カヴァーアルバム

2017年3月22日 (水)

Playing Bacharach/Aisha Ruggieri quartet (2010年)

伊太利亜の女性ジャズ・ピアニスト、アイシャ・ルジェリによるバカラック集です。

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全10トラック中、バカラック作品は8トラック

1. A HOUSE IS NOT A HOME
2. MAGIC MOMENTS
3. THANATOS
4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
5. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
6. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
7. AFRODITA'S DINNER
8. THIS EMPTY PLACE
9. WALK ON BY
10. CASINO ROYALE

収録時間約53分


伊太利亜の女性ジャズ・ピアニスト、アイシャ・ルジェリによるバカラック集です。(ラスト・ネームはラッギーリと読む事例もあるようですが、本記事ではルジェリとしておきます)

Img355cc_2Img355dd_2Aisharuggieri_jazzitsett2010_2 アイシャ・ルジェリはイタリア北部ヴェネト州パドヴァ(Padova, ヴェネツィアの西あたり)の出身。最初はクラシックを弾いていたそうですが、17歳の時に2枚のレコード(ジョン・コルトレーンとビル・エヴァンス)を聴いて衝撃を受けジャズをやることに決めたんだとか。

2005年に最初のアルバムをリリース。本アルバムは3枚目のアルバムにあたります。写真のうち2枚は紙ジャケを開いたところにあったもの。残りの1枚はネットから拾ったもので、本アルバムのチラシのようです。

ピアノ、ドラムス、ベースに、ジャンルカ・カローロのトランペット/フリューゲルホーンをフィーチャーしたカルテット編成。ストレートでコンテンポラリーなジャズです。この手のジャズが苦手な人にはちょっと敷居が高いかもしれません。ですが、本気で曲に向き合ってる感じが伝わってきて好感が持てます。ネットでアイシャのことを調べていたら、本アルバムに対する彼女の思いが窺える記述がありました。私のテキトーな訳でどうぞ。

─  大きな尊敬の念をもってこの作曲家(訳者注:バカラックのこと)を読み込まなきゃいけないと思ったし、過去の2枚のアルバムとは違うものにしたかったの。ブリリントな音色のジャンルカ・カローロ、加えて二人の優れたミュージシャンのサポートもあって、私は自分の好きな曲を自由にアレンジすることができたわ。ただひとつ気を配ったのは、リスナーが最初から我々の世界に入ってこれるよう、メロディを尊重したことかしら。 ─ (2012年の彼女のインタビュー記事より抜粋)

全10曲のうち8曲がバカラック作品ですが、そのうちT-8. 「 ディス・エンプティ・プレイス 」 とT-10. 「 カジノ・ロワイヤル 」 はジャズでは殆どといっていいほど取り上げられてこなかった曲です。アイシャ、けっこうチャレンジャーですね~。

演奏は全体的に硬派。各曲でのアドリヴ、特にトランペット/フリューゲル・ホーンのプレイは時に激しく時に甘くソフトに…メリハリが利いてます。リズムも凝ってる曲が多いです。アルバム冒頭のT-1. 「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」 、4/4拍子のこの曲を7/8拍子(或いは倍テンポで4/4拍子+3/4拍子か?)で演奏したのには、いきなりで面食らいました。軽いボサノヴァに仕上げたT-5. 「 愛のハーモニー 」 ぐらいですかね、肩の力を抜いて聴けるのは。

特徴的だなぁと感じるのが、イントロでピアノが独自のフレーズを提示してそれを間奏部やアウトロでも差し込んでくる点。T-1.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」 、T-5. 「 愛のハーモニー 」 、 T-8. 「 ディス・エンプティ・プレイス 」 、T-10. 「 カジノ・ロワイヤル 」 あたりで見られるのですが、強い印象をリスナーに与えます。アイシャは意識してアレンジしたのだと思います。先に紹介した彼女のコメント ─ リスナーが最初から我々の世界に入ってこれるよう、メロディを尊重したことかしら ─ の一端でしょうか。

因みに、T-3.とT-7. はアイシャの自作曲。この2曲は、なんでもバカラックにインスパイアされて作曲したものだとか。出来はともかく、その心意気や良し!

本アルバム、Amazon/iTunesで視聴できます。気になる方はぜひご試聴を!


【データ】
『 Playing Bacharach 』
Aisha Ruggieri quartet featuring Gianluca Carollo

CD:2010年9月13日リリース
レーベル:GECO RECORDS (ITALY)
番号:100/005

All tracks composed by Burt Bacharach except T-3,7. composed by Aisha Ruggieri
All arrangements are written by Aisha Ruggieri
Musicians
  Aisha Ruggieri - piano, arrangements
  Gianluca Carollo - trumpet, flugelhorn
  Edu Hebling - doublebass
  Mauro Beggio - drums
Recorded in Calliano (AT) live recording at Studiottanta, mixered and mastered by Massimo Visentin December, 2009

2017年3月19日 (日)

WE ALL LOVE BURT BACHARACH/Massimo Colombo (2016年)

伊太利亜の男性ジャズ・ピアニスト、マッシモ・コロンボによるバカラック・カヴァー集です。(CD無し/デジタル配信のみ)

Photo

1. THE LOOK OF LOVE
2. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
3. ALFIE
4. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
5. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
6. GOD GIVE ME STRENGTH
7. GO ASK SHAKESPEARE
8. I SAY A LITTLE PRAYER
9. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
10. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
11. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
12. WALK ON BY
13. A HOUSE IS NOT A HOME

