カテゴリー「バカラックの曲がちょっと入ったアルバム」の300件の記事

★バカラックの曲がちょっと入ったアルバム

2024年9月29日 (日)

SOUL/Lena Horne (1966年)

米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は1トラック

4. WHAT THE WORLD NEEDS NOW (2:26)


米国のポピュラー・シンガーで俳優のリナ・ホーンが1966年にリリースしたアルバムです。尚、彼女のファーストネームは "レナ"・"リナ" 二通りの表記がありますが、Lena は英語では "リーナ" のように発音されるそうで
拙ブログでは "リナ" と表記いたします。

彼女は1917年ブルックリン生まれ(2010年没、享年92歳)。1933年にコットンクラブの舞台に立ち、1938年のミュージカル映画でジャズ歌手としてデビュー。彼女の父親が白人とのハーフだったために黒人(アフリカン・アメリカン)にしては色が薄かったため、白人からだけでなく黒人からも差別を受けたそうです。しかし、その美しさゆえハリウッドからも声がかかり、1940年代以降、映画やミュージカルなどで大活躍しました。公民権運動にも積極的に参加したことからブラック・リストに載り、アメリカ国内での活動が制限され活動の本拠をヨーロッパに移した時期も…。'50年代からコンスタントにアルバムを発表する傍らテレビなどに出演するようになり、その後映画にも復帰。2000年頃まで活躍しました。

本作は、1965年に United Artists レーベルに移籍した後にリリースした3作目にあたります。裏ジャケのライナーノーツにはこう書かれています。長いですがせっかくなので全文引用します。Google先生の訳で、どーぞ。

─ 「 ソウル 」という言葉は、最近、ポピュラー音楽の世界で最も頻繁に使われる名詞や形容詞の 1 つになっています。この言葉は、最近、さまざまなタイプの歌手に当てはめられ、時には誤って当てはめられ、その意味は混乱しています。しかし、長年にわたり、魂を込めて歌い続けてきた偉大な女性がいることを否定する人はほとんどいません。もちろん、彼女は比類のないリナ・ホーンです。
 これは、素晴らしいリナがユナイテッド アーティスツ レコードのために作った 3 枚目のアルバムです。最初は『 Feelin' Good 』、次は『 Lena In Hollywood 』でしたが、この 2 つの優れたコレクションに対する反響は衝撃的で、批評家もファンも、このボーカリストの女王がここまで最高の歌声を披露したことは一度もないと同意しました。ホーンの興奮、ホーンの活力、ホーンのスタイルは、まさに今、最高潮に達しています。
 そして、シンプルかつ適切に『 SOUL 』と名付けられたこのコレクションは、まさに最高峰です。これは、これまで聞いたことのないリナでもあります。
 曲は、おなじみの愛すべき「 THE OLD MILL STREAM 」を除いて、比較的最近のもので、この不朽の名曲は、ラ・リナの素晴らしい演奏によって、二度と同じ音には聞こえなくなるでしょう。『 SOUL 』には、トップ 10 入りした曲、リズム&ブルースの曲、カントリーの名曲、ゴスペル風の演奏、そして、おまけに素晴らしい新曲がいくつか収録されています。これらは、リナ・ホーンの演奏でもめったに見られない自由さと活気をもって演奏されており、特に注目すべきは、今日の音楽的背景であり、実際には明日の音楽的背景でもあるということです。
 ここに、唯一無二のリナ・ホーンがいます。ここに『 SOUL 』があります。エンターテインメント界の真の偉人の一人の芸術性を、まったく新しい設定、目もくらむほど新しく、スリリングなほど現代的に表現しています。『 SOUL 』は、リナがなぜ時代の伝説なのかを鮮明に示しています。実際、リナは時代の先を進んでおり、これからもそうあり続けることを示しています。リナはスターです。リナはスターです。リナは『 SOUL 』です。  ─

ビッグバンド+ストリングスというゴージャスな編成とリッチなアレンジの演奏をバックに、ソウルフルで自在な表現力を発揮した歌唱は素晴らしいの一言。彼女の全盛期がいつなのか私は知らないのですが、リリース時49歳のこのアルバムがそうだと言われても納得しちゃいます。粘っこいT-5.「 アンチェインド・メロディー 」、スローで艶やかなT-8.「 蜜の味 」…よく知ってるこの2曲もステレオタイプじゃないアレンジと相まっていずれもグイグイ聴かせます。

前置きが長くなっちゃいました😜。さて、バカラック・カヴァーはT-4.「 世界は愛を求めている 」。オリジナルの1965年ジャッキー・デシャノン版(♩≒108)よりゆったり目(♩≒98)且つ半音低いキー。ジャッキー版同様3拍子ですが、8小節あるイントロではトロンボーンやブラスがオリジナルには無いオブリガートを吹き、只者じゃない雰囲気が漂います。僅かに細かいビブラートが効いたリナの歌唱も、重厚というか貫禄があるというか…。ジャッキー版が「 世界には愛が必要なの、ね 」なら、リナ版は「 世界にゃ愛がいるんじゃ、わかっとんのかい 」てな感じ。いや、そりゃ言い過ぎか…😅。

ここからはオマケ。MP3で所有しているリナ・ホーンのバカラック・カヴァーをご紹介。
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リナ・ホーンは『 SOUL 』の次にリリースした『 Lena In Hollywood 』(1966年)で「 WIVES AND LOVERS(素晴らしき恋人たち)」(2:10) をカヴァー。映画関係の曲をカヴァーしたアルバムのようで、ビッグバンド+ストリングスの優雅且つゴージャスな演奏をバックに、肩の力を抜いて軽やかに歌っています。
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1970年には Lena Horne & Gabor Szabo 名義のアルバム『 Lena & Gabor 』で「 MESSAGE TO MICHAEL(マイケルへのメッセージ)」(3:14) をカヴァー。ガボール・ザボはジャズ系のギタリスト。ドラムス、Eベース、オルガン、ギターという編成で、オルガンのリチャード・ティー、ギターのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイルはのちにフュージョンバンド Stuff を結成する面々。♩≒82〜85のゆったりしたテンポ、ゴスペルファンク的なリズム、ソウルジャズのクールなサウンドをバックにリナは情感込めて歌っています。1998年に Varèse Vintage から出たコンピ集『 the burt bacharach songbook 』で聴いた時は余り印象に残らず。でも今聴いたらイイんですよねー。

他にバカラックがリナ・ホーンに書き下ろした曲もあるのですが、未紹介のバカラック物コンピ集に入っておりまして…。いずれ紹介いたします。


【データ】
『 SOUL 』
Lena Horne

LP:1966年リリース (所有リイシューCDは、1996年リリース)
レーベル:United Artists (US) (所有リイシューCDは、EMI(UK))
番号:UAL 3496/UAS 6496 (所有リイシューCDは、7243 8 37393 2 5)

All tracks arranged, conducted and produced by Ray Ellis

Amazonリンク(1996年リイシューCD)(2007年リイシューCD ボーナストラック入り全18曲

2024年9月15日 (日)

I Who Have Nothing/Tom Jones (1970年)

トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。今年ちょっと話題になったバカラック・カヴァー1曲を収録!

