヴァーアルバム、CP:コンピレーションアルバム、EP:シングル、DW:ディオンヌ・ワーウィックのアルバム、IN:バカラックの曲がちょっと入ったアルバム、ネタ:バカラック関連ネタ、BB:バート・バカラックのアルバム、NW:新作主体のアルバム

2023年12月31日 (日)

Lawrence Welk Presents The Now Sound of Sandi & Salli/Sandi & Salli (1970年)

米国のTV番組“ローレンス・ウェルク・ショー”から登場した人気コンビ Sandi & Salli 唯一のアルバムです。バカラック・カヴァーを2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10トラック中、バカラック作品は2トラック

A2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (2:23)
B1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:25)


米国のTV番組“ローレンス・ウェルク・ショー”から登場した人気コンビ Sandi & Salli 唯一のアルバムです。

Sandi & Salli(サンディ&サリー)のプロフィールついては前回記事を参照いただければと思いますが、Lawrence Welk(ローレンス・ウェルク)がホストを務める米国のミュージカル・バラエティTV番組“ローレンス・ウェルク・ショー”(1951年〜1982年放送)に1968年1月から出演して一躍人気となった女性デュオです。

1967年から1968年にかけて3枚シングルをリリースした後、ローレンス・ウェルクとDotレコード社長の Randy Wood(ランディ・ウッド)が設立したレーベルの Ranwood から1970年に本アルバムをリリースしました。レコードのタイトルからして Lawrence Welk Presents ですから、番組の人気にあやかってのリリース。ちなみに、レコードジャケットの左がサンディで右がサリーでございます。

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ギターやキーボード主体のバンド形式、バンドにブラスが加わった編成、ストリングスが加わった編成など曲によって演奏形態は異なりますが、総じて軽くて能天気な演奏(能天気は語弊があるかもしれません😅)。サンディ&サリーは基本ユニゾンで歌っているようで、時折ハモるのは女性バックコーラスだと思います。明るくブライトな2人の歌声は瑞々しく元気。“ローレンス・ウェルク・ショー”で2人が歌っている動画がいくつかYouTubeに上がってますが、派手ではないもののお揃いの衣装を纏ったお嬢さん的な印象。そういったビジュアルも含めてウケたんじゃないかなぁ。双子じゃないけどザ・ピーナッツに近しいものを感じます。

バカラック・カヴァーはA2.「 雨にぬれても 」とB1.「 恋よさようなら 」。「 雨にぬれても 」はあくまで元気で明るくがコンセプト。2コーラス目のサビで2小節だけ追っ掛けする場面があり、そこはちょっとエモいです。「 恋よさようなら 」もやっぱり元気で明るくがコンセプト(笑)。2人のうち一方がソロで歌う場面もありますが、それはAメロの一部のみ。
これら2曲を含めほとんどの曲が終止形で終わっています。TVショーで歌うことを考慮して終止形が多いんじゃないかな。

他の曲では、Tom Jones(トム・ジョーンズ)の原曲よりも思い切り能天気なB2.「 HELP YOURSELF 」、Timi Yuro(ティミ・ユーロ)がオリジナルでノリが良いB5.「 I CAN'T STOP RUNNING AWAY 」あたりが良さげです。本作、YouTubeにフル・アルバムがUPされています(サムネイルのジャケ写がちょっと違うのが気になりますが)。興味がありましたら是非。

ここからはオマケ。“ローレンス・ウェルク・ショー”でサンディ&サリーが「 サン・ホセへの道 」を歌っている動画がYouTubeに上がってました。2種類見つかったのですがどちらも寸劇になっていてちょっと笑っちゃいます。こっそりリンクを貼っておきますね。(バイクバージョン)(ガソリンスタンドバージョン


【データ】

『 Lawrence Welk Presents The Now Sound of Sandi & Salli 』
Sandi & Salli




LP:1970年リリース
レーベル:Ranwood (US)
番号:RLP 8069

Produced by George Cates

Arranged by Frank Scott (except A3.)
Arranged by Bob Smale (A3.)
Recorded at Annex Studios - Hollywood, Calif.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年12月24日 (日)

DON'T COUNT THE DAYS/Sandi & Salli (1968年)

米国の女性デュオ、Sandi & Salliが1968年にリリースしたシングルです。B面がバカラック超レア曲のカヴァーです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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B面

A. IN THIS FOR-THE-MOMENT WORLD (2:15)
B. DON'T COUNT THE DAYS (2:37)


米国の女性デュオ、Sandi & Salliが1968年にリリースしたシングルです。

Sandi & Salli(サンディ&サリー)は、Sandi Griffiths(サンディ・グリフィス:1946年8月1日LA生まれ)とSally Flynn(サリー・フリン:1946年7月23日オレゴン州オンタリオ生まれ)のガールデュオ。ユタ州にあるBrigham Young University(ブリガム・ヤング大学)でクラスメイトだった2人はコンビを組み、ビッグバンド・リーダーのLawrence Welk(ローレンス・ウェルク)がホストを務める米国のミュージカル・バラエティTV番組“ローレンス・ウェルク・ショー”(1951年〜1982年放送)に1968年1月から出演して一躍人気となります。1972年後半、サリーはソロキャリアを追求するためショーを去りデュオは解散。サンディはそのあと1980年までショーに出演を続けました。

Discogsによればサンディ&サリーはシングルを3枚リリース(1967年と68年にCapitolから2枚、1968年にRanwoodから1枚)。Ranwoodはローレンス・ウェルクと Dotレーベル社長のRandy Wood(ランディ・ウッド)が1968年に設立したレーベルなんですが、本シングルリリース時はRanwood設立前だったのかしらん。それともCapitolとの契約が残っていたのかな? まぁどっちでもいいかっ😄

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んで、本シングルのB面がバカラック超レア曲「 DON'T COUNT THE DAYS 」のカヴァーでございます。マリリン・マイケルズが1968年秋にリリースしたシングルがオリジナル(拙記事参照)。すぐにカヴァーしたってことになりますね。オリジナル(♩≒144)よりゆったり目のテンポ(♩≒124)でキーは半音低く、よく動くベースでウキウキ感を出しヴィブラフォンやオーボエのオブリガートでドリーミーな雰囲気を醸し出すアレンジはよく練られてると思います。2人は基本ユニゾンで歌っています。サビでハモってるのはバックコーラスではないかと…。決して歌唱力は高くはないのですが、そのフワッとした歌唱はアレンジによくマッチしてますねー。YouTubeにもアップされていますので要チェックです(ちなみに上の画像はその動画のサムネイルをスクショしたものです。サンディ<左>&サリー<右>)。

この曲は他にLisa Carroll(リサ・キャロル)が1969年7月にカヴァー(拙記事参照)。マリリン版がアイドル風、リサ版はポップス風、そしてサンディ&サリー版はドリーミー、私はいずれも好きです。が、それ以降カヴァーが無いんですょ〜。誰かこの曲をカヴァーしてくんない?…と思う2023年の年の瀬です。


【データ】
IN THIS FOR-THE-MOMENT WORLD/DON'T COUNT THE DAYS 」
Sandi & Salli

7"Single:1968年リリース
レーベル:Capitol (US)
番号:2089 (所有シングルは、P 2089 … プロモーションレコードは頭にPが付く)

Produced by Alexis de Azevedo
Arranged By Gene Page
A.「 IN THIS FOR-THE-MOMENT WORLD 」
    (Billy Page)
B.「 DON'T COUNT THE DAYS 」
    (B.Bacharach - H. David)

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年12月17日 (日)

ライブの感想 Yammy* sings Burt Bacharach Dec. 16, 2023

14年目の Yammy* sings Burt Bacharach!(以降 YsBB)

2023年12月16日(土) 18:00開場 19:00開演
Restaurant Bar & New York Sound Live ROYAL HORSE
Yammy*(Vo)、Sasapong(P)、堂地誠人(Soprano Sax)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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昨年に引き続き年末恒例のYsBBを聴きに梅田のロイヤルホースへ!
コロナ5類以降後初めてのYsBB。昨年は店のエントランスにあった『 感染症対策認証飲食店/ワクチン・検査パッケージ制度登録店 』認定証 も今年は見当たらず…。とはいえ(インフルが流行しコロナも下火にはなってないので)マスク着用して店内へ。
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私が初めてYsBBを聴いたのが2013年12月15日、ここロイヤルホースでした。ちょうど10年前かぁ。その時は“38th”だったステージバックのタペストリーも“48th”になっとる(当たり前ですが)。この10年の来し方が走馬灯のように思い出されます(なんてのはウソ。ホント思い出せなくて…😅)。お店の方による注意事項(写真はOKですが動画撮影はご遠慮ください〜etc.)の後、いつものトリオよるYsBBが始まりました。

Yammy*さんはMCでYsBBは今年が13年目と仰ってましたが、初回は2010年なので今年は13周年=14年目になるんじゃ? ライヴの事前告知でプロデューサー廣瀬氏も確か14年目と書いておられましたし。ま、事実は変わらないのでどっちでもええんですが。

<1st stage> 19:08〜19:58
1. THE WINDOWS OF THE WORLD 世界の窓と窓
2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 世界は愛を求めている(愛をもとめて)
3. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO) ニューヨーク・シティ・セレナーデ
4. DON'T MAKE ME OVER ドント・メイク・ミー・オーヴァー
5. ANYONE WHO HAD A HEART 恋するハート
6. THE LOOK OF LOVE 恋の面影
7. WALK ON BY ウォーク・オン・バイ
8. ALFIE アルフィー

<2nd stage> 20:23〜21:10
1. BELLS OF ST. AUGUSTINE ベルズ・オブ・セント・オーガスティン
2. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU ディス・ガイ
3. A HOUSE IS NOT A HOME ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム … w/Sasapong
4. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL アイ・スティル・ハヴ・ザット・アザー・ガール … w/Sasapong
5. ONE LESS BELL TO ANSWER 悲しみは鐘の音と共に
6. COUNT ON ME カウント・オン・ミー
7. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU 遙かなる影
8. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 恋よさようなら

<Encore> 21:15〜21:25
1. I SAY A LITTLE PRAYER 小さな願い
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今年も昨年同様、アンコール含めオール・バカラック・プログラム(Yammy*さん手書きのセットリストは廣瀬さんよりいただきました。感謝!)。ライヴ途中でYammy*さんも仰ってましたが、全体的に円熟味が増すと共に演奏面・歌唱面共にブラッシュアップされていたのが印象的でした。「 初回(13年前)と同じキーで歌ってるけれど、キーが高くてキツい 」とYammy*さんは謙遜しておられましたが、全然そんなことなかったです。

1nd Stage は1-1.「 世界の窓と窓 」から1-2.「 世界は愛を求めている 」に繋ぐメドレーでスタート。この形はルーサー・ヴァンドロスの十八番ですが、ソウルフルなYammy*さんが聴けて嬉しかったです。続く1-3.「 ニューヨーク・シティ・セレナーデ 」でも感じたのですが、今回Sasapongさんのピアノが以前より柔らかい音色に聴こえたこと。いい雰囲気です。ブルースっぽいピアノで始まった1-4.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」はこれまでも2015年や2018年のYsBBで披露しているのですが、初めて取り上げたんじゃ?と思ったくらい新鮮に聴こえました(私の記憶力低下も多分にありますが😅)。

2nd Stage は2020年ダニエル・タシアンとバカラックが共作した2-1.「 ベルズ・オブ・セント・オーガスティン 」でスタート。Yammy*さんはノン・ビブラートで歌っていましたが、タシアンに寄せていたんでしょうか。心に響く歌唱でした。2-6.「 カウント・オン・ミー 」での堂地さんのソプラノサックスは本当にYammy*さんの声と同化していて心地よかったです。アップテンポの2-8.「 恋よさようなら 」で締めて、アンコールは「 小さな願い 」。SasapongさんもYammy*さんも踊る踊る! 気分高揚してライヴは終了しました。
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Yammy*さんは来年2024年の1〜3月にほぼ毎週末ギター弾き語りのライヴを予定しとられます(京都、大阪、奈良)。興味ある方はYammy*さんの公式サイトを参照ください!

2023年12月10日 (日)

DON'T COUNT THE DAYS/Lisa Carroll (1969年)

米国の女性歌手、リサ・キャロルが1969年に英CBSよりリリースしたシングル。B面が超レアなバカラック・カヴァーです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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B面

A. YOU MADE ME WHAT I AM (2:08)
B. DON'T COUNT THE DAYS (2:48)


米国の女性歌手、リサ・キャロルが1969年に英CBSよりリリースしたシングルです。

彼女は1930年、米ノースダコタ州生まれ。若い頃('50年代)はFay Morleyという名前で映画やテレビに出演。初めての映画出演はマリリン・モンロー主演の西部劇『 RIVER OF NO RETURN(帰らざる河)』(1954年) で、ダンスガールを演じたそう。ですがあまり成功を収めることはできず、英国に渡ってクルーズ船で歌ったりBBCの番組で3年間ホスト役をしたり英CBSで録音しています。同時期に彼女は名をLisa Carrollに変えており、本シングルはこの渡英時代のものかと。その後米国に戻った彼女はナイトクラブやラスベガスでパフォーマンス。70歳の頃と思われる映像がありましたのでYouTubeのリンクを貼っておきます。

Discogsにあった彼女の画像を拝借しました。モノクロですからねぇ…、いつ頃だろ?
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さてこのシングル、B面で超レアなバカラック曲「 DON'T COUNT THE DAYS 」をカヴァーしています(オリジナルはマリリン・マイケルズで1968年にシングルリリース)。軽快なテンポ(♩≒144)で元気良かったマリリン版と較べるとちょっと趣が違うようで…。テンポは落ち着きのある♩≒126、キーも長三度低く、少しばかり鼻にかかったリサの歌声はとても表情豊か。バックの演奏もマリリン版のコピーではなく、分厚いブラスによる合いの手、フルートのオブリガートなど一味加えたアレンジが光ってます。リサはこの時39歳。マリリン版がアイドル風、リサ版はポップス風と言ったら違いがわかりますでしょうか。

高低差のある歌いにくい音程のメロディ、Bメロで半音上がる転調、ユニークな楽節の数。これら原曲の持つバカラックらしさは健在で魅力的なのは変わりません。
聴いててクセになりますね〜この曲は。実は先日の『 NHK-FM一日バカラック三昧 』で私がリクエストした3曲のうち1曲はこの曲(マリリン版)だったんです。採用されませんでしたが…。
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このスリーヴもレーベル所属アーティストがプリントされていていいですねー。(レーベルはA面です)

この記事を書くためにリサのことを調べていたら面白い情報を発見。リサは結婚したことはないようですが、デートした男性はいらしたようで、なかでもバカラックさんとは特別な関係だったと…。

─ It seems she had a special relationship with songwriter Burt Bacharach, as attested by this funny quote:
“It was my first release. They presented the song to me and, for the b-side, anything written by Burt Bacharach would have to be a success, especially since his parents were my dearest friends. I think it sold well. That was a funny situation as [Burt’s parents] were always trying to fix me up with their son between his many marriages, but it never worked out. They wanted me for a daughter-in-law. Every time he got divorced, they would ring me and say, “Now’s the time!” But by then, I’d be off singing somewhere.” ─ (obscureactresses.wordpress.comより、PRIVATE LIFE のおしまいの辺り)

バカラックの両親はリサのお友達。両親はリサのことを気に入ってたようで、バカラックが離婚するたびにリサとを引っ付けさせようとしたとか(もちろんそれは叶わなかったのですが)。確かに1928年生まれのバカラックと1930年生まれのリサは年齢的に釣り合ってるけど。この話ホントかなぁ😅


【データ】



YOU MADE ME WHAT I AMDON'T COUNT THE DAYS 」
Lisa Carroll

7"Single:1969年7月25日リリース
レーベル:CBS (UK)
番号:4428

Arrange and Produced by Keith Mansfield
A.「 YOU MADE ME WHAT I AM 」
    (J. Trent / T. Hatch)
B. 「 DON'T COUNT THE DAYS 」
    (B. Bacharach)  注:なぜか作詞 Hal David の名はクレジットされていません。可哀相なハルさん…

U.K. Production
(P) 1969

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

 

2023年12月 3日 (日)

THE BELL THAT COULDN'T JINGLE/The Baby Dolls (1964年)

英国の姉妹デュオ、ベイビー・ドールズが1964年にリリースしたシングル。A面がバカラックの代表的なクリスマス・ソング「 THE BELL THAT COULDN'T JINGLE 」のカヴァーです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A. THE BELL THAT COULDN'T JINGLE (2:23)
B. WE'RE NO ANGELS (2:16)


バカラックさんが亡くなってから10ヶ月近く…。今年ももう12月、早いですねぇ。前から欲しかったシングルをやっと入手しました。それが
英国姉妹デュオのベイビー・ドールズが1964年にリリースしたこのシングル。A面がバカラックの代表的なクリスマス・ソング「 THE BELL THAT COULDN'T JINGLE 」のカヴァーです。

─ One - off sisters' duo comprised of Angela Maberley and Hillary Maberley, from London U.K. At the time of their single release they were 11 and 12 years old respectively. 英国ロンドン出身のアンジェラ・マーバリーとヒラリー・マーバリーからなる一度限りの姉妹デュオ。シングルリリース当時、彼女らはそれぞれ11歳と12歳でした。 ─ (Discogsより、機械訳です悪しからず)

あらまぁ、ベイビー・ドールズはこの曲だけの即席デュオだったのね。どんなお嬢さんだったんでしょう? …ということで、Shutterstockのリンク(こちら:このシングル盤を持ってニッコリ)と、Getty Imagesのリンク(こちら:フウセン割れそうで耳を塞いでる)を貼っておきます。どちらの画像もお揃いの服を着ておしゃまな雰囲気っすね。
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Shutterstockの画像には手元にスリーブも写ってます。当時から60年近く経ったこの色褪せ感がたまらんですなぁ。

「 THE BELL THAT COLDN'T JINGLE 」はポール・エヴァンスが1962年12月にリリースしたのがオリジナル。拙ブログで紹介した際(2017年12月24日の記事)、この曲のカヴァーをリリース順に並べてグルーピングしたのですが、このときは1964年リリースのボビー・ヴィントン版を最初のカヴァーとしていました。しかしベイビー・ドールズ版も1964年リリース。もしかしたらこちらの方が初めてのカヴァーだったのかもしれません(知らんけど)。

Aメロ9〜12小節で女性コーラスが歌う “ パンパパン、パパン ” のフレーズをそのままイントロに持ってきてるのはオリジナルのポール・エヴァンス版と違うところですが、この方が子供にとっては歌いやすいのかな? んで、歌唱は明らかに素人の子供のソレ。とても元気なのはいいんですが、勢い余って前につんのめってるところが所々あります。アウトロで笑い声が入ってるのは微笑ましくて私は好きなんですけどねー。どうせディレクターの指示であざといとは思うけど😅

どなたかがYouTubeに上げてますので興味があれば是非。


ここからはオマケです。ここ数年で知った
この曲の好カヴァーをいくつかご紹介。
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ロサンゼルスを拠点に活動する俳優、作家、ソングライター、レコーディング、ボイスアーティストのAshley Fox Lintonが、2020年リリースのアルバム『 Christmas Will Keep Us Warm 』で「 THE BELL THAT COULDN'T JINGLE 」(2:05)をカヴァー。ブライトな歌声にピアノやグロッケンをフィーチャーした軽快な伴奏も相まって、キラキラで楽しいカヴァーです。YouTubeに動画上がってます。
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ニューヨーク/ニュージャージー地域の主要なプロの金管楽器とパーカッション奏者からなるGramercy Brass Orchestra of NYが2022年のアルバム『 A Gramercy Brass Christmas 』にクリスマスソング4曲をメドレーした「 Christmas Celebration 」(7:40)を収録しているのですが、そのメドレーの最初の曲が「 THE BELL THAT COULCN'T JINGLE 」(約2分間)です。巧みなアレンジで、最初は柔らかく途中からウキウキするサウンドを展開しています。遙か昔にちょろっとトロンボーンを吹いた経験のある私がまた吹いてみたいと思った魅力的な演奏でした。レコメンドです。これもYouTubeに上がってますね。



【データ】
「 THE BELL THAT COULDN'T JINGLE 」/「 WE'RE NO ANGELS 」
The Baby Dolls with Geoff Love and His Orchestra

7"Single:1964年リリース
レーベル:Columbia (UK)
番号:DB 7432

Recording first published 1964
A.「 THE BELL THAT COULDN'T JINGLE 」
    (Bacharach - Kusik)
    BATON MUSIC LTD.
B.「 WE'RE NO ANGELS 」
    (Ponte - Johnson)
    PONTE-OATES MUSIC WESTSIDE MUSIC
MADE IN GT. BRITAIN

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し



2023年11月26日 (日)

At Montreux/Hampton Hawes Trio(1976年)

米国の男性ジャズ・ピアニスト、ハンプトン・ホーズがトリオで参加した1971年モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音盤です。バカラック作品を1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有① Original LP front cover/back cover

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所有② 1990年リイシュー日本盤LP の front cover/back cover


全2トラック中、バカラック作品は1トラック

A1. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU (20:17 … 裏ジャケには31:15と記載) 
B1. HIGH IN THE SKY (20:30 … 裏ジャケには26:12と記載)


米国の男性ジャズ・ピアニスト、ハンプトン・ホーズがトリオで参加した1971年6月モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音盤です。

─ ハンプトン・ホーズ(1928年11月13日 - 1977年5月22日) は、アフリカ系アメリカ人のジャズ・ピアニスト。ビバップやハード・バップのジャンルで活躍し、1950年代において最も優れた、また、影響力のあったピアニストの一人。モダン・ジャズ草創期の日本に米軍の一員として滞在し、多くの日本人ジャズメンとも交流があった。(*1)  ─ (Wikipediaより概要)

1928年生まれということは、バカラックさんと同い年だったのかぁ…。

─ ロスアンジェルスに生まれたホーズは7人兄弟の末っ子として、宣教師の父に育てられた。アール・ハインズの演奏を12才の時に聴いてジャズに興味を持ったという、そして、高校の頃には、プロとして演奏を始めている。(中略)その後は、親友のソニー・クリス、ワーデル・グレイ、テディ・エドワーズ、アート・ペッパーといった、西海岸黒人派達との共演を経て急速に名ピアニストの評価を高める。やがて、コンテンポラリーへの諸作で、第一期黄金期 (*2) を確立、復帰後 (*3) 、第二期のコンテンポラリー時代へ続く、第三期欧州楽旅時代を経て、「テンションの時代」へと足を踏み入れたホーズの頂点を捉えたのが本作だ。  ─ (所有② リイシュー日本盤LPの解説より、瀧口秀之氏)

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本作は1971年モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。裏ジャケのライナーノーツによれば50分以上休むことなく演奏を続けたと
あります。裏ジャケおよびレーベル面の記載によればA面は1トラックのみで31:15、B面も1トラックのみで26:12。でも聴いてみると…、A面はMC(司会者によるメンバー紹介)と拍手で始まり20分ちょっとでフェードアウト。B面はフェードインで始まり終止形+観客の拍手で終わるんですが、収録時間はやはり20分ちょっと…。全然違ってました。アナログレコードには具体的な収録可能時間は存在せず溝を細くすれば収録面積内に沢山の溝を刻めて長く収録することができますが、音量は溝の細さと比例して下がる為一般にLP(33 1/3回転、12インチ)の場合で片面20分程度と言われています。なので、片面20分程度しか収められなかったのは理解できるんですが、裏ジャケやレーベル面に記載する収録時間は実際を踏まえて記して欲しいっすね。

んで、A1.がバカラックの「 ディス・ガイ 」。20分間のうち「 ディス・ガイ 」のメロディが聴こえるのは、曲が始まって [1] 2分過ぎからの1分20秒間、[2] 12分過ぎからの1分40秒間、[3] 17分ころからの1分20秒間、の計3箇所。メロディ以外の部分はアドリヴですが、フリージャズか?という感じで原曲の面影は全く感じられません。オリジナルLP裏ジャケのライナーノーツでは次のように解説しています。

─ たとえば、ハンプトンの最初は優しく、その後は厳しく、探りを入れるようなイントロから、彼が私たちを「 This Guy's In Love With You 」の甘美なメロディーに引き込もうとしているなどと誰が予想できたでしょうか? この曲自体は、その後の 31 分間の単なる参照点として機能します。これはハンプトンと同僚がまったく新しい構造を構築するためのメロディーですが、バカラックのベースはそのすべてに役立ちます。ここではハンプトンの芸術性の多くの側面が展示されており、渦巻くクライマックスやテンポの動きの中でも、ブルースは決して遠く離れたものではありません。その多様性は、ミンガスのアプローチを彷彿とさせます。それは、曲、コーラスが 3 つずつ、曲というきちんとした計画ではありません。しかし、ビクトリア朝時代に建てられた家のような、とりとめのない広大なレイアウトでは、通路の終わりや階段の頂上でさらなる楽しみを発見し続けるということです。ホーズ、フランクリン、カービンの間の理解はテレパシーに近いものです。2 回目か 3 回目の演奏をすると、その音楽的才能がどれほどのものであるかがわかります。
 自由に演奏するには適切な規律が必要であり、レニー・トリスターノが同様の形式で初期の実験を行ったときと同様に、その事実がここでも再び明らかになります。ホーズを見ていると、彼が安易な近道を選ばず、常に探求し、風変わりな道を模索していることが感じられます。カーヴィンは同僚のニーズに敏感で、冒険心に富んだパーカッショニストとして印象的ですが、フランクリンの太い音と楽器の技術的な熟練は随所で明らかです。  ─ (Mark Gardner、ほぼ機械訳です)

う〜ん、よーわからん(汗)。

所有② 1990年リイシュー日本盤LPも、収録時間はOriginalと同じでした。
因みにこの1990年日本盤、ライナーノーツ/帯/レーベル面でのA1.「 ディス・ガイ 」の曲目表記が「 THIS GUY'S IN LOVE WITH ME(ディス・ガイズ・イン・ラヴ・ウィズ・ミー)」と間違ってます。裏ジャケの表記はOriginalそのままなので正しいんですけどね。
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(*1) 1952年から1954年にかけて、米国陸軍の一員として軍務で日本に駐留。日本に滞在中、ホーズは飛び入りで演奏に参加するなどして、植木等や穐吉敏子などといった日本人ジャズメンとしばしば交流し、ジャム・セッションなどを行ったそう。
(*2) 除隊後、ベーシストのレッド・ミッチェルと、ドラマーのチャック・トムスンと共にトリオを結成し、1955年〜57年コンテンポラリー・レコードにいくつもの名盤を録音。1955年の『 Hampton Hawes Trio, Vol. 1 』はジャズに明るくない私でもリイシューCD持ってるくらい。
(*3) 1958年に薬物で逮捕。10年の実刑を受け収監されたが1963年に特赦〜放免となりました。


ここからはオマケです。MP3で所有しているハンプトン・ホーズのバカラック作品をご紹介します。
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ハンプトン・ホーズは1975年リリースの『 This Guy's In Love With You 』Freedom – FLP 40128(同年リリースの『 Live At The Montmartre 』Arista – AL 1020 も内容は同じ)でも「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU(ディス・ガイ)」(12:02) を演奏しています。1971年9月、デンマークはコペンハーゲンのライヴハウス "モンマルトル" でライヴ録音したもので、モントルーと同じメンバーによるトリオ編成。メロディが聴こえるのは、[1] 1分26秒からの1分20秒間と、[2] 9分32秒からの1分20秒間。終止形で終わり、最後には拍手が入ってます。基本、モントルーの短縮版といった感じ。ジャズ的には違うんでしょうけど、バカラック・ファンとしてはこれで十分満足かなぁ…。
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また、1970年リリースの『 High In The Sky 』Vault – SLP-9010 では「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(6:36) を収録。1970年のスタジオ録音で、Leroy Vinnegar (Bass), Donald Bailey (Drums) とのトリオ。とってもファンキーな演奏ですねぇ。私はわりと好きです、尺も短いですし(笑)。


【データ】
『 At Montreux 』 (邦題:トリオ・アット・モントゥルー)
Hampton Hawes Trio

LP:1976年リリース (所有②は、1990年11月リイシュー日本盤LP。解説は瀧口秀之氏。)
レーベル:JAS Records (US) (所有②は、JAS / CENTURY RECORDS CO., LTD Japan.)
番号:JAS-4002 (所有②は、CEJC 00184)

Produced by Jack Lewerke
Hampton Hawes - piano
Henry Franklin - bass
Mike Carvin - drums

Recorded at Casino de Montreux, Montreux Jazz Festival, June 1971.

『 At Montreux 』はAmazonでは見つかりませんでしたが、タイトル名を変えてリイシューされたアルバムが引っかかりました。一応リンクを貼っておきます。

Amazonリンク(CD UK盤)(CD日本盤

2023年10月22日 (日)

Blame It On Bacharach!/V.A. (2012年)

2008年にロサンゼルスで行われたバカラック・トリビュート・コンサートのライヴ録音盤です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. OVERTURE  〜 Orchestra 〜
2. HALF AS BIG AS LIFE  〜 Danny Gurwin 〜  M
3. TURKEY LURKEY TIME  〜 
Donna McKechnie, Valarie Pettiford, Jane Lanier, Sandahl Bergman 〜  F
4. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Danny Gurwin & Vicki Lewis 〜  FM
5. BABY IT'S YOU  〜 Catte Adams 〜  F
6. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE  〜 Marilyn Maye 〜  F
7. BLUE ON BLUE  〜 Stephen Bishop 〜  M
8. A HOUSE IS NOT A HOME  〜 Donna McKechnie 〜  F
9. THE LOOK OF LOVE  〜 Justin Guarini 〜  M
10. THE APRIL FOOLS  〜 Nancy Dussault 〜  F
11. WALK ON BY  〜 Stefanie Powers 〜  F
12. GO ASK SHAKESPEARE  〜 Jai Rodriguez 〜  M
13. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU  〜 Dave Koz 〜
14. ALFIE  〜 Valarie Pettiford 〜  F
15. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF / ANYONE WHO HAD A HEART  〜 Melissa Manchester 〜  F
16. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR  〜 Carole Cook 〜  F

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記


収録時間約63分


The 24th Annual Southland Theatre Artists Goodwill Event(略してS.T.A.G.E.)として、2008年にロサンゼルスでバカラック・トリビュート・コンサートが行われました。そのライヴ録音盤です。

ググったところコンサートの模様を伝える broadwayworld.com の記事が見つかりましたので、引用して紹介します(ほぼ機械訳です、悪しからず)。元記事には出演アーティストの画像も載っていますので興味がありましたらリンクをクリックくださいませ。

─ エイズ・プロジェクト・ロサンゼルスは、3月8日と9日にビバリーヒルズのウィルシャー劇場で作曲家バート・バカラックの音楽を祝う第24回サウスランド・シアター・アーティスト・グッドウィル・イベント(S.T.A.G.E.)から約35万ドルを受け取りました。

デビッド・ガリガン演出、メアリー・エクラー音楽監督による『 Blame It On Bacharach! 』は、ヴィッキー・ルイス(『 ニュースラジオ 』)とダニー・ガーウィン(『 フル・モンティ 』)が主演するバカラックのブロードウェイヒット作『 プロミセス・プロミセス 』の特別版をフィーチャーしました。コーラスラインのドナ・マッケニー(『 プロミセス・プロミセス 』のオリジナルキャスト)は、サンダール・バーグマン、ジェーン・ラニアー、ヴァラリー・ペッティフォードが加わった「ターキー・ラーキー・タイム」ダンスナンバーを再演しました。プロダクションには、イアン・アバークロンビー、ポール・エインズリー、クリス・コードーン、マリル・ヘナー、アルバン・イン、リン・マータ、ジェイミー・マクマレー、リンダ・ミシェル、グレゴリー・ノースも出演しました。

後半は、バカラックの名曲セレクション。ロングランした『 Forever Plaid 』から、オリジナルの Plaids 〜 スタン・チャンドラー、デビッド・エンゲル、ロジャー・ベフェラー&ラリー・ラーベン の4人組 〜 がバカラックの映画音楽のメドレーのために再会しました。

『 アメリカン・アイドル 』のジャスティン・グアリーニは「 恋の面影 」を歌い、シンガーソングライターのメリサ・マンチェスターは「 恋するハート 」と「 恋のとまどい 」のメドレーを選び、デニース・ウィリアムズは「 マジック・モーメンツ 」を演奏しました。その後、『 Queer Eye for the Straight Guy 』のジャイ・ロドリゲスは「 ゴー・アスク・シェイクスピア 」を、ステファニー・パワーズは「 ウォーク・オン・バイ 」を、マッケニーとペティフォードはそれぞれ「 ハウス・イズ・ノト・ア・ホーム 」と「 アルフィー 」を歌いました。

S.T.A.G.E.は、24年前の設立以来、南カリフォルニア全土のHIV/エイズ組織のために数百万ドルを調達してきました。純収益はすべてエイズプロジェクトロサンゼルスに寄付され、ロサンゼルス郡全体で直接サービスとHIV / AIDS予防教育を提供する25年目を迎えます。  ─  (by James Sims Mar. 15, 2008)

以前、似た構成のコンサートを聴いたことがあります。『 PROMISES,PROMISES in Concert  May 9, 2012 』です。第一幕は Promises, Promises ブロードウェイ2010年版に沿った曲目を全てフルサイズで踊り付きで歌い、第二幕はバカラックの代表曲を一部の曲は踊り付きで歌う…そんなコンサートでした。もう11年以上も前かぁ…歳とるワケです😓。

本CDはT-1〜4.が『 プロミセス・プロミセス 』特別版で、T-5〜16.がバカラックの名曲セレクション。先ほどの記事に載っていたPlaidsの4人組による映画音楽メドレーやデニース・ウィリアムスの「 マジック・モーメンツ 」は入ってないので、コンサートの全てを収めたものではなさそうです。出演者には拙ブログで過去紹介した名前もちらほら。T-3とT-8のドナ・マッケニーは記事にもあるように1969年オリジナル・ブロードウェイ版でも「 ターキー・ラーキー・タイム 」を歌っていた方ですし、T-6のマリリン・メイは1969年に「 恋よさようなら 」をカヴァー(こちら)。T-7のスティーブン・ビショップは映画『 ミスター・アーサー 』のサントラで「 IT'S ONLY LOVE 」を歌ってました。そしてT-15のメリサ・マンチェスターは1983年に書き下ろし曲「 TIME 」を歌い、1989年に「 ウォーク・オン・バイ 」をカヴァーしとられます。意外に知ってるアーティストが多くてびっくりしました。

何かないかなぁとYouTubeを漁っていたらこのコンサートの動画が1本見つかりました。タイトルは Blame it on Bacharach Finale で、「 愛のハーモニー 」を大勢で歌っています。CDのラスト、T-16.「 愛のハーモニー 」(2:00) はキャロル・クックさんがソロで歌いフェードアウトで終わっているので、キャロル・クックさんの後にキャスト全員で歌った場面なんでしょう。

『 プロミセス・プロミセス 』特別版のT-1〜4はオリジナルに忠実なアレンジ&演出でしっかり再現しています。ストリングスがシンセでちょいと残念ではありますが…。踊りながら4人で歌うT-3.「 ターキー・ラーキー・タイム 」で声が苦しいところがあったりしますがそれはご愛嬌。ドナ・マッケニーさんなんてこの時65歳なんですから。

T-5〜16の後半は一転、元曲のコピーではない心持ちジャジーなアレンジでライヴを盛り上げます。私のレコメンドをいくつか。カッテ・アダムズがゆったり且つエモーショナルに歌うT-5.「 ベイビー・イッツ・ユー 」、ブルース調のアレンジも素敵です。ジャスティン・グアリーニのT-9.「 恋の面影 」は若干ジャズ・ファンクっぽいノリの良いカヴァー。カッコイイっす。ナンシー・ダソルがしっとり歌うT-10.「 エイプリル・フール 」も歌唱が不安定なところはあれどアレンジも含め聴いてて胸を打ちます。ヴァラリー・ペッティフォードがテンポを揺らして(ちょっと大袈裟なきらいもありますが)感情込めて歌うT-14.「 アルフィー 」もグッときます。メリサ・マンチェスターのT-15.メドレー前半の「 恋のとまどい 」はちょっとハネたR&B調リズムのパワフルな歌唱が素晴らしいですねー、流石です。

本CD、Amazonでは扱っていませんが手にする機会がありましたら是非!


ここからはオマケ。MP3で所有する本CD出演アーティストによるバカラック作品をご紹介。
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本CDでT-6.「 世界は愛を求めてる 」を歌っているマリリン・メイは、1967年のアルバム『 Step To The Rear 』でも「 世界は愛を求めてる 」(3:10)をカヴァー。さすがに声が若々しくパワフル!
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ドナ・マッケニーは2002年リリースのコンピアルバム『 Inside the Music 』で「 ターキー・ラーキー・タイム 」(2:10) を歌っています。"ミュージカル『 プロミセス・プロミセス 』でこの歌を歌ったのよ!"というMC付きのライヴ録音。途中を省略したバージョンですけれど。
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本CDでT-13.「 ディス・ガイ 」を演奏しているスムース・ジャズのサックス奏者、デイヴ・コーズは1999年のアルバム『 The Dance 』にバカラックと共作した「 DON'T GIVE UP 」(4:02) を収録。  ─ ハバナで行われたソングライター・コンベンションでバカラックと会い、その後L.A.で改めて共作。ヴォーカル曲のようなフックを持つインストを書こうと試み、この曲を完成させた。スムースなカルフォルニア・サウンドで、ピアノはバカラック自身が弾いている。 ─ (ムック本『 AOR AGE Vol.28 』より)
また、2010年のアルバム『 Hello Tomorrow 』では「 ディス・ガイ 」(4:56) をヴォーカルでカヴァーしてるんですが、なんとハーブ・アルパートがトランペットで参加。本家ハーブ・アルパートを差し置いて歌うとは!


【データ】
『 Blame It On Bacharach! 』
V.A.