収録時間約57分


伊太利亜の男性ジャズ・ピアニスト、マッシモ・コロンボによるバカラック・カヴァー集です。

670_0_4557283_58097 彼は1961年ミラノ生まれ。ピアニストであると同時に作曲家/編曲家でもあり、作曲した作品は700曲もあるそうです。

本アルバムは、彼の24作目のリーダー・アルバムに当たります。写真は本アルバムのレコーディング時のもので、右から3人目がマッシモ・コロンボです。

演奏は、ピアノ、ベース、ドラムス、トランペットのカルテットが基本。半数以上の曲に女性ヴォーカルがフューチャーされ、曲によってはサックスやバス・クラリネットも加わります。バス・クラリネットなんてジャズでは珍しいですよね~。因みにさきほどの写真には、左端にドラムスのピーター・アースキン(元ウェザー・リポート)、その右にヴォーカルのキャスリーン・グレイス、右端にベースのダレク・オレスが写っています。キャスリーン・グレイスは、USC(南カリフォルニア大学)で教鞭を取り、L.A.を拠点に活動する女性ジャズ・シンガーだそうです。

全13曲すべてバカラック作品。カヴァー定番曲が並ぶなか、異色なのはT-7. 「 ゴー・アスク・シェイクスピア 」 。バカラック2005年のアルバム 『 AT THIS TIME 』 に収録されているこの曲、カヴァーされるのは本アルバムのバージョンが初めてじゃないでしょうか。

ジャズではありますが、ハードで難解なアドリヴは少なめであまり肩に力を入れることなく聴けます。一番ハードなのはT-11. 「 世界は愛を求めている 」 かな? T-4. 「 雨にぬれても 」 中間部の間奏が5拍子だったり、T-8. 「 小さな願い 」 のイントロのピアノのフレーズがやけに神妙だったり、T-9. 「 遥かなる影 」 がラテンのモントゥーノっぽいリズムだったり、T-13. 「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」 の冒頭1分弱が無伴奏で歌われたり…といったところが印象に残りました。

でも、聴いていてあまり心に響かないんです。ミュージシャンはテクニックもあるし演奏は上手いのですが、何て言うんですかねー仕事で演ってる感が強くって。言い換えると、バカラックへのリスペクトをあまり感じないと言うか。あくまでも私個人の感覚なので、決してけなしているわけではありませんよ^^;。

YouTubeに本アルバムのPVが上がっています。ご参考まで。 → こちら


【データ】
『 WE ALL LOVE BURT BACHARACH 』
Massimo Colombo

MP3:2016年11月4日リリース
レーベル:PLAY & Oracle Records Ltd
番号:無し

Produced by Giampaolo Pasquile and Michele Garruti
Arrangements - Massimo Colombo
Musicians
  Massimo Colombo - piano
  Darek 'Oles' Oleszkiewicz - double bass
  Peter Erskine - drums and percussion
  Michael Stever - trumpet and flugelhorn
  Kathleen Grace - vocals (T-1,2,4,6,8,10,12,13.)
  Bob Mintzer - tenor sax (T-3.) / bass clarinet (T-5,11.)
  Aaron Serfaty - percussion (T-2.)
Recorded at Tritone Recording Studios, Los Angeles (California)

2017年3月12日 (日)

RAINDROPS/Lisbet Guldbaek (2012年)

デンマーク出身のシンガー、Lisbet Guldbaek のバカラック・カヴァー集です。(CD無し/デジタル配信のみ)

Raindrops

1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
2. WALK ON BY
3. ONE LESS BELL TO ANSWER
4. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
5. ALFIE
6. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
7. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
8. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
9. WIVES AND LOVERS
10. I JUST HAVE TO BREATHE

収録時間約32分


デンマーク出身の女性シンガー、Lisbet Guldbaek のバカラック・カヴァー集です。彼女の名前の読み方がわからず原語のままです。ご勘弁を~m(__)m

彼女は1970年デンマークのオールボー生まれ。11歳の時にミュージカル 『 アニー 』 で主役を務めたそう(デンマーク上演の際だと思います)。その後1990年代の早い時期にパリに移り、ミュージカルに出演したりアニメーション映画の劇中歌を吹き替えで歌ってきたそうです。

最近ではソロ・シンガーとしての活動に重きを置いているようで、自主制作ではありますが自身初のアルバムとなったのが本作でございます。2009年にレコーディングして2012年にデジタル配信のみでリリースされました。

332183_9_2Lisbet_guldbaek_3 バックはアコースティック・ギターとダブルベースだけのシンプルなもの。彼女の声はブライトでハスキー。ミュージカルを歌ってきた方にしては大げさな表現は見られず、チャーミングな印象です。間奏ではギターやベースのアドリヴも入りますし、曲の後半では彼女もメロディをフェイクして歌ったりしています。ポップスではなくてジャズ寄りですかね。

収録曲はバカラック&デイヴィッド作品ばかり10曲。軽快なボサノヴァにアレンジしたT-1. 「 恋よさようなら 」、ブルース調のT-2. 「 ウォーク・オン・バイ 」、イントロが雨粒っぽいT-4. 「 雨にぬれても 」、スウィングにアレンジしたT-7. 「 愛の思い出 」、大胆にもAメロを3拍子にアレンジしたT-8. 「 遥かなる影 」 などが印象に残ります。

そんなアルバムの中で異彩を放っているのがT-10. 「 アイ・ジャスト・ハフ・トゥ・ブリーズ 」 。この曲だけ超レア曲ですし、バックがギターのみのシンプルなパフォーマンスってのもこの曲だけ。思いのこもった彼女の歌い方も素晴らしいです。彼女にとって何かしら思い入れのある曲なんでしょうか。

YouTubeに本アルバムと同じメンバーによるライヴ動画が上がっていて、その中で本アルバム収録曲を5曲ほどダイジェスト的に聴くことができます。「 雨にぬれても 」 「 世界は愛を求めている 」 「 ワイヴズ・アンド・ラヴァーズ 」 「 恋よさようなら 」 、観客の反応と他の曲を挟んでラストが 「 アルフィー 」 。その動画はこちら   猫顔のキュートな方ですね~。