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全11トラック中、バカラック作品は1トラック

B2. WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE (2:39)


トム・ジョーンズが1970年にリリースしたスタジオ録音アルバムです。

トム・ジョーンズは1940年英国南ウェールズ生まれの男性ポップシンガー。バカラック曲「 WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか子猫チャン)」、「 PROMISE HER ANYTHING(プロミス・ハー・エニシング)」、「 US(アス)」のオリジナル・アーティストでもあります(これらの曲はバカラック物コンピ集にもよく取り上げられています)。2006年には大英帝国ナイト位を授与されました。所謂 “サー” の称号付きで呼ばれるわけですね、すげー。

本作は『 Tom 』(1970年4月リリース、UK#4)に続けて同年11月にリリースされました。1967年以降のアルバムが全てUKチャートで1桁順位だったのに対して、本作はUKチャート10位。彼独特のダイナミックな歌唱は健在だしノリの良い曲(A4,B6)もありますが、バラードタイプの曲(A2,A3,A5,B1,B5)も多くて全体的に大人しめな印象です。ジャケット裏面には、赤いドラゴン(ウェールズ国旗の中央に描かれている竜ですよね)、
“WALES” LAND OF SONG... This is my homeland; where I was born and raised のコピー、ウェールズと思しき丘陵地を背に佇むトムの写真…。出身地のウェールズに想いを馳せて感傷的になってそういう曲が多くなったのかしらん。(知らんけど)
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んで、バカラック・カヴァーはB2.「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE(当時の日本盤の邦題:愛を求めて)」。歌い出しはイントロなしでアウフタクト2拍をゆったりと。オリジナルと同じ3拍子でテンポは♩≒118。バックはビッグバンド+ストリングスのゴージャスなサウンド。トム・ジョーンズは最初は抑えめに歌っていますが、ラストサビでは彼らしいシャウトを聴かせます。いいですねぇ〜、
レコメンドでございます。公式動画がありましたので貼っておきます。


当時トム・ジョーンズはテレビ番組『 This is Tom Jones TV Show 』(1969〜1971年)のホストを務めていました。その番組で、1969年にサミー・デイヴィスJr.とこの曲をデュエットしています。エンディングが少し違っていてテンポも僅かに遅いですが、本アルバムのバージョンと基本的にバックの演奏は同じ。シャウトの掛け合いが素晴らしいです。これも公式動画を貼っておきます。


そして、今年ちょっと話題になったのが…。来月(2024年10月)公開となる映画『 Joker: Folie à Deux(ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ)』。今年4月10日リリースの特報トレーラーにトム・ジョーンズの歌う「 WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE 」が使われていたんです(ワーナー公式サイトのNEWS参照。特報トレーラーも視聴できます)。じっくり聴いてみると、デュエット版からサミー・デイヴィスJr.の冒頭の歌声が、本アルバムのトム・ジョーンズ版からラストサビの2フレーズ目の歌声が使われているようです。バックの演奏はとても重厚ですし、ゆったりしたインスト部分の美しさも際立っていますね〜。映画本編でも使われるのか、フォローしたいと思います。


ここからはオマケ。MP3で所有しているトム・ジョーンズのバカラック・カヴァーをご紹介。
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トム・ジョーンズは1967年のアルバム『 Green, Green Grass Of Home 』〜 ただし、Decca盤(UK)には収録されておらず、Parrot盤(US)のみ収録 〜 で「 ANY DAY NOW 」(2:54)をカヴァー。こういう曲にトム・ジョーンズの歌い方は相性いいですね。後半でのシャウトもハマっています。補足:1966年フランスでリリースした4曲入りEP『 What A Party 』のA面2曲目が初出の模様。
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同じく1967年リリースのアルバム『 13 Smash Hits 』で「 I WAKE UP CRYING 」(2:19)をカヴァー。それほど特徴はなくオーソドックスな仕上がり。もちろんトム・ジョーンズの歌唱はパワフルですけれど。
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ついでにライヴ盤も。1967年の『 Tom Jones Live! At The Talk Of The Town 』で「 WHAT'S NEW PUSSYCAT? 」(2:14)を歌唱。イントロで何やらおどけてるみたいですがよくわかりません。ライヴはやっぱり映像が欲しいですな。楽しく歌ってるのは伝わってきますけど。


【データ】
『 I Who Have Nothing 』(邦題:アイ)
Tom Jones

LP:1970年11月リリース
レーベル:Decca (UK)
番号:SKL 5072

詳細クレジット不明

Amazonリンク(MP3)(1998年リイシューCD 2 in 1

2024年7月28日 (日)

Marrakesh Express/Stan Getz (1970年)

米国男性ジャズ・テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツが1970年にリリースしたアルバムです。バカラックナンバー4曲を収録!

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Original LP front cover/back cover

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所有日本盤LPジャケットの表/裏

全10トラック中、バカラック作品は4トラック

A3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (2:54)
B2. Medley: BECAUSE - DO YOU KNOW THE WAY TO SAN JOSE (8:12)
B3. RAINDROPS KEEP FALLIN' ON Y HEAD (3:41)
B4. THE APRIL FOOLS (3:10)


米国男性ジャズ・テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツが1970年にリリースしたアルバムです。

スタン・ゲッツは1927年2月ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ(没年1991年、享年64)。1942年に15歳でプロ・デビュー。各楽団を転々としたのち、1947年にウッディ・ハーマン・オーケストラに加わりクール・スタイルのテナー・マンとして一躍名声を得ました。1949年に独立。'50年代は欧州中心に活動。'62年、当時人気を得てきたボサノヴァを取り入れて演奏したアルバム『 Jazz Samba 』が大ヒット。1963年にはアストラッド・ジルベルトをフィーチャーしたボサノヴァの名盤『 Getz / Gilberto 』をリリース。一家に一枚と言われるほど(事実、私もCD持ってます)の世界的なヒットになります。この頃からスタン・ゲッツは多分にイージー・リスニング・ジャズ的な演奏をすることが多くなってきたんだそう。1968年にはバカラック・カヴァー集『 What The World Needs Now - Stan Getz Plays Bacharach and David 』もリリースしています。そして1970年にリリースしたのが本アルバム。

─ このレコードはイージー・リスニング・ジャズ的な性格ももっており、最近のヒット曲を中心に演奏している。とくに4曲もあるバカラック・ナンバーが注目されよう。オーケストラの編曲と指揮はリチャード・ヒューソンが担当、ストリングスも加えたオーケストラはしゃれたムードを作っている。なお、プロデュースには、ジョージ・マーティンが当っている。ゲッツの最新盤らしいフレッシュなアルバムだ。  ─(所有日本盤LPの解説より、岩浪洋三氏)

実は昨年(2023年)コイツのアナログ重量盤がリイシューされました。でもね、6,000円近くもするんですょぉ…わたしゃ買えません😭。中古盤もなかなか高くて(海外送料が高い)どうしようか悩んでましたら中古の日本盤(タイトルがロミオとジュリエットに変更されてます)でプロモ品の安いヤツを見つけてゲットした次第。アナログ盤がリイシューされたからでしょう、いつの間にかYouTubeで全曲聴けるようになってるし…😅。

折角当時の日本盤が手元にあるので、バカラック・ナンバー4曲の解説を引用して紹介いたします。表記はママで。※印
はあるでお注。各曲名のリンク先はYouTubeです。

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A3.「 恋よさようなら 」
─ このところブームを呼んでいるバート・バカラック作曲の佳曲で、ブロードウェイ・ミュージカル『 プロミシーズ・プロミシーズ 』(※1)の主題歌である。ディオンヌ・ワーウィックの歌でヒットしたが、ここではスタン・ゲッツが原曲のメロディーの美しさを充分に生かして演奏している。軽快で抒情的なテナー・ソロをきかせ、バックのストリングスを生かしたオーケストラも見事である。  ─
木管楽器をうまく使った可愛らしいオケのアレンジが印象的です。ゲッツのサックスは全体的に寝ぼけてますけど。
※1 現代での一般的な邦題は
『 Promises, Promises(プロミセス・プロミセス)』。「 恋よさようなら 」はあくまでも挿入歌であって主題歌ではありません。

