カテゴリー「カヴァーアルバム」の200件の記事

★バカラック・カヴァー曲が主体でBacharach をアルバムのタイトルやサブタイトルに入れているアルバム ★収録曲のうち半分以上がバカラック・カヴァーのアルバム ★複数アーティストによって新たにカヴァーしたアルバム ★複数アーティストによるトリビュートコンサートのライブアルバム

2025年9月 7日 (日)

レッツ・ダンス・ウィズ・バカラック&レイ/猪俣猛とサウンド・リミテッド (1971年)

バート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲を社交ダンス用にアレンジしたLP2枚組アルバムです。日本社交舞踏教師協会撰定!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全24トラック中、バカラック作品は12トラック

Disc1《ラテン編》
A1. LOVE STORY
A2. UN HOMME ET UNE FEMME
A3. KNOWING WHEN TO LEAVE
A4. LIVE FOR A LIFE
A5. LIFE, LOVE AND LIFE
A6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
B1. MEXICAN DIVORCE
B2. HELLO GOODBYE
B3. THE LOOK OF LOVE
B4. DU SOLEIL PLEIN LES YEUX
B5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
B6. BOND STREET

Disc2《モダン編》
A1. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON MY HEAD
A2. APRIL FOOLS
A3. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
A4. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
A5. 13 JOURS EN FRANCE
A6. ENCOUNTER
B1. MADLY
B2. CONCERTO POUR LA FIN'D UN AMOUR
B3. LA FONTAINE
B4. LA VALSE DU MARIAGE
B5. PROMISES, PROMISES
B6. SOUTH AMERICAN GETAWAY

収録時間(Disc1/2)約35分/約31分



バート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲を社交ダンス用にアレンジしたLP2枚組アルバムです。1971年リリース。

帯や裏ジャケに記載あるとおり、本アルバムは "日本社交舞踏教師協会・撰定!"。日本社交舞踏教師協会で検索すると、
一般社団法人日本社交舞踏教師協会(NATD)なるサイトが出てきます。歴史ある社交ダンスプロ教師の協会だそうで、サイトの中を覗くと "カム&ダンスシリーズ" という社交ダンス用CDの通販もしていました。社交ダンス用レコードでググると昔の中古レコードがたくさん出てきますし、社交ダンス輸入盤CDの専門通販サイトやキングレコードのサイト(社交ダンス用CDが11タイトル載ってました)も出てきます。レコード会社からすると企画盤の一種ということになるんでしょうが、昔も今も一定の需要があるんだなぁと得心しました。

本アルバムは当時どういう位置付けだったのでしょうか。ジャケット見開き面左側にある "アルバム紹介" を全文引用します。

─ 今をときめく、世界の花形人気作曲家の双璧であるバート・バカラックとフランシス・レイのヒット曲をパレードして、わが国のダンス・ミュージックにエポック・メーキングな内容のアルバムを提供したキング・レコードの壮挙にまず感謝したい。
バカラックとレイの音楽を関心のそとにおいたならば、1970年代のポピュラー音楽と映画音楽は、軸のない車の輪のようなものになろう。それは、ダンス・ミュージックについてもいえることだが、わが国のダンス・シーンの音楽は、とかく保守性が強いので、とくに、若いジェネレーションは、欲求不満に駆られがちであった。バカラックとレイの新鮮なメロディーによるフォーマルなダンス音楽で踊れたら、どんなに嬉しいだろう、とは多くのダンス・ファンの熱烈な願いであった。
バカラックとレイの一世を風靡しているヒット曲の数々は、いろんな意味で、従来のポピュラーにくらべて、音楽性にいちじるしい進化発展を内包している。これがために、ダンス音楽に編曲するうえで、かなりの困難がともなうのである。彼らのヒット・ナンバーが、ほんの一部を除いて、欧米のダンス音楽にあっても、いまだ広く使用されていない理由だ。そういう条件と環境にあって、敢然と、新しい時代のためのダンス音楽の見本といってよい本アルバムが制作され、ダンス・シーンのゴージャスな贈りものとして、レコード市場を飾ることは、踊りの好きな人々ばかりでなく、ポップスのファン大衆にも、絶大な拍手でむかえられるにちがいない。
ダンス音楽のアルバムにおける旧来の解説では、まったく閑却、無視されていた録音の演奏パーソネルを明記したのも、本アルバムの音楽が、いかに音楽的に優秀で、良心的な企画のうえに推進されているかを問いかけるためである。
バート・バカラックとフランシス・レイのヒット名曲の代表作は、ここにことごとくといってよく網羅されている。ダンスとポップスのファン大衆は、二大巨星の珠玉のメロディーを、あらためて賞味して欲しい。  ─

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ごく最近購入した中古LP、ダブルジャケットは見開き面こそ多少黄ばみがあるものの色褪せや破れもなく上々で、盤面もスクラッチノイズ少なく新品に近い状態。惜しむらくは帯の表側がジャケットと癒着していたコト(見開き面はOK)。剥がそうとするとジャケット印刷面がビリビリと破れ始めたので途中で断念😥。というわけで表ジャケは帯付きの画像になっております、ご容赦ください🙇。

ちなみに、本アルバムの名義はジャケットと帯で違いがあります。とゆーか、そもそもアーティスト名義は無いんですね。表現としては、帯が<演奏>猪俣猛とサウンド・リミテッド+ストリングスで、ジャケットが演奏=猪俣猛とサウンド・リミテッド。猪俣猛は1936年2月宝塚市生まれ(2024年10月没、享年88)の名ジャズ・ドラマー。サウンド・リミテッドは猪俣猛が1969年暮れに結成したジャズ・ロックのグループで、気鋭の若手ミュージシャンを集めていました。レコーディングによって面子は違っていたようですが。本アルバムのパーソネルは後述する【データ】をご覧ください。んで、Disc2《モダン編》のみストリングスを加えた編成になっていて、"+ストリングス" はDisc2だけなんですね。拙ブログでは猪俣猛とサウンド・リミテッド名義とさせていただきました。

収録曲は全24曲。Disc1《ラテン篇》/Disc2《モダン篇》それぞれ12曲ずつで、Disc1/2共にバカラックとレイが6曲ずつ。従ってトータルでバカラック12曲とレイ12曲を取り上げています。ジャケット見開き面右側の "各曲解説" より曲名とダンスの種類をピックアップして表にしました。以降、バカラック作品に絞って簡単に1曲ずつコメントしていきます。あっ、そうそう。ラテン篇の3曲(Disc1-A3,B1,B6)はバカラック物コンピ集『 ラヴ・サウンズ・スタイル <バート・バカラック作品集> 』で紹介済みでして、
コメントもそこからパクっちゃいます。
なお、"各曲解説" は原曲の紹介が主なのですが、1971年当時各曲がどう認識されていたかが窺えます。拡大すればなんとか読み取れると思います。興味があれば画像をクリックしてみてください。
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Disc1《ラテン篇》
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A3.「 去りし時を知って 」:比較的ノーマルなアレンジ。賑やかなラテン・パーカッションがいかにもって感じ。A6.「 恋よ、さようなら 」:イントロのワウ・トランペットのフレーズが特徴的。ライトなルンバ?。変拍子で2拍子になる箇所は4拍子にストレッチ。B1.「 恋するメキシカン 」:ジャガジャ〜ンやギュイ〜ンといったギターがロックしています。B3.「 恋のおもかげ 」:メロディを奏でる主役は1・3コーラス目がマリンバ、2コーラス目はフルート。雰囲気は
まったり。B5.「 ディス・ガイ 」:ノリのいいテンポ(♩≒144)のスウィングにアレンジ。中間部ではトランペット、トロンボーン、ヴィブラフォンのソロも。B6.「 ボンド・ストリート 」はズンチャチャの原曲に対しズンチャッチャとリズムが跳ねているのが特徴で、ギターのアドリヴも渋いっす。

Disc2《モダン篇》
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A1.「 雨にぬれても 」:イントロでのヴァイオリンによるロングトーンとグロッケンによる雨粒音が印象的。他はよくあるアレンジ。A2.「 エイプリル・フール 」:この曲としては速めのテンポ(♩≒116)で軽快なアレンジ。Aメロの2拍子になる変拍子もそのまま。A3.「 遥かなる影 」:全体的にオーソドックスなアレンジですが、エレキ・ヴァイオリンが効果的。A4.「 サン・ホセへの道 」:スウィング調にアレンジ。Bメロでのウォーキングベースがアクセントになっています。B5.「 プロミセス・プロミセス 」:変拍子の嵐が吹くこの曲をほぼ原曲通りのリズムでアレンジ。ちゃんと踊れるんでしょうか。B6.「 自由への道 」:原曲はダバダバスキャットの3拍子曲で2種類のテンポ(前半・後半は♩≒210、中間部は♩≒68)で演奏していますが、ここではその中間のテンポ(♩≒134)で全編演奏しています。無理してこの曲取り上げなくてもいいのに…と思っちゃいました。

全体的に、前田憲男が編曲したDisc1《ラテン篇》の方が攻めたアレンジ。Disc2《モダン篇》はB5,B6あたり選曲自体に無理があります。他にダンス向きの
曲(例えば「 アルフィー 」「 世界は愛を求めている 」など)があると思うんですけどねぇ。

また、ここまで全く触れませんでしたがフランシス・レイの曲は聴いていてちょっと退屈に感じました。私が知らない曲が多かったせいもあるとは思いますが…。1970年前後、イージーリスニングのジャンルでは、バート・バカラックとフランシス・レイの曲がセットになっているレコードが沢山リリースされていました(例えば原信夫とシャープス&フラッツの『 レイ・アンド・バカラック・オン・ブラス 』とか)。映画音楽がチャート上位に食い込んでた当時はフランシス・レイとバート・バカラックが双璧だったんですね。でも、今聴いて新鮮なのはバカラックの曲だなぁ…と。そんなことも感じたアルバムでした。