Lisbet_guldbaek_beautifulここからはオマケです。
Lisbet Guldbaek は 『 RAINDROPS 』 のあと、2015年に 『 The beautiful 』 というアルバムをリリース。そのなかで、「 GOD GIVE ME STRENGTH 」 (4:47) をカヴァーしています。
バンド+ストリングスをバックに丁寧に歌っているのですが、声量があまりないせいかサビの歌い上げる部分で盛り上がりが不足気味なのがちょっと残念なところです。オリジナリティのあるイントロ、ドラムスとともにリズムを刻むアコギ、ストリングスのピチカート、ちょっと変わったベースの動き等々、あちこちに工夫がみえるアレンジは好印象なんですけどねー。


【データ】
『 RAINDROPS 』
Lisbet Guldbaek, Bonfils & Bongarçon

MP3:2012年リリース
レーベル:無し
番号:無し

Musicians
  Vocal - Lisbet Guldbaek
  Guitar - Bruno Bongarçon
  Bass - Tony Bonfils (except T-10.)
Recorded in 2009

2017年2月19日 (日)

Full Circle - Back to Bacharach/Debbie Fleming (2016年)

トロント在住の女性シンガー、デビー・フレミングによるバカラック・カヴァー集。掘り出し物です!

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1. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
2. ALFIE
3. THE LOOK OF LOVE
4. A HOUSE IS NOT A HOME
5. I SAY A LITTLE PRAYER
6. ANYONE WHO HAD A HEART
7. PROMISES, PROMISES
8. WALK ON BY
9. ONE LESS BELL TO ANSWER
10. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
11. THE WINDOWS OF THE WORLD / SHINE* / WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE

* Written by Debbie Fleming

収録時間約53分


カナダはトロント在住の女性シンガー、デビー・フレミングによるバカラック・カヴァー集です。

─  デビー・フレミングは若い時にバート・バカラック&ハル・デイヴィッドの音楽を学びました。'60年代、ディオンヌ・ワーウィックは彼女のアイドルで、トロントのミュージック・シーンにおいてまだ駆け出しの女性歌手だったデビーは本CDに収めたような曲をたくさん歌ったのです。バカラック&デイヴィッドは20世紀で最も旋律的で美しい音楽を書いたソングライター・チームのひとつ。デビーは、私たちの歴史に彼らが大きな貢献をしたことを称賛する時が来たと感じました。詳しくは、公式サイトの “ Deb's blog ” をご覧ください。 ─

Photo これは、アルバムのライナーに書かれていたメッセージを意訳したもの。彼女の公式サイトの “ Deb's blog ” には、Full Circle – Back to Bacharach – The Process というタイトルの記事があって、本アルバムの制作経緯がとても詳しく綴られています。拙ブログも最大限参考にさせていただきました。ちなみに、こちらの彼女の画像は公式サイトから拝借したものです。

彼女は首都オタワ生まれのトロント育ち。セッション・シンガー或いはライヴのバックアップ・ヴォーカルとしてキャリアを積む一方、ジャズ・ヴォーカル・グループや合唱団の一員としても活動してきました。ソロやジャズ・ヴォーカル・グループでアルバムも複数リリース。地元愛は相当なものらしく、本アルバムもトロント最高のミュージシャンと一緒に作り上げたそうです。

収録曲は全てバカラック&デイヴィッド作の有名曲ばかり。ただし、メドレー(T-11.)の2曲めだけはデビー・フレミングの自作曲。彼女はソングライターでもあるんですねー。2015年秋にまずR&Bテイストで6曲(T-2,4,6,8,10,11.)をレコーディング。クリスマス・シーズンを挟み、2016年1月にメンバーを少し入れ替えジャズで5曲(T-1,3,5,7,9.)をレコーディング。CDは奇数トラックがジャズ、偶数トラックがR&Bという風に交互に並んでいます(最終トラックのT-11.は除く)。この並び順が絶妙で、曲調の違いを一層際立たせる効果を生んでいます。

まずジャズの5曲。バックの演奏はピアノトリオ+ギターのカルテットで、曲によってゲストが加わります。T-1. 「 遥かなる影 」 は、終盤でコーラスが加わりますが、実にジャズしてます。ゲストのコーラスはハンプトン・アヴェニュー4 という男女4人のジャズ・ヴォーカル・グループで、リーダーはデビーだそうです。T-3. 「 恋のおもかげ 」 はセルジオ・メンデス'66のバージョンをベースとしたアレンジ。この曲でも、コーラスのハンプトン・アヴェニュー4を多用した独特のアレンジが光ります。T-5. 「 小さな願い 」 も見事にジャズしてますし、変拍子もちゃんとやってくれてます。トランペットとサックスのホーン・アレンジもなかなか渋いです。T-7. 「 プロミセス・プロミセス 」 は涼しげなラテン・ジャズ風のアレンジ。中間部でのフリューゲルホルンのアドリヴが短いけれど印象的でクールです。T-9. 「 悲しみは鐘の音とともに 」 もまさしくジャズでデビーの歌唱もジャズっぽい。繊細なドラムスや中間部でのピアノのアドリヴも素敵です。

R&Bテイストの6曲はどうでしょう? T-2. 「 アルフィー 」 はわりとオーソドックス。1コーラス目はしっとりと、中間部でのサックスのアドリブを挟み2コーラス目からはエモーショナルに歌い上げます。T-4. 「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」 はルーサー・ヴァンドロス版を下敷きにしたアレンジで、本家ほどではありませんがそれでも7分に迫ろうかという長尺曲。デビーは、ルーサーを変に真似ることなくしっかりと自分のものにして歌っています。T-6. 「 恋するハート 」 はR&B色の濃い、熱い演奏が素晴らしい。T-8. 「 ウォーク・オン・バイ 」 は意表を突いて6/8拍子のR&Bにアレンジ。ブルース・フィーリング溢れる演奏とパワフルなデビーの歌唱がうまくブレンドされています。T-10. 「 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・ヘヴン 」 はこれまた意表を突いてミディアム・テンポのポップなボサノヴァにアレンジ。金管の演奏もノリがよくデビーも楽しそうに歌っています。個人的にはトロンボーンのアドリヴが聴けるのが嬉しい!

