« 2024年8月 | トップページ | 2024年10月 »

2024年9月の3件の記事

2024年9月29日 (日)

SOUL/Lena Horne (1966年)

米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
3bd9ce2e312d466f94b9c078d7a4618817ecab69cdc84af1a4f643a3a3a2a500
Original LP front cover/back cover
827a9bb76604457fbc0e598fdf3482d4_1_201_a E444f2624d0042a0a7eddef8ad9276b9_1_201_a
所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW (2:26)


米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。尚、彼女のファーストネームは "レナ"・"リナ" 二通りの表記がありますが、Lena は英語では "リーナ" のように発音されるそうで
拙ブログでは "リナ" と表記いたします。

彼女は1917年ブルックリン生まれ(2010年没、享年92歳)。1933年にコットンクラブの舞台に立ち、1938年のミュージカル映画でジャズ歌手としてデビュー。彼女の父親が白人とのハーフだったために黒人(アフリカン・アメリカン)にしては色が薄かったため、白人からだけでなく黒人からも差別を受けたそうです。しかし、その美しさゆえハリウッドからも声がかかり、1940年代以降、映画やミュージカルなどで大活躍しました。公民権運動にも積極的に参加したことからブラック・リストに載り、アメリカ国内での活動が制限され活動の本拠をヨーロッパに移した時期も…。'50年代からコンスタントにアルバムを発表する傍らテレビなどに出演するようになり、その後映画にも復帰。2000年頃まで活躍しました。

本作は、1965年に United Artists レーベルに移籍した後にリリースした3作目にあたります。裏ジャケのライナーノーツにはこう書かれています。長いですがせっかくなので全文引用します。Google先生の訳で、どーぞ。

─ 「 ソウル 」という言葉は、最近、ポピュラー音楽の世界で最も頻繁に使われる名詞や形容詞の 1 つになっています。この言葉は、最近、さまざまなタイプの歌手に当てはめられ、時には誤って当てはめられ、その意味は混乱しています。しかし、長年にわたり、魂を込めて歌い続けてきた偉大な女性がいることを否定する人はほとんどいません。もちろん、彼女は比類のないリナ・ホーンです。
 これは、素晴らしいリナがユナイテッド アーティスツ レコードのために作った 3 枚目のアルバムです。最初は『 Feelin' Good 』、次は『 Lena In Hollywood 』でしたが、この 2 つの優れたコレクションに対する反響は衝撃的で、批評家もファンも、このボーカリストの女王がここまで最高の歌声を披露したことは一度もないと同意しました。ホーンの興奮、ホーンの活力、ホーンのスタイルは、まさに今、最高潮に達しています。
 そして、シンプルかつ適切に『 SOUL 』と名付けられたこのコレクションは、まさに最高峰です。これは、これまで聞いたことのないリナでもあります。
 曲は、おなじみの愛すべき「 THE OLD MILL STREAM 」を除いて、比較的最近のもので、この不朽の名曲は、ラ・リナの素晴らしい演奏によって、二度と同じ音には聞こえなくなるでしょう。『 SOUL 』には、トップ 10 入りした曲、リズム&ブルースの曲、カントリーの名曲、ゴスペル風の演奏、そして、おまけに素晴らしい新曲がいくつか収録されています。これらは、リナ・ホーンの演奏でもめったに見られない自由さと活気をもって演奏されており、特に注目すべきは、今日の音楽的背景であり、実際には明日の音楽的背景でもあるということです。
 ここに、唯一無二のリナ・ホーンがいます。ここに『 SOUL 』があります。エンターテインメント界の真の偉人の一人の芸術性を、まったく新しい設定、目もくらむほど新しく、スリリングなほど現代的に表現しています。『 SOUL 』は、リナがなぜ時代の伝説なのかを鮮明に示しています。実際、リナは時代の先を進んでおり、これからもそうあり続けることを示しています。リナはスターです。リナはスターです。リナは『 SOUL 』です。  ─

