SPACED OUT/Enoch Light & The Light Brigade (1969年)
パーカッション奏者、また電子音楽のパイオニアとしても知られるイノック・ライトの1969年の余りにも有名なラウンジグルーヴの名作。バカラック・カヴァーを4曲収録!
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Original LP front cover/back cover
所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏
全12トラック中、バカラック作品は4トラック
1. BOND STREET (2:38)
2. LOVER'S CONCERTO (2:49)
3. KNOWING WHEN TO LEAVE (2:48)
4. MY SILENT SONG (2:52)
5. WALK ON BY (3:02)
6. ELEANOR RIGBY (2:42)
7. A LITTLE FUGUE FOR YOU AND ME (2:48)
8. NORWEGIAN WOOD (2:48)
9. OB-LA-DI, OB-LA-DA (2:54)
10. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (2:40)
11. PETITE PAULETTE (2:44)
12. GET BACK (3:40)
パーカッション奏者、また電子音楽のパイオニアとしても知られるイノック・ライトの1969年の余りにも有名なラウンジグルーヴの名作。
イノック・ライトとは… ─ 1907年8月18日米国オハイオ生まれ。イージー・リスニング分野で活躍したプロデューサー。30年代にバンドを率いてラジオなどに出演。40、50年代には多くのポピュラー・バラードを生む。60年代後半ザ・チャールストン・シティ・オールスターズのヒット・シリーズをプロデュース。再び注目を浴びると50年代に発表の『プロボケーション・パーカッション』などが米国のチャートでトップ10入りをした。78年他界。 ─ (CDジャーナルより)
本作はいろんな顔を持つイノック・ライトが1969年(62歳頃)にリリースしたアルバムです。
─ “ムーグ”、“イージーリスニング”の巨匠イノック・ライトが'70年に放った、POPでキッチュ、めくるめくソフト・ロック、ムーグ・ワールド‼︎ '60年代を通して最大のヒットメーカーでありサウンド・クリエイターであるイノック・ライトが、ビートルズ、バッハ、そしてあのバカラックの名曲を、彼のレーベル “Project 3” の独特のクリアーなサウンドとムーグ・シンセサイザーで料理したナイス・アルバム。アポロより早く月に到着してしまった男イノック・ライトと宇宙に飛び出せ‼︎ ─ (1994年リイシュー日本盤LPの帯より)
“'70年に放った”となってるのは最初の日本盤リリースが1970年だったからか。それにしても、同じ年(1969年)に史上初めて人類による月面着陸に成功したアポロ11号をライバル?に見立てて“アポロより早く月に到着したイノック・ライト”って…😅。なんのこっちゃ??
ジャケット表の右にニョロニョロフォントで書かれているのは Exploratory trips through the music of Bach Bacharach The Beatles integrating the Moog the guitar scene electric harpsichords flugelhorns etc...(モーグ、ギターシーン、エレクトリックハープシコード、フリューゲルホルンなどを統合した、バッハ・バカラック・ビートルズの音楽を巡る探検旅行)。むむむ、音楽の探検旅行と月面着陸を同列にしてるってことか? だったら数日前にSLIMがやっと月面着陸した日本はボロ負けやん(無人やし)、やっぱ訳わからん…😅。
本作のバカラック・カヴァー4曲はかなり前からMP3で聴いてたのですが、ごく最近リイシューCDを手に入れたので今回取り上げた次第。でもこのリイシューCD、曲名しか載ってない雑なパッケージの代物でして。よく見るとジャケット表のアートワークも左側&下側が切れてるし…。それに極低レベルですがチリチリノイズも入ってるし(要は盤起こしってヤツですね)、くっそ〜😡。
気を取り直して中身をご紹介しましょう。全12曲の内訳はバッハ(T-2,4,7,11)とビートルズ(T-6,8,9,12)とバカラック(T-1,3,5,10)が仲良く4曲ずつ。因みにバッハの元曲はT-2.「 Minuet in G Major(メヌエット ト長調)」、T-4.「 Air for the G string(G線上のアリア)」T-7.「 Little g minor Fugue(小フーガ ト短調)」、T-11.「 Bourrée No.1 」。T-11以外は聴けばわかる曲ばかりです。
ビッグバンド系のオケとモーグ・シンセの合同演奏で、けっこう男女コーラスも活躍します。でもメインはオケでモーグは時々メロディやオブリガートを奏でる程度。全くモーグが登場しない曲もありますしね。そんなことよりも、各曲の多彩で凝ったノリの良いアレンジに注目して聴くのが本作を楽しむ肝。
まずはバカラック・カヴァーについて。T-1.「 ボンド・ストリート 」は楽しげに歌うホーン入りの踊れるアレンジ。T-3.「 去りし時を知って 」はイントロ冒頭のマリンバから始まる特徴的なリフが印象的で、トランペットやトロンボーンによるアドリヴ気味のソロがゴキゲンな疾走感のある好カヴァー。聴いててウキウキします。本作のバカラック・カヴァー中私が最も気に入った曲で、これはレコメンドですねー。モーグは出てこないけどそんなの全く気になりません。T-5.「 ウォーク・オン・バイ 」はねちっこいアレンジでモーグのビンビンという音に時代を感じます。T-10.「 世界は愛を求めている(愛を求めて)」は意表をつくバロック風の木管アンサンブルでスタートし、モーグ、フルート、ファゴット、トランペット、女性コーラスなどが入れ替わり立ち替わりメロディを奏でます。
