レッツ・ダンス・ウィズ・バカラック&レイ/猪俣猛とサウンド・リミテッド (1971年)
バート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲を社交ダンス用にアレンジしたLP2枚組アルバムです。日本社交舞踏教師協会撰定!
(画像は全てクリックすると大きくなります)

全24トラック中、バカラック作品は12トラック
Disc1《ラテン編》
A1. LOVE STORY
A2. UN HOMME ET UNE FEMME
A3. KNOWING WHEN TO LEAVE
A4. LIVE FOR A LIFE
A5. LIFE, LOVE AND LIFE
A6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
B1. MEXICAN DIVORCE
B2. HELLO GOODBYE
B3. THE LOOK OF LOVE
B4. DU SOLEIL PLEIN LES YEUX
B5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
B6. BOND STREET
Disc2《モダン編》
A1. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD
A2. APRIL FOOLS
A3. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
A4. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
A5. 13 JOURS EN FRANCE
A6. ENCOUNTER
B1. MADLY
B2. CONCERTO POUR LA FIN'D UN AMOUR
B3. LA FONTAINE
B4. LA VALSE DU MARIAGE
B5. PROMISES, PROMISES
B6. SOUTH AMERICAN GETAWAY
収録時間(Disc1/2)約35分/約31分
バート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲を社交ダンス用にアレンジしたLP2枚組アルバムです。1971年リリース。
帯や裏ジャケに記載あるとおり、本アルバムは "日本社交舞踏教師協会・撰定!"。日本社交舞踏教師協会で検索すると、一般社団法人日本社交舞踏教師協会(NATD)なるサイトが出てきます。歴史ある社交ダンスプロ教師の協会だそうで、サイトの中を覗くと "カム&ダンスシリーズ" という社交ダンス用CDの通販もしていました。社交ダンス用レコードでググると昔の中古レコードがたくさん出てきますし、社交ダンス輸入盤CDの専門通販サイトやキングレコードのサイト(社交ダンス用CDが11タイトル載ってました)も出てきます。レコード会社からすると企画盤の一種ということになるんでしょうが、昔も今も一定の需要があるんだなぁと得心しました。
本アルバムは当時どういう位置付けだったのでしょうか。ジャケット見開き面左側にある "アルバム紹介" を全文引用します。
─ 今をときめく、世界の花形人気作曲家の双璧であるバート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲をパレードして、わが国のダンス・ミュージックにエポック・メーキングな内容のアルバムを提供したキング・レコードの壮挙にまず感謝したい。
バカラックとレイの音楽を関心のそとにおいたならば、1970年代のポピュラー音楽と映画音楽は、軸のない車の輪のようなものになろう。それは、ダンス・ミュージックについてもいえることだが、わが国のダンス・シーンの音楽は、とかく保守性が強いので、とくに、若いジェネレーションは、欲求不満に駆られがちであった。バカラックとレイの新鮮なメロディーによるフォーマルなダンス音楽で踊れたら、どんなに嬉しいだろう、とは多くのダンス・ファンの熱烈な願いであった。
バカラックとレイの一世を風靡しているヒット曲の数々は、いろんな意味で、従来のポピュラーにくらべて、音楽性にいちじるしい進化発展を内包している。これがために、ダンス音楽に編曲するうえで、かなりの困難がともなうのである。彼らのヒット・ナンバーが、ほんの一部を除いて、欧米のダンス音楽にあっても、いまだ広く使用されていない理由だ。そういう条件と環境にあって、敢然と、新しい時代のためのダンス音楽の見本といってよい本アルバムが制作され、ダンス・シーンのゴージャスな贈りものとして、レコード市場を飾ることは、踊りの好きな人々ばかりでなく、ポップスのファン大衆にも、絶大な拍手でむかえられるにちがいない。
ダンス音楽のアルバムにおける旧来の解説では、まったく閑却、無視されていた録音の演奏パーソネルを明記したのも、本アルバムの音楽が、いかに音楽的に優秀で、良心的な企画のうえに推進されているかを問いかけるためである。
バート・バカラックとフランシス・レイのヒット名曲の代表作は、ここにことごとくといってよく網羅されている。ダンスとポップスのファン大衆は、二大巨星の珠玉のメロディーを、あらためて賞味して欲しい。 ─

