BACK TO BACHARACH/Steve Tyrell (2008年)
50歳台でジャズ歌手デビューしたスティーヴ・タイレル7枚目のアルバム。 想いのこもったバカラック・カヴァー・アルバムです!
(画像は全てクリックすると大きくなります。PC以外はうまくいきませんが^^;)
1. WALK ON BY
2. THE LOOK OF LOVE
3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
4. ONE LESS BELL TO ANSWER
5. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
6. REACH OUT FOR ME
7. I SAY A LITTLE PRAYER
8. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
9. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
10. DON'T MAKE ME OVER
11. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
12. A HOUSE IS NOT A HOME
13. ALFIE
14. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
15. ANY DAY NOW
16. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
T-3. featuring Herb Alpert & Burt Bacharach
T-5. featuring Burt Bacharach, Martina Mcbride, Rod Stewart,
James Taylor and Dionne Warwick
T-7. duet with Patti Austin
T-8. featuring Burt Bacharach
T-10. duet with Patti Austin
収録時間約62分
50歳台でジャズ歌手デビューしたスティーヴ・タイレル7枚目のアルバム。想いのこもったバカラック・カヴァー・アルバムです。
タイレルの経歴はちょっと変わっています。彼は1944年生まれ。18歳のとき(1962~63年ということになりますね)セプターレコードのA&Rの職につきます。A&Rとは、Artist and Repertoire(アーティスト・アンド・レパートリー)の略で、アーティストの発掘・契約・育成とそのアーティストに合った楽曲の発掘・契約・制作を担当するお仕事です。
セプターレコードといえば、ディオンヌ・ワーウィックやザ・シレルズなどが所属しており、タイレルは彼女らのヒット曲リリースにかかわるようになります。1966年には、前回記事でご紹介したB. J. トーマスをセプターに引き入れたりもします。
その後、1991年の映画 『花嫁のパパ』 の音楽プロデュースを担当した際、映画で使おうとしたスタンダード曲の仮歌を彼が歌って制作陣の反応をみようとしたところ、監督や俳優に気に入られて結局自分が映画に出てその歌を歌うことになり、それがソロ・シンガーとしてデビューするきっかけになったんだとか。そうした経緯のもと、1999年に初のアルバム 『A New Standard』 をリリースします。人生何が起きるか分りませんね~。
セプターのA&R時代、担当したディオンヌにせよB. J. トーマスにせよバカラック作品の歌い手だったわけで、バカラックとはよくスタジオで顔を合わせたようです。本アルバムのライナーに彼はこう書いています。
─ I have been asked many times "Where did you go to college?" I always answer with the same response. "I'm a graguate of Bacharach University!" ─
─ よく「どこのカレッジを出たの?」って訊かれるんだけど、いつも「バカラック大学の卒業生なんだ」って答えてるよ。 ─
ライナーに収められた写真もそれを物語ってるようですね~。
左 My office Scepter Records w/ Florence Greenberg (セプターの社長)
左中 BJ Thomas and Hal David
右中 Burt and Myself Recording Studio
右 Burt and Myself A&R Studios
左 BJ Thomas and Myself A&R Studios
中 Myself, Hal, Dionne and Burt listening to a playback A&R Studios
右 Myself and Dionne at a video shoot
本アルバムは、T-1~14. のバカラック&デヴィッド作品に加えて、日本向けボーナストラックとして作詞がハル・デヴィッドではないT-15~16. の2曲を加えた16曲が収められています。しかし、T-3. 「ディス・ガイ」 とT-8. 「アイ・ジャスト・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ・ウィズ・マイセルフ」 は、2003年にリリースした4作目のアルバム 『This Guy's In Love』 に収録したもので、バカラックもゲスト参加してピアノを奏でています。(T-3.は本アルバム収録に当たり、ハーブ・アルパートのトラペット&ハミングを加えていますが)