大トリのT-11. は 「 世界の窓と窓 」(約2分) ~ 彼女の自作曲 「 SHINE 」(約45秒) ~ 「 世界は愛を求めている 」(約2分弱) ~ 「 世界の窓と窓 」(約30秒)という4曲メドレー。「 世界の窓と窓 」 はエレピのイントロから始まるゆったりしたR&Bバラードにアレンジ。アレンジも素敵だし、感情を込めて歌うデビーは本アルバム中の白眉かも。「 SHINE 」 はゴスペル調ですがメドレーでここに入っても全く違和感がありません。続く 「 世界は愛を求めている 」 はオーソドックスなアレンジですが、金管やサックスの和音がいい感じ。リプライズとなる 「 世界の窓と窓 」 のバックはエレピではなくピアノ。ここでも感情を込めて歌うデビー。余韻が残るエンディングです。素晴らしいっ!

「 世界の窓と窓 」 ~「 世界は愛を求めている 」 のメドレーといえばルーサー・ヴァンドロス版が本家で、あちらもエンディングはリプライズで 「 世界の窓と窓 」 ですよね。そのルーサー版をリスペクトしつつも、彼女は自分なりのアプローチで素晴らしいメドレーを創り上げました。お見事!

─  私は、これらの曲に何か新しいひねりを加えたいと思っていたの。 ─  公式サイトのブログ記事より引用した言葉ですが、そんな彼女のこだわりが十分感じられるアルバムでした。

ただ、ちょっと惜しいのはデビーの声が高音域で弱いところ。低中音域にくらべて線が細くて音程も安定性に欠ける面があるんですね。年齢的に厳しいからだと思うのですが、それでもメロディをフェイクしてごまかす…なんてことは一切しないその姿勢に拍手を送ります。パチパチ

アルバムのタイトル 『 Full Circle 』 は、彼女のルーツである'60年代にもこれらの曲を歌っていてまた戻ってきた…ということを意味してるそう。ジャケット左側のモノクロ写真は1968年のもので、ジャケットでも同じことを表現したかったんですねー。

そして、アルバムのサブ・タイトルは Back to Bacharach 。拙ブログでは、これまで Back to Bacharach というタイトルの付いたアルバムを3枚紹介しています。
  BACK TO BACK BACHARACH/CASINO ROYALE (1999年)
  BACK TO BACHARACH/Michael Ball (2007年)
  BACK TO BACHARACH/Steve Tyrell (2008年)

それぞれ特徴あるバカラック・カヴァー・アルバムですが、デビー・フレミングのアルバムはそれらに勝るとも劣らない思いのこもったアルバムでした。CD番号もない自主制作盤ですが、これぞまさしく掘り出し物sign01 MP3でも配信されています。興味ありましたら試聴だけでも是非!


【データ】
『 Full Circle - Back to Bacharach 』
Debbie Fleming

CD:2016年4月16日リリース
レーベル:℗2016 Debbie Fleming
番号:-

Executive producer: Debbie Fleming
Arranger: Debbie Fleming (T-2,3,4,7,8,10,11)、Mark Kieswetter (T-1,5,6,9)
Arranger of strings and horns: Mark Kieswetter (T-2.)
Recording engineer, mixing and mastering: Bernie Cisternas
Musicians:
  Debbie Fleming - Vocals
  Mark Kieswetter - Piano and keyboards
  Ross MacIntyre - Bass ~ upright and electric
  Charlie Cooley - Drums (T-2,4,6,8,10,11.)
  Ben Riley - Drums (T-1,3,5,7,9.)
  Peter Mueller - Guitar (T-2,4,6,8,10,11.)
  Ted Quinlan -  Guitar (T-1,3,5,7,9.)
  John MacMurchy - Saxes (T-2,4,5,7,8,10,11.)
  Chase Sanborn - Trumpet and Flugel (T-5,7,10,11.)
  Russ Little - Trombone (T-10.)
  Arturo Avalos - Percussion (T-3,7.)
  The Hampton Avenue 4 <Debbie, Suba Sankaran, Dylan Bell, Tom Lillington> - Vocals (T-1,3.)
  Choria - Background vocals (T-6,8,10,11.)

2017年2月12日 (日)

THE LOOK OF LOVE/Patrick Saussois & Rhoda Scott (2010年)

ギターとハモンドオルガンが主役のバカラック・カヴァー集です。2010年の作品です。

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1. THE LOOK OF LOVE
2. ALFIE
3. WALK ON BY
4. WIVES AND LOVERS
5. DON'T MAKE ME OVER
6. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
7. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YO
8. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
9. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
10. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
11. A HOUSE IS NOT A HOME
12. DON'T GO BREAKING MY HEART

収録時間約57分


ギターとハモンドオルガンが主役のバカラック・カヴァー集です。

ギターのパトリック・ソーソワは1954年フランス生まれ。ジプシーの伝統音楽とスウィング・ジャズを融合させた “ ジプシー・ジャズ ” のギタリストだそうです。1988年には自身のレーベルDJAZを立ち上げ、以後2012年に亡くなるまでコンスタントにアルバムをリリース。本アルバムが遺作となりました。

ハモンドオルガンのローダ・スコットは1938年ニュージャージー州生まれ。7歳のときに父親の教会でオルガンに触れたのが原点。1967年にフランス移住後はフランスを拠点に活動、ジャズのアルバムを多数リリースしています。

Img_2689ddd本アルバムは、この二人にドラムスが加わったトリオによる演奏。三面鏡スタイルのジャケットを開いた左側の方がドラムスの Lucien Dobat です。

ジャケットを開いた真ん中に写ってるのがハモンドオルガンと 「 THE LOOK OF LOVE 」 のコード進行を書いた紙。楽譜ならぬコード譜とでも言うのかしらん。こんなのがあるんですね~、知らんかった。右側は Jean-Michel Proust という方が書いたライナーノーツなんですが、フランス語なのでスルー。誰か日本語に訳して教えてくださいm(__)m。