ごく最近購入した中古LP、ダブルジャケットは見開き面こそ多少黄ばみがあるものの色褪せや破れもなく上々で、盤面もスクラッチノイズ少なく新品に近い状態。惜しむらくは帯の表側がジャケットと癒着していたコト(見開き面はOK)。剥がそうとするとジャケット印刷面がビリビリと破れ始めたので途中で断念😥。というわけで表ジャケは帯付きの画像になっております、ご容赦ください🙇。
ちなみに、本アルバムの名義はジャケットと帯で違いがあります。とゆーか、そもそもアーティスト名義は無いんですね。表現としては、帯が<演奏>猪俣猛とサウンド・リミテッド+ストリングスで、ジャケットが演奏=猪俣猛とサウンド・リミテッド。猪俣猛は1936年2月宝塚市生まれ(2024年10月没、享年88)の名ジャズ・ドラマー。サウンド・リミテッドは猪俣猛が1969年暮れに結成したジャズ・ロックのグループで、気鋭の若手ミュージシャンを集めていました。レコーディングによって面子は違っていたようですが。本アルバムのパーソネルは後述する【データ】をご覧ください。んで、Disc2《モダン編》のみストリングスを加えた編成になっていて、"+ストリングス" はDisc2だけなんですね。拙ブログでは猪俣猛とサウンド・リミテッド名義とさせていただきました。
収録曲は全24曲。Disc1《ラテン篇》/Disc2《モダン篇》それぞれ12曲ずつで、Disc1/2共にバカラックとレイが6曲ずつ。従ってトータルでバカラック12曲とレイ12曲を取り上げています。ジャケット見開き面右側の "各曲解説" より曲名とダンスの種類をピックアップして表にしました。以降、バカラック作品に絞って簡単に1曲ずつコメントしていきます。あっ、そうそう。ラテン篇の3曲(Disc1-A3,B1,B6)はバカラック物コンピ集『 ラヴ・サウンズ・スタイル <バート・バカラック作品集> 』で紹介済みでして、コメントもそこからパクっちゃいます。
なお、"各曲解説" は原曲の紹介が主なのですが、1971年当時各曲がどう認識されていたかが窺えます。拡大すればなんとか読み取れると思います。興味があれば画像をクリックしてみてください。
Disc1《ラテン篇》

A3.「 去りし時を知って 」:比較的ノーマルなアレンジ。賑やかなラテン・パーカッションがいかにもって感じ。A6.「 恋よ、さようなら 」:イントロのワウ・トランペットのフレーズが特徴的。ライトなルンバ?。変拍子で2拍子になる箇所は4拍子にストレッチ。B1.「 恋するメキシカン 」:ジャガジャ〜ンやギュイ〜ンといったギターがロックしています。B3.「 恋のおもかげ 」:メロディを奏でる主役は1・3コーラス目がマリンバ、2コーラス目はフルート。雰囲気はまったり。B5.「 ディス・ガイ 」:ノリのいいテンポ(♩≒144)のスウィングにアレンジ。中間部ではトランペット、トロンボーン、ヴィブラフォンのソロも。B6.「 ボンド・ストリート 」はズンチャチャの原曲に対しズンチャッチャとリズムが跳ねているのが特徴で、ギターのアドリヴも渋いっす。
Disc2《モダン篇》