CD:2012年リリース
レーベル:KRITZERLAND (US)
番号:KR 20021-7

Produced for CD release by Bruce Kimmel
CD Executive Producer:David Galligan
Musical Direction and Arrangements by Mary Ekler
Staged and Directed by David Galligan
Recorded at The Wilshire Beverly Hills March 8,9 2008

©️(P)2008,2012 S.T.A.G.E.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し
KRITZERLAND の通販サイトを紹介しておきます。

2023年10月15日 (日)

HALFWAY TO PARADISE The Complete Epic Masters 1961-1964/Tony Orlando (2006年)

米男性シンガー、トニー・オーランドがEpic時代にリリースした音源をコンプリートしたコンピ集です。バカラック作品を2曲(カヴァー1曲、書き下ろし1曲)を収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全27トラック中、バカラック作品は2トラック

26. TO WAIT FOR LOVE (Is To Waste Your Life Away) (2:22)

27. ACCEPT IT (2:23)


米男性シンガー、トニー・オーランドがEpic時代にリリースした音源をコンプリートしたコンピ集です。

トニー・オーランドは1944年NYC生まれ。1961年(16歳の時)にEpicからデビュー。その後、1970 年代初頭に人気を博したグループ、トニー・オーランド&ドーンのリード・シンガーとして活躍。1973年には「 Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree(幸せの黄色いリボン)」の全米No.1ヒットを生みます。1977年のグループ解散後も度々再結成してパフォーマンスしていたようです。

このコンピ集は、トニー・オーランドが1961年から1964年の間にエピック・レーベルからリリースしたすべてのマスターをコンパイルしたもの。11枚のシングルの両面と、1961年の1stアルバム『 Bless You and 11 Other Great Hits 』からシングルカットされなかった5曲を収録しています。曲目のクレジットを見てビックリしました。ほとんどがブリル・ビルディングの有名ソングライター達によるもの。ジェリー・ゴフィン、キャロル・キング、ジャック・ケラー、バリー・マン、シンシア・ワイル、ブルックス・アーサー、ニール・セダカ、ボビー・ダーリン…等々。トニー・オーランド自作曲も2曲あります。曲も書けるんだ!
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本作の中でバカラック作品は2曲。1964年9月にリリースされたEpic最後のシングル (Epic 9715) の両面になった曲で、いずれもバート・バカラック&ハル・デイヴィッド作。

シングルA面の
T-26.「 TO WAIT FOR LOVE (Is To Waste Your Life Away)」はカヴァーで、Jay & The Americans が1964年1月にリリースしたものがオリジナル。ポール・アンカ(1965年)、トム・ジョーンズ(1965年)、ジャッキー・デシャノン(1966年)ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラス(1968年)布施明(1971年)山下達郎(2002年)などのカヴァーがある隠れた名曲ですが、最初にカヴァーしたのがトニー・オーランドになるんですねー。オリジナルよりゆったりしたテンポとトニーのソフトな歌声で、この曲らしい味がよく出た好カヴァーです。実際、ポール・アンカやハーブ・アルパートのカヴァーはオリジナルよりもこのトニー版をベースにしてるように感じます。

シングルB面のT-27.「 ACCEPT IT 」は書き下ろし曲。超レアな曲でこの曲のカヴァーを私は知りません。先日(2023年10月9日)のNHK-FM『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』でこの曲が流れて久しぶりに聴きました。拙ブログにもコメントをくださったバカラック教信者さんのリクエストで、コメントも読まれていました。 ─ バカラックらしい変な曲です。なんか調子っぱずれてますね。でもいい曲です。 ─  ホントそう思います。もろバカラックさんの曲ですね。どう展開するか分からないメロディにコード進行! 歌いにくいと思うんですけど…。私が初めてこの曲を聴いたのはまったりさんのブログで、その後YouTubeで聴くのみで音源は持ってなかったので今回ラジオで聴いて速攻本CDを購入した次第です。


【データ】
『 HALFWAY TO PARADISE The Complete Epic Masters 1961-1964 』
 Tony Orlando

CD:2006年リリース
レーベル:ACE (UK)
番号:CDCHD 1137

Compilation, note and archive research by Tony Rounce
This compilation (P) & ©️ 2006 Ace Records Ltd
T-26.「 TO WAIT FOR LOVE (Is To Waste Your Life Away) 」… Epic 9715-A (1964)
  wrtten by Burt Bacharach, Hal David
  Produced by Bob Morgan
  Arranged and conducted by Garry Sherman
T-27.「 ACCEPT IT 」… Epic 9715-B (1964)
  wrtten by Burt Bacharach, Hal David
  Produced by Bob Morgan
  Arranged and conducted by Garry Sherman

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Amazonリンク(CD


2023年10月 9日 (月)

10月9日 NHK-FM『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』プレイリスト

2023年10月 9日 NHK-FM『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』プレイリスト

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NHKの三昧サイトのプレイリストの情報をこちらでもピックアップさせていただきました。
凡例:曲名/アーティスト  - リリース年
なお、リンク先は関連する拙ブログ記事です。よろしかったらどうぞ。


第1部(12:15〜18:50)
<12:15>
01. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE(サン・ホセへの道)/Dionne Warwick  - 1968
02. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU(ディス・ガイ)/Herb Alpert  - 1968

03. MAGIC MOMENTS(マジック・モーメンツ)/Perry Como  - 1958
04. WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)/Dionne Warwick  - 1964
05. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(世界は愛を求めてる)/Jackie DeShannon  - 1965
06. MAKE IT EASY ON YOURSELF(涙でさようなら)/The Walker Brothers  - 1965
07. LIVING TOGETHER, GROWING TOGETHER(リヴィング・トゥゲザー、グロウイング・トゥゲザー)/The 5th Dimension  - 1972

<13:00>
08. ALFIE(アルフィー)/Cilla Black  - 1966
─ Special message from Dionne Warwick ─(※①)
09. PROMISES, PROMISES(プロミセス・プロミセス)/Dionne Warwick  - 1968
10. I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)/Dionne Warwick  - 1967  ※当初の邦題は(あなたに祈りをこめて)
11. BABY IT'S YOU(ベイビー・イッツ・ユー)/The Shirelles  - 1961(※②)
12. BABY IT'S YOU(ベイビー・イッツ・ユー)/The Beatles  - 1963(※②)
13. BABY IT'S YOU(ベイビー・イッツ・ユー)/Smith  - 1969(※②)
14. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(愛のウェイト・リフティング)/Sandie Shaw  - 1964(※②)
15. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME/José Feliciano  - 1968(※②)
16. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(僕はこんなに)/Naked Eyes  - 1983(※②)
17. THE LOOK OF LOVE(恋の面影)/Dusty Springfield  - 1967(※②)
18. THE LOOK OF LOVE(恋の面影)/Sergio Mendes & Brasil '66  - 1968(※②)
19. THE LOOK OF LOVE(恋の面影)/Isaac Hayes  - 1970(※②)
20. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU(遙かなる影)/The Carpenters  - 1970
21. ONE LESS BELL TO ANSWER(悲しみは鐘の音とともに)/The 5th Dimension  - 1970
22. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD(雨にぬれても)/B. J. Thomas  - 1969

<14:00>
23. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)/Christopher Cross  - 1981
24. (THE MAN WHO SHOT) LIBERTY VALANCE(リバティ・バランスを射った男)/Gene Pitney  - 1962
25. WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか子猫チャン)/Tom Jones  - 1965
26. THE LOOK OF LOVE(恋の面影)/Dusty Springfield  - 1967
27. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR(愛のハーモニー)/Rod Stewart  - 1982
= ゲスト:菊地成孔さん登場 =
28. THE WORLD IS A CIRCLE(地球はまるい)/Diana Lee, Bobby Van & chorus  - 1972
29. I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)/Roland Kirk  - 1969

<15:00>
30. SOMETHING BIG(サムシング・ビッグ)/Burt Bacharach  - 1973
= ゲスト:菊地成孔さん退場 =
31. ACCEPT IT/Tony Orlando  - 1964
32. AFTER THE FOX(アフター・ザ・フォックス)/Peter Sellers and The Hollies  - 1966
33. TRAINS AND BOATS AND PLANES(汽車と船と飛行機と)/Anita Harris  - 1965
34. NIKKI(ニッキー)/Burt Bacharach  - 1971
35. KEEP ME IN MIND(キープ・ミー・イン・マインド)/Patti Page  - 1955
36. TO WAIT FOR LOVE(愛のおとずれ)/Herb Alpert & The Tijuana Brass  - 1968
37. IT DOESN'T MATTER ANYMORE(イット・ダズント・マター・エニモア)/The Cyrkle  - 1967
38. MEXICAN DIVORCE(メキシコでさようなら)/Ry Cooder  - 1974

<16:00>
39. LOST HORIZON(ロスト・ホライズン)/Shawn Phillips  - 1972
40. THE STORY OF MY LIFE(ザ・ストーリー・オブ・マイ・ライフ)/Marty Robbins  - 1957
41. BLUE ON BLUE(ブルー・オン・ブルー)/Bobby Vinton  - 1963
42. WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)/Jack Jones  - 1963
43. ONLY LOVE CAN BREAK A HEART(愛の痛手)/Gene Pitney  - 1962
44. MAKE IT EASY ON YOURSELF(涙でさようなら)/Dionne Warwick  - 1963
45. DON'T MAKE ME OVER(ドント・メイク・ミー・オーヴァー)/Dionne Warwick  - 1962
46. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR(愛のハーモニー)/Dionne & Friends  - 1985

<17:00>
47. ON MY OWN(オン・マイ・オウン)/Patti LaBelle & Michael McDonald  - 1986
48. HEARTLIGHT(ハートライト)/Neil Diamond  - 1982
─ Special message from Carole Bayer Sager ─(※①)
49. SOMETIMES LATE AT NIGHT(真夜中にくちづけ)/Carole Bayer Sager  - 1981
50. WILD AGAIN(ワイルド・アゲイン)/Carole Bayer Sager  - 1981
51. EASY TO LOVE AGAIN(甘い誘惑)/Carole Bayer Sager  - 1981
52. STRONGER THAN BEFORE(愛は果てしなく)/Carole Bayer Sager  - 1981
53. YOU DON'T KNOW ME(夜にひとり)/Carole Bayer Sager  - 1981
54. Reprise/Carole Bayer Sager  - 1981  ※「 SOMETIMES LATE AT NIGHT 」のフレーズが出てきます
55. EVER CHANGING TIMES(エバー・チェンジング・タイムズ)/Aretha Franklin featuring Michael McDonald  - 1991
56. DON'T GO BREAKING MY HEART(ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート)/Roger Nichols & The Small Circle Of Friends  - 1968
57. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(世界は愛を求めてる)/Wes Montgomery  - 1966

<18:00>
58. GOD GIVE ME STRENGTH(ゴッド・ギヴ・ミー・ストレングス)/Elvis Costello & Burt Bacharach  - 1996
59. TOLEDO(トレド)/Elvis Costello & Burt Bacharach  - 1998
60. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN(恋よ、さようなら)/Burt Bacharach & Elvis Costello  - 1999
61. DON'T LOOK NOW(ドント・ルック・ナウ)/Elvis Costello & The Imposters  - 2018
62. LOOK UP AGAIN(ルック・アップ・アゲイン)/Elvis Costello  - 2023
63. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL(アイ・スティル・ハヴ・ザット・アザー・ガール)/Elvis Costello & Burt Bacharach  - 1998

第2部(19:20〜21:15)
<19:20>
64. THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)/Dionne Warwick  - 1969
65. WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)/Bobby Caldwell  - 1995
= ゲスト:野宮真貴さん登場 =
66. ME, JAPANESE BOY I LOVE YOU(ミー・ジャパニーズ・ボーイ)/Pizzicato Five  - 1994
─ Special message from 朝妻一郎 ─(※①)

<20:00>
67. CLOSE TO YOU(遙かなる影)/細野晴臣  - 2013
68. IT WAS YOU/椎名林檎と斎藤ネコカルテット  - 2013
69. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(世界は愛を求めてる)/野宮真貴 with Corinne Drewery  - 2015
= ゲスト:野宮真貴さん退場 =
70. BOND STREET(ボンド・ストリート)/Burt Bacharach  - 1967
71. SOUTH AMERICAN GETAWAY(自由への道)/Burt Bacharach  - 1969
72. WHERE DID IT GO?(ホエア・ディド・イット・ゴー?)/Burt Bacharach  - 2005
73. DANCING WITH YOUR SHADOW/Sheryl Crow  - 2017
─ Special message from Daniel Tashian ─(※①)
74. MOON OVER WICHITA/Burt Bacharach & Daniel Tashian  - 2022
75. A HOUSE IS NOT A HOME(ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム)/Luther Vandross  - 1981

<21:00>
76. HEAVENLY/Johnny Mathis  - 1959


…パックンさんの米国での実体験&歌詞の解説、加羽沢美濃さんのピアノ実演含めた楽理面からの解説、そして坂口修さんによる安心・安定の解説、いずれもバカラック愛を感じる素晴らしいMC陣でしたねぇ。(NHKの三昧サイトより … 出演者第1部ギャラリー第2部ギャラリー

心残りはリクエストがボツになったこと。ですがそんなことどうでもいいです。聴き終わって幸せな気分がまだ続いています。とっても良い番組でした。明日仕事したくないなぁ、はぁ…。

- * - * - * - * - * - * - * - * - * -


【補足】
※① Special message は、ちたりた様が4名分全て文字起こししてコメント <2023年10月11日(水)08時11分> に書き込んでくださいました。ちたりた様、誠にありがとうございました。

※② バカラック・カヴァー特集コーナー:
「 BABY IT'S YOU 」はM-11〜13、「 (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME 」はM-14〜16、「 THE LOOK OF LOVE 」はM-17〜19、それぞれ3曲ずつの聴き比べ。各曲とも、1コーラスあるかないかくらいの尺しか流れません。

2023/10/15:補足を追記

2023年9月30日 (土)

10月9日 NHK-FM『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』の詳細発表。8時間半の生放送。

8時間半もバート・バカラックの音楽に浸れるなんて❗️
司会、ゲスト、スペシャル・メッセージの皆さんも楽しみですし、解説は日本におけるバカラック研究の第一人者、坂口 修さん❗️ 濃い内容になることは間違いありません。10月9日が待ち遠しいです。

【番組タイトル】
『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』

【放送日時・チャンネル】
2023年10月 9日(月・祝)スポーツの日
12:15 ~ 18:50、19:20 ~ 21:15
NHK-FM で生放送!
─ 番組では、皆さまからのリクエストを募集しています。心に残るバカラックの名曲、それにまつわるエピソードもお願いします。 ─ (番組サイトより)

【内容】
─ 作曲家でピアニスト、指揮者としても活躍したポップス界の巨匠バート・バカラックが今年2月に94歳でこの世を去りました。彼の豊かな音楽性、膨大な名曲は、ジャンルの壁を越えて様々な音楽家に影響を与え、今も多くのリスナーに愛聴されています。バカラックの偉大な功績を振り返りながら、その叙情味あふれる名旋律をたっぷりとお楽しみください。 ビッグ・アーティストたちが語るバカラックの知られざるエピソードにも乞うご期待! ─ (番組サイトより)
◯司会
 パトリック・ハーラン (パックン)(タレント)
 加羽沢 美濃(作曲家/ピアニスト)
◯ゲスト
 菊地 成孔(音楽家/文筆家)
 野宮 真貴(歌手/ミュージシャン)
◯スペシャル・メッセージ
 ディオンヌ・ワーウィック(シンガー)
 キャロル・ベイヤー・セイガー(シンガーソングライター)
 ダニエル・タシアン(ソングライター/プロデューサー)
 朝妻 一郎(音楽評論家/音楽プロデューサー)
◯解説
 坂口 修(音楽プロデューサー)


…私も取り急ぎ3曲ほどリクエストしましたぁ🙋


2023年9月17日 (日)

Soon It's Gonna Rain/Blossom Dearie (1967年)

ブロッサム・ディアリーが、英Fontanaレーベルから1967年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全12トラック中、バカラック作品は2トラック

2. TRAINS AND BOATS AND PLANES (4:05)

3. ALFIE (2:42)


ブロッサム・ディアリーが、英Fontanaレーベルから1967年にリリースしたアルバムです。

ディアリーは1924年生まれ(2009年没)の米国女性ジャズ・シンガー/ピアニスト。拙ブログでもアルバム『 The Lost Sessions From The Netherlands 』を取り上げてます。略歴等はそちらをご覧ください。

本アルバムについては所有CD(今年発売のリイシュー日本盤)の解説から関連部分をそのまま引用させていただきます。
─ Verveを離れたディアリーは、前述の『 シングス・ルーティン・ソングス 』とオーケストラとの『 May I Come In? 』(64年、Capitol)を制作した後、活動の場を再びヨーロッパへ移す。65年12月ロンドンに到着後、66〜70年にイギリスFontanaが4タイトルを制作し、この時期の大きな収穫とした。(略)本作『 スーン・イッツ・ゴナ・レイン 』は、今回ディアリーがFontana時代の66〜70年に残した未発表音源27曲を収録した2CD作『 フィーリング・グッド・ビーイング・ミー:ザ・ロスト・アンド・ファウンド・ロンドン・セッションズ 』の発売に合わせて登場するオリジナル・アルバム4タイトルのうちの1枚だ。パーソネルはブロッサム・ディアリー(p,vo)、レグ・ゲスト(arr,cond)+アンサンブルで、67年ロンドン録音。今回が世界初CD化となる。ポップスやボサノヴァを主体とした選曲は、ジャズ以外のリスナーにも向けた制作意図を感じさせる。 ─

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全12曲中バカラック作品は2曲。
T-2.「 汽車と船と飛行機と 」はオリジナルのバカラック版とほぼ同じ構成・アレンジですが、オリジナル(♩≒110)よりゆったりしたテンポ(♩≒94)、フルートによる優しい音色のメロディラインや時折聴こえるグロッケンによる分散和音のオブリガート、そしてディアリーのキュートで舌足らずな歌唱が合わさり、ドリーミーな雰囲気を醸し出しています。個人的にはレコメンドですね。
T-3.「 アルフィー 」もオリジナルのシラ・ブラック版をベースとしたアレンジでテンポもほぼ同じ。キーは二度低いもののディアリーは頑張って歌っていて好感持てます。…が、音域が広くある程度感情を込めないと説得力がないこの曲では、彼女のヘタウマな歌声は頼りなくて逆効果かなぁ…と思っちゃいました。

さて、ここからはオマケ。MP3で所有しているブロッサム・ディアリーのバカラック作品をご紹介!
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今年(2023年)リリースされた Fontana時代の66〜70年に残した未発表音源27曲を収録した2CD作『 フィーリング・グッド・ビーイング・ミー:ザ・ロスト・アンド・ファウンド・ロンドン・セッションズ 』に、バカラック作品も収録されていました。「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(世界は愛を求めている)」(3:18)、「 THE WINDOWS OF THE WORLD (世界の窓と窓)」(3:10) の2曲です。いずれもバックはピアノトリオで、ドラムスはブラシワーク。そして、工夫が感じられない淡々とした演奏にディアリーのあまり気持ちの入ってない歌唱も共通してます。悪くはないですが、そりゃアウトテイクになるよね…という感じ。ごめんねディアリー。
尚、ヨーロッパでは『 Discover Who I Am: The Fontana Years, London 1966–1970 』というタイトルで、66〜70年にFontanaからリリースされた4タイトルと未発表音源27曲を含めた6CDボックスセットとして今年6月30日にリイシューされてます(日本でも、AmazonやApple Musicでの配信はこちらのタイトルで今年4月21日にリリース)。


【データ】
『 Soon it's gonna rain 』(邦題:スーン・イッツ・ゴナ・レイン)
Blossom Dearie

LP:1967年リリース (所有CDは、2023年7月26日リイシューの日本盤、復刻紙ジャケ仕様。解説は杉田宏樹氏)
レーベル:Fontana(UK) (所有CDは、Fontana/UNIVERSAL LLC(JP))
番号:TL.5454 (所有CDは、UCCU-45090)

Accompaniment directrd by Reg Guest
  ブロッサム・ディアリー (p,vo)
  ロニー・ヴェレル (ds)
  ブライアン・デーリー (g)
  ケニー・サーモン (org)
  レグ・レオポルド (vln)
  デイヴィッド・スネル (harp)
  ジム・ロウレス (perc)
  アーサー・ワッツ&ピート・マクガーク (b)
  デレク・グロスミス (fl)
  アラン・ハーキン (perc)
  キース・バード (as on #10)
  レグ・ゲスト (arr, cond)
  ディック・リーヒー (arr, cond)
1967年8月21〜23日、ロンドンにて録音
(P)&©️ 1967 Mercury Records Limited.

<T-13,14.:日本盤ボーナス・トラック>
1968年リリースシングルのA,B面
Accompaniment directrd by Arthur Greenslade
(P) 1968 Mercury Records Limited.

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Amazonリンク(リイシューCD

2023年9月 7日 (木)

雑誌『 レコード・コレクターズ 』と、ムック本『 AOR AGE 』(2023年)

雑誌『 レコード・コレクターズ 』2023年9月号と、ムック本『 AOR AGE 』Vol.28 のバカラックさん特集記事をご紹介!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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皆様ご承知のことと存じますが、去る8月12日に発売された『レコード・コレクターズ』9月号の特集は “バート・バカラックの名曲を聴く” でございました。私はAmazonで購入。届いたのは発売日の2日後?くらいだったでしょうか。初耳のエピソードがあったり、知らなかったカヴァーが載ってたり。拙ブログ記事の中にちょっと事実誤認を見つけて、数箇所こっそり訂正or追記したりしてます。

32 特集 バート・バカラックの名曲を聴く
34 バート・バカラックの名曲 126選(青山陽一、朝日順子、出田圭、宇田和弘、金澤寿和、ガモウユウイチ、北中正和、サエキけんぞう、柴崎祐二、立川芳雄、谷口雄、鳥居真道、中村彰秀、中森泰弘、能地祐子、萩原健太、林剛、松永良平、村尾泰郎、安田謙一、湯浅学、除川哲朗、若月眞人、渡辺亨)
81 バート・バカラック・ヒストリー(萩原健太)
88 90年代以降の活動からその音楽的人生を振り返る(高橋健太郎)

個人的にはシンコーミュージックから出た「AOR AGE」Vol.28(今年4月19日発行)も興味深く読みました。特集のひとつがバカラックさん。1980年以降に発表した書き下ろし曲を初出レコードの発表年ごとに整理し各曲にコメントしています。切り口が新鮮で、 意外な方のインタヴューもあったりして。特に、拙ブログでもアルバムを紹介した羽根田ユキコさんのインタビューはサプライズ。来日公演後に対面したバカラック爺に「曲を書いて下さい!」と直訴したらその後爺から2枚のCD-R(未発表曲が10曲以上!)が送られてきた話。そして、その中から5月くらいにバカラックさんの曲を出そうと考えている話。Spotifyのプリセーヴィングに登録したらその曲のデモ(25秒だけ)が聴けました!


098 R.I.P. BURT BACHARACH
100 ヒストリー
102 山本光男
106 羽根田ユキコ
108 光行猛
111 林哲司
112 バート・バカラック&エルビス・コステロ作品集
114 保存版:1980年以降の書き下ろし曲を総点検(30ページ)

それぞれ公式サイトのリンクを貼っておきます。
レコード・コレクターズ 2023年9月号
AOR AGE Vol.28〈シンコー・ミュージック・ムック〉

そういえば、10月9日スポーツの日にNHK-FMで『 今日は一日“バート・バカラック名曲”三昧 』やりますね! 9時間ぶっ通しで聴くぞー!

Amazonではまだ在庫あるようです。

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Amazonリンク(レコード・コレクターズ)(AOR AGE

2023年9月 3日 (日)

The Music Of LOST HORIZON/The Shangri-La Orchestra & Chorus (1973年)

バカラックが音楽を担当した1973年の米映画『 LOST HORIZON(失われた地平線)』の曲をカヴァーしたアルバムです。1973年リリース。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. LOST HORIZON  M
A2. THE WORLD IS A CIRCLE  F
A3. LIVING TOGETHER, GROWING TOGETHER  FM
A4. I MIGHT FRIGHTEN HER AWAY  FM
A5. THE THINGS I WILL NOT MISS  F
B1. IF I COULD GO BACK  M
B2. WHERE KNOWLEDGE ENDS (FAITH BEGINS)  F
B3. QUESTION ME AN ANSWER  M
B4. REFLECTIONS  F

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記
 
収録時間約30分 



バカラックが音楽を担当した映画『 LOST HORIZON(失われた地平線)』の曲をカヴァーしたアルバムです。

Discogsで注文して昨日入手したばかりのこのLP。プレーヤーの針を下ろすまではイージー・リスニングのインストもの(+バックコーラス付き)だろうと思っていました。がしかし、聴いてみると元曲に近いアレンジ&演奏でしっかりメイン・ボーカルも入ってます。そう、本家サントラのコピー・アルバムと言っていいような代物でございました。

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本家サントラの全11曲に対し、本作は「 シェア・ザ・ジョイ(喜びを分けあおう)」「 アイ・カム・トゥ・ユー 」の2曲を除く9曲を収録。本家と本作を簡単に比較してみましたので、興味ありましたらクリック ↓ してご覧ください。
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アレンジは前述した通り元曲に近いですが、細かい部分では違う点や省略している箇所が散見されます。楽器の数も本家より少なく感じられます。プロデュースやアレンジはクレジットされておらず、おそらく本家サントラを真似して誰かがオーケストラ譜を書いたんじゃないか…。そう推察致します。

アーティスト名義は正確に書くと The Shangri-La Orchestra & Chorus featuring The Mountain Children Singers 。Discogsを検索してもこんなオーケストラは他に見つかりませんから、イージーリスニングものによくある録音用寄せ集めオケでしょう。The Mountain Children Singers は同じレーベルのイージーリスニングもので1作見つかりましたが、その名の子供合唱団が実在するわけではなくやはり録音用に集めた子供たちと思われます。

オケの演奏を本家サントラと比較すると、全体的にはサウンドの厚みが薄くメリハリも今一つ…そんな印象です。ただまぁ、本作を単独で聴く分にはアレンジも含めてそこそこの出来に聴こえるので、点数をつけるとしたら70点くらいかなぁ。メイン・ボーカルは男女2名ずつ計4名。A2.「 ザ・ワールド・イズ・ア・サークル(地球は丸い)」で本家だと途中でちょっとだけボビー・ヴァンが歌う箇所を女性が歌ってる以外、男女の役割分担は本家と同じ。4名のお名前はクレジットされているもののDiscogsで調べてみてもさっぱりわからず。スタジオミュージシャンの類だとは思いますが…(男性シンガーの1人、Tony Cooper という名のドラマーは見つかりましたが同一人物なのかは甚だ疑問です)。この4名の中で女性陣おふたりの歌唱は頑張ってると思います。

…以上を踏まえて改めて表ジャケットを眺めると…。“LOST HORIZON” の文字が大きく目立つ反面、その上の “The Music Of” は目を凝らさないと良く見えません。アーティスト名義に至っては一体どこに書いてあるんだ?という程で、下に書かれているもののこちらも目を凝らさないと見えません。裏ジャケットをみると、4名のシンガーは “CAST” といかにも映画の出演者のような表記だし、中央のライナーノーツは映画の紹介&各曲が使われる場面の説明だし…。結局このアルバムは、本家サントラ風を装いレコード屋さんでよくわからないお客さんに買ってもらおうという意図のもと製作されたんではなかろうか? そう思えてなりません。

まぁ、それだけこの映画は前評判が高かったということでしょう。映画の人気(というかバカラック人気?)を当て込んで制作されたと思われる
101ストリングスのアルバム『 Instrumental Music From The Ross Hunter Production LOST HORIZON And Other Selections 』、エド・エイムスのアルバム『 SONGS FROM "LOST HORIZON" AND THEME FROM OTHER MOVIES 』、トニー・ベネットのシングル「 LIVING TOGETHER, GROWING TOGETHER 」あたりと同様、同じ穴の狢だったか…。


【データ】
『 The Music Of LOST HORIZON 』
The Shangri-La Orchestra & Chorus featuring The Mountain Children Singers

LP:1973年リリース
レーベル:Pickwick/33 Records (US)
番号:SPC-3342

Producers:unknown
Arrangements:unknown
CAST (=Vocals):
  Tony Cooper (A1,A4)
  Mary Reynolds (A2,A4,A5,B2)
  Adrienne Matson (A5,B4)
  Steve Bolin (B1,B3)
The Shangri-La Chorus (A3)
The Mountain Children Singers (A2,B3)
Recorded in England

(P) 1973 PICKWICK INTERNATIONAL,INC.
A PRODUCT OF PICKWICK INTERNATIONAL,INC. WOODBURY, N.Y. 11797
PRINTED IN U.S.A.
MADE IN U.S.A.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年8月27日 (日)

Plays Beatles Bach & Bacharach/The Ted Heath Orchestra (1970年)

英国のテッド・ヒース・オーケストラがビッグバンド編成でビートルズ、バッハ、バカラックを演奏したアルバムです。バカラック作品を4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCD(2 in 1)のジャケット表/ケース裏

全10トラック中、バカラック作品は4トラック


1. NORWEGIAN WOOD
2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
3. MINUET IN 'G'
4. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
5. HEY JUDE
6. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
7. LET IT BE
8. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
9. AIR ON THE 'G' STRING
10. B, B & B

収録時間約32分


英国のテッド・ヒース・オーケストラがビッグバンド編成でビートルズ、バッハ、バカラックを演奏したアルバムです。

Wikipediaによれば、テッド・ヒースは1902年ロンドン生まれ(1969年没、享年67歳)。当初はジャズのトロンボーン奏者として数々のバンドやサイドマンで活躍
。その後自分のバンドを持ちたいと考えるようになり1944年に結成、英国スイング・ビッグバンドの雄のひとりになりました。Discogsを見ると、Ted Heath And His Music や Ted Heath And His Orchestra の名義だけで100作以上のアルバムが載っています。彼の死後も2000年まで活動・録音を続けました。(写真は晩年のお姿でしょうか。Discogsからパクりました、悪しからず)
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本作は彼が亡くなった翌年(1970年)のリリース。ジャケットは複数あるようで、女性が写ってるヤツは1972年の日本盤です。
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'60年代後半〜'70年代初頭、イージーリスニングの世界で Beatles, Bach, Bacharach は3大Bとしてネタにされていたようで他にも同様なアルバムがあります。拙ブログでも取り上げた Alan Moorhouse の『 Beatles, Bach, Bacharach Go Bossa 』(1971) や、有名な Enoch Light の『 Spaced Out 』(1969)Carmen Cavallaro の『 Plays The 3B's 』(1970) 等がソレ。時代はくだって、バッハの代わりにビージーズを組み合わせた 東京メトロポリタン・ブラス・クインテット
の『 Plays ポップス3大B 』(2014) なんてのもあります。

さて、本作全10曲の内訳は、ビートルズ3曲(T-1,5,7)、バッハ2曲(T-3.「 ラヴァース・コンチェルトの元曲 」, T-9.「 G線上のアリア 」)、バカラック4曲(T-2,4,6,8)、オリジナル1曲(T-10)。バカラック曲多いなぁ。ビートルズ曲とバカラック曲のアレンジを手掛けた John Keating(ジョン・キーティング)は、1952年からテッド・ヒースのバンドでトロンボーンを吹くかたわらバンドの主要なアレンジャーでもあったお方。並行してバンド以外のさまざまなアーティストにも曲を提供したそうです。編成は基本ビッグバンドで全体的に元気なサウンドですが、チェンバロ、フルート(サックスの持ち替えでしょうが)を上手く使って所々にバロック風味を醸し出してるのが印象的。ただ、このアルバムを聞く限りこれがテッド・ヒースだ!的な特徴は無さそうです。

バカラック曲についてそれぞれ触れます。T-2.「 恋よさようなら 」はボビー・ジェントリー版を下敷きにしたアレンジで、伴奏形やオブリガートまでかなり忠実に再現しています。この曲、英国でヒットしたのはボビー・ジェントリー版ですからねぇ(英国で1969年8月15日にシングルリリースされその月のうちにUKチャート1位に)。T-4.「 ディス・ガイ 」はゆったり目のテンポ(♩≒75)。ブラスが柔らかい和音でメロディを吹いてるんですが、チェンバロのちょこまかしたオカズがいいアクセントになってます。T-6.「 遠い天国 」はオリジナルたるディオンヌ・ワーウィック版ベースのアレンジで、主メロをサックス〜トランペット〜トロンボーンと繋いでいきます。T-8.「 雨にぬれても 」は、イントロ冒頭4小節でのフルート数本によるバロック調アンサンブルやチェンバロがリードするAメロなどクラシカルな部分と、ブラスが和音でメロディを吹くビッグバンドらしい部分が上手くバランスされてます。アウトロでフルートが独自メロをアドリヴっぽく吹くのが新鮮で、個人的にはレコメンドです。

他にいくつか印象に残った曲を。T-1.「 ノルウェーの森 」は冒頭で「 アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク 」を引用したり木琴の活躍やワウを使ったブラスなどアレンジが多彩で面白い。T-9.「 G線上のアリア 」はトロンボーンのソロが多くて元トロンボーン吹きとしては耳福。T-10.「 B, B & B 」は3分10秒のオリジナル曲で、曲名から察するに3大Bのトリビュート曲と思ったのですが違ってました。最初の40秒ほどはバッハっぽいバロック調でしたが、それ以降は'70年代のバカラックを彷彿とさせるフュージョンタッチのインストナンバー。変拍子もあるし、作曲者のMartinさんいい仕事してます。

ここからはオマケ。MP3で所有しているテッド・ヒースのバカラックカヴァーをご紹介!
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Ted Heath And His Orchestra 名義で🇬🇧Deccaから1965年にリリースした『 Fever! 』で「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」(3:05) をカヴァー。アレンジャーはわかりませんがいかにもビッグバンド的な派手でゴージャスなサウンド。中間部でのテナーサックスのアドリヴも熱い。バシッと決めるエンディングもいいし、気持ち良いカヴァーです。


【データ】
『 Plays Beatles Bach & Bacharach 』
The Ted Heath Orchestra

LP:1970年リリース (所有CDは、『 Big Band Percussion 』との2 in 1、2007年リイシュー英国盤)
レーベル:London Records (US) (所有CDは、vocalion(UK))
番号:SP 44148 (所有CDは、CDLK 4346)

Producers:Tony D'Amato and Ray Richardson 
Arrangements:John Keating (except T-3,9), Martin (T-3,9)
Written by Lennon=McCartney (T-1,5,7), Bach (T-3,9), Bacharach & David (T-2,4,6,8), Martin (T-10)

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2023年8月20日 (日)

super.modern.artistic.performance/SMAP (2008年)

SMAP18枚目のオリジナル・アルバムです。なんとバカラックの新作を1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有CDはレンタル使用中古品。貼ってあったシールを上手く剥がせずこうなりました、悪しからず。

全19トラック中、バカラック作品は1トラック

DISC 2
3. LIFE WALKER (5:11)


SMAP18枚目のオリジナル・アルバムです。2008年9月にリリースされました。

Wikiによると、“モダンで芸術的で見たことがない新しいSMAP” がコンセプトだそう。
CD2枚組、全19曲(DISC 1:14曲、DISC 2:5曲)。DISC 2は各メンバーのソロ曲で、ヴォーカルは1曲目から順に中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾。
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注目のバカラック新作はDISC 2-3.「 LIFE WALKER 」。稲垣吾郎(以下、吾郎ちゃん)のソロ曲です。ブックレットには、作詞:森浩美/作曲:Burt Bacharach/編曲:小西康陽(以下、小西さん)とクレジットされています。

バカラックさん訃報から約1ヶ月後、吾郎ちゃん自身がMCを務めるラジオ番組『 THE TRAD 』(2023/3/13 15:00〜16:50)で、この曲についてゲストの小西さんとこんなこと話してました。(以下、要点のみ)

吾郎ちゃん ─ 覚えてない。当時は忙しくてあんまりこの頃のことを覚えてない。小西さんが編曲してくださると聞き、安心してお願いしたことは覚えている。原曲は僕も聴かせてもらったが、打ち込みで主メロだけだった。 ─
小西さん ─ とにかくあの頃のSMAPは時間がなさすぎた。オファーがあってから1ヶ月後に出ていた。時間のない中でアレンジやって、ディレクターから歌詞を誰にしますか?と訊かれた。時間があったら僕がやりたかったが、時間がなくて森さんを薦めた。 ─

覚えとらんのか〜い(笑)

曲はミディアムテンポ(♩≒118)で、ダンス・ポップ系のリズム。ホーン、ストリングスにハープ、ティンパニまで加わったオケは豪華です。1コーラスの基本構成はA-B-サビ。A-Bは嬰ヘ長調(F♯)で、サビは嬰ヘ短調(F♯m)に転調。AメロBメロはそれぞれ普通に8小節なのですが、サビは11小節(5小節+6小節)と変則的な上に3〜5小節目及び8〜10小節目のメロディはぎこちなく拍子が取りにいし、しかも5小節目は5拍! メロディそのものも、Aメロ歌い出しの音がA♯3と低く、音域もG♯3〜F♯5と2オクターヴ近くあります。転調・変な小節数・変拍子っぽく高低差の大きいメロディ…、バカラックらしいエッセンスを持った曲ではあります。メロディへの当て嵌めがぎこちない日本語詞も相まって吾郎ちゃんとても歌いにくそう…。それでも歌い切るのはサスガ(覚えとらんけど💦)。

以前、ちたりた様が「 LIFE WALKER 」
のライヴ動画をコメントで教えてくださいました(どうもありがとうございます)。こちら の2曲目です。わたしゃてっきりアルバム・オンリーの曲だと思ってたのですが、まさかコンサートでも歌ってたとは…。しかもあんな振り付け(ダンス?)まで付けて。カッコいいですねー。(ただ、一部カットしてる以外は音源と同じようで口パクっぽいですが)

因みに、スペインのレーベルから2017年に出たバカラック&トニオ・K作品のデモ音源集『 Original Demos 』に、「 LIFE WALKER 」の元曲とみられる「 DO YOU? 」が収録されています。今回聴き比べて気づいたんですが「 DO YOU? 」のサビ5小節目は4拍。「 LIFE WALKER 」では小西さんが(バカラック風味を出すために?)1拍追加して5拍にしたんでしょう。独自の日本語詞
をつけたため曲名を変更したんだと思いますが、「 LIFE WALKER 」3コーラス目サビの “ Do it ! ” に元曲の名残があります。


【データ】
『 super.modern.artistic.performance 』
SMAP

CD:2008年9月24日リリース
レーベル:ビクターエンタテインメント
番号:VICL-63333~4

Sound Producer:Kohji Mikami
Producer:Michi Iijima (Johnny & Associates)、Satoshi Kamata (Victor Entertainment, Inc.)
DISC 2-3.「 LIFE WALKER 」
  作詞:森浩美、作曲:Burt Bacharach、編曲:小西康陽
  オーケストレイション:村山達哉
  Strings:徳永友美ストリングス
  Horn:高橋臣宜グループ
  Harp:斉藤葉
  Timpani:小竹満里
  Percussions:有泉一
  A. Guitars:古川昌義
  Chorus:知野芳彦
  Programming:新井俊也
  小西康陽 by the courtesy of columbia readymade / COLUMBIA MUSIC ENTERTAINMENT, INC.
(P) & ©️ 2008 ビクターエンタテインメント株式会社

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2023年8月13日 (日)

Pavane/Louis Van Dyke (1969年)

オランダの男性ジャズ・ピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクが1969年にリリースしたトリオ編成のアルバムです。バカラック作品を1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全9トラック中、バカラック作品は1トラック

9. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (3:01)


オランダの男性ジャズ・ピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクが1969年にリリースしたトリオ編成のアルバムです。

ルイス・ヴァン・ダイクは1941年11月オランダのアルステルダム生まれ(2020年4月没、享年78歳)。7歳からピアノを始めアムステルダム音楽院でクラシック・ピアノとオルガンを習い、教会でピアノを弾くうちにジャズに興味を持ち1961年ルースドリヒト・ジャズ・コンテストで優勝。1964年にはオランダの音楽界で最高に名誉あるエディソン賞に輝き一躍人気に。トリオ等の活動の他に、アン・バートンの名作『 Blue Burton 』『 Ballads & Burton 』をはじめアストラッド・ジルベルトやサリナ・ジョーンズ等の伴奏での名演も多いそうです。彼はクラシックとジャズを独自のアレンジでミックス、特にバッハにインスピレーションを受けてきたんだとか。(所有CDの解説やDiscogsのプロフィールより抜粋・要約)

尚、名前は本来 Louis Van Dijk ですが、トリオ等では Louis Van Dyke のスペルが多いようです。

─ 本アルバムは、1969年に発表されたジャック・ショールス(b)、ジョン・エンゲルス(ds)のトリオで当時の割合と新しいヒット・ソングをクラシック出身らしい華麗なピアノで聴かせるものだ。  ─ (所有CDの解説より)
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アルバムタイトルにもなっているT-1.「 パヴァーヌ 」はフォーレ:パヴァーヌ Op.50 の変奏?バージョン。ミッシェル・ルグランのT-3.「 風のささやき 」、グラン・キャンベルのT-4.「 恋はフェニックス 」、ビートルズのT-5.「 フール・オン・ザ・ヒル 」等のヒット曲や、映画『 シェルブールの雨傘 』の主題歌T-7.「 アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー 」も取り上げています。彼のピアノはリリカルで、アドリヴはクラシックの “変奏” 的なものやアルペジオが多く、いかにもクラシック出身らしい感じ。