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B2.「 ビコーズ / サン・ホセへの道 」
〜 ビコーズについては割愛 〜
─ 「 サン・ホセへの道 」は原曲の軽快な味を生かして、リズミックなプレイが行われるが、弦を加えたオーケストラはカラフルで美しく、ゲッツはリラックスした気分で、快適なアドリブをくりひろげている。にぎやかで楽しい演奏である。このアルバムの中でもとくに聞きものの一曲といえよう。  ─
確かにバカラック・ナンバー4曲のうちで最もゲッツがアドリヴを聴かせるのはこの曲かも。バカラック版のアレンジがベース。オケのアレンジは軽快で派手で小技も効いててユニークです。

B3.「 雨にぬれても 」
─ このアルバム三つ目のバカラック・ナンバー。ちょっととぼけた味と哀感があって、数あるバカラックの作品のなかでもとくに印象ぶかい曲である。上当りした愉快な映画『 明日に向って撃て! 』の主題歌のひとつで、B.J.トーマスが映画のバックでも歌ってヒットさせた。ミディアム・スロー・テンポによるスタン・ゲッツの演奏は、原曲のユーモアのセンスも込めて楽しい仕上りとなっている。  ─
この曲でも木管楽器の響きがスパイスとなったオケのアレンジが楽しいです。ゲッツのサックスは相変わらず眠たそう。

B4.「 幸せはパリで 」
─ 1970年の秋に日本でも封切られる映画『 幸せはパリで 』(原題エイプリル・フールス)(※2) の主題歌で、この映画のためにバート・バカラックが作曲したものである。映画にはカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・レモンが主演、社長夫人に恋をした社員が職を捨ててパリにかけ落ちするという恋をテーマにした映画である。現代の愛を歌い上げた映画にぴったりの甘美で哀感にあふれた曲で、スタン・ゲッツもロマンティックなバラードとして歌い上げている。ストリングスを加えたオーケストラを背影にしてのゲッツのソロはあざやかだ。ゲッツにはバカラック集があるようにバカラックは得意にしている作曲家である。  ─
全然派手じゃないし、オケのアレンジも楽器や音数が少なめでシンプルなのですが、私はバカラック・ナンバー4曲中この曲が最も印象に残りました。ゲッツのサックスがオケに寄り添ってる風だったからかなぁ。
※2 映画『 The April Fools 』の邦題が『 幸せはパリで 』なのに対し、同名タイトルのこの曲「 THE APRIL FOOLS 」の邦題は「 エイプリル・フール 」というのが一般的です。まだ日本で公開されてなかったんだ!?と思って調べたところ、米国で1969年5月28日に公開されたこの映画、日本公開日は1970年10月24日でした。

スタン・ゲッツのテナー・サックス+オケという編成。岩浪洋三氏はイージー・リスニング・ジャズと表現されてましたが、イージー・リスニングでいいんじゃね?というのが率直な感想です。スタン・ゲッツよりもオケのアレンジの方が主役ですもん。ジャケットは主役よろしくカッコいいんですけどねー。



【データ】
『 Marrakesh Express 』 (日本盤LPタイトル『 Romeo And Juliet(ロミオとジュリエット)』
Stan Getz

LP:1970年9月リリース (所有日本盤LPは、1971年リリース、解説:岩浪洋三氏)
レーベル:MGM Records (US) (所有日本盤LPは、MGM/日本グラモフォン)
番号:SE 4696 (所有日本盤LPは、MM 2021)

Produced by George Martin
Arranged and Conducted by Richard Hewson
Stan Getz - tenor sax

Amazon リンク(2023年リイシューLP


2024年6月30日 (日)

This Is Time 5/タイムファイブ (1970年)

男性5人組コーラス・グループ、タイムファイブのデビュー・アルバムです。バカラック・カヴァーを3曲収録!

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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全12トラック中、バカラック作品は3トラック

3. THE LOOK OF LOVE (3:17)
5. THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU (4:04)
9. THE WINDOWS OF THE WORLD (4:00)


男性5人組コーラス・グループ、タイムファイブが1970年にリリースしたデビュー・アルバムです。

タイムファイブは、─ 同志社大学軽音楽部出身の男性5人(田井康夫、野口鎮雄、勅使河原貞昭、吉村晴哉、杉江浩平)で1968年に結成されたグループ。当時、ハワイでヒットしていたコーラスグループ「INVITATIONS」の曲「ナニワイメア」を歌って大学対抗バンド合戦で優勝。結成50年を超えてメンバーは一度も変わったことがない。大学対抗バンド合戦に優勝後上京、プロとして活動を開始以来、楽器を演奏しながらコーラスするというスタイルと、テンションを駆使した高度なハーモニーをグループのカラーとして、コンサート・ライブ、テレビ、ラジオに出演。1000本以上に及ぶコマーシャル音楽の制作に携わる。  ─ (Wikipediaより)

詳細な経歴は公式サイトの「 タイムファイブとは 」を参照されたし。(こちら

これまで私はタイムファイブを単なるコーラス・グループだと思ってました。最近たまたまYouTubeで「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」の動画を見つけて、“ えっ⁉️  楽器演奏しながら歌うの❓ カッケ〜😳 ” となった次第。今頃気が付くなんて…何ともお恥ずかしい😅。尚、この動画は概要欄に “ Walk On By -TIME FIVE ('75) ” と書かれており画面右上にtbsロゴがあることから当時彼らがレギュラー出演していたTBS『 サウンド・イン“S” 』のものと思われます。

本アルバムについてはCD帯の紹介文をご覧ください(私から付け加えることは何もございません😓)。─ 同志社大学のコーラス・グループとして学生時代から評判を呼んでいた5人組のデビュー作。<日本のフォー・フレッシュメン>の鳴り物入りで発表されたこの作品は、噂にたがわず素晴らしいハーモニーと、自分たちで全ての楽器も手がける、まさに日本のフォー・フレッシュメン(こちらは5人組だが)ぶりが大きな話題を呼んだ。スマートなコーラスと洒落たセンスの演奏。日本ではこれ以前にほとんどなかったこのスタイル。以後も成功した例がないことから、彼らの存在は貴重といえる。スタンダードとポップスから選ばれた曲も趣味がいい。  ─ (小川隆夫氏、リイシューCDの帯より)
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本作では3曲のバカラック・カヴァーを取り上げています。
T-3.「 THE LOOK OF LOVE(恋のおもかげ)」は♩≒116のライトなボサノヴァ・アレンジ。トランペットのオブリガートや2コーラス目のサビのコーラス・ワークにはアニタ・カー・シンガーズ版(1969年)との近似性を感じます。
あのオブリガートは元々ディオンヌ・ワーウィック版(1969年)でストリングスが奏でていたものですけれど。一方、ラストのコーラス&トランペットは彼ら独自のものかと。演奏している楽器はドラムス、トランペット、ベース、オルガン、ヴィブラフォン。シンプルで気持ちいいカヴァーですね。
T-5.「 THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU(ディス・ガイ)」は♩≒84のシャッフルでオリジナルと同等。Aメロは楽器演奏のみでメロディはトランペット。Bメロ前半4小節はフルートのメロディ+コーラスでハミング。Bメロ後半4小節〜サビはコーラスが主旋律をハモって歌います。2コーラス目はフルートがAメロを吹き、Bメロ〜サビはコーラスが主旋律をハモリます。楽器はドラムス、トランペット、ベース、ピアノ、フルート/ヴィブラフォン。「 恋のおもかげ 」よりも更にシンプルなアレンジかな…と思います。
T-9.「 THE WINDOWS OF THE WORLD(世界の窓と窓)」はディオンヌの原曲(♩≒92)よりゆったり目な♩≒88のシンプルな8ビート。リードヴォーカルもコーラスのハーモニーも実に美しく、途中の転調(B♭→C)も印象的。楽器はドラムス、トランペット、ベース、ピアノ、フルート。全編にわたってピアノがキラキラしたオカズを弾き、トランペットとフルートがハモってオブリガートを吹くのがエモいです。3曲の中ではこれが最も魅力的かなぁ。