A1.「 雨にぬれても 」:イントロでのヴァイオリンによるロングトーンとグロッケンによる雨粒音が印象的。他はよくあるアレンジ。A2.「 エイプリル・フール 」:この曲としては速めのテンポ(♩≒116)で軽快なアレンジ。Aメロの2拍子になる変拍子もそのまま。A3.「 遥かなる影 」:全体的にオーソドックスなアレンジですが、エレキ・ヴァイオリンが効果的。A4.「 サン・ホセへの道 」:スウィング調にアレンジ。Bメロでのウォーキングベースがアクセントになっています。B5.「 プロミセス・プロミセス 」:変拍子の嵐が吹くこの曲をほぼ原曲通りのリズムでアレンジ。ちゃんと踊れるんでしょうか。B6.「 自由への道 」:原曲はダバダバスキャットの3拍子曲で2種類のテンポ(前半・後半は♩≒210、中間部は♩≒68)で演奏していますが、ここではその中間のテンポ(♩≒134)で全編演奏しています。無理してこの曲取り上げなくてもいいのに…と思っちゃいました。
全体的に、前田憲男が編曲したDisc1《ラテン篇》の方が攻めたアレンジ。Disc2《モダン篇》はB5,B6あたり選曲自体に無理があります。他にダンス向きの曲(例えば「 アルフィー 」「 世界は愛を求めている 」など)があると思うんですけどねぇ。
また、ここまで全く触れませんでしたがフランシス・レイの曲は聴いていてちょっと退屈に感じました。私が知らない曲が多かったせいもあるとは思いますが…。1970年前後、イージーリスニングのジャンルでは、バート・バカラックとフランシス・レイの曲がセットになっているレコードが沢山リリースされていました(例えば原信夫とシャープス&フラッツの『 レイ・アンド・バカラック・オン・ブラス 』とか)。映画音楽がチャート上位に食い込んでた当時はフランシス・レイとバート・バカラックが双璧だったんですね。でも、今聴いて新鮮なのはバカラックの曲だなぁ…と。そんなことも感じたアルバムでした。
ここからはオマケ。MP3で所有している猪俣猛関連のバカラック・カヴァーをご紹介。
八木正生・江草啓介(お二人ともピアニスト)が1976年にリリースしたジャズ系イージーリスニングのアルバム『 サウンド・オブ・エレピアン 星に願いを/雨にぬれても 』。猪俣猛がプロデュースし、猪俣猛&フレンズとして共演もしているのですが、バカラック・カヴァーを2曲収録しています。1曲はアルバムタイトルにもなっている「 雨にぬれても 」(2:36)。メロディはエレピアン、フルートが奏でています。もう1曲は「 エイプリル・フール 」(2:45)で、メロディはエレピアン、トランペット、アコギが奏でています。
ちなみに、エレピアンは日本の電気ピアノの草分けで日本コロムビアが1962年開発に着手。リード(振動板)を通常のフェルトハンマーで叩き、その振動音を電気信号に変換・増幅する方式で、ウーリッツァーピアノに近いみたいです。なかなか世に認知されずに苦戦していましたが、1974年夏、神奈川県の団地で起こったいわゆる "ピアノ殺人事件" をきっかけにして、音量調節のできるピアノということでにわかに時代の楽器として注目されたんだそう。
猪俣猛とウエスト・ライナーズとして1971年2月にリリースしたイージーリスニング・ジャズのアルバム『 マイ・ウェイ/ウエスト・ライナーズの復活 』にて「 遥かなる影 」(2:50) をカヴァー。編曲は前田憲男で、シャッフルではなく8ビートのシンプルで軽快なリズムの演奏。メロディはトランペット、テナーサックス、ギターが繋いでいきます。少しだけギターのアドリヴもあります。紹介済みのバカラック物コンピ集『 バカラック スタイル 』に収録されているのですが、その記事でコメントしていなかったのでこちらでコメントした次第。
【データ】
『 レッツ・ダンス・ウィズ・バカラック&レイ ダンス専科=ラテン編・モダン編 』 (英語タイトル:Let's Dance Bacharach & Lai)
猪俣猛とサウンド・リミテッド
LP:1971年12月5日リリース
レーベル:キングレコード (JP)
番号:SKM 1169〜70
Disc1《ラテン編》
編曲:前田憲男
ドラムス:猪俣 猛
ベース:鈴木 淳
エレキ・ギター、フォーク・ギター:中牟礼貞則、水谷公生
ピアノ、エレキ・ピアノ:大原繁二
トランペット:伏見哲夫、鈴木武久、吉田謙三
トロンボーン:キジ西村
フルート、アルトサックス:鈴木重男
ソプラノ・サックス、アルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックス:ジェイク・F・コンセプション
ラテン・パーカッション:中島 御
ヴァイヴ、マリンバ:金山 均
─ ダンス・ファンの方は、以上のような日本のミュージシャンが、ジャズの世界での、代表的なトップ級の実力と名声をもつ存在である事実にうといかもしれない。無理もない。わが国のダンス・ミュージックの市場は、これらのそうそうたる若い俊英たちが活躍するには、あまりに貧寒だからである。 ─ (ライナーノーツより、パーソネルについて)
Disc2《モダン編》
編曲:加地克行
ドラムス:猪俣 猛
ベース:鈴木 淳
エレキ・ギター:中牟礼貞則
ピアノ、チェンバロ:大原繁二
トランペット:鈴木武久、吉田謙三
フルート、アルトサックス、クラリネット:清水万紀夫
オーボエ:坂 宏之
フルート:旭 孝
ラテン・パーカッション:中島 御
グロッケン、マリンバ、ヴァイヴ:金山 均
ハープ:今道美樹子
エレキ・ヴァイオリン:玉木宏樹 (A3,B1,B4)
ヴァイオリン:7名、ヴィオラ:2名、チェロ:2名
─ ウィズ・ストリングスのダンス・ミュージックで、しかも、モダン・ダンス種目の演奏において、こういう当代の一流ジャズメンを揃えたレコード録音は、文字通りの超豪華盤である。手前味噌という古いコトバがあるが…。ラテン・ダンス篇と併せて、手前味噌かどうかは、きいてくれる各自の耳が判断するであろう‼︎ ─ (ライナーノーツより、パーソネルについて)
監修・解説:榛名静男
発売元・キングレコード株式会社
KING RECORD CO., LTD. Japan (P) 1971
<2枚組 / ¥2,400>
※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し























































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