ここからはオマケ。MP3で所有している猪俣猛関連のバカラック・カヴァーをご紹介。
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八木正生・江草啓介(お二人ともピアニスト)が1976年にリリースしたジャズ系イージーリスニングのアルバム『 サウンド・オブ・エレピアン 星に願いを/雨にぬれても 』。猪俣猛がプロデュースし、猪俣猛&フレンズとして共演もしているのですが、バカラック・カヴァーを2曲収録しています。1曲はアルバムタイトルにもなっている
「 雨にぬれても 」(2:36)。メロディはエレピアン、フルートが奏でています。もう1曲は「 エイプリル・フール 」(2:45)で、メロディはエレピアン、トランペット、アコギが奏でています。
ちなみに、エレピアンは日本の電気ピアノの草分けで日本コロムビアが1962年開発に着手。リード(振動板)を通常のフェルトハンマーで叩き、その振動音を電気信号に変換・増幅する方式で、ウーリッツァーピアノに近いみたいです。なかなか世に認知されずに苦戦していましたが、1974年夏、神奈川県の団地で起こったいわゆる "ピアノ殺人事件" をきっかけにして、音量調節のできるピアノということでにわかに時代の楽器として注目されたんだそう。
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猪俣猛とウエスト・ライナーズとして1971年2月にリリースしたイージーリスニング・ジャズのアルバム『 マイ・ウェイ/ウエスト・ライナーズの復活 』にて
「 遥かなる影 」(2:50) をカヴァー。編曲は前田憲男で、シャッフルではなく8ビートのシンプルで軽快なリズムの演奏。メロディはトランペット、テナーサックス、ギターが繋いでいきます。少しだけギターのアドリヴもあります。紹介済みのバカラック物コンピ集『 バカラック スタイル 』に収録されているのですが、その記事でコメントしていなかったのでこちらでコメントした次第。


【データ】
『 レッツ・ダンス・ウィズ・バカラック&レイ ダンス専科=ラテン編・モダン編 』 (英語タイトル:Let's Dance Bacharach & Lai)
猪俣猛とサウンド・リミテッド

LP:1971年12月5日リリース
レーベル:キングレコード (JP) 
番号:SKM 1169〜70

Disc1《ラテン編》
編曲:前田憲男
ドラムス:猪俣 猛
ベース:鈴木 淳
エレキ・ギター、フォーク・ギター:中牟礼貞則、水谷公生
ピアノ、エレキ・ピアノ:大原繁二
トランペット:伏見哲夫、鈴木武久、吉田謙三
トロンボーン:キジ西村
フルート、アルトサックス:鈴木重男
ソプラノ・サックス、アルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックス:ジェイク・F・コンセプション
ラテン・パーカッション:中島 御
ヴァイヴ、マリンバ:金山 均
─ ダンス・ファンの方は、以上のような日本のミュージシャンが、ジャズの世界での、代表的なトップ級の実力と名声をもつ存在である事実にうといかもしれない。無理もない。わが国のダンス・ミュージックの市場は、これらのそうそうたる若い俊英たちが活躍するには、あまりに貧寒だからである。  ─ (ライナーノーツより、パーソネルについて)

Disc2《モダン編》
編曲:加地克行
ドラムス:猪俣 猛
ベース:鈴木 淳
エレキ・ギター:中牟礼貞則
ピアノ、チェンバロ:大原繁二
トランペット:鈴木武久、吉田謙三
フルート、アルトサックス、クラリネット:清水万紀夫
オーボエ:坂 宏之
フルート:旭 孝
ラテン・パーカッション:中島 御
グロッケン、マリンバ、ヴァイヴ:金山 均
ハープ:今道美樹子
エレキ・ヴァイオリン:玉木宏樹 (A3,B1,B4)
ヴァイオリン:7名、ヴィオラ:2名、チェロ:2名
─ ウィズ・ストリングスのダンス・ミュージックで、しかも、モダン・ダンス種目の演奏において、こういう当代の一流ジャズメンを揃えたレコード録音は、文字通りの超豪華盤である。手前味噌という古いコトバがあるが…。ラテン・ダンス篇と併せて、手前味噌かどうかは、きいてくれる各自の耳が判断するであろう‼︎ ─ (ライナーノーツより、パーソネルについて)

監修・解説:榛名静男
発売元・キングレコード株式会社
KING RECORD CO., LTD. Japan (P) 1971
<2枚組 / ¥2,400>

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2025年7月 6日 (日)

Bacharach on Guitar/Jack Jezzro (2025年)

米国のジャズ・ギタリスト、ジャック・ジェズロによるギター・カルテット+αのバカラック・カヴァー集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
2. I SAY A LITTLE PRAYER
3. THE LOOK OF LOVE
4. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
7. WALK ON BY
8. ALFIE
9. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
10. ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)
11. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
12. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR

収録時間約53分


米国のジャズ・ギタリスト、ジャック・ジェズロによるギター・カルテット+αのバカラック・カヴァー集です。

Jack Jezzro(ジャック・ジェズロ)は、1957年12月ウェストバージニア州生まれ。1981年からテネシー州ナッシュビルを拠点に活動。グラミー・アーティストのレコーディングに多数参加、またスタジオ・ミュージシャンとして300を超えるアルバムにクレジットされている国際的なジャズ・ギタリスト、コンポーザー、プロデューサーなんだそう。プロデューサーとしては、日本でも人気があるピアニスト、ビージー・アデールのプロデュースを17年にわたり30作以上手がけていることで知られています。
(公式サイト https://www.jackjezzro.com
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ジャック・ジェズロは、自身名義でもイージーリスニングジャズ或いはスムースジャズの分野を中心にアルバムを多数リリースしておいでです。本作もそのうちの一作。今年5月にMP3でリリース後、6月にはCDもリリースされたのですが日本のアマゾンではCD購入できないようで(それにライナーやクレジットが付いてないオンデマンド的なCD-Rの可能性が高いし)、それならばとMP3を購入しました。まぁYouTubeでも自動生成でフルアルバム聴けるんですけどね〜。…ということで動画を貼り付けておきます。

あと、ジャック・ジェズロさんご本人のYouTubeチャンネルにレコーディング動画が4
アップされています。併せてリンクを貼っておきます。
WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
I SAY A LITTLE PRAYER
(THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
ARTHUR'S THEME (BEST THAT YOU CAN DO)   👈2025/7/11追加

基本的にジャック・ジェズロのギターとピアノトリオによるカルテット。曲により、オルガン、サックス(ソプラノ、テナー)、トランペット、パーカッションが加わります。暑くなるこれからの時季にピッタリの涼しげなイージーリスニングジャズで、T-4.「 遥かなる影 」もボサノヴァ調にアレンジ。各曲にはアドリヴもありますがハードなものではなくてあくまでもクール。聴いていて心地良いサウンドです。個々の曲について細かく解説する気も起きません😅。難しいことは考えずに、聴いて涼し〜くなりましょう🎐。

各曲それぞれ曲名にフィーチャリングアーティストが添えられています。ジャック・ジェズロとフィーチャリングアーティスト以外にもミュージシャンがいるはずですが、クレジットがないのでわかりません。私が聴いた感覚で、各曲の編成とリードorアドリヴの楽器を整理しておきます。
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ここからはオマケ。
ジャック・ジェズロがプロデュースした米国の女性ジャズ・ピアニスト、Beegie Adair(ビージー・アデール)の関連アルバムより、MP3で所有するバカラック・カヴァーをご紹介。
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ビージー・アデールが2011年に日本でリリースしたピアノトリオのアルバム『 My Piano Memory 』で「 I SAY A LITTLE PRAYER(小さな願い)」(3:51)をカヴァー。ピアノの音色をはじめトリオ全体が軽快なフィーリングの演奏で、リラックスして聴けます。
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また、米国のサックス奏者Denis Solee(デニス・ソリー)とビージー・アデールのピアノトリオによるカルテット編成のアルバム『 Trav'lin' Light 』(Denis Solee with The Beegie Adair Trio 名義、2007年リリース)で「 DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE(サン・ホセへの道)」(4:06)をカヴァー。デニス・ソリーのテナー・サックスがメインですが途中でピアノのアドリヴもあります。こちらもリラックスして聴けます。


【データ】
『 Bacharach on Guitar 』
Jack Jezzro

MP3/CD:2025年5月23日リリース/同年6月13日リリース
レーベル:Green Hill Productions and Burton Avenue Music
番号:ー/1000172526
※ 所有しているのはMP3のみ

Producer: Jack Jezzro
Jack Jezzro(ジャック・ジェズロ):guitar
Pat Coil(パット・コイル):piano, organ
Jacob Jezioro(ジェイコブ・ジェジオーロ):bass
Danny Gottlieb(ダニー・ゴットリーブ):drums
Joel Frahm(ジョエル・フラーム):a.sax, s.sax
John Mock(ジョン・モック):multi-instrumentalist
Leif Shires(リーフ・シャイアーズ):trumpet
Christopher Phillips(クリストファー・フィリップス):piano

Amazonリンク(MP3

2025年6月 1日 (日)

ベスト・オブ・バート・バカラック/ユニオン・オール・スターズ (1970年)

 1970年にテイチク傘下のユニオン・レコードからリリースされたイージーリスニングのバカラック集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
A2. ANY DAY NOW
A3. MESSAGE TO MICHAEL
A4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
A5. WALK ON BY
A6. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU
B1. I SAY A LITTLE PRAYER
B2. DON'T MAKE ME OVER
B3. THE WINDOWS OF THE WORLD
B4. WISHIN' AND HOPIN’
B5. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
B6. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN

収録時間約36分


1970年にテイチク傘下のユニオン・レコードからリリースされたイージーリスニングのバカラック集です。

アーティスト名義はユニオン・オール・スターズ。ユニオン・レコードのオールスターって誰? …演奏者についての解説・クレジットは一切ありません。常識的に考えるとスタジオ・ミュージシャンの寄せ集めでしょうね。ストリングス、金管、サックス(持ち替えでフルートやオーボエ)、ギター、Eベース、ドラムス、ヴィブラフォン、ピアノが鳴っています。女性コーラスも入ってますし、時折チェンバロやハモンドオルガンっぽい音も聴こえます。

一方、編曲者は2名クレジットされています。池田 孝氏は、'60年代後半〜'70年代前半にかけて大映レコードや東宝レコードからリリースされた俳優(勝新太郎、松方弘樹等)のレコードや、東芝やRCAやテイチク/ユニオンからリリースされた歌謡曲の編曲者として名前が見つかります。利根常昭氏は、同じく'60年代後半〜'70年代前半あたりのGS/歌謡曲系のソングライター&編曲者。ザ・サベージの「 この手のひらに愛を 」で作詞・作曲・編曲を、ザ・スパイダース「 太陽の翼 」では作詞・作曲を担当しているお方です。