二人がチョイスしたのはバカラック&デイヴィッド作品ばかり12曲。原曲のリズム・テンポを基本に、1コーラス目はそのままメロディを、2コーラス目からはメロディを崩したりアドリブを入れた演奏となってます。ただ、そのアドリブはゴリゴリではなく全体的にユルい感じ。ですので構えずに聴くことができます。個人的な好みで言えばちょっと物足りないですかね。その中で、T-10. 「 世界は愛を求めている 」 だけはユニーク。原曲が3拍子のこの曲を4拍子にした上で、ハイスピードのスウィングで演奏。もうハモンドオルガンがノリノリで、聴いてて楽しいです。

それにしても、ハモンドオルガンの音色は独特の揺らぎがあっていいですね~。特にメロディをブロック奏法(和音)で弾くところなんか、ハモンドオルガンらしさが堪能できます。エレクトーンなど一般の電子オルガンと同様、右手(上鍵盤)でメロディ、左手(下鍵盤)で伴奏、左足(ペダル鍵盤)でベースを弾く楽器なのですが、ペダル鍵盤のふわっと柔らかい音色がウッドベースやエレキベースなどと違ってこれまた独特なんですよねー。奏者は大変でしょうけど。ギターがリードをやってる時はハモンドオルガンの右手はお休みで左手も適当に弾いてりゃいいのですが、左足だけは休まずベースの役割をこなさなくちゃいけないですから。前述した 「 世界は愛を求めている 」 なんて、♩≒240のテンポで4分音符のベースを延々弾いてましたからね。1分間に240回 ⇒ 1秒間に4回もですよ。左足が痙攣しないんでしょうか。


R476626113748390822822jpeg ここからはオマケです。MP3でしか所有していないカヴァーをご紹介。
ハモンドオルガンのローダ・スコットは、1970年リリースのアルバム 『 A L'Orgue Hammond Vol.2 』 で 「 WANTING THINGS 」 (3:01) をカヴァーしています。このアルバムは、ヘアー、マイ・フェア・レディ、ファニー・ガールなどといった人気ミュージカルから1曲ずつ計9曲が選曲されていました。「 WANTING THINGS 」 はバカラックが音楽を担当した 『 プロミセス・プロミセス 』 からの曲。彼女のハモンドオルガンとドラムスによる演奏で、最初は♩≒130程度だったのが徐々に速くなり♩≒200くらいまでテンポアップ。途中でパッと♩≒160までクールダウンしてから最後は逆にスローダウンしてエンディングになるという、躍動感ある演奏です。
尚、このアルバムは2007年にCDリイシューされているのですが、アルバム・タイトルが 『 Hello Dolly 』 に変更されています。紛らわしいなぁ。


【データ】
『 THE LOOK OF LOVE (A Tribute to Burt Bacharach)
Patrick Saussois & Rhoda Scott

CD:2010年2月19日リリース
レーベル:DJAZ DISTRIB (FR)
番号:DJ577-2

Patrick Saussois - guitar
Rhoda Scott - organ
Lucien Dobat - drums
録音日: 2009年3月1,2日

2017年2月 8日 (水)

森のバート・バカラック/Super Natural (2012年)

アコースティック・ギターによるバカラック・カヴァー集。イージーリスニング物です。

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1. INTRO
2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
3. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
4. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
5. DON'T MAKE ME OVER
6. THE LOOK OF LOVE
7. ALFIE
8. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
9. SKIT
10. WALK ON BY
11. BABY IT'S YOU
12. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
13. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
14. I SAY A LITTLE PRAYER
15. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
16. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
17. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
18. OUTRO

収録時間約61分


Img343zz_2アコースティック・ギターによるバカラック・カヴァー集です。

Super Natural は、本アルバムをプロデュースした日本人3人のユニット名。アマゾンではSuper Natural というアーティスト名で扱われていたので、拙ブログもそれに倣った次第。Super Natural プロデュースで、ビートルズ、カーペンターズ、デヴィッド・フォスター、ジブリ等のカヴァー集も出してるようです。

各々1分程度のインタールード的なT-1,9,18. を除き、バカラック・カヴァーは有名どころばかりを15曲。CDのパッケージに貼られていたシール(写真)にあるように、癒しの時間を提供するというコンセプトであれば無難な選曲でしょう。

全編、アコースティック・ギターのみ。ギターを弾いているのは、Super Natural の一員である Manabu Hasegawa さん。テンポも一定、強弱もそれほどつけず、ハッとするようなアレンジ上の演出も少ない、淡々としたサウンド。オルゴールを聴いてるような感覚のイージーリスニング物。はっきり言って退屈。印象に残ったのは、ちょっとアドリヴが聴けるT-10. 「 ウォーク・オン・バイ 」 と、音数が少なくテンポも揺れるT-17. 「 世界は愛を求めている 」 くらいですかね…。

コンセプトからして仕方ないとは思いますが、バカラックへのリスペクト的なものも感じられません。私の琴線に触れるアルバムではありませんでした。

でもまぁ、謳い文句どおりリラックスはできますょ。聴いてて居眠りしちゃいましたから^^;。


【データ】
『 森のバート・バカラック 』 (英語タイトル:Burt Bacharach in the Forest)
Super Natural

CD:2012年12月5日リリース
レーベル:Insense Music Works
番号:IMWCD-1008

Produced by Super Natural *
Mixed and Mastered by Kiyohito Matsumura
Executive Producers:  Ichiro "DJ ICHIRO" Sakiyama, Hisaharu "Q" Takahashi
Guirar - Manabu Hasegawa
* Super Natural are Manabu Hasegawa, Ichiro "DJ ICHIRO" Sakiyama and Kiyohito Matsumura

2017年1月29日 (日)

LOOK OF LOVE/b.kruman (2004年)