アルバム全体では、T-7.「 CALL ME(コール・ミー)」がライトなサンバ・アレンジにコーラス&楽器演奏とも軽快且つお洒落でレコメンド。

YouTubeには「 ウォーク・オン・バイ 」の他に「 THE LOOK OF LOVE(恋のおもかげ)」の動画も上がっています。メンバーの風貌から近年の演奏と思われますが、ジャズロック風な8ビートでより洗練されたサウンド&コーラスを聴くことが出来ます。ドラムスとベースはサポート・ミュージシャンのようですが、出来としてはこの動画の方が今回紹介したアルバム(1970年版)よりも素敵ですね。
YouTubeにはもう1曲、女性コーラス・グループEVEとの共演で「 SOUTH AMERICAN GETAWAY(サウス・アメリカン・ゲッタウェイ)」の動画もありました。あのダバダバの曲です。メドレーの最初の1分20秒程と最後の1分少々ですが、一度こーゆーの生で聴いてみたいものです。

さて、ここからはオマケ。タイムファイブのメンバーが大好きな米国の男性ヴォーカル・グループThe Four Freshmen(フォー・フレッシュメン)のバカラック・カヴァーをご紹介!
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フォー・フレッシュメンは1968年のアルバム『 Today Is Tomorrow! 』で「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」(2:12) をカヴァー。ファンキーなアレンジで、コーラス・ワークも要所でポルタメントを入れてファンキーっぽく。間奏のトランペットのアドリヴもカッコイイし、エンディングのコーラスもエモすぎる〜。フュージョンタッチのタイムファイブ1975版とは全くスタイルが違いますが、甲乙つけ難し…です。
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1972年には The Four Freshmen With Stan Kenton And His Orchestra 名義のライヴ録音アルバム『 Live At Butler University 』で再び「 WALK ON BY(ウォーク・オン・バイ)」(2:07) をカヴァー。1968年のスタジオ録音と同じアレンジですが、演奏が荒っぽいけど勢いがあります。でもまぁスタジオ録音の方がいいかな。


【データ】
『 THIS IS TIME 5 』(LP帯:ディス・イズ・タイム・ファイブ)
タイムファイブ (英:TIME FIVE)




LP:1970年リリース (所有CDは、2018年12月5日リリースのリイシュー盤)
レーベル:King Records (JP) (所有CDは、同じくKing Records)
番号:SKK 3002 (所有CDは、KICJ 2625)

プロデュース:不明
編曲:吉村晴哉

タイムファイブ
  田井康夫:ドラムス、ウクレレ/リード・ヴォーカル
  勅使河原貞昭:トロンボーン、トランペット、フリューゲルホーン/2ndテナー
  野口鎮雄:ベース/2ndテナー
  吉村晴哉:ピアノ、オルガン/バリトン
  杉江浩平:ヴィブラフォン、フルート/バス
Recorded by Fontaine Tokyo, Japan

Amazonリンク(1970年LP)(2007年リイシューCD)(2012年リイシューCD) (2018年リイシューCD

2024年6月 9日 (日)

Mystical Soul/John Blair (1971年)

米国のジャズ・バイオリニスト、John Blair(ジョン・ブレア)が1971年にリリースしたヴォーカル・アルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全6トラック中、バカラック作品は1トラック

A3. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (6:22)


米国のジャズ・バイオリニスト、John Blair(ジョン・ブレア)が1971年にリリースしたヴォーカル・アルバムです。

ジョン・ブレアはアメリカのジャズ・バイオリニスト。1943年11月オハイオ州トレド生まれ(2006年6月NYC没、享年62歳)。彼はバイオリンとギターのアコースティックコンビネーションであるVitar(Wikipedia)の演奏家としてもよく知られているんだそう。自身の3枚のアルバム以外にも、多くのジャズファンク系レコーディングに参加していたようです。本作ジャケ裏のライナーによれば、この時点でアイザック・ヘイズ、ハリー・ベラフォンテ、サミー・デイヴィスJr、ジェームズ・ブラウン、リッチー・ヘヴンズ等のレコーディングに参加したとありますし、兵役に就いた際は空軍Strolling String SymphonyのメンバーとしてJ.F.ケネディ大統領とジョンソン大統領の前で演奏したんだそう。

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本作はジョン・ブレアの1stアルバム。収録されている6トラック/7曲のうちA2, B2, B3.の3曲は自作曲で、その他4曲はカヴァー。A1.はビートルズ「 ゴールデン・スランバー 」とファイヴ・ステアステップス「 ウー・チャイルド 」のメドレー…ってゆーかマッシュアップ。ディオンヌ・ワーウィックやボビー・ジェントリーのヒットA3.「 恋よ、さようなら 」。そしてブラザーフッド・オブ・マンのヒットシングル「 UNITED WE STAND(二人だけの世界)」のB面曲であるB1.「 SAY A PRAYER 」。取り上げたカヴァーはいずれも1969〜1970年頃の曲ですね。

各曲の曲調はバラード
〜ジャズ・ファンクまでと幅広いのですが、アルバム全体の印象はクールなソウル。若干しゃがれ声の男性ヴォーカルは彼自身によるもので、決して下手ではないけれどヴォーカリストとしてはあまり印象に残りません。それよりもバックトラックの手の込んだアレンジの方が印象的です。…とジャケットを確認したところ、アレンジはボブ・ジェームスとクレジットされていました。そっかそっかと納得。CTIレーベルに所属して様々なレコーディングにプレーヤーとして参加してた頃、こんなアレンジの仕事もしていたんですね。

さて、バカラック・カヴァーはもちろんA3.「 恋よ、さようなら 」。ディオンヌ版(1969/12:US#6,♩≒138)やボビー・ジェントリー版(1969/8:UK#1,♩≒114)とは全く異なり、グッと落ち着いた♩≒80のスローテンポ。8小節あるイントロは
「 恋よ、さようなら 」がこれから始まるとは全く予想できない爽やかなメロディ&コード進行。んで、ジョン・ブレアがAメロを歌い始めるとソウルバラード調に。ギターとベースがオクターヴで爪弾くオブリガートがなんとも素敵です。サビではホルンやオルガンも加わり16ビートのファンクになるんですがこれがまた渋い! 4分ほどして一旦休止し、Aメロを1回リプレイした後(歌はココでおしまい)イントロのフレーズを繰り返すんですが、ジョン・ブレアによる緊張感あるバイオリン・ソロが加わり不思議な盛り上がり?を見せてフェードアウトして終わります。
他に類を見ない「 恋よ、さようなら 」の歌ものカヴァーだと思います。掛け値なしにレコメンドっす!