んで、バカラック作品はアルバムを締めくくるT-9.「 世界は愛を求めている 」。原曲と同じ3拍子、テンポも至って常識的な♩≒122。凝ったところがなく肩肘張らずに聴けるのはいいんですが、ピアノのメロディ&アドリヴは凡庸で中途半端な印象。中盤ちょっと盛り上がりはしますけど…。アルバムを最初から聴いた流れで、もっとリリカルな演奏を想像してたんですけどねー、ちょっとがっかり
…。まぁこの辺は好みの問題かな。

因みに、ルイス・ヴァン・ダイクは同じオランダのジャズ・ピアニスト Pim Jacobs とのデュオで「 遙かなる影 」をレコーディングしています(1985年のアルバム『 FACE TO FACE 』に収録)。が、私は未聴。いつか聴きたいです。


ここからはオマケ。MP3やCDで所有しているピアノ・トリオの「 世界は愛を求めている 」をご紹介!
と言っても少ないですが…。この曲、ジャズヴォーカル版は数多ありますし、インストでもホーン入りの編成だったりビッグバンドやオーケストラ物が多くてピアノ・トリオはあまり見かけません。私のリサーチ不足もあるんでしょうけど。尚、リンク先は拙ブログの過去記事です。

① George Shearing Trio (1973):アルバム『 Number 1 』より
英国のジャズ・ピアニスト、ジョージ・シアリング(p), Andy Simpkins(b), Harvey Mason(ds)のトリオによる演奏(3:05)。3拍子で、テンポは♩≒128。全編に亘りピアノの左手が “おっとっとっ” のリズムを刻んでるのが特徴的で面白い。アドリヴも軽めですがファンキー。フェードアウトしてるのが惜しいです(ジャズは終止形じゃないとね)。
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② Peter Nordahl Trio (2004):アルバム『 My Rubber Soul 』*より
スウェーデンのジャズ・ピアニスト、ペーター・ノーダール(p), Hampus Lundgren (b), Harry Wallin (ds)のトリオによる演奏(5:56)。3拍子で、テンポは♩≒162と軽快。ピアノのソウルフルでファンキーなアドリヴがイイですねー。私的レコメンドです。 *日本では1曲入れ替えジャケットも変えて
『 ザ・ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ 』というタイトルでリリース。
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David Hazeltine Trio (2006):アルバム『 Alfie Burt Bacharach Song Book 』より
米国のジャズ・ピアニストのトリオによる演奏(6:22)。4拍子(6/8ブルース)にアレンジ、テンポは♩≒96。中間部(2分過ぎから約2分弱)のアドリヴはカッコいいですが、前半と後半がダレてしまいます。惜しい。

New Roman Trio (2008):アルバム『 Bacharach Jazz 』より
松本茜(p), 山下弘治(b), 松尾明(ds)のトリオによる演奏(4:56)。サビは5拍子にアレンジ(他は3拍子)。テンポアップ(♩≒202)と相まって聴く人の高揚感を誘っています。キラキラしたピアノのアドリヴやベースのアドリヴもゴキゲンで楽しく聴けます。



【データ】
『 Pavane 』(邦題:パヴァーヌ)
Louis Van Dyke

LP:1969年リリース (所有CDは、2014年9月24日リイシューの日本盤。解説:高田敬三氏)
レーベル:CBS (Netherlands) (所有CDは、Sony Music Labels Inc.)
番号:S7-63811 (所有CDは、SICP 4225)

Produced by John J. Vis
Louis Van Dyke (piano)
Jacques Schols (bass)
John Engels (drums)
録音:1969年

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2023年8月 6日 (日)

HEY! MR. BACHARACH/Nick The Nightfly Orchestra featuring Maggie (2022年)

英国のジャズ・ミュージシャン、Nick The Nightfly が2022年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全8トラック中、バカラック作品は7トラック

1. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)  M
2. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  M
3. I SAY A LITTLE PRAYER  F
4. STILL IN LOVE  M
5. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  FM
6. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU  M
7. WALK ON BY  F

8. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE  M

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記

収録時間約32分


英国のジャズ・ミュージシャン、Nick The Nightfly が2022年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。

Nick The Nightfly(本名 Malcolm MacDonald Charlton)は1957年グラスゴー生まれ。1982年イタリアに渡り、現在はミラノを拠点に活動。芸名はドナルド・フェイゲンのアルバム『 The Nightfly 』に触発されて命名したんだとか。自分のビッグバンドを持つとともに、ラジオ番組でのMC、プロデューサー、歌手とマルチに活躍しているようです。

そんな彼がどうして本作をリリースしたのか。CDのブックレット2ページに亘って彼の思いが書いてありました。ちょっと長いですが、伊太利亜語の全文を機械訳して紹介します。(
一部手直ししましたが、変な訳が多い点ご容赦くださいませ)
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─ HEY! MR.BACHARACH、多くの人がそうだと思いますが、それこそシャワーを浴びるように私があなたの曲やハル・デイヴィッドの歌詞をこれまで何回歌ってきたか、あなたは分からないでしょう。

彼らは確かに音楽史上で最も有名なソングライターカップルの一組でした。人気があり、バカラックは史上最も影響力のある作曲家の1人です。私は、彼らの人気曲をどうやって再考し、現代的で最新のものにし、同時にまったく新しい外観を与えることができるだろうかと何度も自問しました。確かに簡単な仕事ではありませんでした。実際、歌手やミュージシャンにとって、一見するとシンプルに見えますが、実際には色彩とメロディーの飛躍を伴う珍しいハーモニーに満ちたこれらの曲を解釈するのは本当の挑戦であると私は思います。特別で、異なっていて、時代を超越したもの。これらのエヴァーグリーンな曲にオリジナリティをもたらすことを期待して、これらの曲を成功に導いた作者やアーティストには多大な敬意が必要です。私の挑戦は、バカラックの洗練されたPOPに、2023年に創立20周年を迎える優秀なミュージシャンで構成される “ザ・ナイトフライ・オーケストラ” のSWINGを加えることでした。結果がどうなるか見てみましょう!
しかし、この結果を得るには、オーケストラのすべての音楽家をまとめる能力のある人、パートを書き、新しい編曲を発明し、デザインする人が必要です。私は長年にわたり、イタリア最高のサックス奏者および編曲家の1人とコラボレーションできたことを光栄に思います。私たちは一緒に多くのプロジェクト、レコード、コンサートを共有してきました。伝説のクインシー・ジョーンズやイエロー・ジャケッツで一緒にプレーしたよ!マエストロのガブリエレ・コメリオは、数日で再編曲し、このアルバムに収録されているすべての曲を書き、オーケストラを指揮しました。わぁ、おめでとう、ガブリエレさん、ありがとう!
このレコードでは、オーケストラに新しく美しい女性の声を加え、ここで歌う若い歌手をフィーチャーしています。彼女の名前はマギーです。彼女はスウィングとソウルに満ちた美しい声を持っています。
最後に、大規模なオーケストラでは、曲中および編曲全体を通して正確かつ確実な進行でオーケストラをサポートする、テンポの達人が必要であることが知られています。だからこそ、このアルバムでは、長年の友人である世界最高のドラマーの一人、アルフレッド・ゴリーノを特別ゲストとして迎えることができて光栄です。
バカラックのレパートリーにはたくさんの曲があり、その中から私が好きな曲を選びました。それらは私が彼について持っている音楽的記憶の一部です。ディスクにはバカラック氏に捧げた私のオリジナル曲「 STILL IN LOVE 」も収録されており、彼の音楽が私に影響を与えた曲です。私は何度か彼にインタビューする機会に恵まれました。私の記憶では、彼はとても愉快で、文化的で、好奇心旺盛で、いい人で、音楽界での彼の長い人生についての逸話がたくさんありました。私の中でバカラックについての最も鮮明な記憶は、ミラノ・アリーナでの彼のコンサートのときで、私はそれを家族と一緒にステージから披露し、鑑賞した。忘れられないコンサート。その夜、彼の音楽を聴きながら、私は自分の人生の一部を追体験し、人生の思い出や瞬間とリンクし、永遠に私たちに寄り添うであろう歌にどれだけの魔法があるのか​​を考えました。『 Hey! Mr. Bacharach 』のレコーディングとライブパフォーマンスを通して感動と美しい瞬間を皆様にお届けすることで、バート・バカラックとハル・デイヴィッド、そして他の作家たちの音楽への私たちのトリビュートを楽しんでいただければ幸いです。

Nick The Nightfly ─

オリジナル曲のT-4.「 STILL IN LOVE 」を除くバカラック作品7曲はいずれもカヴァー定番曲。T-3.「 小さな願い 」とT-7.「 ウォーク・オン・バイ 」はゲストシンガーの Maggie Charlton(マギー)に任せ、T-5.「 恋よさようなら 」ではデュエット、その他は Nick The Nightfly がソロで歌っています。Nick The Nightfly はリスペクトを持って丁寧に歌っていますし、マギーの若干ハスキーでパワフルな歌唱もなかなか。欲を言えば、2人とももう少しメリハリつけて歌って欲しかったかなぁ。
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ビッグバンドの演奏はさすがで、金管は元気だしサックス→フルートやクラリネットへの持ち替えも効果的。…なんですが、アレンジ自体はなんかこう…ビッグバンドとしてオーソドックス過ぎてワクワクしないんですよねぇ。 ─ 私の挑戦はPOPにSWINGを加えること ─ とか言ってた割には、各曲のリズムはオリジナルのままでSWING感は特段なし。曲自体の雰囲気を大事にし過ぎてるように感じました。決して悪いワケじゃないんですが…。
ブックレットにはレコーディング時の写真がたくさん載ってました。なんか皆さん楽しそう。いい雰囲気でレコーディングできたんだろうな…ってゆーのが伝わってきます。

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YouTubeに自動生成でアルバム全曲UPされてましたので貼り付けておきますネ。



さて、ここからはオマケ。MP3で所有している Nick The Nightfly のバカラック・カヴァーをご紹介!
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彼は、2004年に Nick The Nightfly & Monte Carlo Nights Orchestra Featuring Sarah Jane Morris 名義でリリースしたライヴ録音アルバム『 Live At The Blue Note Milan 』で「 ウォーク・オン・バイ 」(3:15)、「 恋の面影 」(4:53)、「 素晴らしき恋人たち 」(3:45)、「 雨にぬれても 」(4:16) 計4曲をカヴァー。ビッグバンドをバックに歌っていて、「 恋の面影 」と「 雨にぬれても 」の2曲では女性シンガーとデュエットしています。まず、Nick The Nightfly の声が若くてハリがある。それから、全体的にアレンジが攻めてる。「 ウォーク・オン・バイ 」では曲の途中からSWINGのリズムに変わってヒートアップするのが熱いし、「 素晴らしき恋人たち 」の疾走感あふれる演奏は素晴らしい。この2曲はレコメンドとさせていただきます。
※ そして2023年3月24日に20th Anniversary Editionとしてリイシューされた際「 愛のハーモニー 」(4:19) が追加されました。Nick The Nightflyによれば、バカラックさんに捧げるためとのこと。アコギをバックに、Nick The Nightfly、Sarah Jane Morris、Mario Biondiの3人のヴォーカルとPaolo Fresuのフリューゲルホルンによるコラボ。バカラック愛を感じるカヴァーです。
※ 2023/8/6 夜、ちたりたさんから情報をいただき追記しました。ちたりたさんありがとうございました。


【データ】
『 HEY! MR. BACHARACH 』
Nick The Nightfly Orchestra featuring Maggie



CD/MP3:2022年11月25日リリース
レーベル:Incipit Records (Italy) / EGEA MUSIC (Italy)
番号:-

Produced by Nick The Nightfly
All orchestrations by Gabriele Comeglio

MUSICIANS, THE NIGHTFLY ORCHESTRA
  Emilio Soana:lead trumpet, flugelhorn
  Sergio Orlandi, Alessandro Bottacchiari:trumpet, flugelhorn
  Andrea Andreoli:lead trombone
  Angelo Rolando:trombone

  Gabriele Comeglio:lead alto, flute, bass clarinet
  Maurizio Meggiorini:alto sax, clarinet
  Giulio Visibelli:tenor sax, flute
  Valerio Beffa:tenor sax, clarinet
  Ubaldo Busco:baritone sax

  Marco Confalonieri:piano, keyboards
  Marco Esposito:electric bass
  Ezio Rossi:electric bass nel brano "STILL IN LOVE"
  Alessandro Gallo:guitars
  Alfredo Golino:drums
  Marco Serra:drums (on "WALK ON BY")

Maggie Charlton:lead and backing vocals
Caterina Comeglio:backing vocals

Solos:
  Sergio Orandi (Trumpet on "ARTHUR'S THEME")
  Alfredo Golino (drum solo on "STILL IN LOVE")
  Gabriele Comeglio (alto sax on "I SAY A LITTLE PRAYER")
  Giulio Visibelli (flute on "WALK ON BY" e "THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU")
  Ubaldo Busco (baritone on "WHAT THE WORLD NEED NOW IS LOVE")
  Andrea Andreoli (trombone on "THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU")
  Emilio Soana (trumpet on "STILL IN LOVE")

(P) & (C) 2022 Nick The Nightfly
Exclusively licensed M.T. SRL EGEA MUSIC

※ 日本のAmazonでは CDの取り扱いは無し、配信のみ購入可能です。

2023年7月30日 (日)

OUR LOVELY DAYS/清野由美 (1982年)

1981年にデビューした女性シンガー、清野由美(せいの ゆみ)が1982年7月にリリースしたシングルです。当山ひとみのバカラック・ナンバー「 OUR LOVELY DAYS 」をカヴァー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original 7"single front cover

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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全2トラック中、バカラック作品は1トラック

1. OUR LOVELY DAYS (3:48)
2. サマーホテル (3:57)


1981年にデビューした女性シンガー、清野由美(せいの ゆみ)が1982年7月にリリースした4thシングルです。

清野由美さんについて詳しいことはわかりません。  ─  音性多彩‼︎ ポップス、フュージョン、ジャズ……ジャンルを超えた多彩な個性が……いま、TAKE OFF! ─ これは1981年の1stアルバム『 U・TA・GE 』ジャケット帯のコピーですが、少なくともアイドルじゃなさそうですね。
今で言ったらシティポップ? 今月シングルやアルバムが日本コロムビアから配信開始されましたし、来月には一部LPが復刻されたり動きが活発な様子。これからもっと彼女の情報が出てくるかもしれません。

さて、本シングルのA面「 アワ・ラヴリー・デイズ 」は当山ひとみが歌ったバカラック楽曲のカヴァー。2人とも日本コロムビア所属で、しかも同じ1982年7月にシングルをリリースしてるんですねー。カヴァーというよりは競作になるのかな? ただし、当山版が英語詞なのに対して清野版は日本語詞。当山版は日立製作所のイメージ・ソングとしてTV-CMに使われました(個々の製品ではなく、企業イメージCMに使われたようですね。例えばこちら)。清野版のシングル・ジャケットの曲名の下にも小さく“日立イメージ・ソング”と書いてありますが、YouTubeを検索しても使われたCMは見当たらず…。当山版とも清野版とも異なるアレンジのインスト版「 アワ・ラヴリー・デイズ 」がFM番組『 日立ミュージック・イン 』のオープニングで使われた(例えばこちら)ことも併せて想像するに、日立イメージ・ソングを清野由美も歌ってみました…ということなんでしょうか…。
尚、当山版については拙ブログ記事のオマケで詳しく触れています。ご参考ください。
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さて、清野由美の「 アワ・ラヴリー・デイズ 」は、当山版のアレンジに似たシティ・ポップス。明確に違うのはイントロで、当山版の18小節に対して清野版は後半10小節をカットした8小節。それを除くと構成は一緒で、1コーラス目はAメロ-Aメロ-サビ-サビ、2コーラス目はAメロ-サビ-サビで、その後サビを繰り返しながらフェードアウト。テンポは♩≒120で当山版(♩≒112)より速めな一方、キーは当山版(Aメロ最初の音=G)より二度低く(同音=F)、全体的な軽快さは同等といったところ。本シングルB面の「 サマーホテル 」を聴く限り彼女の歌声はしっとり&透明感があって魅力的なんですが、この「 アワ・ラヴリー・デイズ 」では歌声にリバーブや音を揺らせるエフェクトを強く効かせてて…。エフェクト無しの歌声を聴きたかったです。

竜真知子さんの日本語詞は英語詞の訳ではないけれど大意は同じで、あなたと過ごした素敵な日々を思い出す…てな感じ。聴いてて全く違和感ありません。

林哲司さんのアレンジは80年代前半らしいエレピの音がいい感じ。因みに、林哲司さんは駆け出しの頃、アメリカに行ってバカラックさんが作曲した曲を現地でアレンジ、レコーディングしてくるという仕事をしたそうですが、それがこの曲だったと語っておられます。(日刊ゲンダイ 2023年5月29日の記事『 林哲司さん語る 今年2月に死去した音楽家バート・バカラックとの不思議な縁 』を参照方) ─ 本人に会うことはできなかったけど、バカラックの誰も聴いていない曲のアレンジを任された ─ とも書いとられます。レコーディングは当山版と清野版どちらが早かったんでしょうね。レコード番号は当山版の方が若いのでオリジナルは当山版になるんでしょうけど
…。

そういえば、歌詞カードの下の方に(Los Angeles 録音)と書いてありました。

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YuTubeに自動生成でUpされてましたので動画を置いておきます。


ついでに、リリース当時のものと思われるプロモーション動画?も。温泉宿の玄関にいる人たちは何なんだ?(笑)



【データ】
「 OUR LOVELY DAYS/サマーホテル
清野由美




7"Single:1982年7月21日リリース (所有リイシューCDは、2023年4月1日リリースのオンデマンドCD:MEG-CD)
レーベル:Blow Up / 日本コロムビア(JP) (所有リイシューCDは、JVCKENWOOD Victor Entertainment (JP))
番号:AH-236-A (所有リイシューCDは、VODL-37071)

T-1.「 OUR LOVELY DAYS 」
作詞:竜 真知子
作曲:Burt Bacharach
編曲:林 哲司
(Los Angeles 録音)

リンク先消滅したためリンク貼り直し(2024/1/13)
Amazonリンク(リイシューCD


2023年7月23日 (日)

Vintage II/澤田知可子 (2023年)

澤田知可子さんが2023年6月にリリースした、洋楽の日本語詞カヴァーアルバム第2弾。バカラック・カヴァーを2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全15トラック中、バカラック作品は2トラック

10. 恋の面影  THE LOOK OF LOVE  (3:54)
12. A HOUSE IS NOT A HOME  (3:34)


澤田知可子さんが2023年6月にリリースした、洋楽の日本語詞カヴァーアルバム第2弾です。

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 2022年に作詞家・松井五郎氏プロデュースによる洋楽の日本語詞カヴァー『 Vintage 』をリリース。オリジナルの英語歌詞の聴感を尊重しながら、ただの訳詞に留まらず、日本語の歌としても歌いやすく聴きやすい作品に仕上がりました。本作はこの『 Vintage 』の続編で、洋楽カヴァーに加えて、代表曲の「 会いたい 」と「 時がめぐるなら 」を収録した、澤田知可子の記念碑的アルバムです。  ─ (CDの帯より)

皆さん彼女のことをご存知でしょうからプロフィールは紹介しません。2022年に改名してることだけ触れておきます。 ─ 私ごとですが本日2022年5月22日より「澤田知可子」として歌手活動をして参ります。沢田→澤田と旧漢字へと改名致しました。読み方は変わらず「さわだちかこ」です。  ─ (彼女の公式サイトのNEWSより)

全15曲のうち、洋楽カヴァーは13曲。バックの演奏は曲により編成が異なるもののアコースティックな響きで統一。カーペンターズ、オリヴィア・ニュートン=ジョン、ビージーズ、アルバート・ハモンド、ジェーン・バーキン、映画『 ひまわり 』主題歌、映画『 カサブランカ 』劇中歌、スコットランド民謡などと共にバカラック&デイヴィッド作品を2曲カヴァーしています。

T-10.「 恋の面影  THE LOOK OF LOVE 」:アコギ、トランペットなどによる伴奏は軽いボサノヴァ調のまったりとしたもの。イントロや間奏のトランペットのオブリガートは素敵です。英語詞訳をシンプル且つ柔らかい言葉で表現した日本語詞を歌う彼女の声は、ちょっぴりハスキーですが芯があり曲の雰囲気にマッチしてると思います。

もう1曲はT-12.「 A HOUSE IS NOT A HOME 」:バックはピアノ&チェロのみとシンプル。特にチェロが美しいです。英語詞には “house” “home” 共に5回登場しますが、松井五郎氏による日本語詞には “家” が1回、“home” に至っては相当する言葉がないんですね。それでも少ない言葉で曲の世界観をうまく表現できています。適度にヴィブラートを効かせた彼女の歌声もいいですね。


ここからはオマケ。MP3でしか所有していない澤田知可子さんのバカラック・カヴァーをご紹介。
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彼女は2022年3月にリリースした洋楽の日本語詞カヴァー・アルバム第1弾『 Vintage 』でもバカラック&デイヴィッド作品を2曲カヴァーしとられます(当時はまだ沢田知可子さん)。「 遙かなる影 」(3:49) のアレンジはカーペンターズ版のほぼコピー。日本語詞はなぁんかちょっと違和感あります。なんでだろ。そもそもこのメロディに日本語は乗りにくいように感じます。「 雨にぬれても 」(3:18) はウクレレとギターを中心としたシンプルなアレンジ。シャッフルのリズムに乗って彼女も軽やかに歌っとられます。が、日本語詞は過去の日本語版(石毛恭子さんの「 レインドロップス 」、メンボーズの「 雨にぬれても 」)と較べるとなぁんか無難で、もう一捻り欲しいナと。勝手なことばかり書いてスミマセン m(__)m。


【データ】



『 Vintage II 〜時がめぐるなら〜 』
澤田知可子

CD:2023年6月28日リリース
レーベル:U-CAN (JP)
番号:FRCA-1320

Producer:松井五郎
Sound Producer:小野澤 篤 (Water Planet Music)
Arrangement:小野澤 篤 (T-1〜8,12,13,15)、田嶌道生 (T-10,11)、千住 明 (T-14)、エバラ健太 (T-9)
日本語詞:松井五郎
Vocal & Chorus:澤田知可子
All Keyboards, Programming & Chorus:小野澤 篤 (T-1〜8,11,13,15) → T-12でもピアノ聴こえます
Guitar:長谷川友二 (T-3,7)、伊藤ハルトシ (T-2,4,13,15)、田嶌道生 (T-10,11)、エバラ健太 (T-1,3,6,9)
Cavaquinho:だいどうじさかえ (T-11)
Drum:清水 淳 (T-1,3,6)
Bass:関 雅夫 (T-2,4,7,8,13)、五十棲千明 (T-1,3,6)
Percussion:長岡敬二郎 (T-10,11)
Cello:伊藤ハルトシ (T-5,8,10,12,13,15) → T-10にチェロは入ってないです
Viola:田中詩織 (T-8,13)
Trumpet:高瀬龍一 (T-12) → T-10の間違いだと思います
Cho arragne & Bg vocal:Luz (Unlimited tone) (T-15)
Bass vocal:Dody (Unlimited tone) (T-15)

(P)2023 U-CAN
Distributed by UNIVERSAL MUSIC LLC
制作・発売:ユーキャン 販売:ユニバーサル ミュージック合同会社

リンク先消滅したためリンク貼り直し(2024/1/13)
Amazonリンク(CD

2023年7月16日 (日)

The Piano Side of Burt Bacharach/Christoph Spendel (2023年)

ドイツの男性ジャズピアニスト、クリストフ・スペンデルが今年(2023年)6月にリリースしたピアノソロのバカラック・カヴァー集です。(CD無し/デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
2. THE LOOK OF LOVE
3. WALK ON BY
4. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
5. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
7. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
8. I SAY A LITTLE PRAYER
9. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
10. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE

収録時間約45分


ドイツの男性ジャズピアニスト、クリストフ・スペンデルが今年(2023年)6月にリリースした全曲ピアノソロ演奏のバカラック・カヴァー集です。
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クリストフ・スペンデルは1955年生まれ。5歳でクラシック ピアノを始め、1975年にジャズ・トラックというバンドの一員としてベルリン・フィルハーモニー・ホールでデビュー。一時は米国に移住して活動していたんだそう。40 年以上にわたる音楽キャリアを持つジャズピアニストであり、一方でテレビ音楽と映画音楽の作曲家としても活躍。また、Blue Flame Records のプロデューサーとして自身及び自身のグループそして他アーティストのプロデュースも手がけてきたとのこと。(彼の公式サイトのBIOを超要約。写真も公式サイトより)

ピアノソロだけでも10タイトル以上のアルバムをリリースしてるみたいですが、公式サイトを見てもまだ本作は載っていません。更新遅すぎ^^;。想像ですが、バカラックさんの訃報を知って勢いでレコーディング→リリースしたんじゃないかと思います。

取り上げたのは、'60年代のバカラック&デイヴィッド作品9曲に、'80年代の「 愛のハーモニー 」を加えた全10曲。いずれもカヴァー定番曲で、選曲上のヒネリや拘りは特段感じられません。演奏はどうでしょうか。ゆったりとあまり抑揚をつけないシンプルなアレンジ、コロコロとしたピアノタッチで残響多め。1コーラス目のメロディはほぼ原曲通り、2コーラス目ではメロディを少しいじってきますがアドリヴ的なものではなく変奏曲的なスタイル。全体としてはラウンジやカフェのBGMにピッタリのイージーリスニング仕様といった感じでしょうか。

細かいこと言えば、T-2.「 恋の面影 」がダイアナ・クラール版ベースだったり(歌ってはいませんが)、イントロだけ聴いてもなんの曲だか分からないもの( T-3.「 ウォーク・オン・バイ 」、T-8.「 小さな願い 」、T-9.「 雨にぬれても 」)もあって好感するポイントもあります。T-6.「 サン・ホセへの道 」のイントロ(1オクターヴ下がる特徴的なメロディ)が微妙にリズムずれててちょっとつまづきそうになるのはご愛嬌といったところか。

全曲ピアノソロ演奏のバカラック集、これまで拙ブログでは David Osborne(2019年) と Len Rhodes(2019年)のアルバムを紹介しています。いずれもイージーリスニング仕様ですが、そのなかでは本作が最も退屈かなぁ…。あまりお勧めは致しません、悪しからず。


【データ】
『 The Piano Side of Burt Bacharach 』
Christoph Spendel

MP3:2023年6月2日リリース
レーベル:BLUE FLAME (Germany) / Schubert Music Europe GmbH
番号:?

クレジット等詳細不明

Amazonリンク

2023年7月 9日 (日)

THE JAZZ SIDE OF BACHARACH/Claudio "Wally" Allifranchini Quartet, Archimia String Quartet, Fabrizio Bosso (2023年)

伊太利亜のテナー・サックス奏者、クラウディオ・“ウォーリー”・アッリフランキーニ率いるカルテットと弦楽四重奏によるジャズ・バカラックカヴァー・アルバムです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. WALK ON BY  (9:44)
2. WIVES AND LOVERS  (8:11)
3. A HOUSE IS NOT A HOME  (9:16)
4. ALFIE  (7:03)
5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU  (5:02)
6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE  (5:59)
7. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  (8:55)
8. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR  (6:53)

収録時間約61分


伊太利亜のテナー・サックス奏者、クラウディオ・“ウォーリー”・アッリフランキーニ率いるカルテットと弦楽四重奏によるジャズ・バカラックカヴァー・アルバムです。尚、本作は2023年4月リリースですがレコーディングは2022年なのでバカラックさんを追悼しての企画(追悼盤)ではありません。

─ イタリア北西部のロマニャーノ・セージア生まれのテナー&ジャズ・アレンジャー、クラウディオ・“ウォーリー”・アッリフランキーニはバカラックの音楽に自らのビジョンを反映しつつも、本来のエレガントで洗練された雰囲気を保った素敵なアレンジを施しました。自身が率いるカルテットとアルキミア・ストリング・カルテットの共演。さらに世界的トランペッター、ファブリツィオ・ボッソがゲスト参加した華やかなアルバムです。 ─ (新譜インフォより)

全く聴いたことない名前ばかり…。こんな時はライナーノーツを訳すしかない!(ほぼ機械訳だけど…)

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─ クラウディオ・“ウォーリー”・アッリフランキーニは、1956年伊太利亜ノヴァーラのロマニャーノ・セーシア生まれ。サックス奏者、ポリ楽器奏者、編曲家、作曲家として長年活躍し、ジョルジョ・ガスリーニやエンリコ・ラヴァなどの偉大なジャズアーティストと共演している。彼はミラノのポメリッジ・ムジカーリのビッグバンドである「ジャズ・クラス・オーケストラ」で10年以上演奏し、そこでエンニオ・モリコーネ、フィル・ウッズ、ボブ・ミンツァー、ジョルジョ・ガスリーニ、ジャンニ・バッソ、ブルーノ・トンマーソ、ロニー・キューバー、バーニー・ケッセル、リー・コニッツなどのアーティストと共演する機会を得た。サックス奏者としての演奏のほか、作編曲家としても活動し、1996年にはジャズ編曲・作曲の権威あるコンクール「バルガ・ジャズ」にて「ガスパチョ」で優勝。ポップミュージックの分野でも精力的に活動している。イタリアの偉大な歌手たちのレコーディング、ツアー、テレビ放送にサイドマンとして参加したこと数知れず。長年にわたりノヴァーラのスクオーラ・ディ・ムジカ・デダロで教鞭をとり、「ビッグバンドのためのジャズワークショップ」や「コンボジャズ」という名の小規模アンサンブルのためのアンサンブル音楽コースを指導している。  ─

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─ アルキミア弦楽四重奏団は、ミラノとピアチェンツァの音楽院出身で、新しいサウンドと音響の可能性を探求したいという願いを共有し、クラシックの訓練を受けた4人の音楽家によるアイデアから生まれた。カルテットは、ミラノ、ナポリ、ヴェローナ、ヴェネツィア、ローマ、チューリッヒ、ルガーノ、ベオグラード、ブラチスラヴァ、ベルリン、マドリッド、ウィーン、ロンドン、ブライトン、ウィーン、ワシントンなど、多くの重要都市で演奏。さらにミラノの名門「ブルーノート」のステージでも約20回演奏している。カルテットはテレサ・ポモドーロとミラノのテアトロ・ノーマと積極的に協力するようになり、ヨーロッパの最も重要な演劇祭でアーティストのウィリアム・ケントリッジによる「月への旅」の伴奏者に選ばれた。ライブやスタジオで、ルシオ・ダッラ、エリサ、ニコロ・ファビ、ニック・ザ・ナイトフライ、マリカ・アヤネ、ファブリツィオ・ボッソ、パオロ・トメッレーリ、ガブリエレ・コメリオ、パオラ・フォリ、ウォルター・リッチ、フランコ・ファザーノらと共演している。  ─

─ ファブリツィオ・ボッソは、比類のない楽器のテクニックと、すべてのリスナーの魂の最も深い弦を振動させることができる抒情性を備えたトランペット奏者。ジャズミュージシャンとしてのルーツに常に忠実でありながら、あらゆる音楽ジャンルと対話しながら芸術的開花とキャリアを発展させてきた。彼は世界中で厳格かつ精力的に演奏を行っており、素晴らしいメロディーの豊かさと絶妙なイタリアの歌唱スタイルをもたらした。これらの特質が彼のトランペットのサウンドをユニークですぐに認識できるものにしている。 ─

ジャケットの人物画、最初はクラウディオ・“ウォーリー”・アッリフランキーニなのかな?と思いました(だってバカラックさんはこんなに鼻の下長くないし…)。でもライナーノーツの写真を見たら髪の毛なかったんで、こりゃ違うわ…と。バカラックさんを描いたんですね、だったらもっと似せろよ!

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サックス/フルート、ギター、ベース、ドラムス編成のカルテットに、弦楽四重奏&トランペットが加わったユニークな編成。ライナーノーツには8人一緒に映ってる写真もありました。ん?トランペットはシカトされてるのか?(じゃなくて、1人だけ別録りなので映ってないだけ)

取り上げたのは、'60年代のバカラック&デイヴィッド作品7曲に、'80年代の「 愛のハーモニー 」を加えた全8曲。いずれもカヴァー定番曲ですね。全体的な印象は、しっかりアドリヴはするもののそれほどハードではないコンテンポラリー・ジャズで、メインはカルテット、弦楽四重奏はサポート役…といったところかな。

個人的なレコメンドは3曲。まずはT-3.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」。軽快(♩≒184〜188)なスウィング・アレンジで、トランペット、サックス、ギターによるアドリヴは兎に角ゴキゲンです。


T-5.「 ディス・ガイ 」は♩≒116のスウィング調アレンジ。イントロや間奏を中心に頻繁に使われている2小節フレーズの循環コード(特に2小節目3〜4拍目の半音階コード進行)がクセになります。

T-6.「 サン・ホセへの道 」は♩≒164〜172のライトなボサノヴァ・アレンジ。弦楽四重奏は他の曲では裏方に徹していますが、この曲ではヴァイオリンがアドリヴのトップバッター。24小節楽しげにソロを弾いてます。他の楽器のアドリヴも熱いです。

他にも、T-1.「 ウォーク・オン・バイ 」やT-2.「 素晴らしき恋人たち 」はクールでシリアス。T-7.「 遙かなる影 」のイントロやアウトロはバカラックのセルフ・カヴァーをベースとしたものだったり、T-8.「 愛のハーモニー 」が思いっきりスウィング・アレンジだったり、なかなかユニークな面もあったりします。


【データ】
『 THE JAZZ SIDE OF BACHARACH 』
Claudio "Wally" Allifranchini Quartet, Archimia String Quartet, Fabrizio Bosso

CD/MP3:2023年4月20日リリース
レーベル:DA VINCI JAZZ (IT)
番号:C00690

Produced by Claudio Allifranchini and Nicola Stranieri
Claudio "Wally" Allifranchini Quartet
  Claudio "Wally" Allifranchini:Tenor Saxophone, Flute, Arrangements
  Sandro Gibellini:Guitar
  Marco Micheli:Double Bass
  Nicola Stranieri:Drums
Archimia String Quartet (T-1,2,3,4,6,7)
  Serafino Tedesi:Violin
  Paolo Costanzo:Violin
  Andrea Anzalone:Cello
  Matteo Del Solda:Viola
Special Guest (T-2,3,4,5,7)
  Fabrizio Bosso:Trumpet

Recorded on April 19, 20, 2022 and mixed on September 28, 2022 at Riverside Studio, Turin(トリノ), Italy
Fabrizio Bosso recorded on June 2022 at Snokad Room Studio, Rome
(P) & (C) Da Vinci Jazz 2023
DDD Designed in Japan, Printed in EU

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Amazonリンク(CD

2023年7月 2日 (日)

Latin Colours/Chaquito (1972年)

英国で活躍した作/編曲家、ジョン・グレゴリーによるラテンアレンジのプロジェクト名がチャキート。そのチャキートによる1972年のアルバムです。バカラック・カヴァーを4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全12トラック中、バカラック作品は4トラック

A2. TRAINS AND BOATS AND PLANES (3:40)
B1. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (2:35)
B3. WALK ON BY (3:11)
B5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU (3:07)



英国で活躍した作/編曲家、John Gregory(ジョン・グレゴリー)によるラテンアレンジのプロジェクト名がChaquito(チャキート)。そのチャキートによる1972年のアルバムです。

─ イギリス人アレンジャー、ジョニー・グレゴリーがラテンアレンジのプロジェクト用に採用した変名が、チャキートでした。本国での需要はとても高く、アルバムは50年代から70年代まで十数枚。思い切りのいいブラスをあしらったグルーヴィーなサウンドで、ベルケン、バカラック、ボサノヴァ、ロックと幅広い選曲。「 Light My Fire 」かっこいい! ─ (Hi-Fiレコードさんのアルバム紹介より)

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ジョン・グレゴリー 〜 本名 Johnny Gregory(ジョニー・グレゴリー)〜 は、1924年ロンドン生まれ(2020年没、享年95歳)。長年にわたりイギリスの音楽業界の裏方として活動し、数多くのアレンジ、バッキング、ラジオ放送などを手がけたんだそう。彼の多作なキャリアには、27本の映画の作曲と編曲、フィリップスなどのレーベルにおける500以上の楽曲の作曲が含まれ、約20年にわたりカヴァーからラテン音楽のイージーリスニングまで2,000枚以上のレコードを制作。実際、Discogsで検索するとジョン・グレゴリーあるいはジョニー・グレゴリー、Nino Rico(ニノ・リコ)やチャキートといった名前で様々なレコードにクレジットされています。

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ジャケットに LATIN AMERICAN BIG BAND SOUND OF Chaquito と小さな文字で書かれている通り、ビッグバンド編成によるラテンアレンジのイージーリスニング。全体的な印象として、とにかくブラスが元気。鳴りっぷりが良いアレンジは聴いてて気持ちがいいです。

12曲中4曲がバカラック・カヴァー。中でもA2.「 汽車と船と飛行機と 」のアレンジには唸りました。この曲にしてはかなりゆったりした♩≒87のテンポ。最初は p で徐々に楽器が増えてファンキーなオルガンやフリューゲルホーンのフェイクもカッコイイ。そして2コーラス目、転調してキーが二度高くなり ff でブラスがメロディをぶちかまします。ビッグバンドならではの厚みと迫力。サックスのファンキーなアドリヴもいいです。唯一惜しいのはフェードアウトで終わる点。それを差し引いてもレコメンドです。

B1.「 サン・ホセへの道 」はサンバのリズムでブラスもバリバリ鳴っています。1:30位からはファンキーなテイストも加わってなかなか楽しい演奏です。B3.「 ウォーク・オン・バイ 」はメロウなアレンジ。メロディを崩して吹くフリューゲルホーン・ソロがセクシーですし、相変わらずブラスもカッコイイ。B5.「 ディス・ガイ 」では和音でメロディを奏でるバリバリのブラス、トランペットやフリューゲルホーンはたまたサックスのメロウなオブリガートも素晴らしい。

ハイ一丁あがり的な安易なアレンジじゃありません。内容のあるイージーリスニング・アルバムだと思います。私はHi-Fiレコードさんの紹介で知りました。Hi-Fiレコードさんに感謝です。


【データ】
『 Latin Colours 』
LATIN AMERICAN BIG BAND SOUND OF Chaquito

LP:1972年リリース
レーベル:Philips (UK)
番号:6382 106

詳しいクレジットは不明。

日本のAmazonでLPの取り扱いはありませんが、リイシューCD(2 in 1)がありましたのでリンクを貼っておきます。

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Amazonリンク(リイシューCD


2023年6月25日 (日)

Do You Know The Way?/Bobby Timmons (1968年)

米国の男性ジャズ・ピアニスト、ボビー・ティモンズが1968年にリリースしたアルバムです。バカラック作品を2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全8トラック中、バカラック作品は2トラック

A4. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (4:06)
B4. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU (3:36)


米国の男性ジャズ・ピアニスト、ボビー・ティモンズが1968年にリリースしたアルバムです。

─ ソウルジャズというだけでは語れない知性。ジャズ・スタンダード「 Moanin’ 」の作者でもある黒人ピアニスト。ソウルジャズ的な気風の良さと知的でリリカルなセンスが共存しています。本作はあまり見かけない一枚。タイトルの由来は本作でカヴァーしているバカラックの「 サン・ホセへの道 」ですし、ジョー・ベックやジャック・ディジョネットを迎えた演奏は相変わらず知的かつソリッドでグルーヴィー。1974年に亡くなってしまう彼にとって、これはレコーディングキャリアとしては後期の作品。心から惜しいと思えます。  ─  (Hi-Fiレコードさんのアルバム紹介)