収録されている全12曲はカヴァー定番曲ばかり。ボブ・ヒリアードと組んだA2.「 エニィ・デイ・ナウ 」を除く11曲がバカラック&デイヴィッドコンビの作品です。ライナーノーツの曲目解説の日付が1970年4月8日と記されていることから、本作は1970年春〜夏頃のリリースと思われます。従ってカーペンターズがヒット(1970年6月全米1位)させた「 遥かなる影 」は入っておりません。

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聴いてみますと…これといった売りの無い凡庸なイージーリスニングでございました。A1.「 雨にぬれても 」は映画『 明日に向って撃て! 』サントラのインスト版のコピーですし、A3.「 マイケルへのメッセージ 」とB3.「 世界の窓に光を(世界の窓と窓)」はバカラックのアルバム『 Reach Out 』の演奏を、A2.「 エニィ・デイ・ナウ 」とA6.「 ディス・ガイ 」とB5.「 サン・ホセへの道 」は同じくアルバム『 Make It Easy On Yourself 』の演奏をベースとしたアレンジ。完コピならよく再現したじゃねぇか!…という評価もできますが、完コピでもなくかといって新鮮味があるわけでなく…。その他の曲もディオンヌ・ワーウィックなどヒットしたバージョンを下敷きにしたもの。よく知ってるアレンジの無難なイージーリスニング物バカラック集といった感じなんですよねぇ。ミュージシャンの名誉のために言っておきますが、演奏自体の出来はいいんです。プロデュース/コンセプトの問題でしょう。

そんな中身とは対照的にライナーノーツは充実! 1ページ目では “バート・バカラックとはどんな男か” と題してバカラックの人となりや経歴を細かい字で詳しく紹介しているのですが、本人になりきった口調(文体)がユニークで面白いです。また、ライナーノーツの3〜4ページ目では “バカラック・サウンドを解剖する” と言うタイトルに相応しく各曲ごとに作曲面からアレンジ、プロデュース面まで含めてその特徴を分析&解説しているのですが、これまた内容・文体ともユニークなのです。B5.「 サン・ホセへの道 」で、曲作りを家作りに例えて  ─ 普通のヒット・メイカーは土台より上の部分だけで勝負しているのです。(中略)そこでバカラックの家はと言うと、土台付きの家を売っているのです。  ─ と解説しているくだりは思わず “ほぉ〜っ” と唸ってしまいました。(当時 ─ バカラックという音楽家が、そうとう厚ぼったい音楽的教養の上に、どっかと座っていることが感じられたからである。 ─ と雑誌に書いた方がいましたが、似たこと言ってるなぁ…と。→ こちら 参照)

こーゆー解説をしたかったから、本アルバムは “
バカラックがアレンジやプロデュースまで手掛けたバージョン” ベースのアレンジ&演奏にしたのかもしれません。知らんけど😅

そのライナーノーツを4ページ全て載せました。クリックして拡大すればなんとか読めると思います。興味ありましたら是非!

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【データ】
『 ベスト・オブ・バート・バカラック 』(英題:Salute to BURT BACHARACH)
ユニオン・オール・スターズ(UNION ALL STARS)

LP:1970年リリース
レーベル:ユニオン・レコード(発売元:テイチク)
番号:UPS-67-J
定価:¥2,000


編曲:池田 孝 / 利根常昭

<ライナーノーツ執筆者>
P1. バート・バカラックとはどんな男か:?(記載なし)
P2. 曲目解説:1970年4月8日、中部日本放送 片岡功氏
P3〜4. バカラック・サウンドを解剖する:ラジオ関西 井上正之助氏


<参考> 曲数・曲順・音源が同じ、キューピット・シリーズ『 ザ・ベスト・オブ・バート・バカラック 』/ユニオン・オール・スターズ(ユニオン、CJP-1026、¥1,000)もリリースされています。リリース年は不明。

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2025年5月18日 (日)

Walk on By/Kristina Koller (2025年)

米女性ジャズシンガー、Kristina Koller が2025年にリリースしたコンテンポラリー・ジャズのバカラック・カヴァー集です!(CD無し/デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
2. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
3. A HOUSE IS NOT A HOME
4. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR (feat. Rosemary Minkler)
5. I SAY A LITTLE PRAYER
6. DON'T MAKE ME OVER
7. WALK ON BY
8. REACH OUT FOR ME
9. LOVING IS A WAY OF LIVING (feat. Fima Chupakhin)
10. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE

収録時間約40分


米女性ジャズシンガー、Kristina Koller が2025年にリリースしたコンテンポラリー・ジャズのバカラック・カヴァー集です!

ニューヨーク市の郊外で育った Kristina Koller(クリスティーナ・コラー)は、幼い頃から青少年向けのミュージカルに出演。シンガーソングライターやオルタナティブ・ロックバンドのボーカリストなどソロ・パフォーマンスにも挑戦し、またクラシック音楽とオペラを学んで歌唱力を向上させ、様々な発声法を習得します。ジャズ、ソウル、R&Bに対するオープンマインドなアプローチのエイミー・ワインハウスに感銘を受け、ボーカリストとして自由に自己表現したいという願望が彼女をジャズの世界へ導きました。音楽奨学金を得て、彼女はハート・スクールのジャッキー・マクリーン・ジャズ研究所でジャズを学び、ニューヨーク市立大学でジャズ研究のBFA(美術学士号)を取得。並行してジャズ・カルテットにヴォーカリストとして加わり、ニューヨークを拠点に活動。これまでに3枚のアルバムをリリースしています。

本作は4枚目のアルバム。バカラックの音楽をコンテンポラリー・ジャズにアレンジしたものです。

なお、コラーの公式サイトには、─ 現在、コラーは4枚目のアルバムに取り組んでいます ─ とあるだけでまだ本作の情報がアップされていません。ミュージシャン等の情報は JAZZ CHLL MUSIC というブログを参考にしました。

コラーの母親はバカラックの音楽を深く愛していて、─ 私は幼い頃からバカラックの音楽を人生のBGMとして聴いて育ちました ─ んだとか。本作も母親のリクエストに応えたものだそう。 ─ バカラックの音楽は、とてもノスタルジックな気持ちにさせてくれます。でも、私はこれらの曲を、感情の核となる部分を損なわずに、現代のリスナーにも響くようなアプローチで捉えたいと思いました ─ ふむふむ、コラーの心意気や良し…ですね。

全10曲のうち、1曲だけ見慣れない曲があります。1959年にスティーヴ・ローレンスが歌ったT-9.「 LOVING IS A WAY OF LIVING(ラヴィング・イズ・ア・ウェイ・オブ・リヴィング)」です。この曲のカヴァーは聴いた事がありません。多分コラーが初めてだと思います。

バックのピアノトリオは、長年のバンド仲間である Fima Chupakhin (piano/Rhodes)、James Robbins (bass)、Cory Cox (drums)。James Robbins はコラーと共にアレンジを手がけました。T-4.「 愛のハーモニー 」では、女性ピアニストでありコラーの友人でもある Rosemary Minkler がヴォーカルで加わりサビでデュエットしています。T-9.「 ラヴィング・イズ・ア・ウェイ・オブ・リヴィング 」はピアノ伴奏のみで歌っています。

まず感じるのは、アレンジがチャレンジングでいずれもユニークなこと。1曲ごとに寸評しますと…。
T-1.「 恋よ、さようなら 」:ファンキー
T-2.「 遥かなる影 」:なんと4/5拍子にアレンジ、疾走感がある
T-3.「 ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」:スローな6/8拍子、エモーショナル
T-4.「 愛のハーモニー 」:Aメロはシンプル、サビでファンキーになりデュエットが熱い
T-5.「 小さな願い 」:拍子がコロコロ変わりついていけない(ただしサビは原曲通り)、ファンキー
T-6.「 ドント・メイク・ミー・オーヴァー 」:ゆったりウォーム
T-7.「 ウォーク・オン・バイ 」:リズムが複雑に変化、アヴァンギャルドでクール
T-8.「 リーチ・アウト 」:コンテンポラリーなスウィングで楽しい
T-9.「 ラヴィング・イズ・ア・ウェイ・オブ・リヴィング 」:軽快な♩≒136のズンチャチャソングがスローバラードに変身、揺れるテンポに漂うコラーの柔らかい歌声が沁みる
T-10.「 世界は愛を求めている 」:クールな16ビートに大胆アレンジ、澄んだ強い歌声にコリーがこの曲に込めた思いを感じる

素晴らしいです。捨て曲はひとつもありません。アルバム全体としてレコメンドです。強いて超レコメンドを挙げるならT-2,4,7,9,10.でしょうか(半分もあるじゃねぇか)。

YouTube の Kristina Koller - トピック には自動生成で本作がアップされていますので、ぜひそちらを視聴ください。また、コラー自身のアカウントに3曲ほどレコーディング時の動画が上がってましたのでリンクを貼っておきます。
 I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
 THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR


【データ】
『 Walk on By 』
Kristina Koller

MP3:2025年5月16日リリース
レーベル:Feel Good Records (US)
番号:?