さて、ココからはオマケ。
私がこのジョン・ブレアのカヴァーを知ったのは、Radio France の『 Repassez-moi l'standard 』という約1時間の番組。その2024年4月14日の放送回が「 "I'll Never Fall in Love Again" composer Burt Bacharach & lyricist Hal David (1968) 」でして、「 恋よ、さようなら 」のオリジナルとカヴァーを次々紹介するというプログラムでした。オンエアされたのは計13曲。1. ジル・オハラ&ジェリー・オーバック、2. ディオンヌ・ワーウィック、3. シャーリー・バッシー、4. ボビー・ジェントリー、5. カーペンターズ、6. Wilson Simonal(ウィルソン・シモナール)、7. John Blair(ジョン・ブレア)、8. グラント・グリーン、9. アイザック・ヘイズ、10. ザ・デルズ、11. リーグモル・グスタフソン、12. Tok Tok Tok、13. Noël Akchoté …このうち私が聴いた事なかったのが 6.と7. でした。MP3が見当たらなかったため本LPをDiscogsでゲットしたワケです。

その放送回は こちら で聴く事ができます。また、リンク先ページを下の方にスクロールすると各曲のYouTubeも貼ってあります(12.と13.を除く)。よろしければ是非!。


【データ】
『 Mystical Soul 』
John Blair

LP:1971年リリース
レーベル:A&R (US)
番号:ARL 7100/002

Produced by Pete Spargo
Arranged and Conducted by Bob James
Engineer:Dave Greene
Violin Solos:John Blair
Recorded at A&R Studios, New York

A&R Records New York
Manufactured and Distributed by Mercury Records Productions, Inc.

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年5月26日 (日)

Digits/David Benoit (1983年)

米ジャズ・フュージョンピアニスト、デヴィッド・ベノワが1983年にリリースしたアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original LP front cover/back cover
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所有リイシューCDのジャケット表/ケース裏

全8トラック中、バカラック作品は1トラック

4. ARTHUR'S THEME (4:07)


米ジャズ・フュージョンピアニスト、デヴィッド・ベノワが1983年にリリースしたアルバムです。

デヴィッド・ベノワは1953年8月18日米国カリフォルニア州ベイカーズフィールド生まれ。18歳からミュージシャンとして始動。契約したAVIレコードから1977年にアルバム『 Heavier Than Yesterday 』でデビューし、以降アルバムを定期的にリリース。1987年にGRPに移籍、アルバム『 Freedom at Midnight 』を発表するとタイトル曲が大ヒット。それ以来、L.A.(西海岸)スタイル・フュージョンを代表するピアニストとして活躍しているお方だそう。私はお名前しか知らなかったのですが😅。

本作はAVIでの4枚目のアルバム。全8曲はT-6.を除いてインスト・ナンバー。曲によってテイストが違っていて、アルバム全体の印象は "AORチックなフュージョン"。'80年代前半の空気感も漂ってますねー。ドライブ中のBGMにいいんじゃないでしょうか。ただ、バカラック・カヴァー(T-4.)も含めて曲目リストには楽曲の作者情報が全く載ってなくて…。誰の曲なのかさっぱりわからん💦。
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そのくせ、ミュージシャンや楽器は各曲ちゃんとクレジットされています。演奏メンバーや編成は様々で、ピアノソロ(T-8)、4人(T-2,4,7)、5人(T-3)、6人+ホーン(T-1)、4人+オケ(T-5)、6人+オケ+男性ヴォーカル(T-6)という具合。デヴィッド・ベノワは、Fender Rhodes/Synthesizer/Pianoを弾き分けています。

んで、バカラック・カヴァーはT-4.「 ARTHUR'S THEME(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」。キーはクリストファー・クロスが歌うオリジナルと同じくAメロがAmで、サビがA。イントロ〜1コーラス目のサビ手前まではピアノソロでとてもリリカル。サビからベース&ドラムスが、2コーラス目からはシンセとラテン系パーカッションも加わります。主メロは基本ピアノで、オリジナルではサックスが吹く中間部8小節のアドリヴもピアノ。軽く崩して弾くメロディは都会的な香りがしますね。このあとサビをリピートしてフェードアウトするのかと思ったら、Emに転調してAメロを4小節 → 更にキーが半音下がってAメロを4小節 → その後に
イントロを4小節再現して終止形で終わる… とゆー他のカヴァーではみられないアレンジに胸がキュンとなりました。この展開はレコメンドです。曲全体としては聴き心地がよいフュージョン(今でいうスムーズジャズ)ってところでしょうか。

ここからはオマケ。私がMP3で所有している楽曲のうち、デヴィッド・ベノワと同時期にジャズ系ミュージシャンがカヴァーしたインスト物の「 ARTHUR'S THEME 」をご紹介!(イージーリスニング系のインスト物は1982年を中心に結構
リリースされていますが、ここでは対象外といたします。また、Super Guitar Duo(1983年)などジャズ系インストカヴァーは他にもありますがMP3データ無く対象外です。)
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デヴィッド・ベノワより前に、スウェーデンのジャズ・ギタリスト、Rune Gustafsson(ルネ・グスタフソン)が1982年のアルバム『 La Musique 』で「 ARTHUR'S THEME 」(3:15)をカヴァーしています。ナイロン弦のギター、ベース、ヴィブラフォンというユニークなトリオ編成。ギター、ヴィブラフォンがそれぞれ軽快なアドリヴを披露し、ベースもよく動きます。フュージョンではなくジャズの範疇だと思いますが、聴き心地良く好印象です。
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実は、それ以前にも米国のプロデューサー/編曲家/指揮者/ピアニストのAl De Lory(アル・デロリー)が1980年のアルバム『 Somebody's Knockin' 』で「 ARTHUR'S THEME 」(3:59)をカヴァー。ピアノをメインとしたバンド形式。おとなしいフュージョンというか、イージーリスニングとの境界スレスレで紹介するの躊躇しましたが、ジャケットで情けないポーズをしてるアル・デロリーに免じて紹介した次第😅。DiscogsやWikiには1980年リリースとなっていて、あれっ? オリジナルのクリストファー・クロスが1981年夏にリリースした曲を1980年にカヴァーできる訳ないやん🤔…とツッコミを入れつつ。


【データ】
『 Digits 』
David Benoit

LP:1983年リリース (所有CDは、1990年リイシューのUS盤)
レーベル:AVI Records (US) (所有CDは、Bluemoon (US))
番号:AVI-6183 (所有CDは、R2 79159)

Produced by Laurin Rinder and W. Michael Lewis
Synthesizer Programming - W. Michael Lewis
T-4.「 ARTHUR'S THEME 」
  David Benoit: Piano, Synthesizer
  Bobbye Hall: Percussion
  Wade Short: Bass
  Gary Ferguson: Drums

(R)1983 AVI Record Productions ©️1990 Mesa/Bluemoon Rcordings, Ltd.
Marketed by Mesa/Bluemoon Rcordings, Ltd.
Licensed and Distributed by Rhino Records, Inc.