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ダブルジャケットの見開き左中央にボビー・ティモンズ、下にジャック・ディジョネット、見開き右上にジョー・ベック、下にボブ・クランショーが写っています。

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本作は全8曲入り。内訳は、3曲(A1,B2,B3)がピアノトリオで1968年11月録音。残り5曲(A2〜4, B1,B4)がピアノトリオ+ギターのカルテットで同年8月の録音。ただし、A3.はピアノとギターだけ、B2.はピアノソロです。

このうちバカラック作品はA4.「 サン・ホセへの道 」とB4.「 ディス・ガイ 」の2曲。
「 サン・ホセへの道 」はディオンヌ・ワーウィックがオリジナル。1968年4月リリース、5月に全米10位となるヒットになりました。「 ディス・ガイ 」はハーブ・アルパートがオリジナル。1968年5月のリリース、6月には全米1位に輝きます。2曲はほぼ同じ時期にヒットしたんですね。そしてボビー・ティモンズはその約3ヶ月後にレコーディングしたというワケです。

A4.「 サン・ホセへの道 」はオリジナル(♩≒158)よりも軽快(♩≒188)で、ピアノとギターが主メロディを奏でるライトなラテン感覚のアレンジ。中間部で聴こえるピアノのアドリヴは十分ファンキーですが、荒っぽくなくてどことなく知的な香りがします。

B4. 「 ディス・ガイ 」もオリジナル(♩≒84)よりも速いテンポ(♩≒118)で、やはりピアノとギターによるメロディライン。こちらも中間部でのピアノのアドリヴはファンキー。でもコテコテのソウルジャズではなく知的な雰囲気。

2曲とも同じようなコメントになってしまいましたね。他の6曲はもっとソウルジャズしてるんですが、この2曲がなんか違うのはバカラック曲の味が自己主張してるからじゃないかと思います。あくまで個人的な感想ですが…。



【データ】
『 Do You Know The Way? 』
Bobby Timmons




LP:1968年リリース
レーベル:Milestone (US)
番号:MSP 9020

Produced by Orrin Keepnews
Piano – Bobby Timmons
Guitar – Joe Beck (except A1,B2,B3)
Electric Bass – Bob Cranshaw
Drums – Jack De Johnette
New York City. Quartet numbers recorded August, 1968; trio November, 1968.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年5月28日 (日)

In Wonderland/The Mutual Understanding (1968年)

ミューチュアル・アンダースタンディングが1968年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有のリイシューCD (紙ジャケット仕様:オリジナルLP盤を再現)

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

6. SAN JOSE (2:36)


ミューチュアル・アンダースタンディングが1968年にリリースしたアルバムです。

─ ミューチュアル・アンダースタンディングの『 イン・ワンダーランド 』は、トロントのジャズ/ポップス界で活躍するミュージシャンたちによるスタジオ・プロジェクト。ベン・マクピーク、ジェリー・トス、ジミー・デイルというコンポーザー/アレンジャーがカナダの混声コーラス・グループ、ローリー・バウワー・シンガーズのコーラス・サウンドをフィーチャーして、作り上げた傑作ソフト・サウンディング・アルバム。フリー・デザインやアニタ・カー・シンガースが引き合いに出されることもある洗練されたコーラスと流麗優美なアレンジが魅力だ。  ─ (ライナーノーツの解説より、July,2005 長門芳郎氏)

The Mutual Understanding(直訳は相互理解)はグループ名じゃなくてプロジェクト名なんですね。全く知らないのでライナーノーツからそのまま引用しました。

登場する人名も全く聞いたことないので、もう少しライナーノーツの助けを借ります。ベン・マクピーク(1934〜1981)は、コンポーザー/アレンジャー/ピアニストでカナダの音楽シーンの超大物。ジミー・デール(1935〜2017)は、カナダのTV局のピアニスト/音楽ディレクター。ジェリー・トス(1928〜1999)は、サックス/クラリネット/フルート奏者で、アレンジャー/カナダTV局の音楽プロデューサー。ローリー・バウワー・シンガーズは、シンガー/コーラス・アレンジャー/トロンボーン奏者のローリー・バウワー(1933〜2016)率いるカナダの人気・実力共にトップと言われる混声コーラス・グループ。本作録音時のメンバーは初代の5名。現在まで何度も代替わりしながら活動中だそうです。
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んで、本作のサウンドは、長門さんのおっしゃる通り、洗練されたコーラスと洒落たアレンジのサウンドのソフト・ロック。コーラスは、例えばアニタ・カー・シンガーズのバカラック・カヴァー集『 REFLECT on the hits of Burt Bacharach & Hal David 』と比較すると若干ユニゾン/オクターヴ多めかな?と思いますが洗練度では甲乙つけ難し。バックのサウンドは、アニタ・カー・シンガーズがイージーリスニング寄りなのに対してもっと多彩なアレンジ&演奏だと思います。

バカラック・カヴァーはT-6.「 SAN JOSE 」、要は「 DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE(サン・ホセへの道)」ですね。のちに同じパターンをフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドがパクってます(笑)。オリジナルであるディオンヌ・ワーウィック(♩≒158)より速く(♩≒178)、オリジナルの “ズン・チャチャ” 8ビートにルンバの伴奏形を加えた独特なサウンドは確かにイージーリスニングというよりはソフト・ロックか。特に間奏部分のフルートやブラスの掛け合いはウキウキします。混声コーラスも楽しげでキレがありますね。

この曲、バカラックさん追悼のラジオ番組(K-MIX の『 夢街名曲堂 』2023年3月25日放送「We Love バカラック!Part.2」)で流れて初めて聴きました。配信では見当たらなかったのでCD購入した次第。届いたCDのライナーノーツに番組パーソナリテイである長門芳郎・土橋一夫両氏が執筆しとられて、ワォってなりました。

それにしても、アルバムジャケットのキノコはなんなんじゃろ?


【データ】

『 In Wonderland 』
The Mutual Understanding




LP:1968年リリース (所有CDは、2008年リイシュー韓国盤、ライナーノーツは日本語/韓国語併記:July,2005 長門芳郎氏、ゲイリー芦屋氏、鴨宮諒氏、片岡知子氏、土屋一夫氏)
レーベル:NIMBUS (Canada) (所有CDは、Beatball Records (Korea))
番号:NNS-101 (所有CDは、BEAT 48)

Producers:Dave Bird, Jack Richardson
Arranged by Ben McPeek (T-1,4,7,10.), Jerry Toth (T-3,6,9,12.), Jimmy Dale (T-2,5,8,11.)
Music Director:Ben McPeek
Vocal Leader/Director:Laurie Bower
Laurie Bower Singers:Laurie Bower, Tommy Ambrose, Kathy Collier, Vern Kennedy, Patty Van Evera
Recorded at Hallmark Studios-Toronto
Recording Engineer:Phil Sheridan

(P) 1968 NIMBUS 9 PRODUCTIONS LIMITED.
©︎ 2007 Beatball Records, a division of BEATBALL MUSIC GROUP, KOREA.

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Amazonリンク(リイシューCD

2023年5月21日 (日)

2023年5月6日 NHK FM『 ジャズ・トゥナイト 』バカラック・ジャズ

2023年5月6日(土)夜、NHK FM『 ジャズ・トゥナイト 』という番組でバカラックさんが取り上げられました。文字起こししたので、ラジオ放送やらじるらじるの聴き逃し配信を聴き逃した方は(聴かれた方も)興味ありましたらご覧ください。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10曲中、バカラック作品は9曲(番組前半のバカラックさん特集のみ対象)

M1. WIVES AND LOVERS  〜 Burt Bacharach 〜
M2. WINDOWS OF THE WORLD  〜 Stan Getz 〜
M3. I SAY A LITTLE PRAYER  〜 Roland Kirk 〜
M4. WALK ON BY  〜 岡崎広志とスターゲイザース 〜
M5. ALFIE  〜 Bill Evans 〜
M6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE  〜 George Shearing 〜
M7. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Grant Green 〜
M8. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD  〜 Roy Ayers 〜
M9. BACHARACH  〜 John Zorn - MASADA 〜
M10. CLOSE TO YOU  〜 大友良英 〜


【番組タイトル】
『 ジャズ・トゥナイト 』
バカラック・ジャズ

【放送日時・放送局】
2023年 5月 6日(土) 23:00~25:00 NHK FM

【この番組について】
─ 音楽家の大友良英さんの案内で、世界各国の最先端のジャズからクラシック・ジャズまでを幅広く紹介します。番組の前半では、毎回さまざまなテーマを設定した特集をお届けし、番組後半では、内外の新譜を中心に紹介しています。  ─ (番組HPより)

番組パーソナリティーは大友良英さん。その大友良英さんのバカラック愛がびんびん伝わってきました。

以下、放送時間のうち前半部分のバカラックさん特集のみ文字起こししました。各曲目の【 】は番組公式サイトに載っていたレコード番号です。( )内の"こちら"は拙ブログの過去記事にリンクしています、ご参考まで。尚、この放送で流れた曲は、ちたりたさんのブログ『 Silmaril Necktie 』で聴く事ができます(M10.を除いて)。ちたりたさんに感謝!


***** 文字起こし開始

皆さんこんばんは、大友良英です。今日前半の特集は今年2月8日に94歳で亡くなりましたポピュラー音楽界の大巨人と言ってもいいと思います、もう個人的には最高の作曲家と思っています、バート・バカラックの特集をしたいと思っています。作曲だけでなくピアニストやそれからなかなか味わいのある歌も歌いますプロデューサーとしても活躍しましたバート・バカラックですけども、ジャズミュージシャン達もバカラックの曲をたくさんカヴァーしています。なので今日はそんなバカラックのカヴァーを前半聴いていきたいと思います。

カヴァーを聴く前にまずは本人の演奏から聴きましょう。バート・バカラック自身は実はジャズの影響も随分受けていて、今日前半最初にかける曲はそんなジャズの影響が窺えるバカラックの曲を聴きたいと思います。「 WIVES AND LOVERS 」という曲がありますけども、これ元々映画のために書いた曲ですけどその映画には使われず、'63年にジャック・ジョーンズのカヴァーでこれもなかなかジャズっぽくて素晴らしいヴァージョンなんですけどヒットしましたが、今日聴いてもらうのは1971年録音のセルフ・タイトルの『 Burt Bacharach 』(こちら)というアルバムがあるんですけれどその中に入っている「 WIVES AND LOVERS 」を聴きたいと思います。かっこいい演奏ですよ。

M1. WIVES AND LOVERS  〜 Burt Bacharach 〜  (6'20")  ♪  【A&M POCM-2013】

今聴いてもホントによく出来たアレンジメント、いい演奏だと思います。バート・バカラック1971年録音の「 WIVES AND LOVERS 」聴いてもらいました。ピアノを弾いてるのと、あと最後に味わい深い歌を歌ったのはバート・バカラック自身です。

バート・バカラック、1928年の5月生まれ、日本で言うと昭和3年生まれなので私の父と同い年(※①)ですね、お父さん聴いてるかな? で、元々生まれはカンザスシティなんですけど育ったのはニューヨークのクイーンズです。ジューイッシュ系、ユダヤ系の血を引いています。そいで、彼の自伝読むと出てくるんですけども10代の中頃にニューヨークだったので、マンハッタンの52番街とかに行ってガレスピーのバンドとかカウント・ベイシーのバンドなんかを聴いたのが凄い強い影響になってると本人は言ってます。他にもクラシックの勉強もしていて、なんと驚くべきことにですねぇダリウス・ミヨーとかヘンリー・カウエルなんかに習ってたりしてるので、ヘンリー・カウエルはジョン・ケージの先生ですよね、彼の中にはそういうクラシカルなものの影響とそれからジャズやポップスなんかの影響がもう見事にこの中で融合して、で50年代終わりくらいからかなぁ素晴らしいアレンジの数々それから作曲の数々を残しています。もう個人的にはエンニオ・モリコーネとバート・バカラックが20世紀の二大最大作曲家、ジョン・ケージも加えてもいいかな?くらいなくらい好き、です。

と言うことで、ここからはジャズ・ミュージシャンによるバカラックのカヴァーを聴いていきましょう。まずはスタン・ゲッツによるバカラックのカヴァー集で『 Plays Bacharach and David 』(こちら)と言うアルバムがあります。このデイヴィッドというのはハル・デイヴィッド、バカラックと組んでいっぱい作詞をしている人ですね、この2人の作った曲をカヴァーしているアルバムがあってこれ全曲聴いても素晴らしくいいアルバムなんですけども、今日はその中から「 WINDOWS OF THE WORLD 」を聴きたいと思います。この曲自体はディオンヌ・ワーウィックの歌で1967年にヒットして、スタン・ゲッツ自身はこの年にすぐに録音しています。ワーウィックのシングルが7月にリリースされて8月31日にスタン・ゲッツが吹き込んでいるので、もう速攻吹き込んだってことなんですかねぇ。当時ジャズ・ミュージシャンっていうのは後々スタンダード・ナンバーになるような曲、つまり当時のヒット曲をすぐに取り込んだりしているのでそういう流れだったのかもしれません。メンバーはスタン・ゲッツのテナー・サックス、若き日のチック・コリアがピアノで参加してます、フィル・アップチャーチのギター、ウォルター・ブッカーのベース、ロイ・ヘインズのドラムスに、リチャード・エヴァンスのアレンジと指揮という編成です。聴いてみましょう。

M2. WINDOWS OF THE WORLD  〜 Stan Getz 〜  (2'40")  ♪  【Verve UCCU-9757】

スタン・ゲッツ、バカラックの曲をカヴァーした『 Plays Bacharach And David 』から1967年録音の「 WINDOWS OF THE WORLD 」を聴いてもらいました。もう…すごく洗練されたカヴァーというか、わずか発売してすぐにこんな形で洗練されたアレンジメントを施して、もうスタン・ゲッツの見事としか言いようのないメロディラインとアドリヴでカヴァーしてるってのが、当時の20世紀の音楽界のジャズとかポピュラー・ミュージックとか様々な関係のダイナミズムを語るのにすごくいい例なんじゃないかと思います。

続いてはですねぇ、今洗練したって言いましたけど洗練と真逆のカヴァーです。個人的にはバカラックのカヴァーとしては最高じゃないかと思っているローランド・カークの「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」を聴きましょう。以前にもローランド・カークで一度かけたんですけど、今日はもう追悼なのでぜひもう一度聴きたいと思います。この曲は1967年にディオンヌ・ワーウィックが、そして翌年にはアレサ・フランクリンが歌ってヒットしました。もういろんな人が歌ってます。そして1969年の7月に録音されたのが今から聴くローランド・カークによる結構強烈なカヴァー・ヴァージョンです。アルバムは『 Volunteered Slavery 』(こちらのオマケ参照)に収められています。これもローランド・カークの最高の1枚だと思ってます。メンバーは、ローランド・カークがテナー・サックス/フルート/ホイッスル/それから冒頭に出てくるちょっと謎な電子楽器みたいなもの等々いろんな楽器を演奏していて、他にチャールズ・マギーのトランペット、ディック・グリフィンのトロンボーン、ロン・バートンのピアノ、バーノン・マーティンのベース、ソニー・ブラウンのドラムスという編成です。聴いてみましょう。

M3. I SAY A LITTLE PRAYER  〜 Roland Kirk 〜  (7'58")  ♪  【Atlantic AMCY-1192】

1969年ローランド・カークがカヴァーしましたバート・バカラックの名曲「 I SAY A LITTLE PRAYER 」聴いてもらいました。大混乱してるでしょ。もう…左チャンネルから聴こえてくるコントラバスとか、大丈夫かっていうくらいの混乱ぶりですし録音状態も決して良くはないですし、それからあのメンバーの中にはクレジットされてないですけどタンバリンの人がいてずーっと叩いてますよね。あの、映像とか観るとこのタンバリンの人が映ってたりするので、あぁこの人が叩いてんだなってわかりますけども、そんな大混乱ですけどこれもうまるで音楽のごった煮みたいで、あのバート・バカラックがごった煮っていうよりは非常に洗練された形で様々な音楽を作曲しアレンジしてたのに較べて、ローランド・カークは非常にあらゆる種類の音楽をもうごった煮でローランド・カークのある種カオスのような頭脳と身体を通して捻り出したようなカヴァーで、そういう意味で対照的なんですけどもすごく根本が僕は何か繋がるものがあるんじゃないかと思ってます。個人的なことを言っちゃうとこのローランド・カークのものを聴いたのは僕'70年代後半なんですけど、10代の頃バート・バカラックとか、ちっちゃい頃聴いてたのにね、なんかあんなのポップスだからって聴かなくなってた時期があったんですけども、ローランド・カークのこのヴァージョンを聴いてあれって思っても一回聴き直して、やっぱ凄いなぁバート・バカラックって、てゆーのを目覚めさせる切っ掛けを作ってくれたのがこのローランド・カークのカオス・ヴァージョンです。

続いても、ちょっとユニークなカヴァーです。日本でもバート・バカラックのカヴァーをしてる人達はジャズに限らず様々なジャンルでいっぱいいます。'70年代の歌謡曲なんか特にバカラックのアレンジのパクリ?と言ってもいいものがいっぱいありますけど、今日はジャズのカヴァーの中でヴォーカリストでアルト・サックス奏者でもあります岡崎広志が結成したグループ、岡崎広志とスターゲイザース(※②)の演奏で1969年リリースのバート・バカラックのカヴァー集『 スターゲイザース、バカラックを歌う 』(こちら)から「 WALK ON BY 」を聴きたいと思います。この岡崎広志さん、この番組でも一度かけたことがあるんですよ。11PMのシャバダバシャダバダってあの曲が岡崎広志さんが歌ってますね、伊集加代なんかと一緒にね。この録音、メンバーは岡崎広志のアルト・サックス/フルート/ヴォーカル、そして…ごめんなさい正確な読み方が分かりませんけど大久保計利(かずとし)さんって読むんでしょうかね、えっと計算の"計"に利益の"利"と書きます、その大久保さんがトランペット/フリューゲルホーン/ヴォーカル、それから根本博史(ひろし)さん、或いは(ひろふみ)さんと読むかもしれません、のフルート/バリトン・サックス/ヴォーカル、そして金井陽一さんのフルート/テナー・サックス、佐野博美(ひろみ)さんであってると思います、のクラリネット/アルト・サックス/フルート/ヴォーカル、藤井貞泰さんのピアノ、柴田恒雄さんのベース、間違ってたらごめんなさい西川欣司(きんじ)さんのドラムスで、編曲は前田憲男さんが担当しています。岡崎広志とスターゲイザースで「 WALK ON BY 」。

M4. WALK ON BY  〜 岡崎広志とスターゲイザース 〜  (2'34")  ♪  【日本コロムビア COCP-50222】

う〜んこれもいい演奏ですね。岡崎広志とスターゲイザース1969年リリースのアルバム、バカラック・カヴァー集の『 スターゲイザース、バカラックを歌う 』から「 WALK ON BY 」聴いてもらいました。なんかこれを聴くとバカラックのことを想うってよりは'70年前後の、昭和でいうと40年代なのかな、の日本の景色がふわ〜って浮かんでくる独特の日本観みたいなのがあって面白いなぁって思いながら聴きました。

続いては、もう名カヴァー中の名カヴァーです。ビル・エヴァンスのカヴァーで「 ALFIE 」を聴きましょう。ジャズで「 ALFIE 」っていうとソニー・ロリンズが演ってる「 ALFIE 」を思い出す人もいますけども、これ同じ映画の曲ですけどもロリンズが作ったのとは違うヴァージョンでバカラックが作ったものがあります。ビル・エヴァンスは「 ALFIE 」を何度も録音してますけど、今日は1967年8月にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで行ったセッション(こちら)から、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムスとエディ・ゴメスのベースによるトリオの演奏で聴きたいと思います。聴いてみましょう。

M5. ALFIE  〜 Bill Evans 〜  (5'05")  ♪  【Verve V2E-2545】

ビル・エヴァンス・トリオ、1967年8月ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴから「 ALFIE 」聴いてもらいました。これホントに素晴らしい曲で、ビル・エヴァンスの演奏も勿論素晴らしいんですけども、興味ある人は是非バート・バカラックのオリジナル・ヴァージョン、って言っても幾つもあるんですけどもバカラックが演ってるものがね色んな人が歌っているのであるんですけども、動画サイトをチェックするとジョージ・マーティンのプロデュースでシラ・ブラックが歌ったヴァージョン、ってこれ最初期のヴァージョンだと思いますけど、これが観れるので興味ある人は是非観て下さい。もうホントに凄いです。バカラック自身がピアノ演奏し生でオーケストラが演奏して生で歌ってます。当時のポップスってこうやって録ったんだっていう、今と全然違う状況がみて取れますので、是非興味ある人は!

続いてイギリスのピアニスト、ジョージ・シアリングによるカヴァーで「 サン・ホセへの道 」を聴きましょう。この曲ももう大好きな曲です。'68年にディオンヌ・ワーウィックがヒットさせましたけど、こちらのヴァージョンはメンバーがジョージ・シアリングのピアノ、ヘルベルト・サージックのヴァイブラフォン、ジギ・シュワブのギター、アンドリュー・シンプキンスのベース、ラスティ・ジョーンズのドラムス、そしてチノ・ヴァルデス、カルメロ・ガルシアのパーカッションで、非常にラテン・テイストのあるアレンジです。録音は1974年です。

M6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE  〜 George Shearing 〜  (5'49")  ♪  【MPS POCJ-2549】

ジョージ・シアリング、1974年の録音で「 サン・ホセへの道 」を聴いてもらいました。これオリジナルの曲も僕大好きなんですけども、そのオリジナルが大好きな僕が聴いてもこのカヴァーはいいなって思います。オリジナルの曲はあの確か都会で暮らしてた女の子が故郷のサン・ホセへ帰りたいみたいな、日本でいうと「 北国の春 」みたいな曲なのかな、そんな曲なんですけどすっごいお洒落に聴こえますよね。

次はギターによるカヴァーです。グラント・グリーンのアルバム『 Green Is Beautiful 』(こちらのコンピ集参照)に収められた「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 」を聴きたいと思います。この曲は1968年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル『 Promises, Promises 』(こちら)のタイトル曲(※③)として書かれた曲です。こちらのグラント・グリーンによるカヴァーの方の演奏は、グラント・グリーン自身のギター、エマニュエル・リギンズのオルガン、アイドリス・ムハンマドのドラムス、キャンディードのコンガ、リチャード・ランドラムのボンゴという編成で、録音は1970年です。

M7. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Grant Green 〜  (6'44")  ♪  【Blue Note TOCJ-4342】

グラント・グリーン、1970年の録音で「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 」聴いてもらいました。これもいい曲ですよね〜ホントに。もう…ごめんなさい、言葉を失うぐらい大好きな曲なんですけども、このグラント・グリーンの録音聴いてると落ち着くなぁと思うと、この間特集しましたルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオの録音で、やっぱりこの種の歪んでないというかジャズのグラント・グリーン・タイプのギターの録音をさせたら天下一品だなぁって思いながら聴いてました。ものすごくヘッドフォンでよーくよーく聴くと、最初の方にオルガンからなのかギターからなのか真空管アンプのノイズがジィーって微かに聴こえるんですけど、すいませんもぅどーでもいい話ですけどそーゆーのだけでも、うわぁ嬉しい、ノイズが聴こえるって思っちゃうのはちょっとオカシイかな、すいません。

続いてはヴァイブラフォンのロイ・エアーズによるカヴァーで「 RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD(雨にぬれても)」ですねえ。もう多分バカラックの最大のヒット曲なんじゃないかな。映画『 明日に向って撃て! 』(こちら)の中の挿入曲ですけど、1969年にB.J.トーマスが歌った大ヒット中の大ヒット曲です。今日聴くのは、ロイ・エアーズのヴァイブラフォン、ハリー・ウィテカーのエレクトリック・ピアノ、エドウィン・バードソングのオルガン、ジョン・ウィリアムスのベース、アルフォンス・ムゾーンのドラムスに、ジュマ・サントスのコンガという編成です。これもかっこいい演奏です。聴いてみましょう。

M8. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD  〜 Roy Ayers 〜  (4'48")  ♪  【Polydor UCCU-90066】

ロイ・エアーズ、1970年発売のアルバム『 Ubiquity 』から「 雨にぬれても 」を聴いてもらいました。これもいい演奏ですよね。まだフュージョンとかクロスオーバーというような言葉が言われる前の時代のものですけども、ジャズとファンクが程よく混じり合いながらバカラックのカヴァーしてる感じで、それとちょっと気になったのが左チャンネルから聴こえてくる方のロイ・エアーズのヴァイブラフォンの音が異様に伸びる、ヴァイブラフォンって普通ポーンって減衰してくんですけどポーってなるんですよね。なんでだろう、どういう仕組みかなぁ、録音で上手くやったのかなぁ、ちょっとわかんないですけどそういうのも含めて凄く凄く面白い録音でした。

さて、最後に近づいてきました。ちょっとした変化球というか、むしろストレート直球ど真ん中と言ってもいいようなものなんですけども、1996年にリリースされた、ジョン・ゾーンのグループであるMASADAのシリーズ第7弾『 MASADA SEVEN 』に収められた「 BACHARACH 」という曲があります。これはジョン・ゾーン自身のオリジナル曲なんですけども、聴くとこれはもうバカラック以外の何ものでもないような、バカラックの作曲の特徴を凄くよく捉えてジョン・ゾーンがこの曲を作っています。ジョン・ゾーンは1997年にバカラックに敬意を表して『 Great Jewish Music: Burt Bacharach 』(こちら)というコンピレーション・アルバムもプロデュースしてリリースしてるんですけど、要するにバカラックはユダヤ系ですので、ジョン・ゾーン自身もそうなので、そういう意味で今からかける曲もこのコンピレーション・アルバムもそういうのを作ったんだと思います。メンバーは、ジョン・ゾーンのアルト・サックス、デイヴ・ダグラスのトランペット、グレッグ・コーエンのベース、ジョーイ・バロンのドラムスという編成で、曲は「 BACHARACH 」。

M9. BACHARACH  〜 John Zorn - MASADA 〜  (1'24")  ♪  【DIW DIW-915】

1分24秒の短い曲ですけども、物凄くバカラックの特徴を捉えて曲を作り直してます。ジョン・ゾーンのMASADAで「 BACHARACH 」という曲を聴いてもらいました。バカラックの特徴ってもうホントに色々ハーモニーのセンスとかリズムのセンスとか色々あるんですけども、一つは独特の普通ポップスではあり得ないような変わった拍子が、ポップスって大体4拍子なら4拍子が続いたり3拍子なら3拍子が続くんですけど、バカラックは4拍子の中に突然3拍子的なものが入ったり4拍単位だったのが突然2拍単位のとこが出てきたりとか、3拍子のとこに2拍子が入って5拍子みたいになったりってゆーのをよく使います。「 小さな願い 」とかでも、途中で4拍子の中で2拍子が入るところがバスドラでドンドンってアクセント入れたりするんですけど、そーゆーのうまーく使いながら、ユダヤの音階を使った曲と上手く融合させてもう…バカラック以外の何ものでもないような曲を作ってて、見事だと思います。ホーン・セクションのアクセントの感じとかもね、物凄くバカラックっぽいなぁって思いました。あの、この曲もし面白いと思った人がいたら、是非バート・バカラックがやっているサントラ盤でジェームズ・ボンド・シリーズのパロディで作ったと言ってもいいのかな、ピーター・セラーズが主演の『 Casino Royale 』(こちら)を是非是非チェックして下さい。

お届けして参りました前半のジャズによるバカラックのカヴァー集、如何だったでしょうか。最後は、私自身がカヴァーしました未発表のものです。バカラックが亡くなった時に、自宅でアコースティック・ギターの録音をしてたんですけど、別の仕事でね、でももうどうにも堪らなくて思わず締切間際なのに録音してしまったもので、それをこの番組のために改めてミックスし直して、何処で発表するってのでもなく録音したものです。バート・バカラックの曲でカーペンターズのカヴァーでも有名です、「 CLOSE TO YOU 」を私のギター・ソロで聴いて下さい。後半のホットピックスもお楽しみに。

M10. CLOSE TO YOU  〜 大友良英 〜  (4'34")

***** 文字起こし終了


【注釈】

※① 因みに、私(ブログ主)の亡き父とも同い年になります。

※② 大友さんは「 スターゲイザーズ 」と仰ってましたが、アルバムに表記されている「 スターゲイザース 」に直しました。悪しからず。

※③ タイトル曲ではなく劇中歌なんですけどねぇ。大友さんのうっかりミスと思われます。

2023年5月12日 (金)

バート・バカラックさん 生誕95周年!

今日はバート・バカラックさんの誕生日。バカラックさんは今年2月8日にお亡くなりになりましたが、拙ブログでは今年も変わらず誕生日に記事をアップします。

バカラックさんの訃報に接した2月10日(金)から2日経った2月12日(日)のこと。

「元気にしてる?」のメッセージと共に中高時代の友人が教えてくれた鈴木祥子さんのバカラック追悼ピアノ弾き語り。Twitterでニコレット・ラーソンの「 FOOL ME AGAIN 」from『 Arthur 』(1981年) をカヴァーしてらっしゃるのですが、これがとっても良くて…。

彼女が1994年にリリースした4曲入りバカラックカヴァー・ミニアルバムにも入ってない隠れ佳曲。まぁ『 Shoko Suzuki Sings Bacharach & David 』ってタイトルなんでキャロル・ベイヤー・セイガーとの共作曲が入るワケないけど…。

訃報以降いくつか追悼演奏を聴きましたが、個人的にはこちらが最も心に響きました。友人の心遣いに感謝!

2023年5月 7日 (日)

Bill Badgley Plays Burt Bacharach/Bill Badgley (1969年)

カナダのピアニスト、ビル・バッジリーのピアノとオーケストラによるバカラック作品集です!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
A2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
A3. WALK ON BY
A4. WHO IS GONNA LOVE ME
A5. ARE YOU THERE (WITH ANOTHER GIRL)
A6. MAGIC MOMENTS
B1. I SAY A LITTLE PRAYER
B2. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
B3. THE LOOK OF LOVE
B4. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
B5. TRAINS AND BOATS AND PLANES
B6. THE WINDOWS OF THE WORLD

収録時間約31分


カナダのピアニスト、ビル・バッジリーのピアノとオーケストラによるイージーリスニング・バカラック作品集です。

ビル・バッジリーをネットで検索してもよくわからず…。頼りは裏ジャケの解説のみ。
─ このアルバムでは、カナダで最も有名なポピュラー・ピアニストの芸術性が、世界で最も偉大な現代作曲家の1人の創造性と組み合わされています。60年代の洗練された曲のスタイルでカナダの放送局の至るところに浸透し続けているビル・バッジリーは、バート・バカラックがハル・デイヴィッドと共作した曲の中から12曲にスポットライトを当てています。元ラジオ・アナウンサーからパフォーマーに転身したビルは、彼が1964年トロントにオープンしたレストラン "Ports of Call" の "the Caesar Room" に常駐しています。彼のレコード・アルバムは、個人的な出演やラジオやテレビの放送と相まって、国際的なエンターテイメントの懸賞に参加しました。このレコーディングでは、30人のカナダ人ミュージシャンが彼のピアノのバックで演奏しています。アレンジは Rick Wilkins と Johnny Burt によります。  ─ (裏ジャケの解説より。Googleの力を借りて意訳しました)

リリース年はどこにも記載なくDiscogsサイトを見てもわからなかったのですが、YouTubeにUPされてたA3.「 WALK ON BY 」の動画に1969年と書いてありました。収録曲を眺めて見ても妥当じゃないかと思います。だって、1969年〜1970年に大ヒットした「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN(恋よさようなら)」「 RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD(雨にぬれても)」「 (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU(遙かなる影)」が1曲も入ってませんからね。

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取り上げた12曲は、A4.「 フー・イズ・ゴナ・ラヴ・ミー(誰が私を)」を除いてバカラックの定番曲ばかり。

裏ジャケにはアルバム・タイトルの下に小さな文字で "PIANO WITH ORCHESTRA" と書いてあります。オーケストラについては30人いるということ以外何も記載ありませんが、2種類の編成があるようで、A/B面とも奇数トラックがビッグバンド風の編成(フルート等木管楽器の持ち替え含む)で、偶数トラックがストリグス+ホルン+リズム隊という編成。バックコーラスは皆無。そして、全ての曲でピアノがセンターに定位しています。

メロディの大部分はピアノが受け持ってます。ビル・バッジリーのピアノは、メロディを弾くときはブロック奏又はオクターヴ奏が多い印象。特徴はそれくらいですかねぇ。他の楽器がメロディを奏でているときはピアノが所々アドリヴを弾いたりもしています。バックのアレンジはヒットしたバージョンに寄せたものですが、コピーではなくイントロやアウトロにはそれなりに工夫が感じられます(特に、ビッグバンド風の編成は)。でもまぁ全体的には緩いアレンジだと思います。レコメンドは…強いてあげるならピアノのアドリヴが多くてアウトロで下降していくコード進行がユニークなB3.「 恋のおもかげ 」くらいですかね…。

ピアノ+オケという編成のバカラック集は、拙ブログでもいくつか紹介してきました。マッコイ・タイナーのバカラック集(1997年)はジャズなので別ジャンルかな? イージーリスニングではロニー・アルドリッチのバカラック集(1972年)ピーター・ネロのバカラック集(1968年)があります。残念ながらビル・バッジリーのバカラック集はそれらよりアレンジ&演奏の両面でクオリティは落ちます。だからCDリイシューされてないんでしょうねぇ。

ところで、裏ジャケの曲目リストをよくみると "Time" の右隣に "Intro" の欄がありますが、これはイントロの時間 (sec) なんですね。こんなの初めてみましたょ。そしてその右隣には "Tempo" の欄が。M、MB、MS、B、S とか書いてあるんですが、これはどう意味なんでしょう? M は Moderato(モデラート)か? いやいや、絶対違うよねー。
どなたか教えてくださいませ🙇‍♂️


【データ】
『 Bill Badgley Plays Burt Bacharach 』
Bill Badgley

LP:1969年リリース
レーベル:GRT (Canada)/Canadian Talent Library (Canada)
番号:GRT 9208/S 5115

Arrangements by Rick Wilkins and Johnny Burt
Recording Engineer:Mark Smith
Recording Superviser:Johnny Burt
Technical Consultant:Bill Baker
Repertoire Consultant:Arthur Collins
Executive Producer:J. Lyman Potts

Distributed by GRT of Canada Limited, broadcast rights held by copyright owner, Canadian Talent Library Trust, Toronto, Canada
Stereo record and jacket produced in Canada.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年5月 4日 (木)

Bottom's Up/The Chi-Lites (1983年)

米国のR&B/ソウルヴォーカル・グループ、シャイ・ライツが1983年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全8トラック中、バカラック作品は1トラック

A4. MAKING LOVE (4:01)


米国のR&B/ソウルヴォーカル・グループ、シャイ・ライツが1983年にリリースしたアルバムです。

シャイ・ライツは1959年に米イリノイ州シカゴで結成。中心人物はユージン・レコードで、Chi-Litesの名前の "Chi" は故郷のシカゴに由来しているんだそう。米R&Bチャートで1位になった「 HAVE YOU SEEN HER 」(1971年) と「 OH GIRL 」(1972年) が彼らの代表曲のようです(後者は全米チャートでも1位に)。1970年代後半に一度は解散しますが1980年に再結成、メンバー入れ替わりながら現在でも活動しているそうです。

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本作は再結成後4枚目のアルバムで、チャート上位まで上昇しました(US R&Bアルバムチャート15位)。また、アルバムタイトル曲のA1.「 BOTTOM'S UP 」もヒットして、1974年以来となるUS R&BチャートTOP10(7位)を記録。当時のメンバーは3名で、ジャケット左からロバート・レスター、マーシャル・トンプソン、ユージン・レコードという面々。みなさん見た目濃いですねー。

本アルバム全8曲のうち、前述のアルバムタイトル曲を含む5曲(A1〜3,B1,B3)は所謂ブラック・コンテンポラリー。時代が時代ですからねぇ。んで、2曲(B2,B4)は昔のシャイ・ライツっぽいソウルバラード。そして残り1曲が他とは毛色の違うバラード曲、バカラック・カヴァーのA4.「 メイキング・ラヴ 」でございます。

この「 メイキング・ラヴ 」、オリジナルはロバータ・フラックで1982年の曲(後述するオマケを参照方)。バカラック自身のものを除けばカヴァーは両手あるかないかの渋い曲ですが、私の知る限りこのシャイ・ライツ版が最初のカヴァーじゃないかと。キーはオリジナルより半音低いだけで、リードヴォーカルのユージン・レコードはさすがのハイトーンを聴かせてくれますし、男声バックコーラスも素敵。オリジナル(♩≒70)よりテンポは少し速め(♩≒76)で、8ビートのリズムやフルートのオブリガートも奏功して若干ソウル色も感じられるアレンジ&仕上がりになってます。女性ヴォーカルのカヴァーが多い曲ですが、このシャイ・ライツのカヴァーは存在感がありますね。個人的にレコメンドです。

実はこの曲、去る2023年3月13日(月)23時〜 NHK FM『 松尾潔のメロウな夜 』"2週連続のバート・バカラック追悼特集「メロウなバカラック」後編" の放送を聴いて初めて知りました。配信は無かったので Discogs で本アルバムをポチッとしてゲットした次第。

ここからはオマケ。所有しているMP3音源から「 MAKING LOVE(メイキング・ラヴ)」のオリジナル版と男性カヴァーをご紹介します。

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前述した通り、「 MAKING LOVE(メイキング・ラヴ)」(3:43) のオリジナルはロバータ・フラック。米映画『 Making Love 』の主題歌で、1982年2月8日にシングルA面でリリース、全米13位を記録しました。また、
1982年5月1日リリースのアルバム『 I'm The One 』にも収録されております。Bruce Roberts, Burt Bacharach, Carole Bayer Sager の3名による共作で、プロデュースは Burt Bacharach, Carole Bayer Sager のおふたり。バックも豪華です。ドラムスは Jim Keltner、ギターは Lee Ritenour、ピアノは Richard Tee 等々。バカラックもシンセを弾いてます。美しいメロディとコード進行が印象に残る曲ですが、4拍子の途中に2拍子をさりげなく挿入するなどバカラックらしさも感じられます。
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そして、シャイ・ライツの他に男性がカヴァーしたのがこちら。True Love Always という米国のポップバンドが、2001年のアルバム『 Spring Collection 』で「 MAKING LOVE(メイキング・ラヴ)」(5:13) をカヴァーしています。なお、アルバムジャケットはCDとLPで異なっており、画像左がCD、画像右がLPのものです。True Love lways は、ネオアコ・ブームの波に乗って高い評価を得たバージニア州、シャーロッツビル出身のラブソングのみを歌うことをモットーに活動するインディロック/ギターポップバンド。演奏はギター、ベース、ドラムスのみとシンプルで瑞々しい。徐々に盛り上がっていく2分半にも及ぶアウトロが素晴らしく、これもレコメンドにしちゃいましょう。