Kristina Koller - vocal
Fima Chupakhin - piano/Rhodes
James Robbins - bass (except T-9)
Cory Cox - drums (except T-9)
Rosemary Minkler - vocal (T-4)

Amazonリンク

2025年5月 4日 (日)

Raindrops - Songs by Burt Bacharach/Carmela Corren (1974年)

イスラエルの女性歌手・俳優、Carmela Correnが1974年にリリースしたヘブライ語によるバカラック・カヴァー集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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A1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD = טיפות הגשם
A2. WIVES AND LOVERS = גברים, בגידות ושאר חטאים קטנים
A3. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU = איש הסתו
A4. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE = מוכר החלומות מסן חוזה
A5. ARE YOU THERE (WITH ANOTHER GIRL) = עצרו את כל השעונים
A6. WALK ON BY = לך לאט
A7. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU = איש אוהב
B1. I SAY A LITTLE PRAYER = תפילה קטנה
B2. ALFIE = אלפי
B3. THE WINDOWS OF THE WORLD = עולמות רחוקים
B4. LONELINESS REMEMBERS (WHAT HAPPINESS FORGETS) = הבדידות זוכרת
B5. A HOUSE IS NOT A HOME = כשאין אתה אתי
B6. THE LOOK OF LOVE = מבט אוהב
B7. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE = מה צריך עכשו

収録時間約44分


イスラエルの女性歌手・俳優、Carmela Correnが1974年にリリースしたヘブライ語によるバカラック・カヴァー集です。

Carmela Corren カルメラ・コリーン(カルメラ・コーレン)は1938年2月、当時英国委任統治領下にあったテルアビブ生まれ。イスラエル国防軍の兵役で歌手として空軍管弦楽団にいた際、仕事でイスラエルに来ていた米国のテレビチームの目に留まり渡米、1956年に米国のTV番組『 Toast of the Town 』でデビューします。1961年には、クリフ・リチャードの南アフリカ・ツアーに同行。1962年、「 Eine Rose aus Santa Monica 」が独チャートで3位になるヒットとなり、以降ドイツ語圏のPopsフィールドで活躍します。1963年にはユーロビジョン・コンテストにオーストリア代表として出場し「 Vielleicht geschieht ein Wunder 」を歌って7位に。'60年代、Ariola(独)、Vogue Schallplatten(独)、Decca(独)といったレーベルから、ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語、ギリシャ語のバラードやシャンソンのレコードを沢山リリースしているようです。

また、'60年代にカルメラは数々の映画に出演。スパイ・スリラー『 Zwischen Schanghai und St. Pauli 』(1962年)や、伝説のアルペンスキー・レース・チャンピオン、トニ・ザイラーと共演した登山ドラマ『 Sein bester Freund 』(1962年)などなど。その他いくつかのミュージカルにも出演。イギリスのクラブでポピュラーソングを歌う一方、オーストリアとドイツのTVバラエティ番組にも出演して大きな成功を収めたんだそう。


1964年から1970年にかけて、ドイツ人音楽プロデューサーのホルスト・ガイガーと結婚し、2人の子供をもうけています。1984年以降、再婚したカルメラは米国フロリダに移住しショービジネスの第一線から退きました。没年:2022年1月(享年83歳)。

以上、Wikipedia / IMDb / Carmela Corren(公認サイト)を参考にしてカルメラの略歴を記しました。'70年代は苦難の時代だったようで、(子育てしていたことは分かりますが)本作をリリースした1974年前後のことはよく分かりません。1973年10月に勃発した第4次中東戦争の停戦後(=第1次オイルショックの最中)
という時期に、何故彼女は本作をヘブライ語でレコーディングしてリリースしたのか…。まさか、映画『 LOST HORIZON(失われた地平線)』が大コケして当時どん底にいたユダヤ人のバカラックを元気付けようとヘブライ語で彼の曲を歌った…な〜んてことはまず無いな😅。

収録された14曲は全てデイヴィッド&バカラック作品で、B4.「 ロンリネス・ハッピネス(愛は想い出)」を除けばカヴァー定番曲ばかり。カルメラは重心が低いながらもハリのある声質で、1974年当時36歳だった年齢に相応しい大人の歌唱を聴かせます。ヘブライ語の歌詞もさほど違和感はありません。バックはバンド+ポップスオーケストラなのですが、本作の一番の魅力は楽しげでユニークなアレンジにあります。

個人的に印象に残ったアレンジは…
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A1.「 雨にぬれても 」:イントロで、装飾音の付いた “E-F” の音を最初は2拍おき、3小節目から1拍ごと交互にオクターヴでピアノが弾いてます。雨粒を表現するベタな手法ですが、「 雨にぬれても 」のインスト・カヴァーでは時折見られるもののヴォーカル・カヴァーでは余り例(注)がないんですよね…。(注)他の例:Bobbie Gentry版はギター、The Dells版はハープ?とグロッケン、Lisbet Guldbaek版はギターとウッドベース、石毛恭子さんの日本語版「 レイン・ドロップス 」ではグロッケンが奏でています。
A4.「 サン・ホセへの道 」:特徴的な女性バックコーラスによる “ウォウォ ウォウォッ
…” の9度下降を、“イェイェ イェイェッ…” と歌っています。ヘブライ語に訳したらそうなるのか? レナウンの「 ワンサカ娘 」を連想しちゃいました。でもこれはアレンジの話じゃないよねぇ😓。
A6.「 ウォーク・オン・バイ 」:2コーラス目以降の金管楽器&フルートによるオブリガートがカッコいいです。そして、後半の間奏部分24小節が(アウトロも)脈絡なく突然サンバ・アレンジになってノリノリになるのがサイコー。

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B2.「 アルフィー 」:イントロは32分音符刻みのハイハットとカッティングギターで始まります。そう、バカラックのインストセルフカヴァー版(アルバム『 Reach Out 』収録)ベースのアレンジなんです。コレにヴォーカルを乗せてくるとはっ❗️ しかもテンポ速いっ(バカラック版の♩≒75に対し♩≒85)。インストでならバカラック版ベースのカヴァー(Messias版田畑貞一版スクリーン・ポップス版、オルケスタ・リブレ&柳原陽一郎版)も存在しますが、このアレンジにヴォーカルを乗せたのは唯一無二で他には知りません。実は1971年リリースのライヴアルバム『 LIVE IN JAPAN 』でバカラックはちょびっと「 アルフィー 」を歌っています。しかし、この時はピアノ弾き語りでAメロを歌い終わった後に『 Reach Out 』と同じアレンジで「 アルフィー 」をインスト演奏する…という展開。なので、やはりカルメラの「 アルフィー 」は唯一無二です❗️
B3.「 世界の窓と窓 」:ホルンを含む木管アンサンブルと流麗なストリングスをバックに歌い上げるカルメラが神々しい。素晴らしい❗️
B4.「 ロンリネス・ハッピネス(愛は想い出)」:この曲も木管楽器が活躍して可愛らしい雰囲気を醸し出しています。
B6.「 恋の面影 」:「 THEME FROM SHAFT(黒いジャガーのテーマ)」を彷彿させるエレキギターのカッティングが全編にわたり流れ、2コーラス目からトランペット&トロンボーンのオブリガートが炸裂するブラスロック調のアレンジが超カッコイイ❗️ カルメラも粘っこくソウルフルに歌っています。
B7.「 世界は愛を求めている 」:イントロの金管アンサンブルに意表を突かれますが、本編に入ったらジャズワルツのリズムに変わりストリングスとブラスによるオブリガート合戦が始まりカルメラの歌唱を盛り上げます。ラストはバリバリに吹いてアルバムを締めくくります。

'60年代後半〜'70年代の女性ソロシンガーによるバカラック・カヴァー集というと、個性的な解釈と陰影のある歌唱のコニー・フランシス『 Connie Francis sings Bacharach and David 』(1968年)、ドリーミーなストリングスとオリジナリティあるオブリガートのシェイラ・サザーン『 THE BACHARACH & DAVID SONGBOOK 』(1969年)、ジャズらしくイントロや間奏を原曲と大きく変えてるリタ・ライス『 Rita Reys sings Burt Bacharach 』(1971年) など素晴らしいレコードがあります。方向性全然違いますが本作はそれらに比肩しうるアルバムだと私は思いますし、レコメンドです。

ちなみに、盤起こしではありますがYouTubeに本作全曲がUPされています。前述した公認サイトの DISKOGRAFI の LPs からもリンクが貼られているので、公認サイト主がUPしたものでしょう(知らんけど)。
 


【データ】
『 Raindrops - Songs by Burt Bacharach 』
Sung in Hebrew by Carmela Corren

LP:1970年リリース
レーベル:CBS (Israel)
番号:80354

Lyrics:Hal David
Music:Burt Bacharach
Hebrew Lyrics:Yossi Behar
Stage Director:Itzhak Chalutsi
Musical Director:Moshe Zorman
Arrange:Y. Barak (A1-2,A4,A7,B1,B6), M. Zorman (A3,A6, B2-5,B7), M. Kupperboim (A5)

(p) 1974 CBS Inc.
MADE IN ISRAEL

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し


2025年4月27日 (日)

Tribute to Dionne Warwick/Rina Johnson (2014年)

どこぞの女性シンガー? Rina Johnson が2014年にリリースしたディオンヌ・ワーウィックのカヴァー集。そのうち約6割ほどがバカラック・カヴァーです。(CD無し/デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全23トラック中、バカラック作品は14トラック

1. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
2. I SAY A LITTLE PRAYER
3. LOVE POWER
4. HOW MANY TIMES CAN WE SAY GOODBYE
5. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN
6. WHISPER IN THE DARK
7. IT’S YOU
8. ALL THE LOVE IN THE WORLD
9. FRIENDS IN LOVE
10. HEARTBREAKER
11. I’LL NEVER LOVE THIS WAY AGAIN
12. THEN CAME YOU
13. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
14. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
15. PROMISES, PROMISES
16. ALFIE
17. THEME FROM VALLEY OF THE DOLLS
18. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF
19. TRAINS AND BOATS AND PLANES
20. WALK ON BY
21. WISHIN' AND HOPIN’
22. YOU'LL NEVER GET TO HEAVEN (IF YOU BREAK MY HEART)
23. MAKE IT EASY ON YOURSELF

収録時間約79分


どこぞの女性シンガー? Rina Johnson が2014年にリリースしたディオンヌ・ワーウィックのカヴァー集。

“どこぞの女性シンガー?” と書いたのは全く素性が知れないから。検索すると米国の俳優が出てくるのですが歌ってる雰囲気皆無なので別人かと。

Rina Johnson 名義のアルバム、iTunesでは本アルバムの他に『 Tributo a Toni Braxton 』(2013)と『 Tribute to Christina Aguilera 』(2014) が見つかります。Spotifyでは『 Tribute to Kylie Minogue 』(2014)、『 Tribute to Kylie Minogue, Vol.2 』(2014)、『 Tribute to Mariah Carey 』(2014)、『 Tribute to Mariah Carey, Vol.2 』(2014)、『 Tribute to Kesha 』(2014)、『 Tribute to Beyonce 』(2014)、『 A Tribute to Sade 』(2013)、『 Tribute to Madonna:The Queen of Pop, Vol.1 』、『 Tribute to Madonna:The Queen of Pop, Vol.2 』(2013)、『 Tribute to Madonna, the Beginnings 』(2013) などたくさん出てきます。しかもリリースは2013〜2014年に集中。一方、Discogsでは検索しても全くヒットしません。う〜ん、なんか胡散臭いぞ。イージーリスニング系でよくある覆面シンガーなのかな?