AmazonリンクリイシューCD

2024年5月19日 (日)

I'll Never Fall In Love Again/Bob Dorough (1970年)

ボブ・ドローがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンものインスト・レコードです。バカラック作品を4曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全10トラック中、バカラック作品は4トラック

A1. I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN (3:20)
A2. THE LOOK OF LOVE (2:50)
B1. RAINDROPS KEEP FALLING ON MY HEAD (3:30)
B4. (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU (2:50)


ボブ・ドローがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンもののインスト・レコードです。

先月Discogsで入手したのですが、私はボブ・ドローを全く知らなくて…。CDジャーナルさんのサイトから以下引用させていただきます🙇。

─ 1923年12月12日アーカンソー州チェリーヒル生まれ。ヴォーカリスト、ピアニスト。ノーステキサス州のカレッジで作曲とピアノを学び、1954年から1年ほどシュガー・レイ・ロビンソンの伴奏・編曲者となりカナダやフランスに楽旅した。ニューヨークでは自己のトリオを結成し注目され多くのコンボと共演も。マイルス・デイヴィス『ソーサラー』への参加でも知られる。1956年、『デヴィル・メイ・ケア』でアルバム・デビュー。1973~85年には米の国民的子供番組『スクールハウス・ロック』で音楽を担当、「スリー・イズ・ア・マジック・ナンバー」で一世を風靡した。2013年6月、89歳にして初来日公演が決定。  ─ (CDジャーナルさんの公式サイトより、2013年5月)

その後2015年にも来日して元気な姿を見せるも、2018年4月帰らぬ人に…
。享年94歳はバカラックさんと同じですね、合掌。

本アルバムのレーベル:Music Minus One(略してMMO)は、教育目的のためにソリストパートなしで録音したレコード等(ピアノなしのピアノ協奏曲など)が付属する楽譜を制作する会社。1950年に設立されNYに本拠を置いてました。リリースしたアルバムはDiscogsに載ってるだけでも600タイトル以上。多くの録音で、有名&腕っこきのミュージシャンを起用したそうです。


ボブ・ドローは、MMOから少なくとも8タイトルをリリース(Discogsによる:あるでお調べ)。レコード番号順に『 The Medieval Jazz Quartet Plus Three 』[CE 1050]、『 The Music of Nacio Brown 』[MMO 1017]、『 The Harry Warren Songbook 』[MMO 1019]、『 Swing Or Sing Along 』[MMO 1021]、『 The Gershwin-Porter Songbook 』[MMO 1023]、『 本アルバム 』[MMO 1069]、『 A Taste Of Honey 』[MMO 1070]、『 Watch What Happens! 』[MMO 1075]、とまぁこんな具合。

んで、本アルバム。Hi-Fiレコード・ストアさんの公式サイトに載っていた紹介コメントを引用させて頂きます(Hi-Fiさんの紹介コメントが購入する引き金になったものですから…)。

─ ボブ・ドロウが手ほどきする歌のないバカラック。 ボブ・ドロウがピアノ、アレンジ、指揮を手掛けたマイナス・ワンものインスト・レコード(歌の教則用レコード)。レパートリーはバカラック・ナンバーを始め、60年代ソフトロックの名曲ばかり。エレピ中心で、コンガやソフトなブラスを効かせたアレンジがさすが。スチュワート・シャーフ、ビル・グッドウィンらが参加。歌メロディがないことで、逆にコード展開などがつかみやすく感じられます。もちろん、あわせて歌ったってよいでしょう! ジャケもいい! 譜面ブックレットなし。   ─ (Hi-Fiレコード・ストアさんの公式サイトより。原文ママで。ただし、今現在は在庫が無いようで表示されません…。)

ジャケもいい! …私も同感ですが、ボブ・ドローは裏ジャケ写真の人物で表ジャケの方は別人ですよね。一体誰なん?

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 ↑ は裏ジャケの曲目リストを拡大したもの。普通のレコードには記載が無い Key と Tempo が新鮮です 。

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演奏しているのは弦楽器入り小規模ビッグバンドといった感じ。ピッチ合わせのためか、A面/B面とも最外周にA=440Hz(ラの音)のテストトーンが入っているのが面白いです。メロディは殆どありません(うっすら流れる箇所もありますが)。でも、所謂カラオケとはちょっと違います。カラオケの演奏は通常原曲を完コピしているのに対し、本作では独自のアレンジを施しているんですねー。

全10曲中4曲あるバカラック作品について簡単に触れます。A1.「 恋よさようなら 」は、全編でコンガをフィーチャーしたラテン調の軽いアレンジ。A2.「 恋の面影 」は、他では聴いたことが無いEベースの16分音符のリフが斬新で、サビでのストリングスのオブリガートも印象的。B1.「 雨にぬれても 」は、可愛らしいアレンジでフルートのオブリガートが心地良い。B4.「 遥かなる影 」が4曲の中では最も意表をつくアレンジ。ブラスによるムード歌謡っぽい9小節のイントロ、全編に流れるアコギとエレピによる8ビートの刻み(そう、シャッフルのリズムじゃないんです!)。一方でカーペンターズ版にあるサビ後の5連符はありません。テンポこそカーペンターズ版とほぼ同じですが、全米1位になったばかりの大ヒット曲をけっこういじってるなぁ…と。

ボブ・ドローによる裏ジャケの各曲解説は、アレンジの説明&歌う方へのアドバイス。一例としてB4.「 遥かなる影 」の解説を載せますね。 

─ 4.「 遥かなる影 」…イントロは長いですが、非常に明快です。 2つのスタッカートの和音は、"Why do"というワード(あるでお注:歌い出しの歌詞)を導くためのクリーンな間です。ワンコーラスの後、繰り返してフェードアウトします。冒険好きな人は、ただ1つのセリフを何度も歌うのではなく、繰り返し中に新しいセリフやワードを創作してもよいでしょう。  ─ (ボブ・ドローによる解説文。拙意訳で)

アレンジに光るところは多々見られるものの、やはり主メロが聴こえないのは(カラオケ🎤するなら別ですが)ツマンナイ。わざわざ買うほどじゃないか…というのが率直な感想。Hi-Fiレコード・ストアさんには申し訳ないですが…。

さて、ここからは参考情報です。
私は所有していないのですがMMOシリーズにはバカラック集が5タイトルもあります。
『 Bacharach Revisited - 10 Backgrounds For Male Singers 』[MMO 1056]、『 Bacharach For The Ladies 』[MMO 1057]、『 Bacharach Revisited: Bacharach For Instrumentalists 』[MMO 1058]、『 Bacharach For Pianists (Music Minus One Piano) 』[MMO 1059]、『 Bacharach Organized (Music Minus One ORGAN) 』[MMO 1060]

これら5タイトルは全て1969年のリリース。収録曲(全10曲、曲目&曲順も)に加えて、Orchestra Arranged & Conducted by Jack Six、Personnelなど裏ジャケットの記載が全く同じなので音源も同一と思われます。以前から存在は知っていたのですが、どうせカラオケ音源だろうと高を括って無視してきました。本アルバムが単なるカラオケ音源じゃないとわかった今、どうしたものかと思案中…。


【データ】
『 I'll Never Fall In Love Again 』
Orchestra arranged and conducted by Bob Dorough
Music Minus One Singer or Instrumentalist

LP:1970年リリース
レーベル:Music Minus One (US)
番号:1069

Producer: Bob Dorough
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Recorded at Lincoln Sound Center
Complete Music and Lyrics for C, Bb, Eb and Bass Clef Instruments Included. … 入手した中古レコードに楽譜は入ってませんでした。まぁ仕方ないですねー、そもそも楽譜がメインでレコードはオマケですから。

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年4月28日 (日)

Pilar Tomas/Pilar Tomas (1969年)

フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1969年にリリースした彼女唯一のアルバムです。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全12トラック中、バカラック作品は1トラック

B3. Folie D'avril (THE APRIL FOOLS) (2:51)


フランスの女性歌手、ピラール・トーマスが1969年にリリースした彼女唯一のアルバムです。

ピラール・トーマスについてはよくわからなかったのですが、
ひょんなことから情報を得ました。オマケとして後述します。

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本アルバムの12曲は全てフランス語詞の曲で、バカラック・カヴァーの1曲を除いて私の知らない曲ばかり。フォーキーな曲からラテン調の曲、陽気な曲から哀愁漂う曲まで色々なタイプが揃っています。ピラール・トーマスの歌唱は細かいビブラートが特徴的。落ち着いた大人の歌手といった印象です。