【データ】
『 Bottom's Up 』
The Chi-Lites

LP:1983年リリース
レーベル:LARC Records (US)
番号:LR-8103

Produced by Eugene Record
Arranged by Eugene Record & Sonny Sanders
Recorded at Universal Recording Studios, Chicago
The Chi-Lites are:
  Robert Lester - Background Vocals
  Marshall Thompson - Background Vocals
  Eugene Record - Lead Vocals
Musicians:
  Kevin Bibbs - Electric Bass
  Clifford "Skip" Conley - Electric Guitar
  Dennis Howell - Drums
  Pat Leonard - Synthesizer

  Reggie Perkins - Synthesizer
  Eugene Record - Synthesizer Bass, Electric Bass, Keyboards & Percussion
  Theodis Rodgers - Synthesizer
  Ron Scott - Acoustic Piano & Synthesizer
  Walter Scott - Electric Guitar
  Marshall Thompson - Percussion
  Ken Carney - Flute & Percussion
  Barbara Acklin - Additional Background Vocals

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年4月23日 (日)

To Love Or Not To Love/Arthur Prysock (1968年)

米男性ジャズ/R&Bシンガー、アーサー・プライソックが1968年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全11トラック中、バカラック作品は1トラック

A3. LOVE WAS HERE BEFORE THE STARS (2:44)


米男性ジャズ/R&Bシンガー、アーサー・プライソックが1968年にリリースしたアルバムです。

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↑ アーサー・プライソックは1924年サウスカロライナ州生まれ(ジャケット写真の女性じゃないですよ!)。第二次大戦中の1944年から1952年までバディ・ジョンソン楽団のヴォーカルとして活躍した後、ソロとして1980年代まで長く活動しました(1997年没)。深くて優しい彼の声質はまさにクルーナーの見本かと。本アルバムでも半分以上はしっとり&甘ったるいバラード曲を歌っています。

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バカラック・カヴァーはA3.「 LOVE WAS HERE BEFORE THE STARS 」。ブライアン・フォーリーが1967年にリリースしたシングル曲がオリジナル。超レア、かつヘンテコな曲です(詳しくはブライアン・フォーリーの拙記事をご覧ください)。テンポはオリジナル(♩≒122)より少し速め(♩≒132)で軽快な一方、キーはオリジナル(Em)より3度低いCm。彼の声質・音域に合わせた感じでしょうか。イントロでのストリングスに重なる女性スキャット、Bメロやサビでの女性コーラス、キレのあるブラスのオカズなど、センス良いアレンジ/演奏をバックにアーサー・プライソックは歌いにくいヘンテコなこの曲を余裕をもって歌っています。好カヴァーだと思います。

実はこれも前々回前回と同様、2023年3月24日(金)19時〜 YouTubeで配信された 爆クラ in DOMMUNE で紹介された曲。ホント小西さんのDJタイムはもっと聴いてたかったなぁ。

ここからはオマケ。MP3で所有しているバカラック・カヴァーをご紹介!
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アーサー・プライソックは1987年にMilestoneよりリリースしたアルバム『 This Guy's In Love With You 』で「 This Guy's In Love With You 」(3:57) をカヴァー。ピアノトリオ+ギター+テナーサックス(+シンセストリングス)のシンプルな演奏をバックに、米女性ジャズ・シンガーのBetty Joplinとデュエットしています。アーサー・プライソックは年季が入ってしゃがれ声になってますね。個人的にはレコメンドじゃないけれど、この曲は1988年グラミー賞 最優秀ジャズ・ヴォーカル・パフォーマンス賞男性部門(Grammy Award for Best Jazz Vocal Performance, Male)にノミネートされました。 


【データ】
『 To Love Or Not To Love 』
Arthur Prysock

LP:1968年リリース
レーベル:Verve (US)
番号:V6-5048

Produced by Hy Weiss, Pete Spargo
Arranged and Conducted by Torrie Zito(A1,A3〜A5), Don Sebesky(A6,B1,B2,B5), Frank Hunter(A2,B4), Mort Garson(B3)


※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年4月16日 (日)

The Moment Of Truth / Everybody's Talkin' About Salena Jones/Salena Jones (1969年/1970年)

サリナ・ジョーンズが1969年および1970年にリリースしたアルバムです。それぞれバカラック・カヴァーを1曲ずつ収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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『 The Moment Of Truth 』Original LP front cover/back cover

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

4. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU (2:57)

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『 Everybody's Talkin' About Salena Jones 』Original LP front cover/back cover

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

11. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (3:17)

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所有リイシューCD(2 in 1)のジャケット表/ケース裏


米国の女性ジャズ・シンガー、サリナ・ジョーンズが1969年および1970年にリリースしたアルバムです。

彼女は1938年1月29日のヴァージニア州ニューポート・ニューズの生まれ。15歳までにはクラブで歌い始めます。16歳で家族とともにニューヨークに移り、アポロ劇場のコンテストで1位になってプロに。当時はジョーン・ショウ(Joan Shaw)という名前で歌っており、さまざまなレーベルからシングルを、Epic(1961年)とSue(1964年)から各1枚ずつアルバムをリリース。ちょうどソウルが流行りだした頃のアメリカでスタンダード歌いの若い黒人歌手はなかなか難しかったようです。サリナ・ジョーンズ(Salena Jones)と改名し、1966年からは英国を拠点に活動することに。CBS(UK)で3枚、RCA(UK)で2枚、DJM(UK)で1枚のアルバムをリリースした後、1978年に日本を初訪問して以降はビクター(JVC)と契約して多数のアルバムをリリース。1981年の『 MY LOVE 』は優秀録音盤として話題となり、当時私も聴きました。のちにリイシューCDも購入。久々に再生しましたが「 マイ・ラブ 」「 レイトリー 」などやっぱいいですねー。


今回ご紹介するアルバムは、CBS(UK)からリリースされたサリナ・ジョーンズとしての1stアルバムと2ndアルバム。BBCを中心にテレビ番組のテーマミュージックやライブラリー作品を数多く手がけた英国の作編曲家 Keith Mansfield(キース・マンスフィールド)がプロデュースしています(この方、2009年にサリナと結婚しちゃいます)。ビッグバンド+ストリングスの賑やかな演奏をバックにサリナもノって歌ってます。

1969年の『 The Moment Of Truth 』で取り上げてるバカラック・カヴァーはT-4.「 ディス・ガール 」。スウィングのリズムに分厚いブラスが印象的で、サリナの歌唱よりもバックの演奏の方に耳がいってしまいます。ドスが効いたサリナの歌唱も味があっていいんですけどもう少し軽やかに歌ってくれた方がいいかなぁと。ちなみにこの曲、ソニー・レコード(昔のColumbia)のカタログの中から選曲した英国編集のバカラック物コンピ集『 Easy Listening BACHARACH 』(1996年)にコンパイルされてます。

本アルバムの中では他にT-3.「 FOR ME 」が個人的にはレコメンド。疾走感あふれるAメロとスキップしてるようなサビの対比がグッときます。世間一般ではLPではB面トップのT-7.「 RIGHT NOW 」がソウルフルで評判高いみたいですが。

1970年の『 Everybody's Talkin' About Salena Jones 』に入ってるバカラック・カヴァーはT-11.「 恋よさようなら 」。ユニークなアレンジがレコメンドです。ウォーキングベースのソロから始まる♩≒140の軽快なラテン調スウィングのビッグバンド・サウンド。しかも2コーラス目のAメロは♩≒152にテンポアップして4つ刻みだったウォーキングベースも8つ刻みに。サウンドに切れがあって盛り上がります。こんな速いテンポでもサリナの歌声は相変わらず腰が据わっていてパワフルでございます。このバージョン、2023年3月24日(金)19時〜 YouTubeで配信された 爆クラ in DOMMUNE <第104夜> Presents バート・バカラック追悼記念番組「 世界は愛を求めている 」のDJタイムで小西さんが回してたレコードのうちのひとつ。それまで私はこのバージョン知りませんでした。まだまだ修行が足らんです😅。

本アルバムはT-1.「 AM I THE SAME GIRL 」、T-5.「 SPINNING WHEEL 」、T-8.「 MY CHERIE AMOUR 」などポップス系のカヴァーが多く、曲によっては男女バックコーラスもフィーチャーされてます。ソウル/ポップ寄りと言えます。


さて、ここからはオマケ。MP3で所有しているサリナ・ジョーンズのバカラック・カヴァー4曲をご紹介。
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サリナは1998年にミントジャム/日本クラウンから『 Making Love 』をリリース。ハリウッド映画の主題歌をイギリスのミュージシャンとロンドンのアビー・ロード・スタジオ/ペントハウスで録音したアルバムです。その中で「 MAKING LOVE(メイキング・ラヴ)」(3:09)をカヴァー。バックはピアノトリオ+フルート+ギターというアコースティックでシンプルなもの。オリジナルのロバータ・フラック版よりキーが4度低いこともあってか、より落ち着いた雰囲気。サリナもしっとり丁寧に歌っています。
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サリナは2008年にビクター(JVC)から『 Love & Inspiration 』をリリース。万感の思いで“あまねく愛”を伝えるアルバムなんだそう。そのアルバムで「 THIS GIRL'S IN LOVE(ディス・ガール)」(2:55)、「 THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR(愛のハーモニー)」(4:13)、「 ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(愛の想い出)」(3:52)の3曲をカヴァーしています。バックはビッグバンド編成+ヴィブラフォンやギターなど。サリナは70歳くらいのはずですが若い頃と何ら変わらない歌声。決して悪くはないんですが、バックの演奏(アレンジ)がなぁんかステレオタイプで…全体としてあまり印象に残らないんですよね。お勧めしないでおきます。


【データ】
①『 The Moment Of Truth 』/ ②『 Everybody's Talkin' About Salena Jones 』
Salena Jones

LP:① 1969年リリース / ② 1970年リリース (所有CDは、2006年12月9日リリース)
レーベル:CBS (UK) (所有CDは、VOCALION (UK))
番号:① 63613 / ② 63901  (所有CDは、CDSML 8422)

Produced by Keith Mansfield

Arranged by Keith Mansfield, Eddie Harvey (①)
Arranged by Keith Mansfield, David Gold (②)
With The Keith Mansfield Orchestra (①)
Remastered by Michael J Dutton

リンク先消滅したためリンク貼り直し(2024/1/13)
Amazonリンク(リイシューCD


2023年4月 2日 (日)

WHAT'S NEW PUSSYCAT?/The Bill Brown Singers (1967年)

ビル・ブラウン・シンガーズによる「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」のカヴァー。小西康陽さん監修によるリイシュー7"シングルです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有リイシュー7"シングルのジャケット表/裏

A. THEME FROM 'CARNIVAL'  〜 Harry Getts With The Bill Brown Singers 〜  (2:14)
AA. WHAT'S NEW PUSSYCAT?  〜 The Bill Brown Singers 〜  (1:51)


ビル・ブラウン・シンガーズによる「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」のカヴァーです。レディメイド 未来の音楽シリーズ 7インチ編 第二シーズン※ – 11 として、2022年に他1曲とのカップリングで7"シングルリイシューされました。

※ 小西康陽さんのオールタイムDJクラシックを、本人の選曲・監修によるベスト・カップリング選曲で7インチカットして大好評だった【レディメイド 未来の音楽シリーズ 7インチ編】のセカンドシーズン。2022年4月より毎月1タイトルずつ発売(各500枚限定プレス)。


元々は、米国メインストリーム・レコードが1967年にリリースした『 Award Winning Original Motion Picture Sound Tracks And Themes 』(Mainstream Records – 56076)というタイトルの映画音楽集に収められていたもの。ジョニー・マンデル、モーリス・ジャール、ジェリー・ゴールドスミスのオーケストラ、と書いてありますが、実際の編曲者は不明です。このアルバム全11曲のうち8曲を歌っていたのがビル・ブラウン・シンガーズで、この「 WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか子猫チャン)」はその1曲。ビル・ブラウン・シンガーズの素性はよくわからないのですが、元気の良い男女コーラスです。
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『 Award Winning Original Motion Picture Sound Tracks And Themes 』- Original LP front cover/back cover

監修の小西さんはシングルの解説でこうおっしゃてます。 ─ この「 何かいいことないか子猫チャン 」は埋もれていた宝石。 ─
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シングルに挿入されていた解説(名刺大のペラ)

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シングルのレーベル面(表面/裏面)。表面に両面(A面/AA面)の曲名等が印刷され、裏面はなぜか銀座のお肉屋さんの包み紙?が印刷されてます。なんじゃこりゃ?

閑話休題。聴いてみて、確かにこれは派手で楽しくおしゃれな "宝石" でした。こんな素晴らしいカヴァーを知ってるなんて!  さすがは小西さんです。実はこの曲、去る2023年3月24日(金)19時〜 YouTubeで配信された 爆クラ in DOMMUNE <第104夜> Presents バート・バカラック追悼記念番組「 世界は愛を求めている 」のDJタイムで小西さんが回してたレコードのうちのひとつ。私はそれでこのバージョンを知りまして、早速ゲットした次第。
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口で説明するのは難しいのですが、賑やかなオカズがたくさん散りばめられていて2分もかからない尺なのに聴き終わってお腹いっぱいになります。でもまた食べたく(聴きたく)なる料理(カヴァー)なんです。印象的なのはヴィブラフォンや男性コーラスが何度も展開する "2小節かけて駆け上がって駆け降りる" オブリガート。コレは中毒性があってクセになりますね〜、文句なしにレコメンドです。


【データ】
「 THEME FROM 'CARNIVAL' 」/「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」
Harry Betts with The Bill Brown Singers / The Bill Brown Singers

7"シングル:2022年8月26日リリース
レーベル:Oldays Records (JP)
番号:ODREP45044

小西康陽 選曲・監修 レディメイド 未来の音楽シリーズ 7インチ編 第二シーズン – 11
design:SUGANO kazushige
remastered by NAGANO beat


--「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」の Original --
『 Award Winning Original Motion Picture Sound Tracks And Themes 』
V.A.

LP:1967年リリース
レーベル:Mainstream Records (US)
番号:56076

Vocal Chorus:The Bill Brown Singers
Orchestras:Johnny Mandel, Maurice Jarre, Jerry Goldsmith

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Amazonリンク(7"シングル


2023年3月26日 (日)

Jungle/Astrud Gilberto (2002年)

アストラッド・ジルベルトが2002年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original CD ジャケット表/ケース裏
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所有日本盤CD ジャケット表/ケース裏


全12トラック中、バカラック作品は1トラック

12. THE LOOK OF LOVE (5:14)


アストラッド・ジルベルトが2002年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。

アストラッド・ジルベルトはジョアン・ジルベルトの最初の妻であり、ジョアンと、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンが北米でスタン・ゲッツと共にアルバムを録音する際に同行、そのアルバムの中で英語でボサノヴァの曲を歌ったのがきっかけで北米にボサノヴァ・ブームを巻き起こした張本人。そのアルバムとは1964年にリリースされたかの有名な『 GETZ / GILBERTO 』で、歌った曲はもちろん「 イパネマの娘 」。私だってリイシューCD持ってる位ですから。なんちゅーか、大人の嗜み的な感じで。

アストラッドは1940年生まれ(ディオンヌと同い年じゃん)なので、2002年リリース当時62歳。歌声は『 GETZ / GILBERTO 』の頃と変わりません。元々がヘタウマ的なウィスパー・ヴォイスなのであまり劣化を感じないのかも。同い年のディオンヌが2000年リリースの『 DIONNE SINGS DIONNE Ⅱ 』でかなり劣化してたのとは対照的ですが、まぁ2人を比較してもしょーがないですね。

本作に収録されている全12曲中、10曲はアストラッドの手による作品。自分で曲も作るんですね。ボサノヴァ系の曲、ポップな曲、ジャジーな曲などバリエーションに富んでます。演奏してるミュージシャンも多彩。ブックレットの中開きに Jungle Scrapbook と称して写真が載ってます。なお、日本盤のジャケットに使われてるイラストはアストラッド自身によるものだとか。

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残り2曲はカヴァーで、そのうちT-12.「 恋のおもかげ 」がバカラック・カヴァー。
軽快な♩≒116のテンポ、ライトサンバ?の賑やかなリズム、クール且つファンキーでノリノリの演奏に心躍ります。この曲のカヴァーではあまり類をみないアレンジかと(セルジオ・メンデスの2008年版「 THE LOOK OF LOVE 」には近いものを感じます → こちらのオマケ参照)。アストラッドの歌声は熱くならずにこの曲でも冷静です^^;。なかなかにレコメンドだと思いますね〜。個人的にはブイブイ吹いてるトロンボーンがツボです。

他にアストラッドのバカラック・カヴァーは、「 DON'T GO BREAKING MY HEART 」(1966年のシングル) 、「 TRAINS AND BOATS AND PLANES(汽車と船と飛行機と)」(1969年のアルバム『 I Haven't Got Anything Better To Do 』) 、「 WANTING THINGS 」「 WHERE THERE'S A HEARTACHE 」(2曲とも1971年のアルバム『 Gilberto With Turrentine 』)があります。拙ブログでは各々リンクを貼ったバカラック物コンピ集で紹介しています。お暇で興味がございましたら覗いてみてください。



【データ】
『 Jungle 』
Astrud Gilberto




CD:2002年リリース (所有CDは、2003年11月26日リリースの日本盤、解説:麻生雅人氏)
レーベル:Magya Productions (US) (所有CDは、コロムビアミュージックエンタテインメント)
番号:MP2398-2 (所有CDは、COCB-53131)

Produced by Astrud Gilberto & Mark Lambert
All arrangements by Astrud Gilberto, assisted as follows:
By Kimson Plaut:T-1,2,3,5,6,8,12.
By Mark Lambert:T-4,7,10.
By Mark Lambert and Paul Ricci:T-9.
By Cliff Korman:T-11.
Musicians:
Piano & Accordion:Kimson Plaut
Bass:Gregory Jones
Drums:Magrus
Electric & Acoustic Guitars & Guitar Synthesizer:Mark Lambert
Percussion:Valtino
Trombone & Whistling:Luis Bonilla
Alto & Soprano Sax:Carol Chaikin
Keyboard Synthesizers:Cliff Korman
Harmonica:Hendrik Meurkens
Vocals:
Lead vocals:Astrud Gilberto
Additional lead vocals:Valtinho (T-1), Mark Lambert (T-9), Magrus (T-8), John Margolis (T-4)
Background vocals:Nancy Falkow, Mark Lambert, Valtinho, Dave Thorton, Astrud Gilberto
Sound-effects:Astrud Gilberto, Bogdan Hernick, Mark Lambert
Recorded and mixed at Indre Recording Studios, Philadelphia, PA
©️2002 Magya Productions Inc. - All Rights Reserved

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Amazonリンク(CD

2023年3月 5日 (日)

The Burt Bacharach Hal David Treasury/Terry Baxter His Orchestra and Chorus (1971年)

バカラックのカヴァーだけで全40曲! 本作はバカラック作品のみをアナログLP4枚にまとめたイージーリスニングのアルバムです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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ボックスの外側ケース/ボックスの内側ケース

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ボックスの中身全景/ボックス収納状態

LP4枚組:全40トラック、オール・バカラック作品

<RECORD 1>
A1. ARE YOU THERE (WITH ANOTHER GIRL)  FM
A2. LONELINESS REMEMBERS (WHAT HAPPINESS FORGETS)  FM
A3. EVERYBODY'S OUT OF TOWN
A4. WISHIN' AND HOPIN’
A5. BOND STREET
B1. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU  FM
B2. WINDOW WISHING
B3. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
B4. WHO IS GONNA LOVE ME
B5. ALL KINDS OF PEOPLE  FM

<RECORD 2>
A1. DON'T MAKE ME OVER  FM
A2. TRAINS AND BOATS AND PLANES  FM
A3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
A4. DON'T GO BREAKING MY HEART  F
A5. I'M A BETTER MAN (FOR HAVING LOVED YOU)
B1. THE GREEN GRASS STARTS TO GROW  FM
B2. THE LOOK OF LOVE  FM
B3. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
B4. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)  F
B5. BLUE ON BLUE

<RECORD 3>
A1. PROMISES, PROMISES  FM
A2. I SAY A LITTLE PRAYER  FM
A3. ONE LESS BELL TO ANSWER
A4. WALK LITTLE DOLLY  F
A5. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
B1. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
B2. NIKKI  M
B3. ODDS AND ENDS  FM
B4. TRY TO SEE IT MY WAY  FM
B5. IN BETWEEN THE HEARTACHES

<RECORD 4>
A1. THE WINDOWS OF THE WORLD  FM
A2. HERE WHERE THERE IS LOVE
A3. WHOEVER YOU ARE, I LOVE YOU  FM
A4. WALK ON BY
A5. MAKE IT EASY ON YOURSELF
B1. ALFIE
B2. WIVES AND LOVERS  FM
B3. GO WITH LOVE
B4. THEY DON'T GIVE MEDALS (TO YESTERDAY'S HEROES)
B5. LET ME BE LONELY  FM

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記
 
収録時間(RECORD 1/2/3/4) 約25分/約29分/約28分/約27分


世間では3月3日にリリースされたばかりのアルバム『 THE SONGS OF BACHARACH & COSTELLO 』の話題で持ちきりなのに、“ なんや、紹介せぇへんのか? ” という声が聞こえてきそうです。…と言われましてもまだ手元に届いてないし…。いずれ、必ず、取り上げます。

さて、本題!

─ バカラックのカヴァーだけで全40曲! 60年代後半から70年代にかけて、Columbiaの通販部門に向けてポップスのカヴァーを量産し続けたテリー・バクスターというクリエイターに、最近俄然注目しています。アレンジの機転が利くというか、素晴らしいセンスの作品がとても多いのです。本作はバカラック作品のみをアナログLP4枚にまとめたもの。これこそ、歴史からは見落とされた大傑作です。試聴を聴いていただければ一発でわかります。全40曲。駄カヴァー無しですし、この規模での復刻はまず不可能! ─ (Hi-Fiレコード・ストアさんのサイトより、本アルバムの推薦評)

Hi-Fiレコード・ストアさんの本アルバム推薦評をパクりました。本アルバムをコンパクトに紹介するにはこのコピーがバッチシやと思ったものですから…。勝手にパクってすみません。だって、テリー・バクスターがどんな人なのか、ネットで検索してもサッパリわからないんですぅ…(言い訳)。

なお、本アルバムで世に広く出回っているのはこちら ↓ です。これならネットで見たことある…という方いらっしゃるのではないでしょうか。異なるのは外側ケースのみで中身は一緒のようです。
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本アルバムの全体的な印象は、単なるコピーではなく一工夫・二工夫あるアレンジ、軽快なテンポ、管楽器(特に金管楽器)の活躍が目立つメリハリの効いた演奏、爽やかな男女コーラス、レアな曲も多く取り上げている、といったところでしょうか。貧弱なイージーリスニング音楽につきものなチープ感は感じられず、一定以上のクォリティを備えています。ただ、アレンジャーが6名クレジットされていて(誰がどの曲を編曲したかは不明)、アレンジャーによると思われるばらつきはありますね。

メイン・ボーカル入りの曲が半数。演奏も、ストリング入りのポップスオーケストラ編成から、ビッグバンド風の編成、管楽器入りの小編成バンドまで多様。録音時期やメンバーが様々なんだと思います。リリース年は不明なのですが、収録曲から類推するに1971年頃と思われます。

以下、レコメンドの曲をコメントしていきます。

<RECORD 1>
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A1.「 アー・ユー・ゼア 」はディオンヌ版ベースのアレンジ。テンポ速めで男女コーラスも美味。A2.「 ロンリネス・ハッピネス 」もディオンヌ版ベースのアレンジ。薄いトランペットの代わりにオルガンがフィーチャーされてるんですがこれが良いです。A3.「 アウト・オブ・タウン 」はB.J.トーマス版がベースのインスト。金管とフルートがメロディを吹いてとぼけた感じをうまく出しています。A4.「 ウィッシン・アンド・ホーピン 」はディオンヌ版ベースのインスト。楽器がどんどん増えて賑やかになります。あとベースが凄く動きます。B4.「 フー・イズ・ゴナ・ラヴ・ミー(誰が私を)
」はオリジナルのディオンヌ版には無いシンコペーションのリズムが独特です。

<RECORD 2>
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A2.「 汽車と船と飛行機と 」はフルートが活躍するドリーミーなアレンジ。男女コーラスも良き。A4.「 ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート(私を悲しませないで)」はオーボエからトランペットに展開する8小節のイントロが素晴らしい。オケと女性コーラスもロジャニコ版に劣っていません。B1.「 ほほえみのグリーン・グラス 」はオリジナルであるディオンヌ版の明るく軽快で牧歌的な印象をさらに膨らませたアレンジだなぁと。B2.「 恋の面影 」はAメロでの独特のリズムパターンがクセになりそう。

<RECORD 3>
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A2.「 小さな願い 」はビッグバンドをバックに男女コーラスが明るく歌います。
イントロ6小節は全く独自のメロディ。間奏部では控えめながらサックスのアドリブも。A4.「 ウォーク・リトル・ドゥリー 」は超レア曲。ピアノトリオ、薄いトランペット、フルート、ヴィブラフォン、ギター、ストリングスをバックに美しい女性コーラスがハモる見事なアレンジ。録音もクリア。オリジナルのディオンヌ版より魅力的かも。B2.「 ニッキ 」は本アルバムでは唯一の男性ソロヴォーカル曲。オリジナルはバカラックですが、バカラック版は1966年、リメイクの1971年、共にインスト。歌ってるバージョンは1967年のエド・エイムスくらいじゃないかなぁ。レア曲の超レアなヴォーカル・カヴァーです。B3.「 オッズ・アンド・エンズ 」はオリジナルのディオンヌ版ベースのアレンジですが、ピアノがよりジャジーで、男女コーラスのヴォーカルも素晴らしい。B4.「 涙のアドヴァイス 」はリック・ネルソンとジョニー・ソマーズの男女デュオがオリジナルですが、それを男女コーラスでカヴァー。ジャジーなピアノやサックスも素敵です。

<RECORD 4>
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A2.「 ヒア・ホエア・ゼア・イズ・ラヴ(愛の街角)」はディオンヌ版がオリジナル。っつーか、私、この曲のカヴァー初めて聴きました。インストですけど十分レアです。A3.「 永遠の誓い(あなたはあなた)」は美しい男女コーラス、控えめだけど多彩なアレンジのオケ、共にいいですねぇ。B3.「 ゴー・ウィズ・ラヴ 」はディオンヌが歌い上げるオリジナルとは対照的に、フルートや薄いトランペットが淡々とメロディを奏でているのが新鮮。また、オルガンの和音やチェンバロの音色に郷愁を感じます。素敵なアレンジかと。


【データ】
『 The Burt Bacharach Hal David Treasury 』
Terry Baxter His Orchestra and Chorus

LP:1971年リリース(と思われる)
レーベル:A Columbia Musical Treasury (US)
番号:P4S 5578
(RECORD 1〜4:DS 780〜783)

Produced by Betsy Cohen and Ron Lockhart
Executive Producer:Betsy Cohen
Arrangers:Dean Christopher, Peter Dino, Johnny Gregory, Ron Lockhart, Ed Shanaphy, Jimmy Wisner
Manufactured by Columbia House

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2023年2月19日 (日)

SOMETIMES LATE AT NIGHT/Carole Bayer Sager (1981年) - 2回目

キャロル・ベイヤー・セイガーが1981年にリリースしたサード・アルバムです。今月(2023年2月)ボーナストラック入りで再リイシューされました。バカラックさん追悼を兼ねて本アルバムを再度取り上げます。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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今回リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全18トラック中、バカラック作品は12トラック(11曲)

1. Prologue
2. I WON'T BREAK
3. JUST FRIENDS
4. TELL HER
5. SOMEBODY'S BEEN LYING
6. ON THE WAY TO THE SKY
7. YOU AND ME (WE WANTED IT ALL)
8. SOMETIMES LATE AT NIGHT
9. WILD AGAIN
10. EASY TO LOVE AGAIN  (4:14)
11. STRONGER THAN BEFORE  (3:57)
12. YOU DON'T KNOW ME
13. Reprise
<Bounus Tracks>
"THE CAROLE BAYER SAGER RADIO SPECIAL With Burt Bacharach"
14. Conversation with Carole and Burt  (3:37)
15. STRONGER THAN BEFORE (single version)  (3:36)
16. Conversation with Carole and Burt  (3:44)
17. EASY TO LOVE AGAIN (single version)  (3:49)
18. Conversation with Carole and Burt  (9:11)

収録時間約67分(うちボーナストラック約24分)


この2月8日にお亡くなりになったバート・バカラック(1928年5月12日生 − 2023年2月8日没、享年94歳)。報道では、ご自宅で自然死だったとのこと。2008年来日時のTVインタビューで「どこまで現役を続けるのか」という膳場アナの問いに「気分がいい限りどこまでも」と答えておられましたが、バカラックさんは本当にそういう人生を送られたんだなぁと…。感慨深いものがありますね。

そんな折、キャロル・ベイヤー・セイガーが1981年にリリースしたサード・アルバム『 SOMETIMES LATE AT NIGHT 』がボーナストラック入りで再リイシューされました。アルバム本編&キャロル・ベイヤー・セイガーについては過去記事にしておりますので、今回はボーナストラックについて触れることとします。

ボーナストラックに収められているのは、プロモーション用LP『 THE CAROLE BAYER SAGER RADIO SPECIAL With Burt Bacharach 』より、「 Conversation With Carole And Burt/Stronger Than Before 」(→ T-14,16.)と「 Conversation With Carole And Burt/Easy To Love Again 」(→ T-18.)。それに、シングルバージョンのT-15.「 STRONGER THAN BEFORE(愛は果てしなく)」とT-17.「 EASY TO LOVE AGAIN(甘い誘惑)」の計5トラック。

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『 THE CAROLE BAYER SAGER RADIO SPECIAL With Burt Bacharach 』の内容は、Discogsによれば全編ダイアログおよびインタビュー。
A1. Conversation With Carole And Burt/Stronger Than Before  (7:35)
A2. Conversation With Carole And Burt/Easy To Love Again  (9:10)
B1. Conversation With Carole And Burt/I Won't Break  (8:45)
B2. Conversation With Carole And Burt/Sometimes Late At Night  (8:10)
B3. Carole Discusses Bacharach Arrangements  (1:00)
B4. Carole Discusses Her Songwriting  (1:35)
B5. Carole Discusses Neil Bogart And Bacharach's Confidence In Her Singing  (1:25)
このうち、シングルバージョンの2曲について語っている部分をボーナストラックとして収めたワケですね。もちろん英語なので、何言ってるか珍紛漢紛です^^;。なお、B5.の Neil Bogart は Boardwalkレーベルを立ち上げたお方です。

アルバム本編は、LP時代同様A面(CDのT-1〜7.)とB面(CDのT-8〜13.)それぞれ各曲をクロスフェードでつないでいます。シングル化するにあたり、T-15.「 愛は果てしなく 」はクロスフェードを取り除いた上にイントロを短くし、リミックスでイントロだけ派手めにお化粧しています。T-17.「 甘い誘惑 」もシングル化の手法は同様で、加えてアウトロも短くしています。

既に本アルバムをお持ちであれば、あえてこのCDに手を出さなくてもよいのでは…と思いました。もちろん、セイガーやバカラックの語りは貴重だと思いますので、それを聴きたいのであればその限りではありません。それに、24ページに及ぶブックレットの解説も充実しています。是非どなたか和訳して内容を教えていただけるとありがたいです。

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今回リイシューCDのジャケット裏/CDトレイの下

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今回リイシューCDのジャケット(24ページのブックレット)の12-13ページ


【データ】
『 SOMETIMES LATE AT NIGHT 』(邦題:真夜中のくちづけ)
Carole Bayer Sager

LP:1981年4月リリース (今回リイシューCD:2023年2月3日リイシューのUS盤、解説:Joe Marchese September, 2022)
レーベル:Boardwalk (今回リイシューCD:Boardwalk/Iconoclassic Records)
番号:FW 37069 (今回リイシューCD:ICON 1056)

Produced by Burt Bacharach and Brooks Arthur
T-3. Produced by Michael Jackson and Burt Bacharach
T-6. Track Produced by Neil Diamond and Dennis St. John

<Bounus Tracks>
T-15.「 STRONGER THAN BEFORE 」(single version)
7'':1981年4月リリース、c/w「 SOMEBODY'S BEEN LYING 」
レーベル:Boardwalk
番号:WS8 02054


T-17.「 EASY TO LOVE AGAIN 」(single version)
7'':1981年8月リリース、c/w「 WILD AGAIN 」
レーベル:Boardwalk
番号:NB7-11-118


T-14,16,18. from『 THE CAROLE BAYER SAGER RADIO SPECIAL With Burt Bacharach 』
LP:1981年 … PROMOTIONAL COPY NOT FOR SALE
レーベル:Boardwalk
番号:NBS-002

Produced by Fred Robbins

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Amazonリンク(リイシューCD

2023年2月10日 (金)

バカラックさん、安らかにお眠りください

突然の訃報に接し、放心状態です

たくさんの名曲をありがとう

バカラックさん、安らかにお眠りください

The New York Times の追悼記事
2023/2/25リンク先変更:当初は無料で閲覧できましたが今は有料記事に…。ちたりた(chitarrita)さんがご自身のブログに全文載せておられるとのことで、リンク先をちたりたさんのブログに変更しました。

2023/2/24追記:ちたりた(chitarrita)さんからこの追悼記事を翻訳された方のブログを教えていただきました。
[Talking New York --- New Yorkで見つけた英語]
特別編:追悼、バート・バカラック。ニューヨークタイムズが尊敬の気持ちをこめて書いた記事を読む。

ちたりた(chitarrita)さん、紹介&リンクさせていただき大変ありがとうございました!

2023年1月29日 (日)

colors best of yt cover tracks vol.1/高橋幸宏 (1999年)

過去のアルバムに収めたカヴァー曲をレコード会社の枠を超えて集約したベストアルバム。2枚に分かれており、これは1集目。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全11トラック中、バカラック作品は1トラック

8. WALK ON BY (2:54)


過去のアルバムに収めたカヴァー曲をレコード会社の枠を超えて集約したベストアルバム。1983~1999年の間にレコーディングされたカヴァー曲の中からのセレクションで、2枚に分かれており、これは1集目。

先日(2023/1/15)の訃報に触れ、高橋幸宏さんのアルバム『 薔薇色の明日 』『 colors best of yt cover tracks vol.2 』を聴いたり拙ブログの過去記事を読み直しました。その際、本アルバムを入手しそびれてそのままだったことに気づきまして…。哀悼の意を込めてポチッっとした次第です。
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ニール・ヤング、ビートルズ、トッド・ラングレン、加山雄三などのカヴァーがあるなか、バカラック・カヴァーが1曲入ってます。(ちなみに、2集目のvol.2にはバカラック・カヴァーが3曲収録されてます)

それが T-8.「 ウォーク・オン・バイ 」で、本アルバムのための新録音。アレンジや構成はオリジナルのディオンヌ・ワーウィック版に沿ったもので、♩≒99のテンポやキーも同じ。全体的にざらっとした触感も含めてオリジナルをトリビュートしてるんだなぁと思います。とはいえコピーしてるわけではなくて、凝ったパーカッションの刻みには高橋幸宏さんらしい味を感じます。2コーラス目を歌っている和田純子さん(夫婦音楽ユニット“BE THE VOICE”の女性ヴォーカル)の歌声もちょっぴりハスキーで、幸宏さんの歌声ともよく合ってます。

幸宏さんは本アルバムのライナーで各曲の解説をしとられます。T-8.「 ウォーク・オン・バイ 」の解説をこっそり載せますね。 ─ 僕がカヴァーするときに思うことは、極力原曲を壊さないということ。  ─ ナルホド、そーゆーことね。納得しました。
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【データ】
『 colors  best of yt cover tracks vol.1 』
高橋幸宏

CD:1999年6月17日リリース
レーベル:アゲント・コンシピオ
番号:AGCA-10016

Produced by 高橋幸宏
All songs arranged and performed by 高橋幸宏
except T-10. arranged by THE BEATNIKS

T-1.「 THE LONER 」, T-8.「 WALK ON BY 」 recorded from March to April, 1999

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2023年1月 8日 (日)

bebe/bebe (2003年)

女性シンガーのbebeが2003年にリリースした通算3作目のアルバムです。バカラック・カヴァーを2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全13トラック中、バカラック作品は2トラック

7. This girl -This Girl's is Love with You (3:55)
11. I feel free -Close to You (4:54)


女性シンガーのbebeが2003年にリリースした通算3作目のアルバムです。

─ ボーダレス&エイジレスな魅力を持つシンガー ユニバーサルジャズの名門レーベル[EMARCY]よりデビュー ─ (CDの帯より)
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帯のコピーではbebeさんがどんなシンガーなのかよくわからず、ネットで調べました。

─ チャーミングなヴォーカルが魅力の女性シンガー。高校で音楽科に進みクラシックを学ぶ。日大芸術学部声楽科に進学後ブラジル音楽に目覚め、野崎良太のプロジェクト“Jazztronik”にヴォーカリストとして参加。同氏のプロデュースでソロ・デビュー作『 Bossa Nossa 』(2000年6月)、セカンド作『 PERDITA 』(2002年1月)をリリースした。2003年4月、ジャズの名門エマーシーから『 bebe 』を発表、着物姿のジャケット写真も話題となった。“bebe”とはフランス語で“baby”の意。  ─ (CDJournal 公式サイトより)

…日本人なのは間違いないかな。bebeは本作の後、2004年にエマーシーから1枚、2005年にブーガルーから1枚アルバムをリリース。それらアルバムの紹介文では、“着物歌謡ジャズで独自の世界を打ち立てているbebe” とか “和服シンガーとして話題を呼んだbebe” と形容されています。音楽を聴く限り決して着物や和服のイメージは無いんですけどねぇ。ライヴでも和服で歌ったのか、それとも篠山紀信氏撮影のジャケット写真がインパクトあったからなのか…。

本作で、bebeはピアノトリオとストリングスをバックにスローあるいはミディアムテンポのバラードを歌っています。インストのT-1.を除いた12曲のうちオリジナル曲とカヴァー曲が半々ずつ。特徴的なのは全て日本語で歌ってる点。ショパンの英雄ポロネーズ(T-3.)に儚い恋心を桜に見立てた日本語詞を、洋楽カヴァー4曲(T-5,7,9,11.)にも全てbebeが訳詞をつけています。

んで、バカラック・カヴァーは2曲。T-7.「 This girl -This Girl's is Love with You 」はもちろん「 ディス・ガール 」のカヴァー。ピアノがエレピに代わりアコギも加わってほんわかした雰囲気を醸し出す演奏をバックにbebeがチャーミングに歌っています。日本語詞も英語詞をかなりチャーミングに意訳しています。

もう1曲はT-11.「 I feel free -Close to You 」。原曲「 (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU(遙かなる影)」の “あなたのそばにいたいの” という英語詞から離れて、日本語詞は “この唄を唄うたび私は自由を感じる” という意味に。訳詞とは言えないレベルで、実際曲名も変えています。ピアノトリオとストリングスをバックにふんわりとチャーミングに仕立てられています。

独特の日本語詞でのカヴァーは独自性がありますね。着物も含めて色物扱いされそうで、その点は微妙ですけれど。


【データ】
『 bebe 』
bebe

CD:2003年4月23日リリース
レーベル:Emarcy / ユニバーサル・ミュージック
番号:UCCJ-2024

Sound Producer:村山達哉
Co-producer:リチャード・モークス
Recording Coordinator:田井基良
Executive Producers:山中浩郎(aloh productions)、青野浩史、五野洋(Universal Jazz)
T-1. 作曲:村山達哉
T-2,4,6,8,10,13. 作詞:bebe、作曲:村山達哉
T-3.「 さくら さくら 」作詞:bebe、英雄ポロネーズ/作曲:Frederic Chopin
T-5.「 Love Letters 」訳詞:bebe、作詞:Edward Heyman、作曲:Victor Young
T-7.「 This girl -This Girl's in Love with You 」訳詞:bebe、作詞:Hal David、作曲:Burt Bacharach
T-9.「 カプチーノ -Moon River 」訳詞:bebe、作詞:Johnny Mercer、作曲:Henry Mancini
T-11.「 I feel free -Close to You 」訳詞:bebe、作詞:Hal David、作曲:Burt Bacharach
T-12.「 黄昏のビギン 」作詞:永六輔、作曲:中村八大
T-1〜13. 編曲:村山達哉
T-7.「 This girl -This Girl's in Love with You 」
  bebe (Vocal)
  島健 (rhodes)
  立花泰彦 (bass)
  芳垣安洋 (drums)
  鈴木俊介 (acoustic guitar)
  村山/桐山ストリングス (strings)
T-11.「 I feel free -Close to You 」
  bebe (Vocal)
  島健 (piano
)
  立花泰彦 (bass)
  岩瀬立飛 (drums)
  村山/桐山ストリングス (strings)
2002年12月 東京 スタジオSound Valleyにて録音
2003年  1月 東京 MITスタジオにて録音
2003年  1月 東京 MITスタジオにてミックス
Recording & Mixing Enginner:リチャード・モークス
Assistant Enginner:唐沢千文、林剛史
2003年  2月 東京 青山ビクター・スタジオにてマスタリング
Mastering Enginner:川崎洋(ビクターFLAIRマスタリング・ワークス)

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2023年1月 1日 (日)

ODDS & ENDS SCEPTER RECORDS RARITIES/Dionne Warwick(2018年)

ディオンヌ・ワーウィックの黄金期、セプター時代のレア音源を集めたコンピ集! バカラック作品を15曲(バージョン)収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全26トラック中、バカラック作品は15トラック

1. I SAY A LITTLE PRAYER (Alternate version) *
2. MONDAY, MONDAY

3. A HOUSE IS NOT A HOME (Italian version - Apro gli occhi per non vederti)
4. HE'S MOVING ON (Theme from The Love Machine)
5. AMANDA

6. WALK ON BY (German version - Geh' vorbei)

7. DON'T MAKE ME OVER (Alternate version) *

8. REACH OUT FOR ME (French version - Amour sublime) *
9. THE GOOD LIFE (Studio mix) *

10. LONELINESS REMEMBERS (WHAT HAPPINESS FORGETS)
(Alternate version)

11. WALK LITTLE DOLLY (Italian version - Ogni donna che amerai)
12. IF YOU LET ME MAKE LOVE TO YOU, THEN WHY CAN'T I TOUCH YOU?
13. LA VIE EN ROSE (English version - studio mix)

14. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART) (German version - Ich warte jeden Tag)

15. AS LONG AS THERE'S AN APPLE TREE (Extended version) *
16. OUR AGES OR OUR HEARTS

17. HOW MANY DAYS OF SANDNESS (French version - Combien de jours malheureux) *
18. I LOVE PARIS (Studio mix) *
19. SILENT VOICES (Stereo version)

20. THE WINDOWS OF THE WORLD (Italian version - La vita come va)
21. C'EST SI BON (Studio mix) *

22. ODDS AND ENDS (Alternate version) *

23. A HOUSE IS NOT A HOME (French version - Un toit ne suffit pas)

24. WALK ON BY (Italian version - Non mi pentiro)

25. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (Alternate version) *
26. PROMOTIONAL COMMERCIAKS & PUBLIC SERVICE ANNOUNCEMENTS (Various radio spots)

* 印:previously unreleased

収録時間約79分


ディオンヌ・ワーウィックの黄金期、セプター時代のレア音源を集めたコンピ集です!