米国の男性プロデューサー/シンガーソングライターの b.kruman が2004年にリリースしたバカラック集です。

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1. THE LOOK OF LOVE
2. I SAY A LITTLE PRAYER
3. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
4. DON'T MAKE ME OVER
5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
6. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
7. ONE LESS BELL TO ANSWER
8. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
9. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
10. PROMISES, PROMISES
11. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
12. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
13. PAPER MACHE
14. WALK ON BY
15. TRAINS AND BOATS AND PLANES

収録時間約64分


米国の男性プロデューサー/シンガーソングライターの b.kruman という人が2004年にリリースしたバカラック集です。

b.kruman は、ペンシルベニア州ピッツバーグを拠点に活動する独立系のプロデューサー/シンガーソングライター。…と、ネットで調べて分かったのはこの程度。

Img334cc CD紙ジャケの表面は真っ赤な下地にソングライターとプロデューサー/アレンジャーの表記のみで、ジャケット裏面は曲名と B.Kruman とやらのHPアドレスがあるのみ。CDはスリーブ無しで裸のまま紙ジャケに入ってました。ライナーノーツもありません。最も情報量が多いのがCDのレーベル面(画像~クリックすると大きくなります)ですからねー。なんとまぁお金のかかってないパッケージだこと。

アマゾンから届いたコイツを見て 「 あちゃ?、とんでもない自主製作盤を掴まされたかぁぁぁ・・・ 」 と思っちゃいました、私。

でもですね、CDを聴いてビックリしました。この人スゴイです。バカラック以上の変拍子。元々変拍子だらけのT-10. 「 プロミセス・プロミセス 」 でさえ更にいじっちゃってます。メロディも時間軸方向にフェイクしまくってます。

収録された15曲はすべてバカラック&デイヴィッドの名曲なのですが、イントロだけ聴いたらなんの曲だか全くわかりません。全体的にはロックなんですけど、ところどころバロック風味になったりケルト風味になったりします。こういうのを何ロックって言うんでしょう。

演奏から歌まで、すべて B.Kruman という男性がパフォーマンスしていると思われます。とはいえ、彼の歌唱は歌っているというよりはしゃべってる感じ。バカラック原曲の持つ洒落たロマンチックな味わいも残っていません。バカラックファン初心者には厳しいかもしれませんね~。

でも、音質も悪くないし、こわいもの見たさで中堅以上のバカラックファンであれば是非!!


【データ】
『 LOOK OF LOVE 』
b.kruman

CD:2004年12月7日リリース
レーベル:extant music (US)
番号:BK4792 (ジャケット表裏及びCDレーベル面には記載なし)

Produced & arranged by b.kruman
クレジットなく不明ですが、たぶん b.kruman による一人多重録音であろうと思われます。

2017年1月25日 (水)

PLAY BACHARACH/The Feather Tunes (1971年)

電子オルガンによるバカラック・カヴァー集です。1971年の作品です。(CD無し/デジタル配信のみ)

The_feather_tunes

1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
2. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
3. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
4. I SAY A LITTLE PRAYER
5. PACIFIC COAST HIGHWAY
6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
7. THE LOOK OF LOVE
8. PROMISES, PROMISES
9. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
10. ALFIE
11. SOUTH AMERICAN GETAWAY
12. THE APRIL FOOLS
13. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
14. THE WINDOWS OF THE WORLD

収録時間約43分


ある音源をアーティスト名を変えてリリースする…。イージーリスニングの世界ではよくある話です。今回ご紹介するアルバムも正にそのケースで、The Feather Tunes は実態のない架空のグループ名。アルバム・アートワークで体育座りしてる女性も単なるイメージ。

じゃあ、いったい何なのか? このアルバムの中身は、電子オルガン奏者の斎藤英美が1971年にリリースしたLP 『 プレイ・バカラック 』 そのもの。収録曲数・曲順も全く同じです。そのLPジャケットがこちら↓
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LPのA面7曲 : T-1~7.
LPのB面7曲 : T-8~14.

…ということで、ここからは 斎藤英美の 『 プレイ・バカラック 』 として記事を書きすすめます。

斎藤英美(さいとう ひでみ、生年不明、2008年没)は、日本を代表する電子オルガン奏者のひとり。女性じゃなくて男性です。このLPの少し前にリリースされた 『 インクレディブル・サウンド 』 というLPのジャケットにはそのお姿が(↓画像左)。真面目そうな紳士といった感じですね。ところが、1980年前後になると髪を伸ばしてイメージが変わります(↓画像右)。私の記憶にある彼の姿はこの長髪のほうです。何が彼を変えたのか!? (ま、どーでもいいことですがcoldsweats01
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斎藤英美が本アルバムで弾いている電子オルガンは、ヤマハのエレクトーン(エレクトーンはヤマハ製電子オルガンの商品名)。日本で初めての電子オルガンは日本ビクターが1958年に発売したEO-4420で、ヤマハ初のエレクトーンD-1は翌1959年に誕生しました。1960年代から1970年代にかけて普及したエレクトーンは、レコードの世界でも活躍します。斎藤英美をはじめ、道志郎、沖浩一、桐野義文ほか多くのエレクトーン奏者のレコードがリリースされ、喫茶店のBGMなど巷に流れました。その後、エレクトーンが日本の電子オルガンの代名詞になったのは皆さんご存知のとおり。かくいう私も小学生の頃にエレクトーンを習ってまして、斎藤英美編曲のエレクトーン曲集も1冊購入したことがあります。私には難しすぎてサッパリ弾けませんでしたが(>_<)。

収録曲は全14曲。今でもよくカヴァーされる有名曲以外に、バカラック1969年のアルバム 『 MAKE IT EASY ON YOURSELF 』 収録のインスト曲T-5. 「 パシフィック・コースト・ハイウェイ 」 や、映画 『 明日に向って撃て! 』 のスキャット曲T-11. 「 自由への道 」 のようなマニアックな曲もチョイスされてます。そんな地味な曲が入ってても大丈夫なくらい、当時日本でバカラックがよく聴かれてたってことですね。