収録曲は全23曲。セプター時代(1962〜1971年:13曲)〜 ワーナー時代(1972〜1978年:1曲)〜 アリスタ時代(1979〜1989年:9曲)におけるディオンヌ・ワーウィックのヒット曲をバランスよくカヴァーしています。全23曲を表に整理してみました。
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バカラック作品は約6割の14曲。バカラック作品のうちT-3.「 ラブ・パワー 」は全米12位とそれなりにヒットしたにも関わらず殆どカヴァーされていないので、貴重なカヴァーと言えます。それを除けばまぁ無難な選曲かなぁ。私だったら「 ANYONE WHO HAD A HEART(恋するハート)」「 THE APRIL FOOLS(エイプリルフール)」「 THE WINDOWS OF THE WORLD(世界の窓と窓)」は絶対取り上げるんですけどね、好きな曲なので。

アレンジは、後述する1曲を除いて基本的にディオンヌ版の完コピ。テンポやキーもディオンヌ版に右に倣えしている曲が殆どです。T-13.「 ディス・ガール 」とT-16.「 アルフィー 」はテンポやキーが少し違うけれどそれでも印象が大きく変わることはありません。ストリングスはシンセで代用。それはいいんですが、T-1.「 愛のハーモニー 」やT-6.「 イッツ・ユー 」に出てくるハーモニカのシンセ代用はいけません。ニュアンスが表現できてなくてチープさが際立ってます。まぁ、全体としてバックトラックの演奏は緩くて、出来としては70点くらいでしょうか。一方、若干鼻にかかった声質の女性メインヴォーカルは歌唱力もあってなかなかのもの。80〜85点は付けてもいいかと。ただ、声にハリがある曲とそうでない曲があって年齢が十歳くらい違う印象。定かなことは分かりませんが違う人なのかも?

さて、“後述する1曲” とはT-19.「 汽車と船と飛行機と 」のこと。ディオンヌ版とはアレンジが全く違うし。てか、そもそもヴォーカルが無い
でも…このアレンジはどこかで聴いたことがあるなぁ…。とゆーワケで、所有する「 汽車と船と飛行機と 」の音源を片っ端から再生! …見つけましたょ。英国mfpレーベル(いわゆる廉価盤専門レーベルの類い)から1971年にリリースされた、ビートルズ、バッハ、バカラックを軽いボサノヴァ・タッチで演奏したイージーリスニングのアルバム『 Beatles, Bach, Bacharach Go Bossa 』/Alan Moorhouse (1971年)の中の1曲でした。しかも “似てる” じゃなくて、ドンピシャそのもの❗️  コレは一体どーゆーこと❓ …編集上のミスとしか思えませんね。イージーリスニング系ってのはいい加減だよなー。金返せ!と怒っても無駄だし。…忘れることにしました。


【データ】
『 Tribute to Dionne Warwick 』
Rina Johnson

MP3:2014年リリース
レーベル:Abriluc Records (UK)
番号:?

クレジット無し、詳細不明

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し


2025年3月23日 (日)

Promesse, Promesse/Italian Stage Cast (2002年)

ミュージカル『 プロミセス・プロミセス 』の2002年イタリア・キャストによるアルバムです。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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CDのジャケット表/ケース裏
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CDのジャケット裏/CDレーベル面

1. Ouverture  〜 Orchestra 〜
2. Scala 1 A 2  〜 Gianluca Guidi
3. Grapes Of Roth  〜 Orchestra 〜
4. Piu' Su  〜 Gianluca Guidi
5. Tu Pensa A Qualcuno  〜 Maria Laura Baccarini & Gianluca Guidi
6. Piccolo Segreto  〜 Renato Cortesi & Gianluca Guidi
7. Ama Il Basketball  〜 Gianluca Guidi
8. Sapere Quando Andarsene  〜 Maria Laura Baccarini
9. Dove Vai Con Una Ragazza  〜 (Dobitch, Kirkeby, Eichelberger, Vanderhof) 〜
10. Vorrei Non So Che  〜 Renato Cortesi
11. Taki Taki  〜 (Miss Della Hoya, Miss Polanski, Miss Wong) & Company 〜
12. E' Natale  〜 Orchestra Voices
13. Metti Un Po' Di Gioia In Me  〜 Silvia Delfino, Gianluca Guidi & Ensemble 〜
14. Metti Un Po' Di Gioia In Me (ripresa)  〜 Ensemble 〜
15. Cosi' Come Sei  〜 Maria Laura Baccarini
16. Bella E Giovane Come Sei  〜 Gianluca Guidi & Gianni Fenzi
17. Non M'innamorero' Mai Piu'  〜 Maria Laura Baccarini & Gianluca Guidi
18. Promesse, Promesse  〜 Gianluca Guidi
( )は役名で、アーティストは不明。

収録時間約54分


ミュージカル『 プロミセス・プロミセス 』の2002年イタリア・キャストによるアルバムです。

バカラック初のミュージカル『 プロミセス・プロミセス 』は、1968年12月よりブロードウェイで上演されました。以後数年のうちに、ロンドンのウエスト・エンドをはじめイタリア、ドイツ、オーストラリア、日本などで上演されました。
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イタリアではCatherine Spaak(カテリーヌ・スパーク)とJohnny Dorelli(ジョニー・ドレルリ)主演により1970年にローマその他で上演され、キャスト・アルバム(画像)もリリースされました。そのアルバム紹介記事で、 ─ イタリア語版『 プロミセス・プロミセス 』は2002年に再演されCDもリリースされたようだ。しかし探しても見当たらない。実在するならなんとか手に入れたい… ─ と書きましたが、それから6年余り…ようやくゲット出来ました。うれぴーなっつ(©️松永里愛)。ただこのCD、ジャケットの表面/裏面、CDケース裏面、CDレーベル面…スタッフのクレジットはそこそこ載ってるのですが、どこ見ても役者のクレジットがありません。仕方がない、CDをPCに取り込む際に判明したアーティスト名を頼りにネットで調べるか…。(参考サイト:amicidelmusical.it, castalbums.org

上演時期は、2002年〜2003年(たぶんローマ公演)および2003年〜2004年(おそらく国内ツアー)。演出はジョニー・ドレルリ…そうです、1970年イタリア語版でチャックを演じたあのお方です。

チャック役のGianluca Guidi(ジャンルカ・グイディ)は1967年3月ミラノ生まれの歌手、俳優、演劇監督。歌手としてキャリアをスタートさせ、その後は主にミュージカルで活躍。2002年当時は35歳でした。そして、な・な・なんと!彼はジョニー・ドレルリの息子なんですって。つまり親子でチャック役を演じたってワケ。なんか歌舞伎みたい(笑)。Wikiによれば父親と共に演出にも関わったようです。
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フラン役のMaria Laura Baccarini(マリア・ローラ・バッカリーニ)は1966年5月ローマ生まれの歌手、俳優。ミュージカルでキャリアをスタートし、『 コーラス・ライン 』『 ウエスト・サイド・ストーリー 』『 シカゴ 』などに出演。現在でも幅広く活動しているそう。2002年当時は36歳でした。CDのジャケット写真を見ると髪型は1970年のカテリーヌ・スパークに寄せてるように感じられます。(参考サイト:公式サイト
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そういえばCDのジャケ写はミュージカルのラスト、トランプの続きをしようとフランがチャックにカードを渡すシーン。この構図はミュージカルの原作たる1960年の映画『 アパートの鍵貸します 』のラストも同様で、DVDのジャケ写もまさしくこのシーンです。
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曲名は全てイタリア語(歌詞もイタリア語)。翻訳者が違うのか、1970年イタリア語版とも曲名が異なっています。1970年イタリア語版の曲名、オリジナル・タイトル及び日本語タイトルを並べて表にしました。
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収録曲は、ブロードウェイ版(以下、BW版)オリジナル・キャスト・アルバムの17曲より1曲多い18曲。とは言え、その1曲はリプライズのT-14.「 事実は美しいはずなのに(リプライズ)」なので、新たに曲が増えたわけではありません。オケのアレンジはBW版ではなく1970年イタリア語版がベース。元々1970年イタリア語版は一部曲で独自のアレンジや追加パートがありました。この2002年イタリア語版は、ギターのカッティングが今風だったり全体的に演奏がキレッキレだったり、クオリティが高いですねー。独自の追加パートとして、T-11.「 ターキー・ラーキー・タイム
 」でOL3人組がバキバキに歌い踊っている最中に、突然T-7.「 バスケットボールがお好き 」の3拍子メロディが木管主体のアンサンブルで約30秒間挿入される…ってのがあります。これ、面白いです。その30秒間OL3人組は何してんだろう(笑)。

主演の2人は歌唱力・表現力共にあるし、声質のバランスもバッチリ。特にフラン役のマリア・ローラ・バッカリーニは場面ごとの心情表現が素晴らしく、聴いていて引き込まれます。相当な実力者なんだと思います。シェルドレイク役のRenato Cortesi(レナート・コルテシ)、マージ役のSilvia Delfino(シルビア・ドルフィン)、ドレイファス医師役のGianni Fenzi(ジャンニ・フェンツィ)のお三方も上手に歌っておられます


6年待った甲斐がありました。

ここからはオマケ。ちょっと愚痴を…。
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今回、米国のお店が$75のプライスで売り出したのを知り速攻注文しました。円安だし高いなぁとは思いましたが、新品(Mint Media Condition)でしたし今度いつ出品されるかわかりませんからね。意外に早く注文後10日で到着。荷物を開けると本当に新品でした。店頭でも売っていたんでしょう、値札が貼ってあってプライスは$25.95。😳! 👀目が飛び出ましたょ。3倍に値を吊り上げやがって! …いや、頭じゃわかっていますょ、こういうもんだと。でもねー、せめて値札は剥がしといて欲しかったなぁ…。