実は、4作目の制作時、既にバカラック・カヴァー集のプロジェクトが進んでいたのですが、それまでタイレルのリーダー作にコ・プロデューサーとしてクレジットされていた愛妻のステファニー・タイレルが亡くなってしまったことで、それが中断したんだそうです。その後、タイレルはこのプロジェクトに着手する気がおきなかったけれど、ようやく6年越しで完成をみたのがこのアルバムなんです。いろんな想いがこもったアルバムだからか、邦題も 『バカラックへの想い』 となっています。
聴いてみると、タイレルはちょっとしゃがれた声でリラックスして歌っています。バックはバンド+ストリングスオケなんですが、バカラックがアレンジしているT-3, 4, and 8などはいかにもバカラックという雰囲気。一方、それ以外の曲はもっとコンテンポラリー&クールな感じに仕上がっています。ですから、アルバムとしての統一感には欠けるきらいがあります。そこがちょっと残念。尚、バカラックとアルパート以外にも、マルティナ・マクブライド、ロッド・ステュワート、ジェームス・テイラー、ディオンヌ・ワーウィック、パティ・オースティンがゲスト参加しています。T-5. では、フューチャーされた歌手の皆さんが代わりばんこに歌っています(^^)。
_/_/_/_/ 以下追記 _/_/_/_/
こちらのアルバムが、前述した2003年のアルバム 『This Guy's In Love』 でございます。
レーベル:Columbia/Sony
番号:CK 89238
タイレル自身のプロデュースで、2002年に亡くなったお母さんに捧げたアルバムだとライナーに書いてあります。
全14曲中、バカラック作品はT-4.「 ディス・ガイ 」 と T-10. 「アイ・ジャスト・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ・ウィズ・マイセルフ」 の2曲。これらバカラック・カヴァー曲以外も、しゃがれた声で渋くスタンダード曲を歌っています。(追 2014/10/18)
【データ】
『BACK TO BACHARACH』 (邦題:バカラックへの想い)
Steve Tyrell
CD:2008年5月23日リリース (所有CDは、国内盤で同日リリース)
レーベル:KOCH/New Design Records (所有CDは、ビクターエンタテインメント)
番号:KOC-CD-5070 (所有CDは、VICJ-61560)
Produced and Arranged by Steve Tyrell and Bob Mann
Coproduced by Jon Allen
T-3. and T-8.
Produced by Burt Bacharach and Steve Tyrell
Arranged by Burt Bacharach
T-4.
Arrangement by Burt Bacharach
T-5.
Arranged by Bob Mann, Steve Tyrell and Burt Bacharach
T-7.
Additional Keyboards:Burt Bacharach
T-12.
Arrangement by Allan Broadbent
T-14.
Introduction and ending written by Burt Bacharach
リンク先消滅したためリンク貼り直し(2024/2/18)
Amazonリンク(2018年 Expanded Edition)
« THE LIVING ROOM SESSIONS/B. J. Thomas (2013年) | トップページ | street of dreams/Patti Austin (1999年) »
「カヴァーアルバム」カテゴリの記事
- Promises, Prayers, And Raindrops: Allyson Briggs Sings Burt Bacharach/Fleur Seule (2024年)(2024.10.06)
- Burt Bacharach Re (Imagined)/The Anya Audette (2024年)(2024.09.22)
- The Sound Of Bacharach/Messias (1969年)(2024.08.25)
- Sings & Loves Burt Bacharach/Stephy Haik (2024年)(2024.08.04)
- エレクトーン・ファンタスティック バート・バカラックの魅力/沖浩一トリオ(1970年)(2024.03.10)
コメント
« THE LIVING ROOM SESSIONS/B. J. Thomas (2013年) | トップページ | street of dreams/Patti Austin (1999年) »
私もしつこく あるでおさんへのブログにコメントを・・・。
バカラックさんがプロデュースされているってだけでも 値打ち物だと思いますし、バカラックさんのスティーヴ・タイレルさんへの思い入れが伝わってきますねぇ。
いい情報をありがとうございます。
投稿: まったり | 2013年11月 3日 (日) 18時35分
まったりさん、おはようございます~! 私、しつこいですか?(笑)
本記事では触れませんでしたが、『 魔法の音楽 ~アメリカン・ポップス黄金時代とその舞台裏~ 』(ケン・エマーソン 著、山下理恵子 訳、シンコー・ミュージック・エンターテインメント 2012/1/11発行)という本に、タイレルさんが(セプターA&R時代のことを振り返って)バカラックさんのレコーディング時に妥協しなかった様子をコメントしているくだりがあります。他にも数カ所バカラックさんについてのコメントがありますです。
投稿: あるでお | 2013年11月 4日 (月) 06時07分