2018年にReal Gone Music/Rhinoからリリースされました。ラジオのコメント(T-26.)を除く25トラックのうち "previously unreleased" が10トラックもあります。そのうちバカラック作品は15トラック("previously unreleased" は7トラック)を占めているのですが、2013年に同じくReal Gone Music/Rhinoよりリリースされたワーナー時代の未発表曲集『 WE NEED TO GO BACK 』とは異なり、未発表のバカラック作品は含まれていません。収録されていたのは既発表曲のバージョン違い 〜 別バージョン(Alternate version)、拡張バージョン(Extended version)、或いは英語以外の言語(イタリア語🇮🇹、フランス語🇫🇷、ドイツ語🇩🇪)で歌ったバージョン 〜 の数々でございます。

以下、バカラック作品15トラックについて簡単に説明してまいります。

◯ 別バージョン:5トラック(T-1,7,10,22,25.)
T-1.「 小さな願い 」:アレンジの骨格こそオリジナルと変わらないものの、トランペットが吹く “ パッパパッパパッ ” というフレーズが “ パーパパーパパー ” とのっぺりした表現だったり、曲中のピアノやストリングスのメロディが所々違っていたり、アウトロでのディオンヌのフェイクが異なっていたり、アレンジ&プロデュースの面で明らかに別物です。Original version from Scepter single SCE-12203 (1967), album『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』(1967)
T-7.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」:イントロでストリングスのメロディがごく一部異なり歌い出し前にストリングスを1小節追加してる他はオリジナルと目立った違いは無さそう。Original version from Scepter single 1239 (1962), album『 PRESENTING DIONNE WARWICK 』(1962)
T-10.「 ロンリネス・ハッピネス 」:アウトロが明確にオリジナルと違います。オリジナルでは静かにロングトーンで終わるのにリズム伴奏のままフェードアウトするんです。逆にアウトロ以外は同じですかね。なお、1980年に英国リーダースダイジェストから出たコンピ集に収録されたことがあるため "previously unreleased" じゃないんだそう。Original version from Scepter single SCE-12276 (1970), album『 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 』(1970)
T-22.「 オッズ・アンド・エンズ 」:同じテイクのミックス違いと思われます。Original version from Scepter single SCE-12256 (1969)
T-25.「 サン・ホセへの道 」:バックトラックは同じみたいですがディオンヌのヴォーカルが違います。オリジナルと較べて軽やかさが不足してるのと微妙にテンポに乗り切れてないんですね。こうして聴くとやっぱりオリジナルの方がいいなと思います。Original version from Scepter single SCE-12226 (1968), album『 DIONNE WARWICK in Valley of the Dolls 』(1970)

◯ 拡張バージョン:1トラック(T-15.)
T-15.「 アズ・ロング・アズ・ゼアズ・アン・アップル・ツリー(リンゴの木がある限り)」:オリジナル(2分5秒)と較べて尺が長い(2分49秒)ことが拡張バージョンと表記される理由です。曲の構造を簡単に表現すると、拡張バージョンが A-B-A-B-A(唄なし)-B-A-転調A…F.O. となってるのに対し、オリジナルは A-B-A-B-A(唄なし)-転調A…F.O. で赤字部分がカットされてるんですね。拡張バージョンのまま世に出して欲しかった…。Original version from Scepter album『 DIONNE WARWICK in Valley of the Dolls 』(1970)

◯ イタリア語🇮🇹バージョン:4トラック(T-3,11,20,24.)
T-3.「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」、T-24.「 ウォーク・オン・バイ 」:バックトラックはオリジナルと同じ。ヴォーカル(T-24.はバックコーラスも)がイタリア語。From Scepter single SC 713 (1967) Italy, Original version from Scepter album『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』(1964)
T-11.「 ウォーク・リトル・ドゥリー 」、T-20.「 世界の窓と窓(世界の窓に光を)」:バックトラックはオリジナルと同じ。ヴォーカルがイタリア語ですが、T-11.はオリジナルにあるバックコーラスが省略されています。From Scepter single SC 715 (1967) Italy, Original version from Scepter album『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』(1967)
…これらイタリアでの2枚のシングルは、1967年にイタリアのサンレモ音楽祭にディオンヌが出演するにあたってリリースされたんだそう。

◯ フランス語🇫🇷バージョン:3トラック(T-8,17,23.)
T-8.「 リーチ・アウト 」:バックトラックはオリジナルと同じ。ヴォーカルとバックコーラスがフランス語。Original version from Scepter album『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』(1964)
T-17.「 悲しみの日々 」:バックトラックはオリジナルと同じ。ヴォーカルとバックコーラスがフランス語。Original version from Scepter album『 THE SENSITIVE SOUND OF DIONNE WARWICK 』(1965)
T-23.「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」:バックトラックはオリジナルと同じ。From Vogue EPL. 8313 (1964) France, Original version from Scepter album『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』(1964)
…フランスでは1964年にT-23.のシングルをリリース。その後もT-8.やT-17.をフランス語でもレコーディングしてたようです。1966年初頭、ディオンヌはフランスのサッシャ・ディステルの共演者としてパリのオランピア劇場に5週間出演するのですが、その際「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」をフランス語で歌っています。そのライヴ盤『 Dionne Warwick in Paris 』(1966) に収録されているバージョンはスタジオ録音のT-23.に拍手をかぶせた疑いが濃厚ですが…。

◯ ドイツ語🇩🇪バージョン:2トラック(T-6,14.)
T-6.「 ウォーク・オン・バイ 」、T-14.「 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・ヘヴン 」:バックトラックはオリジナルと同じ。ヴォーカルとバックコーラスがドイツ語。T-14.はオリジナルよりもバックコーラスが厚いです。From Vogue Schallplatten single DV 14298 (1964) Germany, Original version from Scepter album『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』(1964)

個人的なレコメンドはT-1.とT-15.ですね。他もレアなことはレアなんでしょうけど…。


【データ】
『 ODDS & ENDS SCEPTER RECORDS RARITIES OVER TWO-DOZEN LOST RECORDINGS SPANNING 1962-1971 
Dionne Warwick

CD:2018年リリース
レーベル:Real Gone Music / Rhino
番号:OPCD-9003

Original recordings produced by Burt Bacharach & Hal David
Compilation Producer:Jim Pierson
Executive Producer:Gordon Anderson
Associate Producer:Pail Howes
©️2018 Rhino Entertainment Campany, a Warner Music Company.
©️2018 Real Gone Music, L.L.C. Manufactured for Rhino Custom Products, a Division of Rhino Entertainment Company, All Rights Reserved.

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2022年11月20日 (日)

This is Juke Box はじめましてジューク・ボックスです/ジューク・ボックス (1970年)

1970年代の男性アイドルグループ、ジューク・ボックスが1970年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全9トラック中、バカラック作品は1トラック

A2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:59※)

※ MC部分を除いた楽曲のみの時間


1970年代の男性アイドルグループ、ジューク・ボックスが1970年にリリースしたファースト・アルバムです。

ジューク・ボックスは、ジャニーズ事務所に所属していた1970年代の男性アイドルグループ。1969年末結成、1974年消滅。“ ジューク・ボックス ” の名前は元々、1969年初頭頃からジャニーズJr.全体に対する別称として使われていましたが、同年末に選抜メンバーによって正式にグループ化されました。メンバーの脱退・加入が非常に激しく、メンバー構成は13期に及んだとか。結成当初は事務所先輩であるフォーリーブスのバックで踊ったりしたそうです。フォーリーブスはリアルタイムでTV観てましたが、ジュース・ボックスは今回アルバムを手に入れて初めて知りました。

ジューク・ボックスは、第5期メンバー(円谷弘之、小谷純、吉本暁弘、やなせかおる の4名)の時、1970年10月に両A面シングル「 さよならの祈り c/w 海に沈めて 」でレコードデビュー。そして、同じメンバーでジューク・ボックス初のアルバムを同年12月にリリース。それが本作でございます。

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収録されているのは、洋楽カヴァー4曲(A1,A2,A3,B4)、デビューシングルの2曲(B1,B2)、そのデビューシングルと同じ作家〜山上路夫作詞/鈴木邦彦作曲〜の2曲(A4,B5)、ビートルズ「 イエスタデイ 」の弦楽四重奏をバックに詩を朗読したもの(B3)という計9トラック。70年代のアイドルはライヴやアルバムで洋楽カヴァーを取り上げることが多かったそうですが、4曲も入ってるとは!

LPの帯に “ ジュークの歌とおしゃべりでつづる ” と書かれていた通り、曲間には自己紹介を兼ねてメンバーのMCが挿入されています。こんなこと書くとファンの方には怒られちゃいますが、中身はガキのしょーもない会話。でも、ビデオすら無い時代、声とジャケ写から色々妄想して楽しんでいたんだろうなぁと。アルバムジャケットの曲目表記では、MCが青字詩の朗読が赤字で書かれています。A2.のヒロのことは円谷弘之、A3.のカオルのことはやなせかおる、A4.のアッキとピピのことは吉本暁弘と小谷純と思われます。MCを聴いてると、誰かが「 ヒロはリーダーだからな 」と言ってるので円谷さんがリーダーだったんでしょう。
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それでは本題、バカラック・カヴァーはA2.「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN(恋よさようなら)」。歌ってるのは1人だけで、MCの流れからヒロ(円谷弘之)だろうと思うんですが、最初女性が歌ってるのかと思ったほど高くハリのある美声にびっくりしました。ボーイソプラノが声変わりしたけどまだ声質が女声っぽい、そんな感じの中性的な歌声です。しかも歌も上手い! 伴奏はほぼ原曲コピーで新味はありませんが、処々聴こえる金管&木管のちょっとしたオカズが印象的でした。

他の曲についても少し触れます。MCの流れから、A3.はカオル(やなせかおる)が、A4.はアッキ(吉本暁弘)とピピ(小谷純)が歌ってるようですが、いずれもシロウトががなって歌ってる感ありあり。…初期のマッチのような歌声です。まぁアイドルらしいですが…。それにしても、デビューシングルの2曲(B1,B2)が演歌・歌謡曲・GSの混ざったような残念な楽曲なんですょ。これじゃ売れんわぁ…となりました。


【データ】
『 This is Juke Box はじめましてジューク・ボックスです 』
ジューク・ボックス

LP:1970年12月25日リリース
レーベル:キャニオン・レコード
番号:CAL-3001 (¥1,800)

ジューク・ボックス … メンバーの紹介は一切なし。ジャケ写見ても誰が誰だかわかりません^^;
キャニオン・オーケストラ
編曲:川口 真(A1,A2,A3,A4,B3,B4,B5)、鈴木邦彦(B1,B2)
レコーディング・ディレクター:鈴木亮一
レコーディング・ミキサー:佐藤広行

制作協力:山上路夫、ジャニー喜多川、片桐和子、笠井幹男、週刊セブンティーン、小菅 広(週刊セブンティーン)、渡辺道雄(週刊セブンティーン)、池 利文、萩原自動車店 *
* 自動車店ってゆーのが時代を感じます。ジャケ写のBMWイセッタ関連でしょうね。

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2022年11月 6日 (日)

ライブの感想 Yammy* sings Burt Bacharach Nov. 5, 2022

3年ぶりの Yammy* sings Burt Bacharach!(以降 YsBB)

2022年11月5日(土) 18:00開場 19:00開演
Restaurant Bar & New York Sound Live ROYAL HORSE
Yammy*(Vo)、Sasapong(P)、堂地誠人(Soprano Sax)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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色々あったこの3年間。
“ お待たせしました。三年ぶりに YSBB がやっとロイヤルホースに帰ってきます。” …フライヤーにはこんな短いコピーが。本当は何行にもわたるさまざまな想いがあるのだろうけれど。お店エントランスの『 感染症対策認証飲食店/ワクチン・検査パッケージ制度登録店 』認定証、こんなもん3年前には無かったもんなぁ…。


<1st stage> 19:06〜19:54
1. ALFIE アルフィー … w/Sasapong 【T-1.】
2. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU 遥かなる影 【T-2.】
3. ONE LESS BELL TO ANSWER 悲しみは鐘の音とともに 【T-3.】
4. THE LOOK OF LOVE 恋のおもかげ 【T-4.】
5. THE APRIL FOOLS エイプリル・フール
6. BELLS OF ST. AUGUSTINE ベルズ・オブ・セント・オーガスティン
7. A HOUSE IS NOT A HOME ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム … w/Sasapong 【T-10.】

<2nd stage> 20:23〜21:15
1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 恋よさようなら 【T-5.】
2. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO) ニューヨーク・シティ・セレナーデ
3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU ディス・ガイ 【T-6.】
4. GOD GIVE ME STRENGTH ゴッド・ギヴ・ミー・ストレングス 【T-7.】
5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 世界は愛を求めている(愛をもとめて) 【T-8.】
6. WALK ON BY ウォーク・オン・バイ 【T-9.】
7. WIVES AND LOVERS 素晴らしき恋人たち

<Encore> 21:17〜21:30
1. I SAY A LITTLE PRAYER 小さな願い
2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD 雨にぬれても

YsBBはバート・バカラックが作曲した曲だけを歌うライヴ。年末にロイヤルホースで行うのが恒例となっていて、2010年のスタートから10周年となる2020年には同名タイトルのバカラック・カヴァー・アルバムをリリース。リリース前夜の10月31日にはリリース記念ライヴがYouTubeで配信されました。そしてその年の12月、ロイヤルホースでライヴ!…の予定がコロナ禍で中止に。残念ながら翌2021年の12月も…。前回ライヴ(2019/12/16)から約3年たった今年2022年、ようやくのYsBB@ロイヤルホースです!

セットリストはオール・バカラック・プログラム。アンコールも含めてというのは(私が聴いた限り)今回が初めてでは? アルバムに収録された全10曲ももちろん歌ってくださいました。セットリストの最後に添えた【T- .】はアルバムのトラック番号なんですが、演奏順はほぼトラック順。特にアルバム後半の5曲は個人的にレコメンドでして、それが今回のライヴで(T-10.を除き)曲順通り再現されたのは胸熱です。基本、アルバム収録曲はレコーディング時のアレンジでのパフォーマンスでした。
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前回ライヴに引き続き、この度もプロデューサーの廣瀬さんよりYammy*さん直筆のセットリストを頂きました。大変貴重なものをありがとうございました。

1st stageは、まず1-1.「 アルフィー 」をSasapongさんとのデュオで歌唱し、1-2.「 遙かなる影 」から堂地さん登場。MCでアルバムのことに触れ、アルバムのアレンジでお届けしているとのこと。1-3.「 悲しみは鐘の音とともに 」はYammy*さんの歌声とソプラノサックスの音色が同化して心地よかった! 1-4.「 恋のおもかげ 」、1-5.「 エイプリル・フール 」ときて、Sasapongさん愛用のクッピーラムネ柄タオルをご紹介。そして2020年にバカラックがダニエル・タシアンと共作したアルバムの中の1曲、1-6.「 ベルズ・オブ・セント・オーガスティン 」をカヴァー。素晴らしかったです。セント・オーガスティンがフロリダにあること、知りませんでした。郷ひろみさんもこの曲を昨年カヴァーされましたね。Sasapongさんとのデュオで1-7.「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」をしっとり歌い1st stageは終了。

2nd stageは、軽快な2-1.「 恋よさようなら 」でスタート。客席も手拍子で盛り上げます。カーリーガールメソッドの話も面白かった。2-2.「 ニューヨーク・シティ・セレナーデ 」を歌った後、アルバムレコーディング前の発音レッスンで色々気づきがあり成長できた話を披露。2-3.「 ディス・ガイ 」はYammy*さんがバカラックを歌うきっかけとなった曲だとか。2-4.「 ゴッド・ギヴ・ミー・ストレングス 」のYammy*さんの歌声には魂がこもってました。2-5.「 世界は愛を求めている 」でのSasapongさんの長いピアノ・イントロ、2-6.「 ウォーク・オン・バイ 」での堂地さんのアドリヴ、そして本編ラストとなる2-7.「 素晴らしき恋人たち 」ではまさしく三位一体となってのノリの良さ。勢いがつくと言うか、これぞライヴの醍醐味!

アンコール1曲目の「小さな願い」も特に堂地さんのアドリヴが熱い! アンコール2曲目「 雨にぬれても 」でクールダウン、ほっこりしてライヴはお開きとなりました。

“ YsBBは皆様に育てていただいた。年1回でもこの先ずっとYsBBのライヴを続けていきたい。” とおっしゃったYammy*さん。聴いてる我々もYammy*さんからパワーを貰ってることを改めて実感したライヴでした。

ちなみに、Yammy*さんは年末にかけて様々なライヴを予定しておいでです。興味ある方は是非Yammy*さん公式サイトの[LIVE]をご覧ください! 今回
ライヴでは『 Yammy*が唄うユーミンの歌の世界(2022/12/18)』のフライヤーが配られました。ユーミンのカヴァーもサブスクで少しずつ解禁しておられるそうです。
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2022年10月30日 (日)

Sings Tom Jones & Burt Bacharach/Kim Sang Hee (1971年)

韓国のジャズ〜ポップス・シンガー、キム・サン・ヒーが1971年3月に日本のキャニオン・レコードからリリースしたアルバム。バカラック・カヴァーを6曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover

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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は6トラック


1. GREEN GREEN GLASS OF HOME
2. LITTLE GREEN APPLE
3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
4. DELILAH
5. IT'S NOT UNUSUAL
6. LOVE ME TONIGHT
7. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD
8. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
9. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
10. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
11. THE APRIL FOOLS
12. I SAY A LITTLE PRAYER

収録時間約36分


韓国のジャズ〜ポップス・シンガー、キム・サン・ヒーが1971年3月に日本のキャニオン・レコードからリリースしたアルバムです。

以前からその存在は知っていたのですが、CD化されておらず聴く機会がありませんでした。この度、オールアート・コレクション!⑨として世界初CD化され2022年10月26日にリリース。早速手にしたワケです。
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─ 韓国を代表するジャズ~ポップス・シンガーが、英国の人気歌手トム・ジョーンズ、米国の作曲家バート・バカラック関連の楽曲に臨んだコレクターズ・アイテムが遂に復活。伴奏陣のプレイも極めて充実! ─
 (CDの帯より)

彼女は1943年3月(生年は諸説あるようですが)ソウル生まれ。大学(法律学専攻)卒業後、1965年頃よりプロの歌手として活動を開始。1969年には、ソウル新聞から “グレート・シンガー賞”、中央日報から “最優秀女性シンガー賞” を得ており、冠TV番組やラジオ番組も評判を呼んだそう。↓ の画像はDiscogsの彼女のサムネイルから拾ったものです。
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1970年には、大阪万博の関連企画として東京で行われた “アリラン・フェスティバル” 出演のため(おそらく初めての)来日。1970年に設立したばかりのキャニオン・レコード(現ポニーキャニオン)が、数々の海外の超一流ジャズ・ミュージシャンを日本に招聘しコンサートを多数企画制作していた音楽事務所 “オールアート・プロモーション” と組んで彼女の売り出しにかかった、その成果の一つが本作。アナログA面(CDのT-1〜6.)はトム・ジョーンズの当たり曲を宮間智之とニューハードと、アナログB面(CDのT-7〜12.)はバカラック・カヴァーを佐藤允彦トリオと組んでレコーディングしたものです。

以下、バカラック・カヴァー6曲についてコメントします。キム・サン・ヒーは1970年当時27歳。それにしては大人で落ち着いた歌声。英語詞の発音もそれほど違和感なく、ごく自然な歌唱です。T-12.「 小さな願い 」のサビではパワフルな声を出してます。佐藤允彦トリオによる演奏は歌の伴奏としてはちょっと賑やかすぎかな…と思いますが、T-9.「 ディス・ガール 」の厳かなイントロ、T-10.「 サン・ホセへの道 」でのコロコロと転調していくイントロ/間奏など、独特な味があります。CDとなって聴けてよかったと思える、そんな出来ではないかと。

なお、T-3.「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 」は L. Donegan - J. Currie による楽曲で、邦題「 最後の恋 」。バカラック作品ではありません、念の為。

ここからはオマケ。MP3で所有するキム・サン・ヒーのバカラック・カヴァーをご紹介。
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キム・サン・ヒーは、1971年11月にキャニオン・レコードからもう1枚『 Love Story(ある愛の歌)』というアルバムをリリース。その中でバカラック作品を2曲カヴァーしています。「 CLOSE TO YOU(遙かなる影)」と「 THE LOOK OF LOVE(ルック・オブ・ラヴ/恋のおもかげ)」、いずれもフリーダム・ユニティ(よくわかりませんが
スタジオミュージシャン達によるスタジオ録音用オケではないかと)の演奏をバックに歌っています。この演奏がなかなか独創的でカッコいいんです。編曲は前田憲男さん。ナルホドね…です。キム・サン・ヒーの歌唱は派手ではないけど安定感あるもの。個人的には『 Sings Tom Jones & Burt Bacharach 』よりもこちらの2曲の方がレコメンドです。


【データ】
『 Sings Tom Jones & Burt Bacharach 』 (邦題:トム・ジョーンズ&バート・バカラックを歌う)
Kim Sang Hee  キム・サン・ヒー(金相姫)




LP:1971年3月25日リリース (所有CDは、2022年10月26日リリースのリイシュー盤。解説:原田和典さん)
レーベル:Canyon (Japan) (所有CDは、Solid Records/ウルトラ・ヴァイヴ)
番号:CAL-5003 (所有CDは、CDSOL-6247)

SIDE-A(Tom Jones Side)/T-1〜6. 宮間利之とニューハード(演奏)、前田憲男(編曲)
SIDE-B(Burt Bacharach Side)/T-7〜12. 佐藤允彦トリオ(演奏・編曲)

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2022年10月 2日 (日)

Songwriter/Richard Marx (2022年)

米国のシンガーソングライター、リチャード・マークスが2022年9月にリリースしたアルバム。バカラックと共作した新曲を収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全20トラック中、バカラック作品は1トラック

16. ALWAYS (3:40)


米国のシンガーソングライター、リチャード・マークスが2022年9月にリリースしたアルバムです。

1963年9月米国イリノイ州生まれ(私と同世代!)。1987年ソロ・アーティストとしてのデビュー・アルバム『 RICHARD MARX 』からシングル「 DON'T MEAN NOTHING 」が全米3位のヒットに。その後セカンド・アルバム『 REPEAT OFFENDER 』から、「 SATISFIED 」「 RIGHT HERE WAITING 」が全米No.1。1990年代以降はプロデューサーやソングライターとしての活動に重点を置く傍ら、コンスタントにアルバムをリリースしてきました。


─  自分のソングライティング・キャリアにおいて、実に様々なアーティストの為に実に様々な曲を作る素晴らしい機会に恵まれた。だから、自分の大好きなジャンルを色々取り上げたアルバムを作らない理由はないと思ったんだ。  ─ という本作は、タイトル通りソングライターとしての自身に焦点を当てたアルバムなんだとか。

4つのジャンルに5曲ずつ。具体的には、Pops(T-1〜5.)、Rock(T-6〜10.)、Country(T-11〜15.)、Ballads(T-16〜20.)の全20曲を収録。んで、バラードの1曲がバート・バカラックと共作した新曲…T-16.「 ALWAYS 」でございます。

2016年頃よりリチャード・マークスはバカラック爺と曲作りしてきました(ご参考:過去記事1過去記事2)。こんなに待たされるとは思ってなかったけど、何はともあれ1曲でも聴くこと出来て良かった良かった😌

さてそのT-16.「 ALWAYS 」は♩≒80のスローバラード。バックはグレッグ・フィリンゲインズのピアノとストリングスだけ。(そうかっ、やっとわかった! だから、バカラック爺&グレッグ・フィリンゲインズと一緒の写真をインスタに上げてたのかっ! ← 先ほどご参考でリンクした "過去記事1" をご覧ください) 4小節のピアノのイントロは普通ですが、Aメロの3〜4小節目、7〜8小節目あたりのちょと道を外れたようなメロディとコードの響きですぐバカラックの曲とわかります。大雑把にAメロを18小節とカウントすると(本当はその中でAとBに分かれるんでしょうがよくわかんなくて…)、A-A-サビ-Aという構成。サビは7小節と短く特に盛り上げるつもりもないみたい。その辺りバカラックらしいです(笑)。柔らかいリチャード・マークスの歌声はメロディに馴染んでますねぇ。リチャード・マークスがどの程度作曲に絡んだのかはわかりませんが、かなりバカラックの比重が高いように思います。

そう言えば、リチャード・マークスは30年以上前にバカラックがプロデュースしたあるレコーディングでバッキング・シンガーとして仕事したこともあるんだそう。誰のどの曲なんでしょうかねぇ。


【データ】
『 Songwriter 』
Richard Marx

CD:2022年9月30日リリース
レーベル:BMG (US)
番号:538835962

プロデュースは各曲ごとに異なっていますが、面倒臭いんで省略。
T-16.「 ALWAYS 」
  (Burt Bacharach and Richard Marx)
  Produced by Burt Bacharach and Richard Marx
  Mixed by Chip Matthews
  Piano:Greg Phillinganes
  String Arrangement my Michael Omartian 

以下、各曲のSongwriterをクレジットのまま記しておきます。
SIDE A - POP
  1. Richard Marx, Lucas Marx and Michael Jade
  2. Richard Marx and Adam Messinger
  3. Richard Marx and Bruce Wiegner
  4. Ricahrd Marx
  5. Richard Marx and Lucas Marx
SIDE B - ROCK
  6. Richard Marx and Jesse Marx
  7. Richard Marx and Matt Scannell
  8. Ricahrd Marx
  9. Ricahrd Marx, Chris Daughtry and Jason Wade
  10. Richard Marx and Jesse Marx
SIDE C - COUNTRY
  11. Richard Marx
  12. Richard Marx, Lucas Marx and Bruce Wiegner
  13. Richard Marx and Keith Urban
  14. Richard Marx, David Hodges and Darius Rucker
  15. Richard Marx, Randy Hauser and Brice Long
SIDE D - BALLADS
  16. Burt Bacharach and Richard Marx
  17. Richard Marx and Richard Page
  18. Richard Marx
  19. Richard Marx and Gary Burr
  20. Richard Marx and Tofer Brown

こうして並べてみると、コライト者を自分より先に記してるのはT-16.「 ALWAYS 」だけ…。バカラック爺だけ特別なんですね!

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2022年8月28日 (日)

The Complete Ode Recordings/Peggy Lipton (2014年)

米国の女優ペギー・リプトンが歌手として1968年に発売したアルバム『 Peggy Lipton 』に他シングル曲と未発表曲を加えたリイシュー盤。未発表曲のうち1曲がバカラック・カヴァー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全19トラック中、バカラック作品は1トラック

17. WANTING THINGS (3:10)



米国の女優ペギー・リプトンが歌手として1968年に発売したアルバム『 Peggy Lipton 』に他シングル曲と未発表曲を加えたリイシュー盤です。

ペギー・リプトンって誰?
─ マーガレット・アン・“ペギー”・リプトン(Margaret Ann "Peggy" Lipton、1946年8月30日 - 2019年5月11日)はアメリカ合衆国の女優で元モデル。たちまちの間に成功を収め、テレビドラマ『 The Mod Squad(モッズ特捜隊)』(1968年9月 - 1973年3月)のフラワーチャイルド、ジュリー・バーンズ役で最も知られている。1974年にクインシー・ジョーンズと結婚(1990年に離婚)、2人の娘がいる。結婚後は女優業を休止していたが、1988年に復帰。人気のテレビシリーズ、『 ツイン・ピークス 』(1990年 - 1991年)でノーマ・ジェニングス役を演じた。 ─ (ウィキペディアより抜粋)

彼女のこと全く知らないのでウィキペディアさんから引用させていただきました。基本、女優さんなんですね。だからCDパッケージのシールに "The Mod Squad Star's 1968 Album …" って書いてあったのかぁ…。
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本作は、このシールにもあるように、1968年のアルバム『 Peggy Lipton 』に8曲のボーナストラック(4曲の未発表曲を含む)を加え、タイトルも『 The Complete Ode Recordings 』に変えてリイシューされたものです。

『 Peggy Lipton 』(全11曲:T-1〜11.)にはキャロル・キング、ローラ・ニーロらの作品に混じって彼女の作詞作曲作品(T-1,3,4,11.)も収められています。それら自作曲が素朴ながらも佳曲で、彼女にはそういう才能もあったんですね。ボーナストラック8曲のうち4曲はアルバム未収録のシングル曲(T-12〜15.)で、残り4曲が未発表曲(T-16〜19.)。

バカラック・カヴァーはT-17.「 WANTING THINGS(欠けているもの)」。ブロードウェイミュージカル『 Promises, Promises 』の1曲ですが、オリジナルではピアノが弾く刻みをハープシコードが弾いているのが印象的且つ新鮮(他のカヴァーではコニー・フランシス版が隠し味的にハープシコードを使ってます)。ゆったり目のテンポで、彼女も丁寧に歌っていて曲にマッチしています。クレジットには "not final mixes" と書かれていますが、未発表だなんて勿体無い、世に出してくれてありがとう…と思えるカヴァーでした。


【データ】
『 The Complete Ode Recordings 』
Peggy Lipton




CD:2014年7月29日リリース
レーベル:Real Gone Music (US)
番号:RGM-0261

Re-titled reissue of Peggy Lipton - Peggy Lipton with eight bonus tracks, four previously unreleased.


T-1-11. from Ode album Z12-44006 『 Peggy Lipton 』 (1968)
  Produced by Lou Adler
  Back-ground Vocal by The Blossoms
  Rythm Section under the Direction of Hal Blaine
  Included:Joe Osborn, Larry Knechtel, Mike Deasy, Gary Coleman, Lou Morell, Charlie Larkey, Jim Gordon
  Special Thanks to Carole King
  The Horns and Strings were Arranged and Conducted by Marty Paich
  Flute and Sax Solos by Jim Horn
T-12-13. from Ode single ZS7 118 (1969)
T-14. from Ode single ZS7 124 (1969)
T-15. from Ode single OD 66001 (1970)
T-16-19. previously unreleased
Please note: T-16, 17 and 19. are not final mixes and are pulled from a 7.5 ips tape source.

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2022年8月14日 (日)

YS&H/Young, Shy & Handsome (2008年)

スウェーデンのジャズ・バンド、Young, Shy & Handsome が2008年にリリースした初めてのアルバム。半数の4曲がバカラック作品!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有CDの紙ケース表/ケース裏
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所有CDの紙ケース内側見開き

全8トラック中、バカラック作品は4トラック

1. MANTECA (5:47)
2. THE LOOK OF LOVE (4:14)
3. SOMEDAY (4:05)
4. PENSATIVA (5:01)
5. LADY IN CEMENT (4:10)
6. UPSTAIRS (4:37)
7. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (4:11)
8. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (5:18)


スウェーデンのジャズ・バンド、Young, Shy & Handsome が2008年にリリースした初めての(そして現時点で唯一の)アルバムです。

─ Young, Shy & Handsome は、現代のジャズからインスピレーションを得ながら、「スウィングする 60 年代」に片足を踏み入れています。 バンドのレパートリーには、あらゆる時代 (特に 60 年代) の映画、ポップス、ジャズが含まれています。 ─ (プロフィール:公式サイトから引用 )


ピアノトリオ+ホーン4人(トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、アルト・サックス)の7人編成。メンバーは全員スウェーデン人ですが、気になるのはそのバンド名。2008年時点で年齢は28〜35歳ですからまぁ若い(young)のは認めます。はにかみ屋さん(shy)かどうかは置いといて、ハンサム(handsome)ってのはどーなんでしょうかねぇ。CDケースの裏を眺めてもピンとこないんですが…😅

さて、本作は全8曲収録。ディジー・ガレスピーのT-1.「 マンテカ 」、ジョージ・デュークのT-3.「 サムデイ 」、クレア・フィッシャーのT-4.「 ペンサティヴァ 」、ウーゴ・モンテネグロのT-5.「 セメントの女 」(1968年の米映画『 セメントの女 』テーマ曲) という選曲は、ラテンジャズ、フュージョン、映画音楽という具合に彼らのプロフィール通り。…んで、残り半分の4曲がバカラック作品なんですねぇ。

T-2.「 恋のおもかげ 」はライトなボサノヴァのゆったりアレンジ。T-7.「 世界は愛を求めている 」はジャズワルツ(所々5拍子)でホーンのハモリが気持ちいい。T-8.「 サン・ホセへの道 」はノリの良いボサノヴァ。いずれもメロディやアドリヴの主役はホーン達で、特にトロンボーンのアドリヴはセンスいいなぁと思います。

そしてT-6.「 UPSTAIRS(二階の僕の部屋)」。ブロードウェイ・ミュージカル『 PROMISES, PROMISES(プロミセス・プロミセス)』の1曲なんですが、単体でのカヴァー※が極めて少ないとてもマニアックな曲。(※ 単体でのカヴァー例は、スウェーデンのジャズ・ピアニストであるベンクト・ハルベルクの『 Plays Bacharach 』(1971)、ジャズ・クルセイダーズの『 Powerhouse 』(1969) くらいでしょうか…) 演奏は、ジャズ・クルセイダーズ版をベースとして♩≒166 から♩≒124 にぐっとテンポを落としたもの。まぁパクリっちゃあパクリなんですが、まったりしたトロンボーンのアドリヴは私好みだし、何よりこの曲を取り上げてくれたことが嬉しいのです。

半数がバカラック作品だし、何か思い入れでもあるんじゃ…とライナーノーツを期待してCD購入したものの、なぁんにも書いてなくて残念…。なのでCDわざわざ買う必要はありません。サブスクにありますし、YouTubeでも全曲フルサイズで聴けますから…(こちら)。

ついでに「 サン・ホセへの道 」のライヴ演奏動画もリンク貼っておきます(こちら)。

ここからはオマケとして、MP3で所有しているバカラック・カヴァーをご紹介。
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前述した通り、The Jazz Crusaders は1969年リリースのアルバム『 Powerhouse 』で「 UPSTAIRS(二階の僕の部屋)」(3:12) を取り上げています。ここまでしなくてもいいのに…って言うくらい速いテンポ(♩≒166)なんですが、テナー・サックスとピアノのアドリヴも含めて破綻なくプレイしているのは流石ジャズ・クルセイダーズ!って思います。
なお、このアルバムではもう1曲「 Promises, Promises 」(6:13) も取り上げていて、こちらも超速いテンポで演奏しています。拙ブログではバカラック物コンピ集『 BLUE BACHARACH 』(1997) でちょろっと触れておりますです。


【データ】
『 YS&H 』
Young, Shy & Handsome

CD:2008年12月16日リリース
レーベル:D-Disk (Sweden)
番号:CD-101

Produced by Daniel Agurén
  Nils Janson (b. 1978) - Trunpet, Flügelhorn
  Daniel K Johansson - Trombone
  Staffan Findin - Bass Trombone
  Linus Lindblom (b. 1977) - Alto Saxophone
  Daniel Agurén (b. 1973) - Piano, Arrangements
  Svante Söderqvist (b. 1980) - Bass
  Calle Rasmusson (b. 1978) - Drums, Percussion
Recorded by Lennart Ström at OAL Studio on May 26, 2008
©️/(P) D-Disk 2008

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2022年7月31日 (日)

レディメイドのモダン・チョキチョキズ/モダンチョキチョキズ (1997年)

モダンチョキチョキズが1997年にリリースしたベストアルバムです。ボーナストラックとしてバカラック作品を1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全22トラック(Disc1:17トラック + Disc2:5トラック)中、バカラック作品は1トラック

<Disc2> 8cmCD/ボーナストラック野郎
4. 信じた私がバカラック (5:23)


モダンチョキチョキズが1997年にリリースしたベストアルバムです。

モダンチョキチョキズは、1989年から1997年に活動していた大阪のエンターテインメントバンド。1992年にメジャーデビューし、9枚のシングルと4枚のアルバムをリリースした後、初のベストアルバムとなる本作のリリースをもって活動休止。しかし、解散はしていないらしく時々復活ライヴをしてるとか。メンバーは不定でその時々(ライブなどの構成)に応じて変動するようですが、メインヴォーカルの濱田マリさんは私でも知ってるくらい有名。つい最近もNHK朝ドラ(第105作『 カムカムエヴリバディ 』)に出演しておられましたねー。

本作はCD2枚組。ベストアルバムとして小西康陽さんが選曲・編集・リミックスを担当したのはDisc1のみ。Disc2はボーナストラック集で、今となってはなんとも懐かしい8cmCDに5曲入ってます。

んで、ボーナストラックの1曲がバカラック作曲のDisc2-4.「 信じた私がバカラック 」。

この曲は、作詞:ジョン・ベティス、日本語訳:吉村智樹、作曲:バート・バカラック、編曲:高浪敬太郎 とクレジットされています。突拍子もない飛び跳ね方をするメロディライン&コード進行、不規則な楽節数はまさしくバカラック印。加えて高浪氏によるアレンジはポップで、バカラック風味のブラスには思わずニヤリ。濱田マリさんのヴォーカルは曲の雰囲気にマッチしてます。いいですねぇ〜。

一方、日本語詞は ─ あんはんは祇園の妓(私)をくるわせたのよ。ああ、あんはんを信じた私がバカだった ─ という意味の内容をバカラック作品の日本語タイトル( ※ 後述)を多数引用して表現。冒頭部には台詞もあるし…。これってホンマにジョン・ベティスはんが書きはった原詞の日本語訳なんでっしゃろか? あんはん、どない思いますぅ?