◆◆ Promises, Promises アルバム一覧 ◆◆
1968 デモ録音集
1968 Original Broadway Cast Recording
1969 Original London Cast Recording
1969 Aimi Macdonald and Ronnie Carroll (London Studio Cast)
1970 SPAAK - DORELLI (Italian Stage Cast)
2002 Italian Stage Cast ← 本作
2010 New Broadway Cast Recording
2022 宝塚歌劇宙組公演


【データ】
『 Promesse, Promesse 』
2002 Italian Stage Cast


CD:2002年リリース
レーベル:Carosello (Italy)
番号:CARSM 064 2

Musica di (Music by) 作曲 - Burt Bacharach
Liriche di (Lyrics by) 作詞 - Hal David
Regia di (Directed by) 演出 - Johnny Dorelli

Direzione musiccale (Musical direction) 音楽監督 - Riccardo Biseo
Traduzione e adattamento (Translation and adaptation) 翻訳と翻案 - Giorgio Calabrese
Produzione Musicale (Music Production) 音楽制作 - Salieli Entertainment
Registrato da (Recorded by) 録音者 - Marco Cucci
Presso gli studi di Registrazione (At the Recording Studios) 録音スタジオ - Titania Roma
Orchestra a cura della societa (Orchestra by the company) オーケストラ - Arte & Spettacolo

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2025年3月 2日 (日)

THE SONGS OF BACHARACH & COSTELLO (2LP+4CD BOX SET)/Elvis Costello & Burt Bacharach (2023年)

エルヴィス・コステロがバート・バカラックと共作した楽曲をすべてまとめた作品集! その SUPER DELUXE EDITION たる2LP+4CD ボックスセット!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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BOX front cover/a sheet with track list

CD1:PAINTED FROM MEMORY (2023 REMASTER)
1. IN THE DARKEST PLACE  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
2. TOLEDO  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
3. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
4. THIS HOUSE IS EMPTY NOW  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
5. TEARS AT THE BIRTHDAY PARTY  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
6. SUCH UNLIKELY LOVERS  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
7. MY THIEF  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
8. THE LONG DIVISION  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
9. PAINTED FROM MEMORY  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
10. THE SWEETEST PUNCH  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
11. WHAT'S HER NAME TODAY?  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
12. GOD GIVE ME STRENGTH  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

CD2:TAKEN FROM LIFE - Songs from the stage score of Painted From Memory
1. YOU CAN HAVE HER  〜 Elvis Costello 〜  M

2. PAINTED FROM MEMORY  〜 Cassandra Wilson & Bill Frisell 〜  F
3. DON’T LOOK NOW  〜 Burt Bacharach, Elvis Costello & The Imposters 〜  M
4. EVERYONE’S PLAYING HOUSE  〜 Elvis Costello & The Imposters 〜  M
5. I LOOKED AWAY  〜 Audra Mae 〜  F
6. TAKEN FROM LIFE  〜 Elvis Costello & The Imposters 〜  M
7. MY THIEF  〜 Don Byron & Bill Frisell 〜
8. SHAMELESS  〜 Jenni Muldaur 〜  F
9. PHOTOGRAPHS CAN LIE  〜 Burt Bacharach, Elvis Costello & The Imposters 〜  M
10. IN THE DARKEST PLACE  〜 Audra Mae 〜  F
11. WHY WON’T HEAVEN HELP ME?  〜 Elvis Costello & The Imposters 〜  M
12. STRIPPING PAPER  〜 Jenni Muldaur 〜  F
13. HE’S GIVEN ME THINGS  〜 Elvis Costello & The Imposters 〜  M
14. WHAT'S HER NAME TODAY?  〜 Audra Mae 〜  F
15. LOOK UP AGAIN  〜 Elvis Costello 〜  M
16. LIE BACK & THINK OF ENGLAND  〜 Burt Bacharach 〜  M

CD3:BECAUSE IT'S A LONELY WORLD - Live
1. TOLEDO  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M

2. IN THE DARKEST PLACE  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M
3. MY THIEF  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M
4. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M
5. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M
6. GOD GIVE ME STRENGTH  〜 Elvis Costello & Steve Nieve 〜  M
7. PAINTED FROM MEMORY  〜 Elvis Costello, Steve Nieve & The Swedish Radio Symphony Orchestra 〜  M
8. WHAT'S HER NAME TODAY?  〜 Elvis Costello, Steve Nieve & The Swedish Radio Symphony Orchestra 〜  M
9. THIS HOUSE IS EMPTY NOW  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

CD4:COSTELLO SINGS BACHARACH / DAVID
1. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF  〜 Elvis Costello & The Attractions 〜  M
2. BABY IT'S YOU  〜 Elvis Costello & Nick Lowe 〜  M
3. PLEASE STAY  〜 Elvis Costello 〜  M
4. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
5. MAKE IT EASY ON YOURSELF  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
6. MY LITTLE RED BOOK  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
7. ANYONE WHO HAD A HEART  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
8. I JUST DON'T KNOW WHAT TO DO WITH MYSELF  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

LP1
Side A:PAINTED FROM MEMORY

A1. IN THE DARKEST PLACE  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
A2. TOLEDO  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
A3. I STILL HAVE THAT OTHER GIRL  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
A4. THIS HOUSE IS EMPTY NOW  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
Side B:PAINTED FROM MEMORY
B1. TEARS AT THE BIRTHDAY PARTY  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

B2. SUCH UNLIKELY LOVERS  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
B3. MY THIEF  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
B4. THE LONG DIVISION  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

LP2
Side C:PAINTED FROM MEMORY
C1. PAINTED FROM MEMORY  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M

C2. THE SWEETEST PUNCH  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
C3. WHAT'S HER NAME TODAY?  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
C4. GOD GIVE ME STRENGTH  〜 Elvis Costello & Burt Bacharach 〜  M
Side D:Songs From TAKEN FROM LIFE
D1. YOU CAN HAVE HER  〜 Elvis Costello 〜  M

D2. DON’T LOOK NOW  〜 Audra Mae & John Pagano 〜  FM
D3. I LOOKED AWAY  〜 Audra Mae 〜  F
D4. TAKEN FROM LIFE  〜 Elvis Costello & The Imposters 〜  M
D5. WHAT'S HER NAME TODAY?  〜 Audra Mae 〜  F
D6. LOOK UP AGAIN  〜 Elvis Costello 〜  M

※ メイン・ボーカル入りの曲は、F(Female-女性)、または M(Male-男性)と表記

収録時間(CD 1/2/3/4)約52分/約61分/約40分/約27分
(LP Side A/B/C/D)約17分/約17分/約19分/約23分


エルヴィス・コステロがバート・バカラックと共作した楽曲をすべてまとめた作品集! その SUPER DELUXE EDITION たる2LP+4CDボックスセットです。

リリースされて丸2年。生来のズボラな性格に加え、このボリュームに圧倒されてなかなか記事に取り掛かれずにいました。ようやく記事にすることが出来て重石が取れた気分です、ふぅ〜😮‍💨

本作、1998年のコラボ・アルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』の25周年を記念して2023年3月3日にリリースされました。バカラックさん死後1ヶ月足らずというタイミングでしたが、2023年1月10日頃には既にプレスリリース記事が発表されておりました(英語日本語)。ですので遺作ではなく追悼盤でもありません。基本形はCD2枚組ですが(前記トラックリストの CD1CD2)、他にも複数のリリース形態がありました。
① 2CD … 基本形
② 2LP+4CD

③ 2LP
④ 2SHM-CD(日本盤)
⑤ 配信

私としてはLPは要らなかったのですが、4CDが買えるのは ② 2LP+4CD しかありません。それならばと②を選択。早速1月24日にAmazonで予約しました。2月8日にバカラックさんがお亡くなりになる前のことです。米国だしリリース日から20日遅れくらいで届くかなーと思ったのですが、手にすることができたのはリリース日を約40日も過ぎた4月12日。コロナ禍だし流通に時間がかかるのは仕方がありません。開封前のパッケージはこんな感じ(下の写真)。重さは1,242gもありました。お値段は25,427円(税込)…1gあたり単価に換算すると@20.5円/g(税込)かぁ。果たして高いか安いか。いやいや、単純に高いでしょ💰。それでも予約時の値段がキープされていたのでまだ良かったほう。バカラックさん逝去以降どんどん値段上がっていきましたから😱。
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BOXは本のような仕立て。表表紙と裏表紙のポケットにそれぞれLP1枚とブックレット1冊が入っておりまして、中央の台紙にCDが4枚差し込んであります。ブックレットは、1冊が歌詞&クレジットを含む詳細な楽曲データ(全20ページ)で、もう1冊がコステロによる約1万語にも及ぶエッセイ(全20ページ)。英語音痴なものでそのエッセイを全く読む気になれなかったのですが、ちたりた様が和訳してくださいまして幸運にも内容を知ることができました。この場を借りてお礼申し上げます、ちたりた様どうもありがとうございました🙏。(ちたりた様によるエッセイの和訳はこちら
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CD1は1998年のアルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』の2023年リマスター。1998年盤と今回のリマスター盤の違いなんて正直私にはわからないのですが😅。

CD2には、TAKEN FROM LIFE - Songs from the stage score of Painted From Memory というタイトルがついてます。
─ CD2は『 ペインテッド・フロム・メモリー 』のミュージカル・スコアを想定して書かれた未発表曲や新録曲3曲などを収録した『 テイクン・フロム・ライフ 』というタイトルのディスク。  ─(プレスリリースより)
─ CD2『 テイクン・フロム・ライフ 』に収録される3曲の新録曲は、ヴィンス・メンドーサ編曲によるバカラック&コステロの共作曲「 ユー・キャン・ハヴ・ハー 」と「 ルック・アップ・アゲイン 」、これらは2021年9月にハリウッドのキャピトル・スタジオ(Capitol Studio)でバカラック指揮のもと録音。そしてエルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズによる「 テイクン・フロム・ライフ 」、こちらはコステロ近作でおなじみのセバスチャン・クリスのプロデュースで2022年に録音された。  ─(同上)
─ この他、第62回グラミー賞「最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム」受賞作『 ルック・ナウ 』、EP「 Purse 」、ビル・フリゼールによる『 ペインテッド・フロム・メモリー 』のジャズ・アレンジ盤『 ザ・スウィーテスト・パンチ 』からもバカラック&コステロ・ソングが収録されている。  ─(同上)