ビートルズ曲ではT-6.「 エリナー・リグビー 」がゴージャスなアレンジ且つグルービーでレコメンド。バッハ曲ではT-11.「 プティット・ポレット 」が本作で唯一4種類くらいの音色をモーグで演奏して(多分オーバーダビングしたんでしょう)とても幼稚なアレンジになってしまってるのが可笑しい。一方、T-7.「 2人だけの小フーガ 」はブラス・ロック風というかロック・ミュージカル風に仕立ててすごく新鮮、アレンジャーのセンスの良さを感じます。
やっぱ名作だわ…。
さて、ここからはオマケ。MP3で所有しているイノック・ライトによるバカラック・カヴァーをご紹介。
The Enoch Light Singers名義で1968年にリリースしたアルバム『 12 Smash Hits 』で「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」(2:52)をカヴァー。男女コーラスがフルで歌っています。オリジナルのコピーという訳ではないのですが、アレンジはあまり特徴ないかなぁ。アウトロでメロディをフェイクしながらフェードアウトしていくのですが、そのフェイクは新鮮に感じます。
同じくThe Enoch Light Singers名義で1968年にリリースしたアルバム『 Whoever You Are, I Love You 』で「 Whoever You Are, I Love You(あなたはあなた)」(3:22)をカヴァー。これも男女コーラスがフルで歌います。全体的にオリジナルの雰囲気に近いですがフルートによるオブリガートは瑞々しく好印象です。
このアルバムではもう1曲「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU 」(2:46)もカヴァーしていますがMP3化はされてません。でもYouTubeでは聴けます。「 あなたはあなた 」と同様に男女コーラスがオリジナルに近い雰囲気でふんわり歌っています。※
※ 2024/1/29 追記(ちたりた様よりYoTubeの情報提供をいただきました。ありがとうございました。)
イノック・ライトによるバカラック・カヴァーはMP3化されてないものも多いです。
Enoch Light & The Light Brigade名義で1966年にリリースしたアルバム『 Film On Film • Great Movie Themes 』で「 ALFIE 」(3:19)をカヴァー。MP3化されてませんがYouTubeでは聴けます。基本は大袈裟なオーケストラで、中間部とエンディングはアコギでしっとり…という抑揚が効いたアレンジでございます。
Enoch Light & The Light Brigade名義で1969年にリリースしたアルバム『 The Best Of The Movie Themes 1970 』で「 RAINDROP KEEP FALLING ON MY HEAD(雨にぬれても)」(2:45)と「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」(3:13)をカヴァー。いずれもMP3化されてませんがYouTubeでは聴くことができます。「 雨にぬれても 」は男性シンガーがフルで歌っててビックリ。「 エイプリル・フール 」はパーシーフェイス版テイストのアレンジでした。
Enoch Light And The Glittering Guitars名義でリリース(1969年)した唯一のアルバム『 Enoch Light And The Glittering Guitars 』で「 THE LOOK OF LOVE(恋の面影)」(3:20)をカヴァー。MP3化はされてませんがYouTubeで聴けます。ギターとオケのアルバムで、「 恋の面影 」はアルバムの冒頭曲。主メロのおよそ半分はギター。それよりもところどころバックに流れる“8分音符が昇って降りるギターの動き”が独特でオッとなります。これが全編で流れればレコメンドだったのに。
Enoch Light & The Light Brigade名義で1972年にリリースしたアルバム『 Movie Hits! 』で「 LONG AGO TOMORROW(ロング・アゴー・トゥモロー)」(4:10)をカヴァー。これもMP3化はされてませんがYouTubeでは聴けます。オリジナルのB.J.トーマス版に近い雰囲気でゆったりゴージャスなアレンジ。メロディはフリューゲルホルン、ストリングス、コーラングレ等が紡いでいます。これはレコメンドですね。
【データ】
『 Enoch Light Presents SPACED OUT 』
Enoch Light & The Light Brigade
LP:1969年リリース (所有CDは、1999年リイシューの輸入盤)
レーベル:Project 3 Total Sound (US) (所有CDは、SPJ Music (US) )
番号:PR 5054 SD (所有CDは、SPJ 5704)
Producer – Enoch Light
Co-producer – Jeff Hest, Tony Mottola
Arranger - Dick Lieb
Bernie Glow (tp), Urbie Green (tb), Phil Bodner (as), Bob Tricarico (ts), Bucky Pizzarelli (g), Tony Mottola (g), Vinnie Bell (g), Dick Hyman (org, p, el-harpsichord) , Bob Haggart (b), Russell George (b), Phil Kraus (mar), Billy LaVorgna (ds), Dick Lieb (moog) , etc…
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