ビッグバンド+ストリングスというゴージャスな編成とリッチなアレンジの演奏をバックに、ソウルフルで自在な表現力を発揮した歌唱は素晴らしいの一言。彼女の全盛期がいつなのか私は知らないのですが、リリース時49歳のこのアルバムがそうだと言われても納得しちゃいます。粘っこいT-5.「 アンチェインド・メロディー 」、スローで艶やかなT-8.「 蜜の味 」…よく知ってるこの2曲もステレオタイプじゃないアレンジと相まっていずれもグイグイ聴かせます。

前置きが長くなっちゃいました😜。さて、バカラック・カヴァーはT-4.「 世界は愛を求めている 」。オリジナルの1965年ジャッキー・デシャノン版(♩≒108)よりゆったり目(♩≒98)且つ半音低いキー。ジャッキー版同様3拍子ですが、8小節あるイントロではトロンボーンやブラスがオリジナルには無いオブリガートを吹き、只者じゃない雰囲気が漂います。僅かに細かいビブラートが効いたリナの歌唱も、重厚というか貫禄があるというか…。ジャッキー版が「 世界には愛が必要なの、ね 」なら、リナ版は「 世界にゃ愛がいるんじゃ、わかっとんのかい 」てな感じ。いや、そりゃ言い過ぎか…😅。

ここからはオマケ。MP3で所有しているリナ・ホーンのバカラック・カヴァーをご紹介。
8e1eb80534f34549938982a68a8729ab
リナ・ホーンは『 SOUL 』の次にリリースした『 Lena In Hollywood 』(1966年)で「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」(2:10) をカヴァー。映画関係の曲をカヴァーしたアルバムのようで、ビッグバンド+ストリングスの優雅且つゴージャスな演奏をバックに、肩の力を抜いて軽やかに歌っています。
4f0b4253cfa64978b8cf1da36da68a9f
1970年には Lena Horne & Gabor Szabo 名義のアルバム『 Lena & Gabor 』で「 MESSAGE TO MICHAEL(マイケルへのメッセージ)」(3:14) をカヴァー。ガボール・ザボはジャズ系のギタリスト。ドラムス、Eベース、オルガン、ギターという編成で、オルガンのリチャード・ティー、ギターのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイルはのちにフュージョンバンド Stuff を結成する面々。♩≒82〜85のゆったりしたテンポ、ゴスペルファンク的なリズム、ソウルジャズのクールなサウンドをバックにリナは情感込めて歌っています。1998年に Varèse Vintage から出たコンピ集『 the burt bacharach songbook 』で聴いた時は余り印象に残らず。でも今聴いたらイイんですよねー。

他にバカラックがリナ・ホーンに書き下ろした曲もあるのですが、未紹介のバカラック物コンピ集に入っておりまして…。いずれ紹介いたします。


【データ】
『 SOUL 』
Lena Horne

LP:1966年リリース (所有リイシューCDは、1996年リリース)
レーベル:United Artists (US) (所有リイシューCDは、EMI(UK))
番号:UAL 3496/UAS 6496 (所有リイシューCDは、7243 8 37393 2 5)

All tracks arranged, conducted and produced by Ray Ellis

Amazonリンク(1996年リイシューCD)(2007年リイシューCD ボーナストラック入り全18曲

2024年9月22日 (日)

Burt Bacharach Re (Imagined)/The Anya Audette (2024年)

The Anya Audette(アニヤ・オーデット)が2024年9月にリリースしたバカラック・カヴァー集です。(デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
F14657d3ca7b4f75b85e6964f1bd2525

1. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
2. CHECK OUT TIME
3. ODDS AND ENDS
4. DON'T MAKE ME OVER
5. THE LOOK OF LOVE
6. ALFIE
7. A LIFETIME OF LONELINESS
8. WALK ON BY
9. ON MY OWN  (feat. Jarreau Williams)
10. ANYONE WHO HAD A HEART
11. ANYONE WHO HAD A HEART  (Dance Version)
12. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
13. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
14. I SAY A LITTLE PRAYER

収録時間約46分


The Anya Audette(アニヤ・オーデット)が2024年9月にリリースしたバカラック・カヴァー集です。ただし、ネット上では theanyasudette という表記でアップされています。"the"がついているのでプロジェクトの名称みたいですが本記事では"彼女"と呼ぶことにします。