文章を読んでもイマイチ頭に入ってこないので表にしてみました。
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楽曲そのものの情報(作詞作曲者、ASCAP登録年、初出アルバム)と本作収録バージョンの情報(アーティスト、未発表/新録、収録元のアルバム)を整理してみたのですが
、なんかわかりにくい。センスねぇな、自分。クレジットされてない情報には '?マーク' を付しております。自分が読み取れてないだけなんだと思いますが…。ASCAP登録年は、バカラック研究本『 SONG BY SONG 』/Serene Dominic著、及び Connor Ratliff さんのブログ(2014年2月3日付け記事)に基づき記載しました。

楽曲そのものは、全16曲のうちコステロ1人で作った2曲(T-11,12)を除く14曲がバカラック&コステロの共作曲です。アルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』からの曲が4曲(T-2,7,10,14)あり、他10曲がのちに作った曲。うち
9曲は2014年にASCAP登録されています(T-16の1曲だけは未確認)。コステロがエッセイの中で   ─ 私が見つけたミュージカルの最後の脚本ドラフトは 2013年のものです。  ─ と証言していることから、ひとまず出来上がったので2014年にASCAP登録したワケですね。

さて、聴いてみましょう。んーと、今回再収録した7曲については収録元アルバムの過去記事を参照いただければと思います。T-2,7 👉 『 The Sweetest Punch 』、T-3,4,9,11,13 👉 『 Look Now 』(おまけで『 Purse EP 』) 

新録曲を含む未発表曲9曲のうち、3曲は初出
ではありません。オードラ・メイが歌うT-10.「 イン・ザ・ダーケスト・プレイス 」とT-14.「 ホワッツ・ハー・ネーム・トゥデイ? 」の2曲はアルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』の曲。どちらの曲も淡々としたピアノ伴奏をバックに若干掠れ声ではあるけれどブライト且つ力強くエネルギッシュな歌声を聴かせます。T-15.「 ルック・アップ・アゲイン 」は2016年にハーブ・アルパートがフリューゲルホーンを吹いたインスト物がオリジナル。今回、ストリングス+ピアノトリオをバックにコステロが歌詞付きで歌います。いかにもコステロといったエモーショナルな歌唱でございます。

残り6曲は本作で初めて世に出る楽曲。T-1.「 ユー・キャン・ハヴ・ハー 」とT-15.「 ルック・アップ・アゲイン 」は前述の通りバカラック指揮のオケをバックにコステロが歌唱しています。前者はダイナミックな曲調でエモーショナルなコステロの歌声が堪能できます。後者はしっとりした8分の6拍子のバラード曲で、こちらの曲の方がバカラック味強めでしょうか。T-6.「 テイクン・フロム・ライフ 」はエルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズによるパフォーマンス。あっちこっちにメロディが跳ぶ転調の多い3拍子のバラード曲です。T-5.「 アイ・ルックト・アウェイ 」は変拍子チックなバカラック臭の強いメロディのバラード曲で、オードラ・メイがピアノ伴奏をバックに歌唱しています。T-8.「 シェイムレス 」は軽妙な曲で、ジェニー・マルダーがいかにもミュージカルっぽく大げさに歌唱しています。同じくジェニー・マルダーが歌うT-12.「 ストリッピング・ペーパー 」はバカラック曲ではないのでスルーします。

ここでシンガーのお二人をちょろっとご紹介。
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オードラ・メイ(Audra Mae, 1984-)は、オクラホマ州オクラホマシティ出身のアメリカのシンガーソングライター。あのジュディ・ガーランドの曾姪なんだとか。
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ジェニー・マルダー(Jenni Muldaur, 1965-)は、マサチューセッツ州ボストン生まれのアメリカのブルース/フォークロックのシンガーソングライター。米国のブルース/ジャズ・シンガー、マリア・マルダー(Maria Muldaur)の娘だそう。

CD3は BECAUSE IT'S A LONELY WORLD - Live というサブタイトルがついたバカラック&コステロ曲のライヴ選集。どうしてそんなタイトルなのか? 1998年10月18日に行われたライヴ『 Sessions at west 54th/Elvis Costello & Burt Bacharach 』の映像と2人の対談で構成されたTVドキュメンタリー『 ELVIS COSTELLO & BURT BACHARACH - Because It's A Lonely World 』のサブタイトルから取ったとのこと。ドキュメンタリーの対談でコステロがこんなこと言ってます(ドキュメンタリー動画の49:21から。日本語版の動画では48:17から)。

─ 「 PAINTED FROM MEMORY 」はアルバムのタイトルにもなっているけど特別な曲ではないんだ。変な先入観を与えたくないから実にいろいろなタイトルを検討したよ。サブタイトルは「 WHAT’S HER NAME TODAY? 」という曲から取ったんだけど “なぜバカラックと共作を?” と訊かれたらこう答えることにしている。“孤独な世の中だからね(Because It’s a Lonely World)”って。(笑)  ─

「 WHAT’S HER NAME TODAY? 」の歌詞には確かに "Because it's a lonely world" の一節があります。ホントはこれをアルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』のタイトルにしたかったってことか。

全9曲を表に整理してみました。
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バカラックとコステロはアルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』リリース後の1998年10月、バカラック・バンドとストリングス及びスティーヴ・ニーヴを加えて米国&英国を短期間ツアー。翌11月に米NBC テレビの深夜トーク・バラエティ番組『 レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン 』に出演しており、その時演奏した曲の一つがT-9.「 ディス・ハウス・エンプティ・ナウ 」。年が明けて1999年、コステロはスティーヴ・ニーヴらと "The Lonely World Tour" に出ます。T-1〜8.の8曲はそのツアーからの音源です。

9曲のうち未発表音源は4曲。とはいえ、T-7,8の2曲は収録元アルバムが非公式盤なので未発表音源は実質6曲かと。バカラックさんではなくスティーヴ・ニーヴがピアノを弾くと雰囲気ちょっと違いますね。そういう意味でバカラックさんがピアノを弾いているT-9.「 ディス・ハウス・エンプティ・ナウ 」は耳に馴染んでいるからか聴くと落ち着きます🤗。

CD4はコステロによるバカラック&デイヴィッド曲のカヴァー集とのこと。CD4も全8曲を表に整理しました。
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コステロはデビューした1977年の秋に所属レーベルのライヴ・ツアー "Live Stiffs Tour" で、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズとしてT-1.「 恋のとまどい 」を演奏。翌年リリースされたStiffレーベルのライヴ・アルバムに収録されました。アンプラグド(ではないけれど)的で素朴な肌触りです。それから10年後の1987年にニック・ロウとのデュオ名義でT-2.「 ベイビー・イッツ・ユー 」をカヴァー。ビートルズ版に寄せてる印象ですが歌唱はコステロ節ですね。そして1995年にリリースしたカバー曲ばかりのアルバムでT-3.「 プリーズ・ステイ 」をカヴァー。録音したのは1990年で、コステロはゆったり&しっとり歌っています。1999年のT-4.「 恋よ、さようなら 」は映画『 オースティン・パワーズ:デラックス 』のサントラ記事を参照ください。

T-5〜8.の4曲は(CD3 で触れた)アルバム『 PAINTED FROM MEMORY 』リリース後の米国&英国短期間ツアーからの音源。エッセイの中でコステロは、T-5.「 涙でさようなら 」とT-6.「 マイ・リトル・レッド・ブック 」を初めて歌ったけれどそれは自分へのご褒美だった、またバカラックの指揮でT-7.「 恋するハート 」を歌えたことはとてもスリリングだった…と述懐しています。T-8.「 恋のとまどい 」は前述の通りコステロにとって初めてカヴァーしたバカラックソングですから、思い入れも相当でしょう。

さて、アナログ盤については、LP1 のA面、B面、LP2 のC面までがCD1『 PAINTED FROM MEMORY 』全曲、D面はCD2『 TAKEN FROM LIFE 』からのハイライトとなっております。

重量はLP1が実測148g、LP2が実測149gありました。普通のLP盤(120g台〜130g台、ペラペラのものだと100g台)よりは重いですが、こちとら高いお金払ってんだから180g級の重量盤にして欲しかったっすねー、ユニバーサルさん。

音源はCDと同じと思っていたのですが、LP2のD2.「 ドント・ルック・ナウ 」だけはオードラ・メイとジョン・パガーノがピアノのみをバックに歌うバージョンでして、CD2に収録されていない音源でございます。これだけはLPにしか収録されていないってことです。LP購入者への
特典ってこと??? そんなセコいことやめよーよ、ユニバーサルさん。CD2にこの音源も収録すればいいことでしょう、プンプン😠

結論! 萩原健太さんが薦めておられるように(こちら参照)、ブツとしては基本形のCD2枚組(解説付きの日本盤が良いでしょう)を購入して、CD3やCD4の音源は配信で楽しむ…というのがBESTです。どーしてもアナログの音を聴きたいという方は、別にLP2枚組を買い足せばよろしいかと。


【データ】
『 THE SONGS OF BACHARACH & COSTELLO (2LP+4CD BOX SET) 』
Elvis Costello & Burt Bacharach

CD+LP:2023年3月3日リリース
レーベル:Universal
番号:B0036682-00

Box Set Produced by Elvis Costello and Steve Berkowitz
CD1:Produced by Burt Bacharach and Elvis Costello
CD2:Produced by Burt Bacharach and Elvis Costello (except T-2,3,4,6,7,9,11,13)、Produced by Lee Townsend (T-2,7)、Produced by Elvis Costello and Sebastian Krys (T-3,4,6,9,11,13)
CD3:Produced by Burt Bacharach and Elvis Costello (except T-7,8)、Produced by Jan B. Larsson (T-7,8)
CD4:Produced by Tim Summerhayes and Mick Crickmer (T-1)、Produced by Nick Lowe, Elvis Costello and Paul "Bassman" Riley (T-2)、Produced by Elvis Costello and Kevin Killen (T-3)、Produced by Elvis Costello and Burt Bacharach (T-4)、Produced by Burt Bacharach and Elvis Costello (T-5〜8)

その他のクレジットは割愛させていただきます🙇‍♂️

(注)本アルバムのカテゴリーは、"カヴァーアルバム" と "新作主体のアルバム" の2種類を設定しました。

A Universal Music Enterprises release; ©️2023 UMG Recordings Inc.