んで、バカラック・カヴァーはB3.「 Folie D'avril 」。1969年公開の映画『 The April Fools(幸せはパリで)』の主題歌「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」をフランス語詞で歌っています。曲名の Folie D'avril を直訳すると Madness of April = 4月の狂気。THE APRIL FOOLS の意味する "4月馬鹿たち" とは微妙に違うような気がするのですが…
。誰かフランス語が堪能な方に教わりたいっす。フランスの有名なソングライター、Eddy Marnay(エディ・マーネイ)による歌詞の中身も気になりますね。それにこの方、この曲を“歌って”カヴァーした最初の人っぽいです(あるでお調べ→こちら)。

オリジナルのディオンヌ・ワーウィック版と較べてキーは半音高くテンポも若干速め(ディオンヌ版の♩≒77に対して♩≒82)ですが、アレンジの基本はディオンヌ版そのもの。トランペットが吹くイントロメロやオブリガート、全編に漂うアコギの刻みなどはディオンヌ版を踏襲しています。一方で、和音を奏でるストリングスをオルガンに置き換えたり、グロッケンやマリンバ、チェロ、ハープによる独自のオブリガートを加えるなど、哀愁が増す方向に味付けして曲の魅力を高めています。この編曲家はいい仕事してますね。ピラール・トーマスは持ち味の細かいビブラートを効かせて丁寧に歌っていますが、表現力豊かなディオンヌの前ではちょっと分が悪いかな…。

ここからはオマケ。なんと、彼女は「 THE APRIL FOOLS(エイプリル・フール)」の日本語詞バージョンを歌い、日本でシングルをリリースしていたんです。こちら ↓ がその証拠。Discogsに載ってた画像を拝借しました、悪しからず。
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CBS・ソニーから1970年にリリース(SONG 80181、定価¥400)されたもので、タイトルは「 幸せはパリで = THE APRIL FOOLS 」(訳詞:岩谷時子)。カップリングは「 Zの愛のテーマ = THEME FROM “Z” 」(訳詞:山川啓介)で、本アルバムのA1.「 Un Homme Dans Une Île 」ですね。非公式ですがYouTubeにアップされています。私も聴きましたが、バックトラックは本アルバムと全く同じでした。

シングルにピラール・トーマスのプロフィールが書いてありましたので、引用して紹介します。
─ ピラール・トーマスは、B面にも収録されている「 Zの愛のテーマ 」をヒットさせ、デビューを飾ったフランス・ポップス界の新人で、そのメランコリックな歌い方は、むしろ日本人向きとも言えるフィーリングを感じさせます。すでに本国フランスでは「 星を追いかけて 」(Tout En Suivant L'étoile)、「 愛のまえでふるえないで 」(Ne Tremble Pas Devant L'Amour)のヒットがあり、今後の活躍が大いに期待されています。  ─

結局ピラール・トーマスは1971年のシングル1枚を最後に表舞台から消えてしまいました。何があったんでしょうねぇ。


【データ】
『 Pilar Tomas 』
Pilar Tomas




LP:1969年リリース (所有LPは、同年リリースのカナダ盤)
レーベル:CBS (France) (所有LPは、Columbia (Canada))
番号:S 63938 (所有LPは、FS-719)

Direction Artistique(Producer):Ph. Boutet
Orchestre, direction:Jean Claudric (except A1,B4), Bernard Gerard (A1,B4)
B3.「 Folie D'avril 」(French version of THE APRIL FOOLS)
      E. Marnay - B.Bacharach

※ 日本のAmazonでの取り扱いは無し

2024年4月 7日 (日)

GYPSY BELLS Columbia Recordings 1967/Lou Christie (2024年)

米国男性歌手、ルー・クリスティのColumbiaレーベル在籍時のコンプリート集です。バカラック・カヴァーを1曲収録!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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全24トラック中、バカラック作品は1トラック

14. HOW MANY DAYS OF SADNESS (3:10)


米国男性歌手、ルー・クリスティのColumbiaレーベル在籍時のコンプリート集です。

ルー・クリスティ( Lou Christie、1943年2月19日 - )は、アメリカ合衆国の男性歌手、シンガーソングライター。1960年代前半〜中盤にかけて、ファルセットが特徴的な楽曲を複数ヒットさせています。私は彼を本アルバムで初めて知ったど素人。…ということでディスクユニオンさんのサイトに載ってた本アルバムの “商品詳細情報” をそっくり引用させていただきます。

─ 一聴して彼とわかる4オクターブの歌声で多くのヒットをとばしたルー・クリスティ。全米1位を獲得した66年「Lightnin' Strikes」を初めヒットを連発し人気絶頂の中、マネージャーのスタン・ポリーはMGMからコロンビアへの移籍を画策し、レコーディングを行いました。67年当時すでに大物プロデューサー兼アレンジャーのチャーリー・カレロはそれまでヒットを凌駕することを狙い数枚のシングルを制作するも全国的なヒットにはつながらず、アルバム制作に至らないまま残された音源はその後日の目を見ることがありませんでした。今回コロンビアの倉庫に秘められたそれらの音源がついにリリースとなります。不気味な「Don't Stop Me」、進歩と平等を訴える軽快な「Self Expression」、クラシック・クリスティといえる「Yellow Lights Say」と「Gypsy Bells」、予想外に生々しい「Paper And Paste」、そして特にフック満載な「Holding On For Dear Love」、ツィラ・ハーバートと共作した「Blue Champagne」は「Escape」をも凌駕し、ジョビンの「Meditation」、バカラック&デヴィッドの「How Many Days Of Sadness」、カール・フィッシャー/ビル・キャリー「You've Changed」では、これまでに聴いたことのない彼の声を聴けます。ここに収録された楽曲の幅広さは、彼がいかに様々音楽から影響を受け、それらの要素を巧みに取り入れて、豊かでかつ極めてユニークなものを作り上げていたことを記しています。  ─ディスクユニオンさんのサイトより)

彼は、コロムビアではシングルを3枚リリースしただけでブッダ・レコードに移籍してしまいます。英ACEから先々月リリースされたばかりの本アルバムはそれらシングル3枚に未発表音源を全て収めたコロムビア・イヤーの作品集という訳です。

さて、上述の通りバカラック・カヴァーはT-14.「 HOW MANY DAYS OF SADNESS(悲しみの日々)」。オリジナルはディオンヌ・ワーウィックで、1964年10月にリリースしたシングル「 REACH OUT FOR ME(リーチ・アウト)」のカップリング曲でした。その後、1965年2月リリースの4thアルバム『 THE SENSITIVE SOUND OF DIONNE WARWICK 』に収められます。そうそう、フランス語バージョンもリリースしています(2018年のアルバム『 ODDS & ENDS SCEPTER RECORDS RARITIES 』参照方)。ディオン版と比べてキーは長三度高くテンポはディオンヌ版(♩≒82)より若干遅め(♩≒77)ですが、基本的にディオンヌのバージョンとほぼ同じアレンジ。高音域の馬力はディオンヌに負けるものの、高低差があってクセのあるメロディをルー・クリスティはしっかり歌っています。好カヴァーと思います。

それにしてもこの曲、ルー・クリスティ以外にカヴァーを聴いたことがありません。そんなレア曲をなぜ彼は歌ったんでしょう?