彼女は米国メリーランド州ボルチモア生まれ(生年不詳)。Anya Randall Nebel の名で40年以上にわたり演劇界で活躍(パフォーマー、監督、プロデューサー)してきた方だそう。一方で、2017年にバークレー音楽学校を卒業して Music Production and Engineering の学位を取得。2023年12月に6曲入りのEP『 Random 』をリリースします。ジャンルとしてはテクノ系のダンスミュージックでその内1曲が「 ANYONE WHO HAD A HEART 」でした。

Fe361ba9bc0b43afb3e451670c5c9eb8_1_201_a148237b46a4248eaaa2e693d483d5f2d_1_201_a372c6440007e452690c7931a7f0e7add_1_201_a
画像は彼女の公式サイト(1番目、2番目)とインスタ(3番目)から拾いました。インスタはごく最近の投稿から。

先行して数曲をシングル・リリースしたのち、本アルバム『 Burt Bacharach Re (Imagined) 』を2024年9月12日にリリース! リリースの2日前、彼女は自身の Linkedin で本アルバムについて次のように語っています。熱意を感じますね〜。

─ 1年前、私はコンセプトと夢を持ってBlue Room Productionsで旅に乗り出しました-自分のアルバムを制作してレコーディングします。その仕事は愛の労働であり、私は世界に与えたいと願う影響を信じられないほど誇りに思っています。私の目標はスターになることではなく、本当に素晴らしいものを共有することを目指しています。音楽は私の人生のサウンドトラックであり、ストーリーテリングの芸術をその核心にすることで存在をナビゲートすることができます。ステージでの40年以上の経験により、このプロジェクトは、常に私の中に宿っている新しいレベルの創造性と情熱のロックを解除しました。今年9月12日にすべてのプラットフォームでリリースされる予定のアルバムは、特に女性にとって再発明の力の証です。これは、私たち全員が独自の物語を進化させ、作成する権利があることを思い出させるものです。  ─ (彼女の Linkedin 2024/9/10投稿全文、Googleの機械訳で)

本アルバムの14曲全てバカラック作品のカヴァー。取り上げたのは、T-9.「 オン・マイ・オウン 」(作詞:キャロル・ベイヤー・セイガー)を除いてハル・デイヴィッドと共作した1960年代〜1970年の曲。以下、簡単に各曲に触れていきます。尚、リンク先は拙ブログ記事です。

T-1.「 サン・ホセへの道 」はディオンヌ・ワーウィックが歌って全米10位になったお馴染みの曲(1968年のアルバム『 DIONNE WARWICK in Valley of the Dolls 』収録)。ディオンヌ版をベースにポップでふんわりしたアレンジにしたは良いのですが、彼女の歌声はちょいと高い音域で苦しげ。オリジナルと同じキーにはせず、キーを下げても良かったかも。
T-2.「 チェック・アウト・タイム 」のオリジナルもディオンヌ(1970年のアルバム『 VERY DIONNE 』収録曲)。この曲のカヴァーに初めて出会えて、ムチャクチャ嬉しいっす。キーは原曲と同じでテンポもほぼ同じ。アレンジはオリジナルをリスペクトしたもので雰囲気は出ていますし、言葉を噛み締めるように丁寧に歌う彼女の真摯な姿勢もいいですね。トランペットの特徴的なオブリガートを
シンセで演奏しているのですが、このトランペット音色がかなりチープなのが惜しいところ。でも、こんな超レア曲をチョイスした彼女のバカラック愛に敬意を表します。
T-3.「 オッズ・アンド・エンズ 」もディオンヌがオリジナル(1969年のシングル曲で全米43位。拙ブログではこちらで紹介)。キー、テンポ共に原曲と同じ。アレンジはオリジナルをリスペクトしたもので、コピーと言ってもいいくらい。歌声も味わいがあります。
T-4.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」はディオンヌのデビュー曲(1963年のアルバム『 PRESENTING DIONNE WARWICK 』収録)。この曲を彼女はダンス・チューンとしてカヴァー。メロディを適度にフェイクして歌っていてカッコイイです。
T-5.「 恋のおもかげ 」はダスティ・スプリングフィールドがオリジナル(1967年のサントラ『 CASINO ROYALE 』収録)。サントラ版ではなくダスティ自身のアルバム収録版(短縮バージョン)をベースとしたアレンジ。彼女の歌声は若干ハスキーでダスティと似ていることもあって違和感なく馴染んで聴こえます。
T-6.「 アルフィー 」はシラ・ブラックがオリジナル(1966年の英映画『 アルフィー 』宣伝用イメージソングで全英9位。拙ブログではこちらで紹介)。シラ版と同じキー、同じテンポで、アレンジもシラ版をリスペクトしたものです。
T-7.「 ア・ライフタイム・オブ・ロンリネス 」はスティーヴ・アライモがオリジナル(1963年)ですが、有名なのはジャッキー・デシャノンのカヴァー(拙ブログではこちらでちょろっと紹介)。ジャッキー版をリスペクトしたアレンジで、キーもテンポも同じ。歌声もジャッキーに寄せて歌っています。