ファン向けのバカラック解説本『 SONG BY SONG 』(Serene Dominic著、©️2003) によれば、バカラックがジョン・ベティスと組んだ曲は9曲あるそうです。 ①「 SING FOR THE CHILDREN 」& ②「 THIS IS THE NIGHT 」〜 James Ingram〜 (1993)③「 CAPTIVES OF THE HEART 」〜 Dionne Warwick (1994)④「 WITH A SMILE 」〜 Burt Bacharach and Jane Miller 〜 (1994)⑤「 IS THERE ANYBODY OUT THERE(愛をさがして)」〜 飯島真理 〜 (1995)⑥「 LIKE NO ONE IN THE WORLD 」〜 Johnny Mathis (1996)、 (7)「 A HIGHER PLACE 」〜 James Ingram 〜 (1991, unreleased demo)、 (8)「 I'LL NEVER BE THE SAME 」(off the record)、 (9)「 PRIDE 」(off the record)。なお、(7)〜(9)の3曲は未発表曲です。

Written by Burt Bacharach, John Bettis:③,④,⑥
Written by Burt Bacharach, John Bettis, James Ingram:①,②,(7)
Written by Burt Bacharach, John Bettis, James Ingram, Puff Johnson:⑤,(9)
Written by Burt Bacharach, John Bettis, Wendy Waldman:(8)

聴いたことある①〜⑥は「 信じた私がバカラック 」とは全く別の曲(そもそも共作者の組み合わせが合致するのは③,④,⑥の3曲のみ)。未発表曲の(7),(8),(9)は聴いたことありませんが他の人が共作に加わってますからねぇ…。う〜ん、「 信じた私がバカラック 」は9曲のどれとも違うということになります。結局『 SONG BY SONG 』には載ってない未発表曲を提供したのか? う〜ん、モヤモヤするぅ…。

どなたか真相知ってる方がいらっしゃいましたら教えてくださいませ。

2023/3/21追記
バカラックさんの訃報が日本を駆け巡った2023/2/10、こんなツィートを見かけました。
 ─ モダンチョキチョキズのアルバムで、濱田マリさんが「 バカラックの曲をカヴァー 」していて、発表当時矢倉さんが「『 信じた私がバカラック 』という題名を含めてバート・バカラックが許諾してくれた 」と言っていた… ─
また、同じ2023/2/10に吉村智樹さんも「 信じた私がバカラック 」動画のリンク付きでツィートしてらっしゃいました。 ─ バートバカラック氏がお亡くなりになったそうで……かつて氏の曲に日本語詞をつけるという、おそれ多いにもほどがあるお仕事をさせていただいたこともありました。 合掌 ─
本人から許諾を受ける以上、バカラック作曲なのは間違いないところ。ジョン・ベティスとの共作曲のうち、kellysdadさんがコメントくださった “ 元曲の可能性がある3曲 ” のいずれかの提供を受けた…というのが最も真相に近いと思われます。


※ 日本語詞に登場するバカラック作品:「雨にぬれても」「愛を求めて」「サン・ホセへの道」「何かいいことおまへんやろか子猫はん(何かいいことないか子猫ちゃん)」「エニー・デイ・ナウ」「恋の面影」「リーチ・アウト」「約束(プロミセス・プロミセス)」「サウス・アメリカン・ゲッタウェイ」「小さな願い」「恋よ、さようなら(アイル・ネバ・フォーリン・ラブ・アゲイン)」


【データ】
『 レディメイドのモダン・チョキチョキズ 』 (英題:"Readymade Recordings" Modern Chockychokies)
モダンチョキチョキズ

CD:1997年2月21日リリース
レーベル:KI/OON SONY RECORDS (JP)
番号:KSC2 178〜9

<Disc1> レディメイドのモダン・チョキチョキズ
Produced & Directed by 矢倉邦晃(モダンチョキチョキズのリーダー)
Music Selected & Edited by 小西康陽
(P)1992 Sony Music Entertainment (Japan) Inc.:T-1,2,11、(P)1993 同:T-10,13,14,17、(P)1994 同:T-5,6,7,9,15,16、(P)1997 同:T-3,4,8,12

<Disc2> 8cmCD/ボーナストラック野郎
スタッフ:Vocals 濱田マリ(モダンチョキチョキズ)、チャンキー、犬チャン、バンチャン、かねうら えみ、かねうら まさみ、ハンホンヒー(モダンチョキチョキズ)、早田稔。
T-4.「 信じた私がバカラック 」
  作詞(Lyrics):John Bettis
  日本語訳:吉村智樹
  作曲(Music):Burt Bacharach
  編曲:高浪敬太郎
(P)1997 Sony Music Entertainment (Japan) Inc.

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2022年7月24日 (日)

Thank You Mr. Bacharach/Grant Green Jr. (2022年)

ジャズ・ギタリストのグラント・グリーンJr.によるバカラック集です。(デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. WIVES AND LOVERS  (5:54)
2. ANYONE WHO HAD A HEART  (6:19)
3. WALK ON BY  (4:26)
4. THE LOOK OF LOVE  (4:29)
5. HERE I GO AGAIN  (4:41)
6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  (5:23)

収録時間約31分


米男性ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンJr.によるバカラック集です。一昨日(2022年7月22日)リリースされたばかり!

彼は “キング・オブ・ファンク” として君臨していたギターのグラント・グリーンの息子。簡単なプロフィール等は前々回ご紹介した2作目のアルバム『 Jungle Strut 』(1998)の記事を参照ください。3作目のアルバム『 Introducing G.G. 』(2002) 以降、本作は20年ぶりのリーダー・アルバムになるようです。

─ Guitarist and singer Grant Green Jr. has kept it funky with his Masters of Groove music project (with Bernard Purdie and Rueben Wilson) and his own jazz and original funk band. His newest project, a tribute album to Burt Bacharach, was born from hearing his late father’s (jazz great Grant Green) homage to him in his Blue Note Records days. “He is one of my favorite American composers,” Grant says. “His sense of melody in a song like ‘Alfie’ is beautiful and timeless." ─ (2022/10/8 "Thank you Mr. Bacharach; Grant Green Jr plays Burt Bacharach" と銘打った Live の Introduction より)


本作は、亡き父のブルーノート時代の演奏へのオマージュだとか。実際、お父さんはブルーノートに「 WIVES AND LOVERS 」「 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN 」を吹き込んでます。拙ブログではコンピ盤『 BLUE BACHARACH 』の記事でちょこっと紹介しています。また、Blue Noteではありませんが「 WALK ON BY 」も1971年のライヴ録音が残っています(こちらの記事のオマケ参照方)。

それに、バカラックはJr.お気に入りの作曲家の1人なんですねぇ。

さて本作。詳細クレジットが不明なため正確にはわかりませんが、聴いた限りでは、ギター+ピアノトリオ、トランペット、トロンボーン、サックス、ヴィブラフォン、パーカッション(数人?)、バックコーラス(男1、女1)という編成。取り上げたバカラック・ソングは6曲で、そのうち1曲は超レア曲です。

T-1.「 素晴らしき恋人たち 」は、オリジナルの3拍子を2拍子にしてカリプソっぽいラテンのリズムで疾走感ある演奏。ギター、ピアノ、サックスのアドリヴもノってます。T-2.「 恋するハート 」は、ルーサー・ヴァンドロス版に近いクールな演奏。T-3.「 ウォーク・オン・バイ 」では、なんとJr.歌ってます。ファンキー&ノリノリで! T-4.「 恋のおもかげ 」は、軽いボサノヴァでホーン入りのリッチな演奏。

T-5.「 HERE I GO AGAIN 」はディオンヌ・ワーウィックがオリジナルで、初出時の曲名は「 LOOKING WITH MY EYES 」。1965年10月にシングルA面でリリースし(US#64)同年12月リリースのアルバム『 HERE I AM 』に収録されました。邦題は「 みつめてごらん私の瞳 」。この曲のカヴァーを聴いたのはワタクシこのJr.版が初めてでございます。Jr.はこの曲に強い思い入れでもあったんでしょうか…。演奏自体は割とオリジナルに近い感じです。T-6.「 恋よさようなら 」は、ゆったり目の涼しげなイージーリスニングっぽいものです。
※ Kellysdadさんからのコメントを反映し、初出の曲名を訂正しました。

個人的なレコメンドはT-1,2,5.あたり。特にT-5.はレア曲ですから!


… ちなみに、グラントJr.が2021年12月に行ったバカラック・トリビュートライヴの模様がフルでYouTubeに上がっています。自身のギター+ピアノトリオによるカルテットで、休憩後のStage2ではアルト・サックスも加わったクインテット編成で演奏しています。動画のリンク先とセットリストは次の通り。本アルバムのプレ・リリース的なライヴだったようです。
Grant Green Jr. Celebrates The Music of Burt Bacharach, December 11th 2021
@ The Velvet Note - Alpharetta, GA, United States

<Stage 1>
M1. THE LOOK OF LOVE
M2. WIVES AND LOVERS
M3. ANYONE WHO HAD A HEART
M4. WALK ON BY (Vo. - Grant Green Jr.)
M5. ALFIE
<Stage 2>
M6. I SAY A LITTLE PRAYER
M7. WALK ON BY (Vo. - Grant Green Jr.)
M8. HERE I GO AGAIN
M9. A HOUSE IS NOT A HOME
M10. WIVES AND LOVERS

本作とは異なり、全ての曲が10分以上の長尺、特にM4、M7の「 ウォーク・オン・バイ 」は20分超え。んで、出来は本作よりかなり劣ります…。各曲中間部のアドリヴは冗長だし、演奏にキレ無く聴いててダレます(全てとは言いませんが…)。特に、M8.「 HERE I GO AGAIN(みつめてごらん私の瞳)」はピアノとベースがギターについていけてません。また、本作には未収録の曲が3曲あります。M5.「 アルフィー 」はギターソロで始まりギターソロで終わるのですが、途中のアドリヴ合戦は対照的に熱くてハード。M6.「 小さな願い 」はまぁ可もなく不可もなく。M9.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」はルーサー・ヴァンドロス版ベースの演奏です。…以上、ご参考まで。


【データ】

『 Thank You Mr. Bacharach 』
Grant Green Jr.

MP3:2022/7/22リリース
レーベル:ZMI Records (US)
番号: -

Produced by Martin Kearns & Khari Cabral Simmons
Grant Green Jr. - guitar, vocal (only T-3.)
詳しいクレジットは不明ですが、レーベルの Twitter でフィーチャーされてる方の名前だけ告知されてました。ネットで調べたプロフィールを添えて以下記します。
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Landon Anderson - Drummer, based in Atlanta, GA

Guarav Malhotra - Congas

Tyrone Jackson - Keyboardist

Hardin Butcher - Trumpet

Ayodeji Coker - Saxophonist.

Kevin Leahy - Drums, percussion

Jamie Portee - Producer, engineer, songwriter

Rafael Pereria - ?

Richard Sherrington - British trombonist, keyboardist, moved to the US.

Luke Weathington - Saxophone

Nick Rosen - Freelance bass musician and composer from Sherman Oaks, CA.

Larry Newson - ?

Cleveland P. Jones - American singer, songwriter, producer in R&B, gospel

Brenda Nicole Moorer - American singer, songwriter, actress

Amazonのリンク

2022年7月17日 (日)

【告知】リチャード・マークス、9月発売予定の新アルバムにバカラック爺との共作曲を収録!

リチャード・マークスが9月30日にリリースを予定している新アルバム『 Songwriter 』に、バカラック爺と共作した1曲 …「 ALWAYS 」が収録されていることがわかりました!(amassさんの2022/7/16付け記事参照)

かねてより彼はバカラック爺と曲作りしてることを表明してました。
2017年11月29日、─ From now on, today will forever be that "first day I started writing songs with Burt Bacharach." Such an honor. ─ とツイート。その後、2018年10月11日にも ─ Worked on another song today with the truly great Burt Bacharach. Grateful to spend time with him. ─ とツイートしてましたからねー。

やっと聴く事ができます。記事によればバラード曲のようですが、楽しみですねぇ。

2022/10/2 追記:こちらに本アルバムを聴いた記事をUPしました!

2022年7月10日 (日)

Jungle Strut/Grant Green Jr. (1998年)

米ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンJr.が1998年にリリースしたアルバムです。バカラック作品を1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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所有リイシューCDジャケットの表/裏

全6トラック中、バカラック作品は1トラック

3. WALK ON BY (7:40)


米男性ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンJr.が1998年にリリースしたソウル・ジャズのアルバムです。

─ “キング・オブ・ファンク” として君臨していたギターのグラント・グリーンのジュニアがいよいよ登場! ジャズ、ソウル、ファンクを今風にクロスオーバーさせて心地よくもエキサイティングなサウンドを聴かせてくれる。曲目も魅力的な選曲で、ジーン・アモンズの代表曲「ジャングル・ストラット」をはじめ、ブッカーTの「グリーン・オニオン」を収録。 ─ (CD帯より引用)
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グラント・グリーンJr.は1955年セントルイス生まれ。グラント・グリーンが20歳の時の子供で、本名はGreg(グレッグ)。ニュージャージーを中心に活動してきたそうで、40歳を過ぎてから、1997年に日本のキング・レコードのサブレーベル Paddle Wheel から初リーダー作『 Back To The Groove 』をリリース。その翌年にリリースしたリーダー2作目が本作というワケ。

ハモンドB-3オルガンとサックスが入ったクインテット編成。所謂ソウル・ジャズっすね。取り上げたバカラック作品は、T-3.「 ウォーク・オン・バイ 」。♩≒78というゆったり目のテンポ。2コーラスを普通に演奏した後、ギター、オルガンのアドリヴを2コーラスずつ挟み、普通に1コーラスやってまたギターのアドリヴやってエンディング。全体的にしっとりした演奏。うーん、どう言ったらいいんだろ。ギターのアドリヴがちょっと退屈で…7分40秒が無駄に長く感じてしまいます。もっとファンキーなヤツを期待してたものですから…。

ファンキーなギターを披露してる曲もあるんですけどね(T-1,2.)。

ちなみに、お父さんも「 ウォーク・オン・バイ 」を『 Live At Club Mozambique 』(録音は1971年1月6,7日。アルバム・リリースは2006年)というアルバムに残しています。最初♩≒84だったテンポが中盤では♩≒90にUPしてギター〜サックスがファンキーなアドリヴを聴かせます。お父さんの方が一枚も二枚も上じゃないでしょうか。過去記事(こちら)のオマケで紹介してますので興味ありましたらご覧くださいませ。


【データ】
『 Jungle Strut 』
Grant Green Jr.




CD/LP:1998年1月21日/1998年3月18日リリース (所有CDは、2009年11月18日リイシュー盤、ライナーノーツ:小川隆夫氏)
レーベル:Venus Records (JP) (所有CDも同じ)
番号:TKCV-35037/TKJV-19056 (所有CDは、VHCD-4073)

Produced by Tetsuo Hara and Todd Barkan
Grant Green Jr. - Guitar
Reuben Wilson - B-3 organ (T-1,3,6.)
Michael Torsone - B-3 organ (T-2,4,5.)
Eddie Pazant - alto sax
Bill Foster - bass
Ernest Colon - drums
Recorded at Clinton Studio "A" N.Y. on September 16, 1997.

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Amazonリンク(CD


2022年5月29日 (日)

shooting fish/O.S.T. (1997年)

1997年の英国映画『 シューティング・フィッシュ 』のサントラです。バカラック作品を3曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original CD front/back

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所有CD(日本盤)のジャケット表/ケース裏

全16トラック中、バカラック作品は3トラック

7. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE  〜 Jackie De Shannon 〜  (3:04)
8. I'M A BETTER MAN (FOR HAVING LOVED YOU)  〜 David McAlmont 〜  (2:57)
12. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE  〜 Dionne Warwick 〜  (2:52)


1997年の英国映画『 シューティング・フィッシュ 』のサントラです。

映画は、金が必要な男女3人が目論む一世一代の詐欺計画をライト感覚で描いたブリティッシュ・コメディ。2人の青年孤児(ダン・ファターマン、スチュアート・タウンゼント)が莫大な金額のお金を必要としている女の子(ケイト・ベッキンセイル)を巻き込んで強盗し、何やかんやあって最後はハッピーエンド…というお話。日本では1998年5月に公開されました。公開前にリリースされた本作日本盤CDの帯には   ─ あの「トレインスポッティング」と並ぶセンセーションをUKで巻き起こしている映画 ─   と書かれています。私は翌1999年にレンタルビデオ(もちろんVHS)を借りて1回だけ観ましたが、そんなセンセーションを巻き起こすような映画だったかなぁ…。正直言うと内容よく覚えてないんすよねー。
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サントラは当時のUK若手バンドのコンピレーション的な内容。…なんですが、全16曲のうちなぜか'60年代のバカラック作品が3曲も入ってます。T-7.「 世界は愛を求めている(愛を求めて)」はオリジナルのジャッキー・デシャノン版(1965年、US#7)。T-12.「 サン・ホセへの道 」もオリジナルのディオンヌ・ワーウィック版(1968年、US#10/UK#8)。ただ、T-8「 アイム・ア・ベター・マン 」だけはオリジナルのエンゲルベルト・フンパーディンク版(1969年、US#38/UK#15)ではなくて、英国の男性ヴォーカリスト、デヴィッド・マッカルモントのカヴァー(1997年)です。

日本盤のライナーノーツによれば  ─ …全16曲中、3曲がバート・バカラック/ハル・デヴィッド作品ということから、基本的な作品のカラーをバカラック時代のソフト・ポップスに置いたサントラ盤、と捉えることもできる。バート・バカラックはここ数年来、日本でもちょっとした再評価の対象となっていて、11月下旬には待望の来日公演まで実現してしまうのだけれど、どうやらそうしたブームは今のイギリスにも訪れている気配。去年、私はたまたまロンドンでバート・バカラックのコンサートを観ることができたのだけれど、そこに飛び入りゲストとしてオアシスのノエル・ギャラガーが出てきたりして、「 小さな願い 」「 ウォーク・オン・バイ 」など数多くのスタンダード・ポップスを生んだ大御所バカラックが若い世代のバンド連中にも確実に愛されていることを実感したものだ。この『 シューティング・フィッシュ 』のサントラ盤は、そうした現代の風潮を反映させたものなのだろうか。  ─ (1997年10月17日、解説:岡村詩野さん)

車で何処かに向かうシーンで「 サン・ホセへの道 」が使われたこと以外、曲がどこでどう使われたかなんて覚えてません。もう一度観たいんですけど、中古DVD千円位するし(セコイ💦)、Amazon の Prime Video には無いし…。

んで、ここではT-8.「 アイム・ア・ベター・マン 」にスポットライト💡を当ててみます。デヴィッド・マッカルモントのカヴァーは基本的にエンゲルベルト・フンパーディンクのコピーですが、歌声は本家より若干ソフト。バックの演奏はピアノ、シンセストリングス、ヴィブラフォンだけと本家よりもシンプルに、より歌を聴かせる方向です。彼は自身のYouTubeチャンネルにMVをアップしてまして、そこで次のようにコメントしています。 ─ この映画のためにレコーディングした。プロデュースは Boo Hewerdine(ブー・ヒューワダイン)。ベストなパフォーマンスじゃなかったので、スタジオを出た後は敢えて聴かなかったんだ。 ─ いやいやどうして、なかなかの出来だと思うんですけどねぇ…。

ここからはオマケ。デヴィッド・マッカルモントは他にもバカラック・カヴァーがありまして…。
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デヴィッド・マッカルモントは、2011年リリースのライヴ・アルバム『 Live From Leicester Square 』で「 アイム・ア・ベター・マン 」(5:39) を再度カヴァー(ライヴ自体は2010年)。今度はピアノのみをバックに歌っていますが、歌声はよりエモーショナルに。サントラ盤のリベンジだったのかしらん。

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調べてみると、デヴィッド・マッカルモントは1997年リリースのシングル「 Look At Yourself 」のカップリングで「 アルフィー 」(2:30) をカヴァーしていました。1996年のライヴ録音なんですが、そのライヴ映像をYouTubeで観る事ができます。公式の動画じゃないけど、こそっとリンクしておきますね。(こちら


【データ】
Music From The Motion Picture shooting fish 』(邦題:シューティング・フィッシュ)
O.S.T.

CD:1997年10月13日リリース (所有CDは、1997年12月10日リリースの日本盤、解説:岡村詩野さん)
レーベル:Premier Soundtracks / EMI Premier (所有CDは、東芝EMI)
番号:7243 8 21495 2 1 (所有CDは、TOCP-50393)

(P) 1997 The copyright in this compilation is owned by EMI Records Ltd.
©️ 1997 EMI Records Ltd.

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2022年5月15日 (日)

🎉祝 バカラック爺 94歳❗️(続き)

前回記事のオマケとして、バカラック爺94歳の誕生日を祝う著名な音楽関係者のツィートを拾ってみました〜。

Richard Marx(リチャード・マークス)
いやいや、 ─ 彼とは2016年から知り合って一緒に曲を作っていて、今もそうしています。 ─ …なーんて呑気なこと言ってないで、早くバカラック爺とのコラボ曲を世に出してくださいよ、リチャード・マークスさん。こちとら、首を長ーくして待ってんすからぁ。
それはそうと、大好きなキーボード奏者Greg Phillinganes(グレッグ・フィリンゲインズ)がバカラック爺と同じ誕生日だってこと、今回初めて知りました。マークスさんのお陰っす、謝謝。





Paul Anka(ポール・アンカ)
ポール・アンカは過去バカラック爺と共作して、自身のアルバムにも収録してますもんねー。(こちら



Susanna Hoffs(スザンナ・ホフス)
スザンナ・ホフスは、映画『 オースティン・パワーズ 』3部作の監督ジョイ・ローチ氏の奥方。1作目で「 恋のおもかげ 」を、3作目で「 アルフィー 」を歌っていました。本Tweetの動画には、映画1作目でバカラック爺が登場した場面が挿入されてます。



Stephen Bishop(スティーヴン・ビショップ)
スティーヴン・ビショップは映画『 ミスター・アーサー 』のサントラで1曲歌ってます。バカラックが作曲したインスト曲にキャロル・ベイヤー・セイガーとスティーヴン・ビショップが詞をつけたもので、映画では使われなかったっすけど。

2022年5月12日 (木)

🎉祝 バカラック爺 94歳❗️

今日(2022年5月12日)はバート・バカラック様 94歳の誕生日❗️ ㊗️おめでとうございます👏

バカラック生誕祭的なトリビュートライヴ、どこかでやってないかなぁ…とネットで検索して見つけたのがアイルランドはダブリンのこちら ↓ 。でも、今日じゃなくて9月1日って…まだ先じゃん💦

Dublin, Ireland『 A Celebration of Burt Bacharach at 94 』Sep. 1, 2022

今でも現役のバカラック爺。ダニエル・タシアンさんとのコラボやコステロさんとのコラボ、そういえばリチャード・マークスさんとのコラボの話はその後どうなったの?


まだまだ元気で、そして現役でいてくださいね。


2022年5月 8日 (日)

Love Letters EP/Bryan Ferry (2022年)

ブライアン・フェリーが2022年5月20日にリリースする4曲入りEPです。全てカヴァー曲で、うち1曲がバカラック作品!(デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全4トラック中、バカラック作品は1トラック

1. LOVE LETTERS (2:59)
2. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF (3:48) 
3. FOOLED AROUND AND FELL IN LOVE
4. THE VERY THOUGHT OF YOU



ブライアン・フェリーが2022年5月20日にリリースする4曲入りEPです。

本EPはラヴソングのコレクションで計4曲のカヴァー曲を収録。本EPについてフェリーは次のように語っています。 ─ 様々なジャンルや時代の曲をカヴァーして、レパートリーを増やすのが好きなんだ。自分のスタイルでそれらを解釈する最善の方法を見つけることは、それが何であれ、興味深い挑戦となるんだ。  ─

発売日は当初5月6日とアナウンスされてたんですけど…、2週間遅れたみたいですね。とはいえ既に2曲(T-1,2.)は配信済み且つ公式MVも公開されていて、そのうちT-2.「 恋のとまどい 」がバカラック・カヴァーというワケです。フェリーはこの曲についてこうコメントしています。 ─ 私はいつも[バート・バカラックとハル・デイヴィッド]のよくできた曲の1つをやりたかったのですが、これは彼らの最も有名な曲の1つです。  ─

「 恋のとまどい 」のオリジナル・シンガーはトミー・ハント<テンポ♩≒75〜80>。1962年9月にシングル・リリースしたもののレーベル(Scepter)がプロモーションに力を入れずヒットしませんでした。ヒットしたのは2年後で、ダスティ・スプリングフィールドのカヴァー<♩≒98>が英国で大ヒット(1964年7月:UK#3)。お陰でトミー・ハント版もプチヒット(1964年8月:US#119)します。その後、1966年にディオンヌ・ワーウィックのカヴァー<♩≒88>が米国で中ヒット(1966年10月:US#26)。最近ではザ・ホワイト・ストライプスのカヴァー<♩≒88〜98>が英国でヒット(2003年9月:UK#13)しています。

ブライアン・フェリーの「 恋のとまどい 」は、シンセストリングス主体のゆったり落ち着いたテンポ<♩≒86>。フェリーの低くビブラートのかかった嗄れ声がさらに落ち着いた印象を与えます。しかも、誰もが大なり小なり歌い上げるサビの部分でフェリーは全く歌い上げないんです。この曲のサビで歌い上げないカヴァーは初めてかも。実に渋いカヴァーだと思います。

個人的にブライアン・フェリーといえば「 DON'T STOP THE DANCE 」(1985年8月:UK#21)なんですけど、全くイメージが違いました💦

YouTube - Bryan Ferry ♪(Official)「 I Just Don't Know What To Do With Myself 」



【データ】

『 Love Letters EP 』
Bryan Ferry

EP:2022年5月20日リリース
レーベル:BMG (UK)
番号: -

Recording of ‘Love Letters’ began in Nashville whilst on tour in 2019, with work on the EP continuing in London in 2020. In the US the band included Luke Bullen on drums, Chris Spedding on guitar, Neil Jasonon bass, Fonzi Thornton on backing vocals and Waddy Watchel on guitar. Back in London recording continued with Tom Vanstiphout on guitar, Chloe Smith on keyboards, Tugg (Nathan Curran) on drums, Marina Moore on viola and Lucy Wilkins on violin.

Amazonのリンク


2022年5月 1日 (日)

B Sides & Rarities Vol.2/Rumer (2022年)

英女性シンガーソングライター、ルーマーが2022年4月にリリースした自身のコンピレーションアルバムです。バカラック・カヴァーを3曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全13トラック中、バカラック作品は3トラック

4. ANYONE WHO HAD A HEART (4:00)
6. THE WINDOWS OF THE WORLD (3:52)
11. WIVES AND LOVERS (feat. Rory More) (2:50)


英女性シンガーソングライター、ルーマーが2022年4月にリリースした自身のコンピレーションアルバムです。

ルーマーについては、2010年のデビュー・アルバム『 SEASONS OF MY SOUL 』の記事で簡単に紹介していますのでそちらを参照ください。彼女は2015年に自身のコンピレーション・アルバム『 B Sides & Rarities 』をリリースしており、本作はその第2弾。これまでリリースしたオリジナル・アルバムのボーナス・トラックやアウトテイク、シングルのC/W、映画や企画ものアルバムへの提供曲、ライブ音源などを集めたアルバムです。収録全13曲のうち、T-1.「 ROSES 」とT-8.「 OLD-FASHIONED GIRL 」の2曲のみオリジナル曲で2014年のアルバム『 Into Colour 』時のアウトテイク。他の11曲はカヴァー曲となってます。
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バカラック・カヴァーは3曲。いずれも、2016年にリリースしたバカラック&デイヴィッドのカヴァー集『 THIS GIRL'S IN LOVE  a Bacharach & David Songbook 』のアウトテイクだそうです。

T-4.「 恋するハート 」は、『 THIS GIRL'S IN LOVE  a Bacharach & David Songbook 』リリース当時、実は日本盤にだけボーナス・トラックとして追加収録されていました。本作に収録されているバージョンは、そのボーナス・トラック版から約17秒間あるイントロをカットしたもの。カットしなくてもよかったのに…と思うのは私だけ? …それはともかく、弦楽四重奏主体のバックにルーマーの柔らかくも芯のある歌声がブレンドされ、全体として寒色系のサウンドに仕上がっています。

T-6.「 世界の窓と窓 」は、ピアノとストリングス主体のシンプルなアレンジ。ルーマーはあまり抑揚をつけず淡々と歌っています。だんだんとテンポを落とし、深い味わいを残して曲は終わります。聴いてて心が洗われます。

T-11.「 素晴らしき恋人たち 」は、『 THIS GIRL'S IN LOVE  a Bacharach & David Songbook 』から英国でのみシングル・カットされた「 BALANCE OF NATURE 」のC/Wでした。フィーチャーされているRory More(ロリー・モア)は英国の男性電子オルガン奏者。Lowrey Organ(米国製の電子オルガン)をファンキー寄りに弾いてます。ルーマーはそんなにファンキーには歌ってないんですけどね。ご参考:ロリー・モアがLowrey Organを弾いてる動画(こちら

バカラック・カヴァー以外では、カーリー・サイモン(T-2.)、エルトン・ジョン(T-3.)、ヴァン・モリソン(T-5.)などをカヴァー。個人的にはビージーズのカヴァー(T-9.「 愛はきらめきの中に 」)がレコメンドです。ルーマーの歌声が特に心に沁みました。

YouTube - Rumer ♪(Official)『 B Sides & Rarities Vol. 2 』



【データ】

『 B Sides & Rarities Vol.2 』
Rumer

CD:2022年4月22日リリース
レーベル:Cooking Vinyl (UK)
番号:COOKCD828

Compilation Produced, Mixed, and Mastered by:Rob Shirakbari
Except T-1.「 ROSES 」Mastered by:David Blackman at Hitongrove Mastering Ltd.
T-4.「 ANYONE WHO HAD A HEART 」
  Produced and Arranged by:Rob Shirakbari
  Vocals:Rumer
  Piano, Bass, Wurlizer:Rob Shibakbari
  Drums:Jay Bellerose
  Electric Guitars:Greg Leisz
  The Section Quartet 1st Violin:Eric Gorfain (concertmaster); 2nd Violin:Daphne Chen; Viola:Leah Katz; Cello:Richard Dodd
  Recorded at EMP Studios
  Strings Recorded by:Paul du Gre at Littlebox Recordings
T-6.「 THE WINDOWS OF THE WORLD 」
  Produced, Arranged and Conducted by:Rob Shirakbari
  Vocals:Rumer
  Piano, Keyboards, Bass:Rob Shibakbari
  Drums:Larry Ciancia
  Harp:Stephanie Bennett
  1st Violins:Eric Gorfain (concertmaster), Marisa Kuney
  2nd Violins:Daphne Chen, Amy Wickman
  Violas:Leah Katz, Cariline Buckman
  Cellos:Richard Dodd, John Krivoza
  Strings Recorded by Al Schmitt at Capitol Records, Los Angeles, CA
T-11.「 WIVES AND LOVERS 」
  Produced and Arranged by:Rob Shirakbari
  Vocals:Rumer
  Lowrey Organ:Rory More
  Piano, Bass:Rob Shibakbari
  Drums:Ash Soan
  Electric Guitars:Scrote
This Compilation (P)&©️2022 Rumer under exclusive licence to Cooking Vinyl Limited.

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2022年4月24日 (日)

ALWAYS YOU/James Ingram (1993年)

米国の男性シンガーソングライター、ジェイムス・イングラムが1993年にリリースしたアルバムです。バカラックと共作した新曲を2曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10トラック中、バカラック作品は2トラック

6. THIS IS THE NIGHT (5:06)
9. SING FOR THE CHILDREN (5:08)


米国の男性シンガーソングライター、ジェイムス・イングラムが1993年にリリースしたアルバムです。

ジェイムス・イングラムは1952年2月米オハイオ州アクロン生まれ(2019年1月没、享年66歳)。1970年代からL.A.で活動をスタートし、いくつかのバンドで経験を積んだのちセッション・ボーカリストに。やがてクインシー・ジョーンズに見出され、クインシー作品のフィーチャリング・ヴォーカリストとしてシーンに登場。1983年にソロ歌手としてデビューしました。1985年の「 ウィ・アー・ザ・ワールド 」で大物たちと並んでリードボーカルを務めた他、パティ・オースティンとのデュエット曲(1982年「 ベイビー・カム・トゥ・ミー 」, US#1)やリンダ・ロンシュタットとのデュエット曲(1986年「 サムホエア・アウト・ゼア 」, US#2)などが有名です。ソロシンガーとしては1990年「 アイ・ドント・ハブ・ザ・ハート 」が全米1位になっています。イマイチ印象が薄いのはソロでのヒットが少ないからでしょうかねぇ。

本アルバムはベストアルバムを含め彼自身5枚目のアルバム。全10曲のうち殆どはバラードで、はっきり言って地味。本作からの米国1stシングルT-1.「 サムワン・ライク・ユー 」もバラード曲で、チャートアクションはAC#34, R&B#117でした。ちなみに、アルバム・タイトル曲のT-3.「 オールウェイズ・ユー 」はJ-Waveのオリジナル・クリスマス・ソングとして1992年暮れに日本でのみシングルリリースされてます。
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んで、本題。本作にはジェイムス・イングラムがバカラックおよびジョン・ベティスと共作した曲が2曲入ってます。ジョン・ベティスは作詞家で、バカラックは作曲家。ジェイムス・イングラムは作詞/作曲にどの程度絡んだのでしょうか…。なお、この2曲については本作CDを入手する前にオマケとして取り上げてまして(こちら)、その時の駄文も引用(斜線部分)して紹介します。

T-6.「 ジス・イズ・ザ・ナイト 」は♩≒64のスローな3連バラード曲。ちょっと重たい曲調のラヴソングですが、2コーラス目の後のゴスペル調のパート(Cメロ?)は光が差して高揚感があります。上下を繰り返す変なAメロ、ところどころに見られる変拍子(2拍子の小節を挿入)、短調から長調への転調など、いかにもバカラック。でも、取っつきにくくヒット性はなさそう。う〜ん、曲の出来としてはイマイチか。

T-9.「 シング・フォー・ザ・チルドレン 」は曲名の通り “ 子供たちのために歌おう ” というメッセージソング。♩≒116のミディアム・テンポのポップな曲で、こちらは取っつきやすいです(笑)。特徴的な刻みのリズムと薄めのトランペットが特徴的なイントロ、メロディが美しいAメロ&サビ、転調を繰り返して少しずつ高くなっていくコード進行など、印象に残る佳曲だと思います。バカラックっぽさは希薄ですけどね…。

本作には、ジェイムス・イングラムの実弟フィリップ・イングラムもT-6.他にバックコーラスで参加しています。このフィリップ君、1997年の米映画『 MY BEST FRIEND'S WEDDING 』のエンディング・シーンで「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」を歌ってるんですねー。詳しくはリンク先の “ 追記2 ” を参照ください。


【データ】
『 ALWAYS YOU 』
James Ingram




CD:1993年5月25日リリース (所有CDは、1993年6月25日リリースの日本盤。解説:櫻井隆章氏)
レーベル:Warner Bros. (所有CDは、同じくWarner Bros. / Warner Music Japan)
番号:9 45275-2 (所有CDは、WPCP-5332)

Produced by Keith Thomas (T-1〜4.)
Produced by Thom Bell and James Ingram (T-5〜7,9,10.)
Produced by Maurice White (T-8.)
Executive Producers:James Ingram, Thom Bell and Benny Medina
T-6.「 THIS IS THE NIGHT 」
  Written By Burt Bacharach, James Ingram, John Bettis
  Arranged  and Conducted by Thom Bell
  Keyboards:Thom Bell, Wayne Linsey
  Drums:Ricky Lawson
  Bass:Larry Kempel
  Guitar:Carlos Rios
  Keyboard Programming:Wayne Linsey, James Ingram
  Percussionist(1), Horns(8), Flutes(2), Strings(20), Harp(1)
  Background Vocals:Lori Perry, Darlene Perry, Carolyn Perry, Sharon Perry, Phillip Ingram, Phil Perry, James Ingram
T-9.「 SING FOR THE CHILDREN 」
  Written By Burt Bacharach, James Ingram, John Bettis
  Arranged  and Conducted by Thom Bell
  Keyboards:Thom Bell, Wayne Linsey
  Drums:Ricky Lawson
  Bass:Larry Kempel
  Guitar:Carlos Rios
  Keyboard Programming:Wayne Linsey, James Ingram
  Percussionist(1), Horns(4), Flutes(2), Strings(20), Harp(1)
  Background Vocals:Featuring "The Boys Choir Of Harlem" and "The Aquarian Brothers"

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2022年4月10日 (日)

Measure The Valleys/The Keith Textor Singers (1970年)

キース・テクスターを中心とする混声コーラスグループが1970年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを3曲収録!

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Original LP front cover/back cover

全11トラック中、バカラック作品は3トラック

A2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (3:15)
A5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (3:00)
B3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:59)


キース・テクスターを中心とする混声コーラスグループが1970年にリリースしたアルバムです。

キース・テクスターは1929年7月アイオワ州生まれ。1946年にコーラスグループThe Honeydreamersを結成してツアーやレコーディングを経験。1960年代前半はThe Chorus And Percussion Of Keith Textorというグループ名でRCAに録音を残しており、テレビ番組やCMソングの曲作りにも精を出したようです。1970年に6人組(女性2、男性4)のコーラスグループThe Keith Textor Singersとして発表したのが本作で、マーキュリー傘下の新レーベル A&R からリリースされた最初のアルバムでもありました。


ジャケットを見る限りイージーリスニングっぽいですが、コーラス・アレンジがけっこう凝っていてポップで多幸感のあるコーラス・アルバムといった感じ。ソフトロックの傑作という見方もされているようですね。ビートルズのカヴァーの他、バカラック・カヴァーも3曲あります。
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A2.「 雨にぬれても 」は比較的オーソドックスなアレンジかなぁ。A5.「 世界は愛を求めている 」は3拍子の曲ですが、Aメロが弾む3拍子/Bメロは弾まない3拍子というユニークなアレンジが新鮮です。B3.「 恋よさようなら 」はコーラスワークも分厚いのですが、独特なオブリガートなどコーラス以外のアレンジも凝っています。活発に動き回るベースラインもいい感じ。個人的なレコメンドは「 恋よさようなら 」ですねー。

バカラック・カヴァー以外では、ファンキーなノリのA1.「 MEASURE THE VALLEYS 」、ゆったりしたグルーヴとやたら動き回るベースラインが印象的なB1.「 GAMES PEOPLE PLAY 」あたりがレコメンドです。


【データ】
『 Measure The Valleys 』
The Keith Textor Singers

LP:1970年リリース
レーベル:A&R (US)
番号:ARL-7100-001

Produced by Scott-Textor Productions
Production Supervisor:Victor Sack
Arranged & Conducted by Keith Textor
Singers:Lesley Miller, Juli Christman, Jerry DuaneBill Dean, Gene Steck, Keith Textor
Recorded at A&R Studios, N.Y.C.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2022年4月 3日 (日)

MOON OVER WICHITA / HEARTBREAK STORMS/Burt Bacharach & Daniel Tashian (2022年)

バート・バカラックとダニエル・タシアンが2022年4月1日にリリースしたシングルです。2曲とも新曲!(デジタル配信のみ)

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1. MOON OVER WICHITA (3:13)
2. HEARTBREAK STORMS (3:16)


出ましたねぇ〜。バート・バカラックとダニエル・タシアンが2022年4月1日にリリースしたシングルです。勿論新曲!