─ Memories. Lou Christie played the Dionne Warwick original (flip-side of 'Reach Out For Me') over and over on a battery-powered phonogragh with tour bus companion Diana Ross during the Dick Clark Caravan Of Stars, 14 November-6 December 1964.  思い出。 ルー・クリスティは、1964年11月14日から12月6日まで行われたディック・クラーク・キャラバン・オブ・スターズの間、ツアーバスの同行者であるダイアナ・ロスとともに電池式蓄音機でディオンヌ・ワーウィックのオリジナル曲(「リーチ・アウト・フォー・ミー」の裏面)を何度も繰り返し聴いた。  ─ (ライナーノーツより、Google翻訳付き)

なるほど…、ルー・クリスティにとって思い出の曲なんですねぇ。そういえば、X(エックス)にこのライナーノーツの内容がポストされていたのですが、そこにはダイアナ・ロス&ルー・クリスティが車の中?で寝ている写真が添えられていました。当時のツアー中のものなのかなぁ。( → こちら

ここからはオマケです。ルー・クリスティによる他のバカラック・カヴァーをご紹介!
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彼は1966年リリースのアルバム『 Lightnin' Strikes 』で「 (THERE'S) ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME(愛の思い出)」をカヴァー。拙ブログでは既にバカラック物コンピ集の中で紹介していますので詳細は割愛します。…と言っても特段触れてないんですけど💦。( → コンピ集『 Burt Bacharach MASTERPIECE Vol.3 』,『 LIPPY LIP BACHARACH 』

他にも、Jack JonesやBobby Veeが歌った「 THAT'S THE WAY I'LL COME TO YOU 」をルー・クリスティが1963年にカヴァーした…というネット情報もあるのですが、確認出来ておりません。悪しからず。


【データ】
『 GYPSY BELLS Columbia Recordings 1967 』
Lou Christie

CD:2024年2月23日リリース
レーベル:Ace Records (UK)
番号:CDTOP 1601

Tracks 7-19,21 & 24 previously unreleased
Stereo except 1-8

T-14.「 HOW MANY DAYS OF SADNESS 」
  (Burt Bacharach, Hal David)
  CO 92284
  Produced & Arranged by Charles Calello

  Recorded 17 July at Columbia's studio at 207 East 30th Street
  Choral overdub 22 August
  Vocal overdub 13 September

Compiled by Harry Young with Mick Patrick
Note by Harry Young with Introduction by Bob Stanley
This compilation (P) and ©️ 2024 Ace Records Ltd
Made in the EU

Amazonリンク

2024年2月25日 (日)

Christmas Kiss/Diana Panton (2012年)

カナダの女性ジャズ・ヴォーカリスト、ダイアナ・パントンの5thアルバムです。レアなバカラック作品1曲をカヴァー!

(画像は全てクリックすると大きくなります)
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Original CD front cover/back cover
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所有日本盤CDのジャケット表/ケース裏

日本盤CD全16トラック中、バカラック作品は1トラック

11. WINTER WARM (4:47)


カナダの女性ジャズ・ヴォーカリスト、ダイアナ・パントンの5thアルバムです。尚、日本盤は『 Winter Kiss 』というタイトルに改題されています。

ダイアナ・パントンは、1974年カナダのオンタリオ州ハミルトン生まれ。(ハミルトンはトロントとナイアガラの滝の中間に位置する都市。遠い昔、海外出張した際にトロントからナイアガラの滝を通って米国ニューヨーク州ロチェスターまでバスで移動したことがあるのですが、その時に通過していたことになります。どーでもいい話ですが😅) 地元のジャズ・バンドにバック・シンガーとして活動していた高校生当時、カナダの重要なジャズ・プレイヤーであるドン・トンプソンに見出されます。その後パリの大学でフランス文学を学んだのち2005年にアルバム・デビューを果たしました。ファニーで若干ハスキーな歌声が特徴的です。

本作は5作目にして彼女初のクリスマス・アルバム。とはいっても、アルバム全体にウキウキしたクリスマス感は薄く、聴いてると冬のぬくぬくした部屋の中でゆったり寛いでる情景が浮かびます。実際、私は本アルバムを聴いてる途中でうたた寝してしまいました。

─ 2曲のオリジナルと、13曲のカヴァー、そして日本盤のみに1曲のボーナス・トラックを収録した、計16曲。バックを務めるのは、前述のドン・トンプソン(ピアノ/ベース/ヴィブラフォン)と、レグ・シュワガー(ギター)、ギド・バッソ(コルネット/フリューゲルホーン/トランペット)という、いずれも彼女の音楽の精神的支柱ともいえるプレイヤーたちだ。ダイアナの歌声を引き立たせるように、抑制を効かせた演奏はリラックスした趣で共感できる。  またこの『 Winter Kiss 』は選曲がとても興味深い。というか心にくい。ジャズのクリスマス・アルバムといえば、トラディショナルで誰もが知ってる曲を最初から最後まで収録させるのが通例だが、この作品には有名曲から隠れた名曲まで違和感なく並んでいる。つまりダイアナにとってこの作品は企画盤というよりは、彼女自身の趣味を反映させた、オリジナル作品としての思いが強く込められている。  ─ (日本盤ライナーノーツより)
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同感ですねー。T-3.「 クリスマス・キッス 」は彼女とドン・トンプソンが共作した佳曲でそれをアルバム・タイトルにしているのですが、日本盤ではジャケットも含めてタイトルをわざわざ『 Winter Kiss  ウインター・キッス〜わたしのホリディ) 』に変えたのは、クリスマス・アルバムではなくオリジナル作品としてアピールしたかったからなんでしょーね。

バカラック・カヴァーは、T-11.「 ウィンター・ウォーム 」。ハル・デイヴィッドとのコンビによるホリデーシーズン向けの曲で、米女優/歌手のゲイル・ストームが1957年11月にシングルB面でリリースしたのがオリジナル。テンポ♩≒66〜70でハープ/グロッケンシュピール/フルート等を用いたドリーミーなアレンジ&歌唱のオリジナルに対して、ダイアナ・パントンのカヴァーは♩≒47〜50という極めてゆったりとしたテンポで羽毛でふんわりと包み込まれるような歌唱&演奏です。伴奏はピアノのみで、中間部のソロ演奏も美しく素敵です。刺激的な歌声&音が全くないんですよ。この曲のカヴァーの中でも最も子守唄に向いたバージョンなんじゃなかろうか…(もちろん私個人の感想です)。

拙ブログでは以前の記事で「 ウィンター・ウォーム 」のカヴァー・リストを作りました。その時点のカヴァーは6バージョンだったので、ダイアナ・パントン版を加えるとカヴァーは7バージョンということになります。私が知る限り…ですが。


【データ】
『 Christmas Kiss 』(邦題:Winter Kiss  ウインター・キッス〜わたしのホリディ
Diana Panton




CD:2012年リリース (所有CDは、2012年10月24日リリースの日本盤。解説は山本勇樹氏)
レーベル:Diana Panton (Canada) (所有CDは、MUZAK, INC.)
番号:DIA-CD-5605 (所有CDは、MZCF-1259)

Produced by Diana Panton
Co-Produced by Don Thompson
Arrangement by Don Thompson
  Diana Panton - vocal
  Don Thompson - piano, bass, vibraphone
  Reg Schwager - guitar
  Guido Basso - trumpet, flugel, cornet
  Harrison Kennedy - vocal on track 2
Recorded at Inception Sound Studios, Toronto, Ontario, Canada in August 2011
日本盤ボーナス・トラック:T-9.「 SNOW 」

Amazonリンク日本盤


より以前の記事一覧

カテゴリー

  • カヴァーアルバム
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  • コンピレーションアルバム
    ★複数アーティストのバカラック作品を集めたいわゆる編集盤
  • シングル
    ★シングル
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    ★バカラック作品は入っていないがバカラックと何らかの関連があるアルバム ★アルバムやシングル以外のこと。本、コンサート、ライヴ、TV、Radio、告知、独り言、イベントなどなど
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