T-8.「 ウォーク・オン・バイ 」はディオンヌがオリジナル(全米6位。1964年のアルバム『 MAKE WAY FOR DIONNE WARWICK 』収録)。彼女はコンテンポラリーでクールなダンスチューンにアレンジ。そういうアレンジなら声にもう少し勢いがあるといいなぁと思います。
T-9.「 オン・マイ・オウン 」はパティ・ラベル&マイケル・マクドナルドの全米1位曲(1986年のアルバム『 WINNER IN YOU 』収録)。キー&テンポ含めてオリジナルに忠実なアレンジで、R&B系の男性シンガー Jarreau Williams とデュエット。でもなんかコピー感が強いです。
T-10.「 恋するハート 」はディオンヌがオリジナル(全米8位。1964年のアルバム『 ANYONE WHO HAD A HEART 』収録)。ディオンヌ版の世界観をキーやテンポは同じままコンテンポラリーなアレンジで表現。後半ではラップも加わります。彼女の声ではなさそうですが。
T-11.「 恋するハート 」は同じ曲のダンス・ヴァージョンで、前述したEP『 Random 』に収録されていたもの。思いっきりユーロビート系?のダンスチューンに仕上げていてメロディもぶっとんでます。原曲の面影は薄いですがこれはこれでカッコイイですねー。
T-12.「 恋のとまどい 」はトミー・ハントがオリジナル(1962年)ですが、有名なのはダスティ・スプリングフィールドのカヴァー(1964年に全英3位。こちらで少し触れてます)。しかし、彼女のカヴァーはディオンヌ版(1966年のアルバム『 HERE WHERE THERE IS LOVE 』収録)を忠実に再現したもの。当時の若いディオンヌと比べて高音域の歌声のハリがイマイチかなぁ。
T-13.「 愛の思い出 」はトミー・ハントがオリジナル(1964年)ですが、なんと言っても同年全英1位になったサンディ
・ショウのカヴァーが有名で、ディオンヌもカヴァー(1967年のアルバム『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』収録)。彼女はダンスミュージックにアレンジしていますね〜。この曲がこんなにカッコ良くなるとは!
T-14.「 小さな願い 」はディオンヌがオリジナル(全米4位。これも1967年のアルバム『 THE WINDOWS OF THE WORLD 』収録)。世間的にはアレサ・フランクリンのカヴァーの方が人気ありますが(こちら参照)。彼女はアレサ版をベースとしてダンス・チューンにカヴァーしています。

半数の7曲(T-2,3,5,6,7,9,12)がオリジナル或いは有名なカヴァーをリスペクトしたもの、5曲(T-4,8,10,13,14)がダンス・チューン、1曲(T-1)がポップ・チューン、1曲(T-11)がぶっとんだカヴァー。
バックトラックのクオリティは正直イマイチではあるものの、彼女のバカラック愛が十分伝わってくるカヴァー集だと思います。個人的なレコメンドは、T-2,3,4,11,13 あたりです!