Amazonリンク
① 2CD … 基本形
② 2LP+4CD
③ 2LP
④ 2SHM-CD(日本盤)

2025年2月 9日 (日)

The Songs of Burt Bacharach/Alfie! (2025年)

スウェーデンのジャズ・グループ、Alfie! の2025年作。デビュー・アルバムでありバカラック・カヴァー集です。

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. THE LOOK OF LOVE
2. DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE
3. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
4. I SAY A LITTLE PRAYER
5. A HOUSE IS NOT A HOME
6. WIVES AND LOVERS
7. TRAINS AND BOATS AND PLANES
8. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
9. ALFIE
10. WALK ON BY
11. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD
12. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE

収録時間約58分


---
ただいま日本時間の2月9日0時 ─ ロサンゼルスは2月8日の朝7時(米国太平洋時間)になったところですね。バカラックさんがロサンゼルスの自宅で大往生を遂げて早2年。息を引き取ったのは2月8日の何時頃だったんでしょう…。合掌🙏
---

スウェーデンのジャズ・グループ、Alfie! の2025年作。デビュー・アルバムでありバカラック・カヴァー集です。

Alfie! は女性ヴォーカル+ギタートリオの4人組。ヴォーカルのStina Ágústsdóttir(スティーナ・アウグースツドウッティル)はアイスランド出身(1976年生まれ)のシンガー&ソングライター。アイスランドで最高のジャズアーティストの1人だそう。アルバムも数枚出しとられます。デンマーク、イギリス、カナダでキャリアを積んだ後、2011年からはスウェーデンのストックホルムに在住しているようです。


VENTO AZUL RECORDS さんのサイトで知ったのですが、ライヴの様子(2022年7月22日のライヴ:5曲をフェードで繋いだ約3分間の動画)がYouTubeに上がっていましたので貼っておきます。この動画には Alfie! の表記がないので、グループ名を付けたのは最近のことなのかもしれませんね。


スティーナのインスタによれば、Alfie! は本アルバムのリリースにちなみ先月から今月にかけてストックホルムでコンサートをしている模様。特に2月14日のコンサートは "Releaee fest!" と銘打ってます。おめでとう〜🎉


収録された12曲は全てバカラック&デイヴィッド作品で、ちょっとマイナーなT-7.「 汽車と船と飛行機と 」を除くと有名曲ばかり。ギター、ダブルベース、ドラムスによるバックの演奏はオカズを程度に交えつつスティーナが気持ちよく歌えるようサポートしていて、ソロパートではセンス良いアドリヴを披露しています。スティーナは太くハリのある声質で、表現力もあります。全体的にざらっとした肌触りの、チャラチャラしたところがなく落ち着いて聴くことができるサウンドです。北欧(行ったことないしあくまでもイメージですが)の透明感ある雰囲気も感じます。

そういえば、タワーレコード広島店さんが入荷情報として ─ バート・バカラック、珠玉の名曲をビター感あるショコラヴォイスヴォーカルでお洒落。🎶 ─ とXで呟いとられました

曲による出来不出来もなくクオリティは全曲同レベル。普通はどこかに穴があるもんなんですけどねぇ…。その分インパクトは薄いのですが。インパクトがあったりゴリゴリしたサウンドがお好きな方にはお気に召さないかも?。個人的にはアルバム全体としてレコメンドです。


【データ】
『 The Songs of Burt Bacharach 』
Alfie!

CD:2025年2月14日 on Valentine's day リリース (日本のレコードショップでは2025年1月22日発売)
レーベル:Overseas Records (Sweden)
番号:OVCD0005

Stina Ágústsdóttir - Vocals
Fredrik Olsson - Guitar
Mats Dimming - Bass
Jojo Djeridi – Drums
Recorded in Stockholm 28-29 January 2024

(p)&©️ Overseas Records 2024

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し
 ディスクユニオン、タワーレコード、HMV、VENTO AZUL RECORDSのサイトでは取り扱っています

2025年1月12日 (日)

Always Something There To Remind Me/Wayne Armond (2007年)

ジャマイカのギタリスト/プロデューサー、ウェイン・アーモンドが2007年にリリースしたインスト物のバカラック・カヴァーアルバムです。(CD無し/デジタル配信のみ)

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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1. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE
2. (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME
3. ON MY OWN
4. ANY DAY NOW
5. THAT'S WHAT FRIENDS ARE FOR
6. A HOUSE IS NOT A HOME
7. WALK ON BY
8. REACH OUT FOR ME
9. WISHIN' AND HOPIN’
10. THE WINDOWS OF THE WORLD

収録時間約45分


ジャマイカのギタリスト/プロデューサー、ウェイン・アーモンドが2007年にリリースしたインスト物のバカラック・カヴァーアルバムです。

Wayne Armond(ウェイン・アーモンド)は1950年代初頭ジャマイカ生まれ。1980年結成のジャマイカのレゲエバンド、Chalice(チャリス)のオリジナル・メンバーであり、ソングライターとしても他のアーティストに多くの曲を書いてきたお方です。現在はフロリダ在住だそう。

ネットで情報収集したところ、Jamaica Gleaner Newsというサイトに本アルバムに関する記事が出ておりました。記事の日付は2007年5月4日。以下、ポイントのみ要約しますと…。

彼は12歳の時にディオンヌ・ワーウィックの「 ウォーク・オン・バイ 」を聴いたとき、そのアレンジに衝撃を受けました。クレジットに目をやるとそこにはバート・バカラックという名前が…。彼は歌い手のディオンヌよりも裏方のバカラックに惹かれたんですね。本アルバムを振り返ってのコメントは…  ─ 難しくはありませんでした。バート・バカラックのカタログに目を通して、私たちのジャンルに最も適していると思ったものを見つけたんです。間違いなく私のやり方、ジャマイカのやり方で(素材)を解釈することを意図しました。  ─ …とのこと。

アルバムは全10曲。'60年代の曲だけではなく'80年代のT-3.「 オン・マイ・オウン 」とT-5.「 愛のハーモニー 」もあります。実は私、昔からレゲエミュージックが苦手で…あのリズムを生理的に受け付けないんですょ。ジャマイカはレゲエ音楽発祥の地。“ジャマイカのやり方” = コテコテのレゲエだったらやだなぁと思いつつ再生したところ、想像したほどではありませんでした。良かった〜😙

全編でメロディを奏でているのは優しい音色のギター。T-1.「 世界は愛を求めている 」は原曲の3拍子ではなくゆったりした4拍子。ベースの動きはレゲエのそれっぽいですが、全体にはスムースジャズ的なサウンド。所々クールなバックコーラスも入ってカッチョイイです。T-2.「 愛の思い出 」はライトなレゲエかなぁ。T-3.「 オン・マイ・オウン 」のリズムはもう普通にレゲエでしょ。T-4.「 エニィ・デイ・ナウ 」はレゲエ臭薄く、ギターのアドリヴもなかなか。T-5.「 愛のハーモニー 」はゆったりレゲエ調。イントロ0:15くらいからのギターリフがまんまティアーズ・フォー・フィアーズの「 Everybody Wants To Rule The World(ルール・ザ・ワールド)」していて笑っちゃいましたが。

T-6.「 ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム 」もT-5.同様ゆったりレゲエ調。アウトロではルーサー・ヴァンドロスのシャウトを連想させる場面もあったり。T-7.「 ウォーク・オン・バイ 」はベースの動きがレゲエしてますが全体としてはコンテンポラリーな雰囲気。T-8.「 リーチ・アウト・フォー・ミー 」はレゲエ感薄めでスムースジャズ的。T-9.「 ウィッシン・アンド・ホーピン 」はレゲエ感なくて8ビート。シンセのトランペットがチープなのが惜しい。T-10.「 世界の窓と窓(世界の窓に光を)」もレゲエ感薄めで独特な世界観のアレンジ。イントロや曲の途中で入る男性コーラスのリフ(原曲には出てこないフレーズなんです)がやたら耳に残って😅。アルバムの中で最もオリジナリティある演奏では。

イージーリスニングとも違うし、レゲエっぽいスムースジャズという言い方がしっくりくるかなぁ。ゆったりBGM的に流すには良さげなバカラック・カヴァー集かな…と思います。

本アルバム、YouTube にフルでアップされています(こちら



【データ】
『 Always Something There To Remind Me A Jamaican Tribute to Burt Bacharach 』
Wayne Armond

MP3:2007年リリース
レーベル:Griot Musik
番号:-

クレジットは不明。以下は前述のネット記事でわかる範囲の情報です。
Wayne Armond - guitar
Richard McDonald - bass
Sheldon Bernard - keyboards
Marlon Stewart Gaynor - hand drums
Robbie Lyn - keyboards

Amazonリンク

より以前の記事一覧

カテゴリー

  • カヴァーアルバム
    ★バカラック・カヴァー曲が主体でBacharach をアルバムのタイトルやサブタイトルに入れているアルバム ★収録曲のうち半分以上がバカラック・カヴァーのアルバム ★複数アーティストによって新たにカヴァーしたアルバム ★複数アーティストによるトリビュートコンサートのライブアルバム
  • コンピレーションアルバム
    ★複数アーティストのバカラック作品を集めたいわゆる編集盤
  • シングル
    ★シングル
  • ディオンヌ・ワーウィックのアルバム
    ★新作主体/カヴァーアルバム/コンピ集を問わず、ディオンヌ名義のアルバム
  • バカラックの曲がちょっと入ったアルバム
    ★バカラックの曲がちょっと入ったアルバム
  • バカラック関連ネタ
    ★バカラック作品は入っていないがバカラックと何らかの関連があるアルバム ★アルバムやシングル以外のこと。本、コンサート、ライヴ、TV、Radio、告知、独り言、イベントなどなど
  • バート・バカラックのアルバム
    ★メインのアーティストがバカラックとなっているもの ★バカラックが音楽を担当した映画等のオリジナル・サウンドトラック ★ ○○ with Bacharach のようなアルバムは含めない
  • 新作主体のアルバム
    ★『 バート・バカラックのアルバム 』と『 ディオンヌ・ワーウィックのアルバム 』以外で、バカラックが新作を多数(およそ半数以上)提供したアルバム

★ リンク ★

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