2人のコラボといえば、2020年リリースの5曲入りEP『 BLUE UMBRELLA 』、それに2曲追加して日本でリリースした『 BLUE UMBRELLA 【CD】』、更に2曲追加した2021年の『 BLUE UMBRELLA The Complete Recordings 』があります。

今回の2曲も、2人のソングライティング/プロデュースによるミディアムテンポの4拍子曲。殆どノンビブラートでストレートなタシアンの歌声も『 BLUE UMBRELLA 』シリーズと変わりませんが、これまで以上に曲に馴染んでるように感じます。以下簡単ですが曲ごとにコメントします。
※ 尚、各曲名のリンク先は YouTubeのMV です!

T-1.「 MOON OVER WICHITA 」(♩≒78)
とてもウォームでゆったりした聴き心地の良い曲。バカラック味がありつつ柔らかく美しいメロディライン、さりげない転調、シンプルなピアノの四つ刻み、エンディング前のオーボエの音色…。気品があります。バカラック&タシアンの作品の中で1番好きかもしれません。とはいえ、そらで歌おうとしても歌えないんですけどね、メロディ覚えられなくて…。この
1日で20回以上聴いたのに😅。

T-2.「 HEARTBREAK STORMS 」(♩≒96)
バカラック&タシアンの「 BLUE UMBRELLA 」あたりにテンポや曲調が似てる曲。でもメロディはイマイチかなぁ。あまり響かないんですよねぇ、なぜだろう…。まぁ好みの問題ですけどねぇ。

何はともあれ、この調子で2人のセカンドアルバムが世に出ることを願っています。


【データ】
「 MOON OVER WICHITA 」/「 HEARTBREAK STORMS 」
Burt Bacharach & Daniel Tashian

MP3:2022年4月1日リリース
レーベル:Big Yellow Dog Music (US)
番号:860890

Written & Produced by Burt Bacharach & Daniel Tashian
その他詳しいクレジットは不明
℗©️2022: Big Yellow Dog Music, a division of Big Yellow Dog, LLC.

Amazonのリンク

2022年3月21日 (月)

番組の雑感 2022年3月19日 BSフジ『 HIT SONG MAKERS 』CITY POPスペシャル

【番組タイトル】
『 HIT SONG MAKERS 栄光のJ-POP伝説 』

CITY POP SPECIAL 〜 海外が注目するCITY POPの真相に迫る 〜

【放送日時・チャンネル】
2022年  3月19日(土) 20:00~21:55   BSフジ


まさかこの番組(このテーマ)でバカラックの名前が出てくるとは思いませんでした。しかも、あの「 真夜中のドア 〜stay with me 」を作曲した林 哲司さんが影響を受けた音楽家の1人として…。


_/_/_/(以下、林 哲司さんのインタビュー部分を文字起こし)
_/_/_/

ナレーション ─ 1973年、シンガーソングライターとしてデビューした林 哲司。その後は、作曲家・アレンジャーとして数多くのヒット曲を生み出してきた。シティ・ポップとして人気の高い曲に、林の作品は多い。林に最も影響を与えたのは、ラジオから流れてくるヒットチャートの音楽だったという。 ─

林 哲司さん ─ ひとつのラジオから流れる、あのぉ、チャート番組にしてもね、そこに映画音楽があったりとか、インストルメンタルの曲があったりとか、え〜コーラス物があったりとか、もぅさまざまな音楽が渾然一体になってチャートを作ってたんですよ。そういうものは否応無しに日本にいる限り色々なものを吸収してますから、そこで流されたものを全部、その、ビートルズの1曲を聴きたいために、その曲を待ってる間に、色々なものが自分の中に否応無しに入ってくる訳ね。そうすると、やっぱり今振り返ってみると作曲家としてそういうものを、こう、会得できたっていうことが凄く自分の血や肉になってるなっていう感じするんですけど…。 ─

ナレ ─ 例えば1979年に発売された、松原みきの「 真夜中のドア 」。その間奏部分にも、ラジオで聴いた洋楽からの影響があるという。  ─

林さん ─ 「 真夜中のドア 」で、あそこでアドリヴを2人が取ってるんですけど、1人は松原正樹というギタリストと、もう1人はジェイク・コンセプションというサックス奏者なんですけど、あの、当時としては間奏をアドリヴにするっていうケースはそんなに無かったんですね。だから、間奏っていうと誰か…あの勿論アレンジャーなんですけど、アレンジャーがそのメロディを書いて間奏にするっていうのが、従来のその、レコーディングのスタイルだったんですけど、あの、それを、コードネームだけ書いた、そのプレイヤーに委ねるって言うやり方はやっぱりあくまでも海外から得た、その、知識で、それを日本の曲にも反映しようとしてやったことだと思うんですよ。そういうことが、段々段々その当たり前にはなってくるんですけど、そういうことでは、あのぉ他の人にも勿論あるんですけど、意外と、えぇ〜アドリヴで間奏にするっていうところは新しかったんではないかなって気はしますけどね…。 ─

♪ 「 真夜中のドア 〜stay with me 」の間奏部分 ♪

ナレ ─ 同じ1979年の発売、竹内まりやの「 SEPTEMBER 」には、コーラスでデビュー前のEPOが参加しているのだが、そのコーラスの部分にちょっとしたエピソードがあった。 ─

林さん ─ 「 SEPTEMBER 」はですねぇ、やっぱり殆どのことはスコアで書いたんですけど、コーラスに関して言うと、あの、勿論コーラスのパートも書いてあったんですけど、それとは別に、宮田 茂樹さんっていう優秀なレコーディング・プロデューサーがレコード会社にいて、その方が元々はコーラス・グループの出身だったんですよ。で、本当にコーラスに巧みなものを持ってて、EPOさんはその後デビューすることが決まってましたから、勿論EPOさんとの割合は僕わかりませんけど、恐らく宮田 茂樹さんがそのコーラスのパーツってのは外形は作られていたんじゃないかなと。で、僕が作ったところにさらに上乗せしてあのぉ色鮮やかなフレーズとかを加味したんじゃないかなと思うんですね。それをEPOの歌声でコーラスを嵌め込んだら凄くあの歌にマッチングしたっていうことだと思いますね。あのぉ、スコアに書いた以外のことを知らないところでやられたことに関しては普通は怒るんですよ。でもあまりにも素晴らしいものになってたんで無言でした。素晴らしいって言う以外はなかったですね。 ─

♪ 「 SEPTEMBER 」のコーラス部分 ♪

ナレ ─ そして、林自身の作曲法について訊いてみた。  ─

林さん ─ 当時、’70年代に僕が影響を受けた音楽家としてはやっぱり、ヨーロッパだとフランシス・レイで、えーとぉアメリカだとバカラックっていうことで、その作風が全く違うんですね。で、フランシス・レイの場合はひとつのフレーズのモチーフを展開して同じパターンでシンメトリーな感じで繋げてくってところが巧みな人なんですけど、バカラックはどこにメロディが行くか全く予想がつかないタイプなんですよ。で、その両者ともそこにおけるメロディラインの美しさってのは素晴らしくて、コードワークも素晴らしいんですけど、あのぉその中で自分が両方ともその時代の中で両者の特徴を聴けたっていうことは、物凄い自分の中にとってはプラスになってることだと思います。んで、僕の特徴としてはやっぱりクセとして………これは言わないほうがいいかな、あまり(笑)。んー、すぐにわかちゃうからやめます、これは(笑)。  ─

♪ 「 白い恋人たち 」(1968) 〜 フランシス・レイ 〜 ♪
♪ 「 恋よ、さようなら 」(1968) 〜 バート・バカラック 〜 ♪

林さん ─ じゃあ言いますけど、具体的に言うとですねぇ、そのぉさっき言ったフランシス・レイがひとつのモチーフを繋げてひとつのあのパートにして綺麗な曲にするんですよ。そこのクセは僕の中にもあって、シンメトリーってことがすごく、ひとつのフレーズが出て2小節あるフレーズをそのまま継承するっていうクセはあるんですね。それを敢えて壊して、違う流れにしてくっていうあのバカラックの楽曲の構成…パーツの構成っていうのは、フランシス・レイには絶対あり得ない構成で、そこの構成を敢えてそれを壊すところを作るっていう、Dメロで壊すとか、どうなのか…ま、そういうなんか両者の良さっていうものが自分の中に、あのぉ、こう、教えられてることだと思ってるんで、それをなんか意識して、こう、作品作りをするっていうことはありますよね。  ─

_/_/_/(文字起こし、終了)_/_/_/


… この後、Ms.OOJA さんによる「 真夜中のドア 〜stay with me 」のコメント&パフォーマンスと続いたのですが、この流れであればせっかくなのでこの曲を題材にして作曲法を解説して欲しかったですねぇ。いやほんと。

Aメロ、Bメロ、サビ、それぞれ同じパターンでシンメトリーな感じで繋げているのでフランシス・レイの影響は感じられます。でも、構成を敢えて壊すところを作るっていうバカラックの影響は…Bメロからサビに至る1小節半の繋ぎ部分(メロディを2拍伸ばした上にフィルイン小節を追加)がそうなのかなぁ。それくらいしか思い当たりません。まぁ私が鈍感で気づかないだけなのかもしれませんが…(苦笑)💦

「 真夜中のドア 〜stay with me 」の元ネタはキャロル・ベイヤー・セイガーの「 IT’S THE FALLING IN LOVE 」(1978) だけど、作曲はバカラックじゃなくてD.フォスター。キャロル・ベイヤー・セイガーがバカラックと初めて仕事をするのは1980年なので、直接バカラックの影響は受けてない…てな裏話が聞けるのかな、と思った私がバカラックでした。

以下、2023年7月30日追記
最初のお小遣いで買ったレコードが「リバティ・バランスを射った男」だったこと。1982年、アメリカに行って、バカラックさんが作曲した曲を現地でアレンジ、レコーディングしたこと(清野由美さんの「Our Lovely Days」という曲)。バカラックさんのライヴ活動に倣って自分の作品を披露するライブを5年以上前から始めたこと。…そんな話が日刊ゲンダイ2023年5月29日の記事『 林哲司さん語る 今年2月に死去した音楽家バート・バカラックとの不思議な縁 』に載ってました。


2022年3月13日 (日)

Danny Williams/Danny Williams (1968年)

英国の男性ポップ・シンガー、ダニー・ウィリアムズが1968年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを2曲収録!

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全14トラック中、バカラック作品は2トラック

A5. THAT GUY'S IN LOVE (3:18)
B4. LOVE WAS HERE BEFORE THE STARS (3:02)


英国の男性ポップ・シンガー、ダニー・ウィリアムズが1968年にリリースしたアルバムです。

ダニー・ウィリアムズは1942年南アフリカ生まれ(2005年没、享年63歳)。14歳の時タレントコンテストで優勝し、南アフリカ全土を巡るショーに出演。そのショーでロンドンに来た際、EMIのプロデューサーに見出されレコーディング契約を結んでHis Master's Voice(HMV)レーベルより1959年にデビュー。1961年には「 ムーン・リヴァー 」のカヴァーが全英1位になり、歌手以外にも俳優として活動したそうです。

ソフトタッチで細かいビブラートが特徴の歌声は所謂クルーナーっぽいもので、英国のジョニー・マティスと称されたのも頷けます。それ故ビートルズ等ビートグループが台頭してからはジリ貧に…。1967年にDeram(Deccaのサブレーベル)へ移籍した後にリリースしたDeramでの初アルバムが本作です。

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全14曲。A1.「 LOVE ME 」, A4.「 NEVER MY LOVE 」, B2.「 WHOSE LITTLE GIRL ARE YOU 」の3曲は前年リリースした2枚のシングル収録曲。その他、スタンダードナンバーのB3.「 虹の彼方に 」とともにバカラック曲を2曲カヴァーしています。

まず、A4.「 THAT GUY'S IN LOVE 」。1968年にハーブ・アルパートが歌って全米1位になった「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU 」のカヴァーですが、曲名をよく見ると THIS が THAT になっとる!(なお、後半の WITH YOU が欠けてるのは省略してるだけで何の問題もありません) 単なる誤植かと思ったらダニーはしっかり THAT と歌っていて、歌詞の他の部分も2〜3割オリジナルとは違っています。オリジナルは “ あなたに恋してるのはこの男(=僕)” なのに、“ あなたに恋してるのはあの男 ” にしちゃったらそりゃ色々いじらないと辻褄合わなくなるワケで…。作者は Bacharach, David としか書かれてないけど、これっていいのかなぁ。
演奏自体はハーブ・アルパート版ベースのアレンジ。テンポが速く(♩≒100)オケが賑やかな他は特段コメントするようなことはありません。THAT に変えた例は他に聞かないので貴重なカヴァーだとは思いますが。
レコード・コレクターズ 2023年9月号の記事によれば、実はこのダニー版が初出とのこと。う〜ん、謎は深まるばかりなりけり。※1
…その謎が解けました。ダニー・ウィリアムスの「 THAT GUY'S IN LOVE 」がオリジナルでした。ちたりた様のブログを参照くださいませ。歌詞の違いも含めてリサーチしておられます。ちたりた様、教えてくださりありがとうございました! ちなみに、バカラック&デイヴィッドはまず「 THAT GUY'S IN LOVE 」を1967年6月15日に著作権登録。その後ハーブ・アルパート用に「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU 」を1968年4月15日に著作権登録していました。※2

もう1曲のバカラック・カヴァーはB4.「 LOVE WAS HERE BEFORE THE STARS 」。ブライアン・フォーリーが1967年にリリースしたシングル曲がオリジナル。超レア曲で、しかも歌いにくいヘンテコな曲なんですよ。(オリジナルやその辺りの事については拙ブログの過去記事を参照ください)
オリジナルよりもアレンジが小洒落ていて、ダニーの歌唱もこの曲にマッチしてると感じます。どうしてダニーがこの曲を取り上げたのかはよくわかりませんが、好カヴァーだと思います。


どちらもYouTubeで聴けるようです(非公式ですが)。興味がありましたら是非!

※1 2023/8/15 追記
※2 2024/3/20 追記


【データ】
『 Danny Williams 』
Danny Williams

LP:1968年リリース
レーベル:Deram
番号:DML 1017 (MONO盤)

Producers: Dick Rows
Producers' Assistant: Gil King
©️1968, The Decca Records Company Limited, London

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2022年3月 6日 (日)

ミコより愛をこめて/弘田三枝子 (1971年)

弘田三枝子が1971年7月にリリースした全曲洋楽カヴァーのアルバムです。なんと、バカラック・カヴァーを5曲も収録!!

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全12トラック中、バカラック作品は5トラック

A1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:43)
A3. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU (3:56)
A5. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (3:26)
A6. THE APRIL FOOLS (2:37)
B5. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (3:10)


弘田三枝子が1971年7月にリリースした全曲洋楽カヴァーのアルバムで、全て英語詞で歌っています。

弘田三枝子(愛称:ミコ)は1947年2月東京生まれ(2020年7月没、享年73歳)。幼稚園の頃にFENのラジオに魅せられて歌手になることを決意。英語の発音の基礎からスパルタ教育を受け、進駐軍のキャンプでポップスやジャズを歌っていたそう。1961年、14歳の時に東芝音楽工業から「 子供ぢゃないの 」(ヘレン・シャピロのカヴァー)でデビュー。翌1962年には各社競作で出された「 ヴァケイション 」(コニー・フランシスのカヴァー)が20万枚のヒットを記録。以後、カヴァー・ポップスとオリジナル曲を並行してシングル・リリース。1965年7月には東洋人歌手として初めて米国のニューポート・ジャズ・フェスティバルに招待され、トリを務めます。まだ18歳ですよ、すごいですね。60年代中盤からはヒットに恵まれず小規模なジャズライブを中心に活動していたそうですが、1969年10月に「 人形の家 」がオリコン1位となり表舞台にカムバックします。

以上はウィキペディア情報に私見を加えて適当に要約したもの。以降は本アルバムの解説から引用します(文:いソノてルヲ氏。原文ママで)。

─ 週刊サンケイの『 なんでもベスト10 』の日本の流行歌手の巻に、ミコも登場しています。社会評論家の村島健一氏は実力と女っぽさで淡谷のり子を、演歌研究家の添田知道氏は東海林太郎を、作曲家の神津善行氏は音程の良い美空ひばりを、劇作家のキノトール氏は西洋ポピュラーの開拓者として笈田敏夫を夫々トップに指名しました。そこでジャズ評論家のいソノてルヲは、文句なしに弘田三枝子をトップに挙げ、次のようなコメントを述べています。 “ 紅白歌合戦を見て、ことしも乞食節の氾濫に辟易しました。国際的感覚では日本の乞食節は絶対通用しません。ここに挙げた人は、なんらかの形で脱日本可能の歌手達です。とくに弘田三枝子は、ラスベガスでナンシー・ウィルソン級のショーの出来る稀有のタレントで、従来の寡欲が惜しまれます。ことしの大飛躍を期待。流行歌次元のヒットとは関係なく彼女を戦後の最優秀歌手に推薦します、云々。” 多少はオーバーな表現もありますが、この一文こそ現在の彼女の立場を的確にとらえていると自負しています。  ─

乞食節って単語、聞いたことないんですけど…。どういう意味なんでしょう。

─ 従来から歌唱力の点で、彼女の右に出る人はいませんでした。「 人形の家 」「 私が死んだら 」をヒットさせ、見事なカムバックをとげ、1970年はものすごいスケジュールを消化しました。ミコのコンサートには必ず同行してMCをしたので、私も70年は彼女のスケジュールにあわせたような次第です。この年は、ミコにとって終生忘れ得ぬ年のはずです。ジャズが好きです。…と格好よく言う歌手は沢山います。(略)ところがミコはちがいます。好きなのはジャズ、やりたいものもジャズ、尊敬する人はエラ・フィッツジェラルド、カーメン・マックレイ、ナンシー・ウィルソン。スジが一本通っています。もう一つ。すべてジャズにたずさわるものの檜舞台、ニューポート・ジャズ祭りに日本人として最初に登場したのが弘田三枝子なのです。ビリー・テイラー・トリオをバックに歌ったミコの可愛らしい姿は今でも語り草になっています。 ─

本アルバムの概要は以下の通り。

─ そして、その立場をより明確にした音楽、それがこのLPです。バート・バカラックと言う現代の英雄作曲家の作品を5曲もフィーテュアし、これにビートルズ、ブラッド・スウェット・エンド・ティアーズ、ジム・ウェッブなどの世界のポピュラー音楽の趨勢をリードする音楽家の作品を取り上げて唄っています。配するに、伴奏を最高のアンサンブルと、モダン・ジャズできたえたフィーリングの良さで、他の追随をゆるさぬ宮間利之とニュー・ハードが担当、編曲は当代一の売れっ子、前田憲男がペンを取っています。言うなれば、ラスベガスで、“ 日本の生んだ世界の恋人ミエコ・ヒロータ ” が登場したと仮定して、その時プログラムを飾るであろう作品集と思って頂ければけっこうです。  ─

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バカラックの説明にもかなりスペースを割いていました。

─ 先にも書いた通り、このアルバムは今日、世界のポピュラー・ファンから支持されているバカラック、B.S.&T.、ビートルズ、ジム・ウェッブ等の作品がミコによって歌われているわけですが、12曲中5曲が、バート・バカラック作品です。米週刊誌タイムの表紙になると言えば、これは時の人を意味しますが、1970年の音楽家のタイトルで、バカラックの音楽が極めて詳細に報じられました。バカラックは単なる作曲家ではなく、自らのオーケストラを指揮し、ピアノを弾く演奏家であり、カーペンターズやディオンヌ・ワーウィック、B.J.トーマス等のスターを生み出したタレント・スカウトでもあります。まァ現代のスーパーマンの一人でしょう。彼の作品には、現代のポピュラー・ミュージックのあらゆる要素が取入れられており、ジャズをはじめロックやボサノバ、バロック、イージー・リスニング等の魅力が渾然一体となっているのが特色です。その上、名コンビのハル・ディヴットとのコンビで生み出して来た作品が、常に “ 愛 ”(LOVE)を追求してきた点も見逃せません。サミー・カーンはバカラックを “ 一寸見て歯医者の先生のように見えない唯一の美男作曲家 ” と言ったとか。(ハンサムな歯医者の方ゴメンナサイ。これはアメリカでの話) 美女の話を書きはじめたら美男の話になりましたが、何れにしても、美男、美女がこのLPで貴方にすてきな愛をプレゼントします。 ─

タレント・スカウトのくだりは少々?マークがつきますが、当時の日本におけるバカラック像が窺えますねー。

さて、バカラック作品は前述の通り5曲でカヴァー定番曲ばかり。
A1.「 恋よ、さようなら 」: イントロで怪しげな木管楽器のアンサンブルに面食らっちゃいますが本編に入ったら軽快で小洒落たアレンジにウキウキした気分になります。さすがは前田憲男さん。ミコも曲調に合わせてか軽いタッチで歌っています。
A3.「 ディス・ガール 」: 若干キャバレー臭がするアレンジで歌唱も含めてあまり印象に残らないかなぁ。
A5.「 雨にぬれても 」: ゆったりしたスウィング・バラード調にアレンジ。弾むウッド・ベース、フルートのオブリガート、2コーラス目のゴージャスな間奏、ミコの歌唱も軽くフェイクしたりアウトロではスキャットもあっていいですねー。
A6.「 エイプリル・フール(本アルバムの邦題:幸せはパリで)」: オリジナルのディオンヌ版ベースのふんわりしたアレンジで、悪くはないんですがやっつけ仕事的な感じを受けますねぇ。
B5.「 サン・ホセへの道 」: ビッグバンドらしい派手で楽しいアレンジが最高です。ワウミュートの使い方やトロンボーンのアドリヴソロなんかも効果的です。歌ってるミコも楽しそう。

レコメンドはA1,A5,B5。クレジットを確認したら全12曲のうち2曲だけ(A3とA6)前田憲男さん以外の方が編曲してました。アレンジがイマイチだったのはナルホドそういうことかと納得した次第。

弘田三枝子さんは曲調に合わせて余裕で歌い分けてます。英語の発音も全く違和感ないし。バックの演奏もノリが良くメリハリが効いてます。バカラック・カヴァー以外では、パワフルな歌唱のA4.「 スピニング・ホイール 」やB1.「 ユーヴ・メイド・ミー・ソー・ベリー・ハッピー 」がレコメンドです。

ここからはオマケ。MP3で所有している弘田三枝子のバカラック・カヴァー1曲をご紹介。
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弘田三枝子は1965年の洋楽カヴァー・アルバム『 ヒット・キット・ミコ 第1集 』で「 (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(愛のウエイト・リフティング)」(2:55) をカヴァーしています。英語詞のまま歌ってるんですが、ヒットしたサンディ・ショウ版のほぼコピーなので有りがたみはあまり無いかもですねぇ。


【データ】
『 ミコより愛をこめて 』(英題:FROM MIKO WITH LOVE)
弘田三枝子(HIROTA Mieko)

LP:1971年7月25日リリース (解説:いソノてルヲ)
レーベル:日本コロムビア
番号:JDX-52

Arranged by 前田憲男(A1,A2,A4,A5,B1〜B6)、山木幸三郎(A3,A6)
Vocal - 弘田三枝子
演奏 - 宮間利之とニュー・ハード
発売元:日本コロムビア
定価:¥1,800

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2022年2月20日 (日)

イージーリスニング物バカラック集 残念なヤツ2連発!

所有しているイージーリスニング物バカラック集から、残念なヤツご紹介2連発!

(画像は全てクリックすると大きくなります)

数年前、1970年前後の “イージーリスニング物バカラック集” 探しに没頭していた時期がありました。Discogsで検索して、ジャケットのセンス、レア曲が入ってるか、できれば歌入り…の観点で絞り込み、何枚か中古LPを購入! その殆どは既に紹介済みですが、残念なヤツはお蔵入りに…。今回蔵から引っ張り出してご紹介するのはそんな残念なイージーリスニング物バカラック集でございます。

手間を省くため曲名リストは割愛します。確認したい方はジャケ写の画像をご覧ください(クリックすると拡大します)。Amazonのリンクも省きます。


『 SOUNDS LIKE BACHARACH 』
The Emistudio Orchestra
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全14トラック(全14曲)、収録時間約42分
LP:1972年リリース
レーベル:Regal / EMI (New Zealand)
番号:SREG 30153

ジャケットにはどぉーんとバカラックのお顔が…。写真使用許可を貰ってんだろうから中身はマトモだろ…と信じた私がバカラック、トホホ。
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本家のオーストラリア盤は Performed by The Emistudio Orchestra とクレジットされてるのに 、私が所有しているニュージーランド盤にはそんな表記一切無し…。要はそんなオケ、存在しないってことですよね。イージーリスニングあるあるです(笑)。
演奏は、もろバカラック・バージョンのコピー。テンポやキーが違ったり使ってる楽器が少し違ってたりはするものの、アルバム・タイトルの『 SOUNDS LIKE BACHARACH 』そのまんまですわ。アレンジの元ネタは、A4,A5,B2,B3.=『 HIT MAKER! 』、A2,A6,B1,B5.=『 Reach Out 』、A1,A7,B4,B6.=『 Make It Easy On Yourself 』、B7.=『 Butch Cassidy And The Sundance Kid 』。唯一、A3.「 遙かなる影 」だけはバカラック・バージョンではなくてカーペンターズ版ベースのインストです。

クォリティは本家の7〜8掛けくらい。…だったら本家聴くよネ。


『 play the best of Bacharach 』
STRINGS FOR PLEASURE
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全12トラック(全12曲)、収録時間約38分
LP:1970年リリース
レーベル:Music For Pleasure (UK)
番号:MFP 1431

ジャケットに惑わされてついポチッとしちゃったヤツです。
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ストリングスを中心としたインストで、バックコーラスもありません。レア曲も無くてバカラック・カヴァー定番曲ばかり。アレンジはヒットしたバージョンをベースにしたものでどこかで聴いた断片を集めた感じ。例えば、A2.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」やA4.「 タルサから24時間 」はバカラックの『 HIT MAKER! 』をベースとしたアレンジだったりします。そんな中で、A3.「 恋のおもかげ 」やB6.「 素晴らしき恋人たち 」はリズムやベースの動きにオリジナリティがあってイイんですけど。
演奏は全般的にキレがなくてモサッとしてます。エレキベースの低い弦のチューニングが合ってないし…やっつけ仕事感がありあり。残念だなぁ。

ちなみに、ジャケットは2種類あるみたいで、私が所有してるのはマイナーな方。
メジャーなジャケットはこちら ↓ 
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自分の選択は間違ってなかった!(笑)


2022年2月 6日 (日)

プロミセス、プロミセス/宝塚歌劇宙組公演 (2022年)

宝塚歌劇宙組公演『 ブロードウェイ・ミュージカル プロミセス、プロミセス 』のライヴCDです!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Disc 1
1. 【ACT I】S1 エレベーター近くの一般オフィス(総合生命保険会社の経理部)
2. HALF AS BIG AS LIFE (いつかきっと)   〜 チャック 〜
3. S2 バー「グレープス・オブ・ロス」-THE GRAPES OF ROTH (グレープス・オブ・ロス)  〜 クラブシンガー:春乃、朝木、美星 〜
4. S3 ブラウンストーン・アパートメント-UPSTAIRS (僕の小さな城)/UPSTAIRS<Reprise> (僕の小さな城)  〜 チャック 〜
5. S4 オフィス/社内診療所の待合室
6. YOU'LL THINK OF SOMEONE (君を待つひと)  〜 チャック、フラン 〜
7. S5 シェルドレイクのオフィス/一般オフィス
8. IT'S OUR LITTLE SECRET (二人の小さな秘密)  〜 チャック、シェルドレイク 〜
9. S6 一般オフィス
10. I SAY A LITTLE PRAYER (あなたを想えば)  〜 フランほかOLたち 〜
11. SHE LIKES BASKETBALL (彼女はバスケットボールが好き)  〜 チャック 〜
12. S7 中華料理店「ラム・ディン」/マディソン・スクエア・ガーデンの外
13. KNOWING WHEN TO LEAVE (引き返すとき)  〜 フラン 〜
14. S8 役員専用レストラン
15. WHERE CAN YOU TAKE A GIRL? (どこへ彼女を連れて行く?)/WHERE CAN YOU TAKE A GIRL?<Reprise> (どこへ彼女を連れて行く?)  〜 カークビー、ヴァンダーホフ、ドービッチ、アイクルバーガー 〜
16. S9 シェルドレイクのオフィス
17. WHANTING THINGS (欲しいものは)  〜 シェルドレイク 〜
18. S10 エレベーター・ホール
19. S11 クリスマス・パーティー-TURKEY LURKEY TIME (ターキー・ラッキー・タイム)  〜 ミス・ポランスキー:春乃、ミス・デラホーヤ:朝木、ミス・ウォン:美星ほか社員たち 〜

Disc 2
1. 【ACT II】S1 怪しげな八番街のバー
2. A FACT CAN BE A BEAUTIFUL THING (今を生きて)/A FACT CAN BE A BEAUTIFUL THING<Playoff> (今を生きて)  〜 チャック、マージほかユージーン:真名瀬、ウェイター:嵐之、客たち 〜
3. S2 ブラウンストーン・アパートメント/シェルドレイクの自宅
4. WHOEVER YOU ARE, I LOVE YOU (いつまでも、アイ・ラブ・ユー)  〜 フラン 〜
5. CHRISTMAS DAY (クリスマス・デイ)  〜 チャック、ヘレン:彩妃、フローレンス:美星、トミー:風羽、オスカー:花咲 〜
6. A YOUNG PRETTY GIRL LIKE YOU (笑顔の秘訣)  〜 チャック、ドレファス 〜
7. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (恋よ、さよなら)  〜 チャック、フラン 〜
8. WHERE CAN YOU TAKE A GIRL? (どこへ彼女を連れていく?)  〜 ドービッチほか重役たち 〜
9. S3 シェルドレイクのオフィス
10. S4 中華料理店「ラム・ディン」
11. PROMISES, PROMISES (プロミセス、プロミセス)  〜 チャック 〜
12. S5 ブラウンストーン・アパートメント
13. S6 カーテンコール-TURKEY LURKEY TIME (ターキー・ラーキー・タイム)  〜 全員 〜

収録時間(Disc 1/2) 約73分/約61分


宝塚歌劇宙組公演『 ブロードウェイ・ミュージカル プロミセス、プロミセス 』のライヴCDです!
<公演日>
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ:2021年11月13日(土)〜11月18日(木)
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場):2021年11月30日(火)〜12月7日(火)

昨年(2021年)7月頃にネットで公演情報を知りましたがコロナ禍ということもあり遠征は自重。公演期間中は宝塚ファン(という呼び方で良いですか? ヅカファン? ヅカオタ?)の皆さんのツィートやブログを連日チェックしてましたが、公演はとっても好評だったようで “ やっぱり観たかったな ” とちょっと後悔したのは事実。でもこうしてライヴCDがリリースされると知り楽しみにしておりました。
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CDには開演からカーテンコールまでの2時間14分を余すところなく収録。これまでミュージカル『 PROMISES, PROMISES 』関連でリリースされたアルバムはスタジオ録音ばかりでライヴ物はありませんでしたから…(記事の最後にアルバム一覧を掲載してます)。しかも台詞が日本語なので英語がプアな私でも理解できるし、本当に貴重なアルバムだと思います。

基本的には2010年ブロードウェイ再演版をベースにしていますが、「 A HOUSE IS NOT A HOME(ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム)」という曲は使っていません。元々ブロードウェイ初演版にはなくて2010年版で加えた既成曲2曲のうちの1曲なので、カットしてもストーリー的に困らなかったんでしょう。その他、若干リプライズ曲が違ったりしてます。
また、同様に2010年ブロードウェイ再演版をベースにした2012年日本上演版と比較して、曲名邦題が同じなのは3曲だけなのも面白いところです。原曲は一緒でも訳詞は訳者によってまた演出上からも言葉のチョイスや言い回しなど結構変わるから、曲名邦題も違ってくるんでしょう。
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主役のひとり、チャック役の芹香斗亜さんはビジュアルだけだとイメージ違うかなと感じていたのですが、頼りなさげで優柔不断なキャラをうまく演じておられます。歌う曲数は多いしあの膨大な台詞量をこなした上でですからね…見事です! フラン役の天彩峰里さん、シェルドレイク役の和希そらさん、マージ役の留依蒔世さん、ドレファス医師役の輝月ゆうまさん、それからチョイ悪親父4人衆も、皆さんキャラが立っています。そのうえ歌うのが難しい『 プロミセス、プロミセス 』の楽曲を破綻なく歌い切ってますから、ストーリーに集中して(歌に不安を感じることなく)心から楽しめます。元々男性が歌うパートで音域の関係からか所々でオクターヴ低く(或いは転調)している部分が見受けられますが、うまくアレンジして対応してると思います。


最後にオマケ。日本での『 PROMISES, PROMISES 』上演リストを載せておきます(足りない点あるかと思いますが大局は合ってるはず)。宝塚歌劇団は5回目の上演ってことになるようです。
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◆◆ Promises, Promises アルバム一覧 ◆◆ リンク先は拙ブログでの紹介記事
1968 デモ録音集
1968 Original Broadway Cast Recording
1969 Original London Cast Recording
1969 Aimi Macdonald and Ronnie Carroll (London Studio Cast)
1970 SPAAK - DORELLI (Italian Stage Cast)
2002 Italian Stage Cast
2010 New Broadway Cast Recording
2022 宝塚歌劇宙組公演 ← 本作


【データ】
ブロードウェイ・ミュージカル  プロミセス、プロミセス 』(原題:PROMISES, PROMISES)
宝塚歌劇宙組公演

CD:2022年2月5日リリース
レーベル:宝塚クリエイティブアーツ(TAKARAZUKA Creative Arts Co.,Ltd.)
番号:TCAC-651〜652

『 PROMISES, PROMISES 』
Book by Neil Simon
Based on the Screenplay THE APARTMENT by Billy Wilder and I.A.L. Diamond
Music by Burt Bacharach Lyrics by Hal David
Produced for the Broadway Stage by David Merrick
PROMISES, PROMISES is presented by arrangement with Concord Theatricals on behalf of Tams-Witmark LLC.

MAIN CAST
チャック・バクスター<総合保険会社の経理部の社員>:芹香 斗亜(SERIKA Toa)
フラン・クーベリック<社員食堂に勤めるOL>:天彩 峰里(AMAIRO Mineri)
J・D・シェルドレイク<人事部長>:和希 そら(KAZUKI Sora)
ドクター・ドレファス<チャックのアパートの隣人。医者>:輝月 ゆうま(KIZUKI Yuma)
マイク・カークビー<宣伝部重役>:松風 輝(MATSUKAZE Akira)
ミス・オルソン<シェルドレイクの秘書>:瀬戸花 まり(SETOHANA Mari)
ジェシー・ヴァンダーホフ<クレーム調査部の部長>:紫藤 りゅう(SHIDO Ryu)
ドクター<社内診療所のドクター>:秋奈 るい(AKINA Rui)
カール・クーベリック<フランの兄>/マージ・マクドゥーガル<クリスマスイブをチャックと共に過ごす女>:留依 蒔世(RUI Makise)
エッド・ドービッチ<住宅ローン融資部門の重役>:若翔 りつ(WAKATO Ritsu)
アイクルバーガー<研究部の重役>:澄風 なぎ(SUMIKAZE Nagi)
など、演じたのは宙組メンバー+専科合わせて28名

STAFF
翻訳・演出/原田 諒
オリジナル翻訳/伊藤 美代子
音楽監督・編曲/玉麻 尚一
振付/麻咲 梨乃
装置/松井 るみ
衣装/有村 淳
照明/勝柴 次朗
音響/大坪 正仁
小道具/市川 ふみ
歌唱指導/西野 誠
演出助手/中村 真央
舞台進行/阪田 健嗣
舞台美術制作/株式会社宝塚舞台
録音演奏/宝塚ニューサウンズ
制作/阿部 望
制作補/小坂 裕二
制作・著作/宝塚歌劇団
主催/株式会社梅田芸術劇場

2021年11月17日(水)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて収録

リンク先消滅したためリンク貼り直し(2024/1/14)
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2022年1月30日 (日)

ALFIE/Everything But The Girl (1986年)

英国の男女デュオ、エヴリシング・バット・ザ・ガールが1986年にリリースしたシングル。B面でバカラックの「 アルフィー 」をカヴァーしています。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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B面

B. ALFIE (2:49)


英国の男女デュオ、エヴリシング・バット・ザ・ガール(以降EBTG)が1986年にリリースしたシングル。B面でバカラックの「 アルフィー 」をカヴァーしています。

─ それぞれチェリー・レッド・レコードから作品を発表しハル大学に在学していたマリン・ガールズのトレイシー・ソーンと、ベン・ワットの2人が、レーベル企画によって1982年に結成されたユニット。ネオ・アコースティックの代表的なバンドとして知られる。  ─(Wikiより)

私は、この頃のEBTGも含めてネオ・アコースティックとかこの辺りのジャンルは全く無知なのでこれ以上は触れません。

A面曲の「 DON'T LEAVE ME BEHIND 」はバンド+オケによるスウィング調のポップな曲で、1986年リリースの3rdアルバム『 Baby, The Stars Shine Bright 』にも収録されています。
…が、B面の「 アルフィー 」はシングルオンリー。後年3rdアルバムがCDリイシュー化された際にボーナストラックとして収められ、バカラック物コンピ集(日本編集の『 バート・バカラック・ソングブック/ワーナー・エディション 』、2013年リリース)にも収録されていますが、いずれも未所有のため7"シングルを中古で手に入れた次第。

その「 アルフィー 」はピアノ、ギター、オルガン、ドラムスによるシンプルなアレンジ。気を衒ったところのないカヴァーなんですが、トレイシー・ソーンのどこまでもノン・ヴィブラートな歌声はけっこう新鮮かも。決してうまいわけじゃないし単調と言えば単調なんですが、何か放っておけないというか…しばらくするとまた聴きたくなる歌声です。


【データ】
DON'T LEAVE ME BEHIND/ALFIE 」
Everything But The Girl

7"Single:1986年リリース
レーベル:Blanco Y Negro (UK) / (P)©️WEA Records
番号:NEG 23

B.「 ALFIE 」
  Produced by Ben Watt
  Engineered by Ian Grimble
  Tracey Thorn - Vocal
  他のミュージシャンは不明

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し