LPのA面に相当するT-1~7. はエレクトーンにギターとドラムスが加わった編成による演奏。各曲ともイントロは工夫していて面白いのですが、メロディが始まるとまぁ想定内というかちょっとチープなイージーリスニングってな感じ。そんななか、T-5. 「 パシフィック・コースト・ハイウェイ 」 は、原曲を再現しつつもアドリブで独自性を付与しようという明確な意図を感じました。ただ、残念ながらこの曲だけ音飛びがひどくてcrying。(本アルバムのMP3データはマスターテープからではなくLPから起こしてデジジタル化した海賊盤のようです)

一方、LPのB面に相当するT-8~14. はエレクトーンだけの演奏。エレクトーン経験者の私としては、こちらのほうを興味深く聴きました。シンセのような音源やサンプリング音源を持ちリズムも打ち込みできる現代のエレクトーンと較べると、当時のエレクトーンは音色や効果のバリエーションが少なくリズムも付いていませんでした。特にポップス曲を演奏する場合には、下鍵盤(左手で弾く)や足鍵盤(左足で弾く)で伴奏しつつリズムを刻まなければなりません。編曲も演奏も大変だったと思います。テンポが速く和音でリズムを刻み続けるT-8. 「 プロミセス・プロミセス 」 の演奏はその最たるもの。サスティンやマンドリンなどの効果を駆使してドリーミーな世界を表現したT-12. 「 エイプリル・フール 」 も印象的です。エレクトーンによる忠実な原曲の再現に挑戦したT-11. 「 自由への道 」 は、本アルバム最大の力作! 熱の入った演奏で、その意気込みは十分伝わってきました。

ギターとドラムスと一緒に演奏した前半7曲ではそうでもないのですが、エレクトーンだけの後半7曲は全体的にミスタッチ(鍵盤の押し間違い)が目立ちます。他の楽器にマスキングされないぶん、どうしてもアラが見えるんですねー。事情を知らない一般リスナーの中には不満に思う人がいてもおかしくありません。LPの帯に書かれた “ 楽譜付き!” が示すように、本アルバムは一般向けというよりはエレクトーン愛好家向けに制作されたのかも。

※エレクトーンにオートリズム(リズムボックスのこと)が備わるようになったのは1972年から。ただし、1970年発売のステージモデルEX-42(当時280万円!)にはオートリズム機能がありました。


【データ】
─ MP3 ─
『 PLAY BACHARACH GREATEST HITS
The Feather Tunes

─ オリジナル盤(LP) ─
『 プレイ・バカラック 』
斎藤英美

LP:1971年5月20日リリース (所有MP3は、℗2009年)
レーベル:キング・レコード (所有MP3は、Tam-Tam Media)
番号:SKK-679 (所有MP3は、不明)

クレジットなく詳細は不明

★ Amazonでの取り扱いは無し。iTunesで購入。

2017年1月22日 (日)

Music of Burt Bacharach/Warren Wills (2010年)

オーストラリア出身の作曲家/ピアニスト、ウォーレン・ウィルスのバカラック・カヴァー集です。(CD無し/デジタル配信のみ)

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1. THE LOOK OF LOVE
2. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
3. ON MY OWN
4. MAKE IT EASY ON YOURSELF
5. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
6. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
7. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
8. I SAY A LITTLE PRAYER
9. ALFIE
10. WALK ON BY
11. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
12. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
13. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
14. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
15. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME

収録時間約56分


オーストラリア出身の作曲家/ピアニスト、ウォーレン・ウィルスがピアノやエレピで奏でるバカラック・カヴァー集です。

Facebookに載ってるプロフィールによれば、2008年12月時点で47歳。計算すると1961年生まれですね。オーストラリアのメルボルンに生まれ、4歳からピアノ、10歳から作曲、12歳からはジャズへとその才能を広げていきました。20歳からはヨーロッパに渡り現在はロンドンとスペインを拠点に活動しているそうです。これまでに8つのオリジナルオペラ、10のミュージカル、13の子供のミュージカル、8つのアルバム、5つのオーケストラ作品などを手掛けたんだとか。(あくまでも2008年時点の情報です)

彼の風貌をネットからいくつか拾いました。ほー、なかなか渋いっすね。
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Amazonで検索しても彼名義のCDは2作しか見当たりません。しかし、デジタル配信ではビートルズ集、セリーンヌ・ディオン集、ラヴソング集、クラシック集など多くのアルバムがリリースされています。いかにも廉価盤然としていてチープなイージーリスニングと見られても仕方ないようなアルバム・アートワークばかりですが^^;。

本作も見た目はそんなアルバム。ところが、聴いてみるとなかなかどうして独特の魅力があるバカラック集だったんですょ、これが!

基本は、ピアノあるいはエレピのソロ。シンセ(シンセ・ストリングス又はシンセ・クワイヤ)が加わった曲も4曲あります。1曲だけ、エレピ+アコギ+打ち込みリズムという曲もありますが、アルバムのなかでは浮いちゃってます。デジタル配信なのでクレジットを確認できないのですが、ウォーレン・ウィルスによる一人多重録音じゃないかと思われます(T-10.を除いて)。

Piano (solo) : T-2,6,7,9,11,12,14,15.
Electoric piano (solo) : T-5,13.
Piano, Synth strings : T-3.
Piano, Synth choir : T-4.
Electoric piano, Synth strings : T-1.
Electoric piano, Synth choir : T-8.
Electoric piano, Acoustic guiatr, Programming : T-10.