参考までに、本アルバムに関するネット記事をいくつか貼っておきます。インタビュー記事1本①とアルバム紹介記事3本②③④です。アルバム紹介記事はけっこう似通ってますけれど…。
Burt Bacharach-Dionne Warwick Tribute Album – The Anya Audette
Legendary Artist TheAnyaAudette Revives Burt Bacharach’s Genius in “Burt Bacharach Re (Imagined)”
Visionary and Bold: TheAnyaAudette’s Tribute in “Burt Bacharach Re (Imagined)” is Mesmerizing
A Masterpiece Reborn: TheAnyaAudette’s “Burt Bacharach Re (Imagined)” Will Leave You Speechless


【データ】
『 Burt Bacharach Re (Imagined) 』
The Anya Audette(ネットでの表記は theanyaaudette)

MP3:2024年9月12日リリース
レーベル:HARDYGIRL1966 (US)
番号:?

詳細なクレジットは不明

Amazonリンク(MP3

2024年9月15日 (日)

I Who Have Nothing/Tom Jones (1970年)

トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。今年ちょっと話題になったバカラック・カヴァー1曲を収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
9b461c860f8b44d0bdd4cd26788a798c_1_201_a18a231b53bb946508e3dea1164578c08_1_201_a

全11トラック中、バカラック作品は1トラック

B2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (2:39)


トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。

トム・ジョーンズは1940年英国南ウェールズ生まれの男性ポップシンガー。バカラック曲「 WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか子猫チャン)」、「 PROMISE HER ANYTHING(プロミス・ハー・エニシング)」、「 US(アス)」のオリジナル・アーティストでもあります(これらの曲はバカラック物コンピ集にもよく取り上げられています)。2006年には大英帝国ナイト位を授与されました。所謂 “サー” の称号付きで呼ばれるわけですね、すげー。

本作は『 Tom 』(1970年4月リリース、UK#4)に続けて同年11月にリリースされました。1967年以降のアルバムが全てUKチャートで1桁順位だったのに対して、本作はUKチャート10位。彼独特のダイナミックな歌唱は健在だしノリの良い曲(A4,B6)もありますが、バラードタイプの曲(A2,A3,A5,B1,B5)も多くて全体的に大人しめな印象です。ジャケット裏面には、赤いドラゴン(ウェールズ国旗の中央に描かれている竜ですよね)、
“WALES” LAND OF SONG... This is my homeland; where I was born and raised のコピー、ウェールズと思しき丘陵地を背に佇むトムの写真…。出身地のウェールズに想いを馳せて感傷的になってそういう曲が多くなったのかしらん。(知らんけど)
92183c6575644ac5a1474f0262604baa_1_201_a81f837839b744523b3a871a2e979105e_1_201_a

んで、バカラック・カヴァーはB2.「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(当時の日本盤の邦題:愛を求めて)」。歌い出しはイントロなしでアウフタクト2拍をゆったりと。オリジナルと同じ3拍子でテンポは♩≒118。バックはビッグバンド+ストリングスのゴージャスなサウンド。トム・ジョーンズは最初は抑えめに歌っていますが、ラストサビでは彼らしいシャウトを聴かせます。いいですねぇ〜、
レコメンドでございます。公式動画がありましたので貼っておきます。


当時トム・ジョーンズはテレビ番組『 This is Tom Jones TV Show 』(1969〜1971年)のホストを務めていました。その番組で、1969年にサミー・デイヴィスJr.とこの曲をデュエットしています。エンディングが少し違っていてテンポも僅かに遅いですが、本アルバムのバージョンと基本的にバックの演奏は同じ。シャウトの掛け合いが素晴らしいです。これも公式動画を貼っておきます。


そして、今年ちょっと話題になったのが…。来月(2024年10月)公開となる映画『 Joker: Folie à Deux(ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ)』。今年4月10日リリースの特報トレーラーにトム・ジョーンズの歌う「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 」が使われていたんです(ワーナー公式サイトのNEWS参照。特報トレーラーも視聴できます)。じっくり聴いてみると、デュエット版からサミー・デイヴィスJr.の冒頭の歌声が、本アルバムのトム・ジョーンズ版からラストサビの2フレーズ目の歌声が使われているようです。バックの演奏はとても重厚ですし、ゆったりしたインスト部分の美しさも際立っていますね〜。映画本編でも使われるのか、フォローしたいと思います。


ここからはオマケ。MP3で所有しているトム・ジョーンズのバカラック・カヴァーをご紹介。
D1bc0c4b09464063a1e3f36f04cbc815Ec1b6481fec24a6890a4e74ffa75cc19A3e83e727f994d12b26e7f0bf6701cf5
トム・ジョーンズは1967年のアルバム『 Green, Green Grass Of Home 』〜 ただし、Decca盤(UK)には収録されておらず、Parrot盤(US)のみ収録 〜 で「 ANY DAY NOW 」(2:54)をカヴァー。こういう曲にトム・ジョーンズの歌い方は相性いいですね。後半でのシャウトもハマっています。補足:1966年フランスでリリースした4曲入りEP『 What A Party 』のA面2曲目が初出の模様。
93b5ce0ef9394191b1f81122972fc6a7
同じく1967年リリースのアルバム『 13 Smash Hits 』で「 I WAKE UP CRYING 」(2:19)をカヴァー。それほど特徴はなくオーソドックスな仕上がり。もちろんトム・ジョーンズの歌唱はパワフルですけれど。
30afc7c6367d4266a25901ef286d87a4
ついでにライヴ盤も。1967年の『 Tom Jones Live! At The Talk Of The Town 』で「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」(2:14)を歌唱。イントロで何やらおどけてるみたいですがよくわかりません。ライヴはやっぱり映像が欲しいですな。楽しく歌ってるのは伝わってきますけど。


【データ】
『 I Who Have Nothing 』(邦題:アイ)
Tom Jones

LP:1970年11月リリース
レーベル:Decca (UK)
番号:SKL 5072

詳細クレジット不明

Amazonリンク(MP3)(1998年リイシューCD 2 in 1

« 2024年8月 | トップページ | 2024年10月 »

カテゴリー

  • カヴァーアルバム
    ★バカラック・カヴァー曲が主体でBacharach をアルバムのタイトルやサブタイトルに入れているアルバム ★収録曲のうち半分以上がバカラック・カヴァーのアルバム ★複数アーティストによって新たにカヴァーしたアルバム ★複数アーティストによるトリビュートコンサートのライブアルバム
  • コンピレーションアルバム
    ★複数アーティストのバカラック作品を集めたいわゆる編集盤
  • シングル
    ★シングル
  • ディオンヌ・ワーウィックのアルバム
    ★新作主体/カヴァーアルバム/コンピ集を問わず、ディオンヌ名義のアルバム
  • バカラックの曲がちょっと入ったアルバム
    ★バカラックの曲がちょっと入ったアルバム
  • バカラック関連ネタ
    ★バカラック作品は入っていないがバカラックと何らかの関連があるアルバム ★アルバムやシングル以外のこと。本、コンサート、ライヴ、TV、Radio、告知、独り言、イベントなどなど
  • バート・バカラックのアルバム
    ★メインのアーティストがバカラックとなっているもの ★バカラックが音楽を担当した映画等のオリジナル・サウンドトラック ★ ○○ with Bacharach のようなアルバムは含めない
  • 新作主体のアルバム
    ★『 バート・バカラックのアルバム 』と『 ディオンヌ・ワーウィックのアルバム 』以外で、バカラックが新作を多数(およそ半数以上)提供したアルバム

★ リンク ★

  • Yammy* Official Web Site
    京都在住のオーガニックシンガーソングライター、Yammy*(ヤミー)さんの公式サイトです。
  • くう・ねる・時々・じゃず
    とても凛としていて、でも柔らかい歌声が魅力のジャズ・シンガー、三善香里さんの公式ブログです。
  • My Willful Diary
    shoppgirlさんが、「心に留めておきたい音楽とあれこれ」をたおやかな言葉で綴っていらっしゃる、素敵なブログです
  • バカラックマジックでまったりと
    バカラックさんをこよなく愛するまったりさんのブログです。バカラックファンとして大先輩でブログの師匠さんでもあります。
2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

最近のトラックバック