収録されている15曲は所謂バカラック・カヴァーの定番曲ばかり。このあたりはイージーリスニング的かもしれません。でも、そのサウンドは、ジャズ、クラシック、環境系イージーリスニング(?)がうまくブレンドされたもの。決してチープなイージーリスニングではありませんでした。

ピアノソロの曲はどの曲も素敵です。キース・ジャレットの 『 The Köln Concert 』 を彷彿とさせる…なぁんて言ったら言い過ぎかもしれませんが、ところどころマジでそう思いました。T-2. 「 雨にぬれても 」 は、イントロや最初の部分はシンプルなのですが、原曲とは異なるコードに変えたり、意表を突く転調をしたり、メロディが次々変奏していったり、その美しく且つメリハリの効いたアレンジは素晴らしい。T-6. 「 ディス・ガイ 」 やT-9. 「 遥かなる影 」 、T-15. 「 愛の想い出 」 なんかもいいですねぇ~。

シンセが加わった4曲は、どの曲も最初の1分程度はシンセのみの演奏で荘厳な雰囲気を醸し出しています。特に、ピアノ+シンセ・ストリングスのT-3. 「 オン・マイ・オウン 」 は原曲とは違う繊細な雰囲気に仕上がっていて気に入りました。

いろんなシチュエーションでのBGMに好適だと思います。試聴してみることをお勧めします。


【データ】
『 Maestro Series - Music of Burt Bacharach 』
Warren Wills

MP3:2010年11月2日リリース
レーベル:Prestige Elite Records
番号:?

クレジットなく詳細不明

★ Amazonでの取り扱いは無し。iTunesで購入。

2017年1月18日 (水)

THE BACHARACH & DAVID SONGBOOK/Sheila Southern (1969年)

英国の女性シンガー、シェイラ・サザーンが1969年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。

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Original LP front cover

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所有LPのジャケット表/ジャケット裏

A-1. HERE I AM
A-2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
A-3. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
A-4. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
A-5. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
A-6. WIVES AND LOVERS
B-1. WALK ON BY
B-2. A HOUSE IS NOT A HOME
B-3. ALFIE
B-4. THE LOOK OF LOVE
B-5. TRAINS AND BOATS AND PLANES
B-6. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU

収録時間約35分


英国の女性シンガー、シェイラ・サザーンが1969年にリリースしたバカラック・カヴァー集です。

シェイラ・サザーンは、イングランド最北(スコットランドとの境界)のノーサンバーランド州生まれ。1958年~1975年にかけて英国のTV(音楽番組やコメディ番組)への出演歴があり、1962~1963年には自身名義のシングルを2枚リリース。…ネットで検索してもこの程度の情報しか得られませんでした。所有LPのジャケット裏には、 ─  彼女の録音は地元イングランドでよく売れ、BBCやITAネットワークのエンタメ・ショーのレギュラーでもある ─ とか書かれているのですが^^;。

本アルバムは、1969年に英国 Marble Arch からリリース。Marble Arch は英パイ・レコードの子会社で、廉価盤専門のレーベルだったみたいです。CD化はされておらず、私が所有しているLPは1970年に Ambassador からリリースされた米国盤。先々月(2016年11月)、ハイファイ・レコード・ストアさんで購入したばかりです。

─  最高にスリリングなバカラック・カヴァーが。 / おしとやかそうなジャケからは想像もつかない最高にスリリングなバカラック・カヴァーを隠し持つUKフィメール・ヴォーカルの逸品です! 超高速でブラシが走る 「 DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE 」 か、マイク・サムズ・シンガーズをフィーチャリングしたワルツな 「 WIVES AND LOVERS 」 か…。しっとりとした表現力、英国録音ならではのクリアなアレンジ、ともに◎。 ─

ストアのサイトに載っていたこのLPの紹介文を読んで、ついポチッとしてしまいました。アナログ・レコード・プレイヤーなんて持ってないのにshock。…12月に入ってAmazonで安いプレイヤーを購入。やっと聴くことができましたcoldsweats01

収録曲は、A-1. 「 ヒア・アイ・アム 」 を除いてバカラック&デイヴィッドの定番曲ばかり。まぁ順当な12曲といえます。

シェイラの歌唱自体は正直 “ 可もなく不可もなく ” といった感じなのですが、アレンジがなかなか良くって。全編を通して、オリジナルやヒットした曲のヴァージョンとは一線を画す独自のアレンジが施されているんです。共通するのは、①ふんわりと包み込むドリーミーなストリングス、②随所にみられるオリジナリティあるオブリガート(対旋律)。

なかでも印象に残った曲は…

A-1. 「 ヒア・アイ・アム 」 : ストリングスとハープをバックに、超スロー・テンポで “ Here I am, here I'll stay ” と歌う冒頭の30秒間。この部分を聴いて、私は本アルバムのドリーミーな世界に一気に引き込まれました。

A-3. 「 サン・ホセへの道 」 : サイトの紹介文で言及されている超高速のブラシ・ワークに加えて、8分音符が駆け足で昇降するウッド・ベース、大活躍するホルンとトロンボーンと鐘の音がとってもユニークで新鮮です。

B-6. 「 ディス・ガール 」 : 曲の前半はナント8分の6拍子にアレンジ。これがまたドリーミーで魅力的なんです。中盤からはスウィングのリズムで盛り上がり、最後はまた8分の6拍子になってエンディング。実に新鮮です。

ただ、所有LPはコンディションがイマイチで、ウチのプレイヤーも安物だし音質的には 「 う~ん 」 な感じ。CDリイシューして欲しいところですが、廉価盤レーベルだし無理かもしれませんねー。でもでも、世の中には奇特な人がいらっしゃいまして、本アルバムのうち数曲はYouTubeにアップされています。オススメの3曲は見当たりませんでしたが、興味がありましたら是非 Sheila Southern で検索を!


【データ】
『 SHEILA SOUTHERN SINGS THE BACHARACH & DAVID SONGBOOK 』
Sheila Southern

注)所有LP(US盤)のタイトル
『 THE BURT BACHARACH SONGBOOK SUNG BY SHEILA SOUTHERN This Girl's in Love with You

LP:1969年リリース (所有LPは、1970年リリースのUS盤)
レーベル:Marble Arch Records (UK) (所有LPは、Ambassador (US) )
番号:MALS 1150 (所有LPは、S 98099)

Producers: Derek Boulton & Monty Presky
Arrangements: Derek Cox
Orchestra Conducted by Paul Fenoulhet with The Mike Sammes Singers
Recorded in England at Pye Studios

★ Amazonでの取り扱いは無し。

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